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「ケチャップ'97」
著作者:笈川ソランジュ

 机の引き出しにしまい込んだ、心の欠片を、これみよがしに机の上に置いて、これ以上の過度な期待を与えないように、ほんの少しの保険をかける。
 途切れた会話は、あまりにも心地よく、僕の姿が君の瞳に映っていない、なんという安心感。君の作ったオムライスには、君の欠片が入り込んでいて、僕は口の中からそれを取り出し、君の目の前に並べて見せた。君は、それなりに困惑したような顔をして、「イヤミね」なんて言うけれど、その言葉の裏に、君のどす黒い青春が見え隠れしているような気がして、僕はなじられているような気がして。
 二十五あたりでやめたドラッグの欠片は、今も片隅に落ちていたりして、ふと目を落とせばそこに僕がいる。変わらぬ姿の僕がいる。あの日、あの時の君のいでたちは、それなりに颯爽としていて、僕達は君に熱い視線を送り続けた。君は、それらを軽くいなすと、どこか遠くへと行ってしまった。
 あれから、もう三年が経って、僕らは何故か同じ屋根の下、作られた平和を演じているけど、僕は望まない、君も望まない、くだらない笑顔に生産性はなく、怠惰に甘んじるちょっとした媚薬は、たまに僕の心をかき乱してくれる。大笑イ、スル、コト、モ、ナク。薄笑イ、サエ、モ、ケダルイ。
 何もかもがFAKEであると同時に、その事実に意味を見出せない。時代を語るのもくだらなくはある。けれども、僕が今こうして生きている、そのことに意味を求められないでいる、いつまでもケチャップライスの僕の心が、君の顔色をより切なくさせている。多くのくだらないカップル達は、それさえも見つけることな、無駄だとわかっている時を過ごす、そしてその無駄が積み重なった時にこそあの惨劇は繰り返されていくのだろう。コタエ+オワリ=ココロノキズ。
 今の職場には、昔の君によく似た娘がいて、今はもう決して見ることのない、あの頃の君の笑い方。たまに、僕の心をかき乱す、あの笑顔が、生々しくも憎らしくもあり、僕は彼女に冷たくあたる。あぶれろ、あぶれろ、あぶれら、あぶれら。一世代若い彼女らの話は、昔の僕達を見ているようで。
 退廃+ケチャップ=イミモナクネムル。退廃−ケチャップ=イミモナクネムリツヅケル。退廃+ケチャップ=イミモナクネムル。退廃−ケチャップ=イミモナクネムリツヅケル。退廃+ケチャップ=イミモナクネムル。退廃−ケチャップ=イミモナクネムリツヅケル……。


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