「晴れ舞台」
著作者:花島賢一
やっときた、チャンスがめぐってきたのだ。
元来、俺はなにをやってもだめな人間だ。小学生の学芸会でやった「木の役」。
王女役の女の子が木にもたれるシーンで、興奮のあまり思わず握りしめた服をそのままはなさずにいたからとっさに彼女が離れたときに破けた。そして下半身あらわ、場内からの爆笑の声、その時以来彼女は俺に口を利いてくれない。
中学生の合唱コンクールの時、前日のハードな練習でのどを痛め風邪をこじらせての出場で大事なところで音程を狂わせてみんなからの冷たい視線を浴びた。
結果は言うまでもない。
高校の野球部で、甲子園大会予選でのイージーフライを落としてさよなら負け。
落とした本人は俺だ。
まだある、大学生で遊びすぎて4年連続の留年。結局、卒業出来ずじまい。開校以来100年の伝統の中で4年連続留年して1年生で卒業が無理と決定されたのは後にも先にも俺が初めてらしい。
一体全体何なのだ?。全く自分が嫌になってしまう。性格が悪いからか?。いや、違う。自分でも性格が悪いとは思わない、そのことで他人から責められた覚えは一度たりともない。ああ、これを運命、いや悲運というのかな?。しかし、しかし、今度は違うぞ。主役は俺だ。いや、主役を俺が取ってしまうのだ。
イベントは6時から、、、、、。
さて、なにを着ていくか?。集まる奴らは格式を大事にしなければなんてほざく奴らばかりだ。今時、そんなことを言ってると時代に乗り遅れてしまうのは今始まったことではないが、保守的な考えを脱皮してこそ社会は開かれていくんだ。だからと言って全部を否定するわけではないが、そう、良いものは良い、悪いものは消していく。これこそ進歩の過程だ。
「うむ、これにしよう」
一人の戯言にも力が入る。 選んだ服はダブルのスーツ、それも純白。深紅のネクタイが目立つ。これならみんなが俺に注目すること疑いなしだ。
さて、会場に着いたときには式は始まっていた。一人の中年の婦人が俺に気づいた。そばにいる旦那らしき男に相づちを打っている。なにやらこそこそと話をしているがかっこいい人に妬みの話はつきものだ。
やがて一人、二人と俺に気づく。俺は威風堂々とゆっくり前に進みテーブルの前まで来た。
「いやね、あの人の服装、まるでやくざみたい、、、。」
俺のいでたちで周りが静かになったから小声でも俺の耳に聞こえる。
なにやら右の方から鋭い視線を感じるが眼中にない、そして周りがざわざわと騒ぎ出したその時、前にいた若い青年が言った。
「次の人、ご焼香をどうぞ」
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