「大嫌いなあいつ」
幼なじみでも、もう全然話さない。
あいつは、嫌われ者。乱暴で、かっこつけてて、両親が離婚している。
ずっと隣に住んでいた。でももう話さない。
「引っ越すんだって」
「あいつが?」
「親が再婚するらしいよ」
私は知らなかった。隣なのに。全然知らなかった。
「遥は知ってたんでしょ?」
「ううん」
これのくり返しだよ。本当に行っちゃうんだ。
昨日叔母さんが挨拶に来た。何か持ってきていた。
悲しくなんかない。
昔、大きな犬が恐くて泣いた事があった。あいつが私に
「弱虫!!」って言ってまた泣いた。
それから…汚い手が見えて…
「泣くな」
送っていってもらった。ずっと手をつないで。なにも言わずに。
それからますます話さなくなった。遠い思い出。
日曜日は晴れた。運送屋さんが来て、少ない荷物を運んだ。
私は窓からぼーとみていた。悲しくない、さみしくもない。
ふと見ると、あいつがいた。玄関の前で。
ヨ・ワ・ム・シ
あいつの口がそう言った。
私は…笑って言った。
ダ・イ・キ・ラ・イ
あいつも笑った。そして、行ってしまった。
もう二度と、会えないけれど。悲しくなんかない。
さよなら、大嫌いなあいつ。
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