「詭弁」
著作者:坂井草
第13回「ウルティメイト料理VSミラクル料理」のお題は、「乳製品対決」であった。
そこで、ウルティメイト側が用意した料理は「ヨーグルト」。
責任者の鯨岡四郎は胸を張って、審査員に講釈を述べはじめた。
「このヨーグルトは、最高の環境で有機栽培の草を与えて育てた、最高の牛、いわば<ウルティメイトカウ>から搾った乳で作った、最高のヨーグルトです。そこいらの抗生物質浸けの牛の乳から絞って作ったようなヨーグルトとはわけが違います。このヨーグルトに、最高のいちごのジャムを少し入れて食べてみてください。」
審査員は言われた通り、用意されたいちごのジャムをガラス容器のヨーグルトの上に落とした。
「おおっ!いちごの赤がヨーグルトの上を広がっていく!」
「まるで、ヨーグルトのパレットの上に絵を描くような!」
ここへんの演出も鯨岡の計画通りであった。
「美味い!」
「これが本当にヨーグルトだというのか!」
味の評価も上々。
味覚だけではなく、視覚も楽しめたということで、鯨岡のウルティメイト料理は高い評価を受けた。
一方、ミラクル料理を指揮する、大海原(おおうなばら)雄一郎の用意したメニューは、
「これは!」
「これは!」
「ただの牛乳じゃ、ないか。」
審査員の前に現れたものは、一杯の牛乳であった。
すかさず、大海原の講釈が始まった。
「そう、一杯の牛乳です。それも、普通の牛乳です。とにかく、まずは飲んでみてください。」
ゴクッ。
・・・・・・・・・・・・・間。
「ぎゃー!」
「うっひょい!」
「こ、これが牛乳だというのか!」
「そんなばかな!」
驚愕の審査員。
「これは普通の牛乳です。ただし、牛はウルティメイト側と同じく最高の牛、私は<ミラクルカウ>と呼んでいますが、それから搾った乳です。」
勝敗はもうついていた。明らかに審査員の感動は、ヨーグルトよりも、一杯のミルクの方が大きかった。
「ば、ばかな!」 茫然自失の、鯨岡四その彼に、大海原の容赦ない怒鳴り声が飛ぶのでした。
「愚か者があ!あれだけの牛の乳になぜ手を加える必要がある!人間が生まれたとき、最初に口にするものは何だ!!ヨーグルトか?
そうではあるまい!母親の乳であろう!!いわば、乳は全ての料理の基本!!!それを見失って、何がウルティメイト料理だ!!」
四郎は黙ってそれを聞き、雪辱を誓うのでした。
そして第14回「ダチョウの卵 対決」。
鯨岡四郎が用意した料理は・・・。
「こ、これは!」
「生卵?」
あっさり大海原雄一郎の用意した、「ボイルド卵 トリュフソース」に負けた、と言う。
「愚か者があ!四郎、貴様は何だ!!料理人であろう!!食材を最高の芸術品に変える!それが料理人だ!!卵を割って、そのまま客に出すなど、料理人の誇りを捨てたも同然・・・・・・」
鯨岡四郎、父であり最強のライバル大海原雄一郎に勝つ日は遠い。
FIN