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「完全敗北」
著作者:白野佑凪
「あーあ、今年もバレンタインのチョコレート貰えないのかぁー。くそー」
毎年のことだけど、この時期はなんかイライラする。
「そんな下心丸出しだから貰えないのよ」
幼なじみのこいつも俺にチョコをくれたことはない。っていうか、男にチョコをあげたところを見たことがない。
結構かわいいのにこの年まで男と付き合ったっていう噂も聞いたことがない。
「うるせい、お前だってチョコやる奴もいねーんだろ」
「うっさいわねえ。今年は私もチョコあげるって決めたもん」
「ええええ! 誰に? 誰誰?」
「あ、あんたに関係ないでしょ!」
「そーかー……お前もかあー……」
こんな話をしてたら急に寂しくなってきた。
「はぁー、誰も俺のこと見てくれないんだよな……」
「何よ? いきなり落ち込んじゃって」
「俺は誰にも愛されないんだよ……ははは……まあ、いいけどよ」
「何言ってるのよ! そんなことはないよ!」
「うるせぇーい。お前が言うな。んなことより、早くチョコあげに行けよ」
「……馬鹿……馬鹿! 私、チョコあんたにあげようと思って買ったのよ!」
そう叫んだこいつの目には涙が溢れていた。
そして俺に抱きついてきた。
「ずっと……ずっと渡したくて……でも勇気が出なくて。
子供の頃から一緒にいたから私の事なんて女と見てくれるのかどうか心配で……。
あなたのこと好きなのよぉ……だから……そんなこと言わないで……」
胸の中の幼なじみが女に変わった。
急にこいつが愛おしくなった。
俺は強く抱きしめ、そして唇を……。
ピピピピピピピピピピピ。
……朝だ……目覚ましうるさい……。
今日はホワイトデーか……とんでもない夢見た。
ケッ、どうせ俺はバレンタインデーに一つもチョコ貰ってねーよ。
はあああぁぁぁぁ……これもストレスの現れか?
ピーンポーン
お? 誰か来た。
「だれだぁ〜? なんだお前か」
開けたドアの前に立っていたのは学校で仲の良い女だった。
「なんだはないでしょ。せっかく来てやったのに」
「へえへえ、ありがとーございます。上がれよ」
「え、あ、いいの、ここで」
「は?」
「あのね……今日はね……えーっと……」
「なんだよ、何か用事があってきたんだろ?」
「えっと、これ!」
俺の胸には四角い箱が押しつけられた。
綺麗にラッピングされていて。いい匂いがしてくる。
「あっあのね、バレンタインの日に渡せなかったから、だから、あのっ、バイバイ!」
「おっおい!」
そう言って走っていってしまった。
バレンタインのチョコ……?
やった……やった、やったやったやったやっっっっっった!!!!
ピピピピピピピピピピピ。
……朝?
今日は、四月一日……エイプリルフールにこんな夢見るなんて……。
何か完全敗北な気分。
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