Dさんは、3月より時給800円でS市のT社に勤めはじめました。書面による契約書も 無く、勤務時間は10時から17時ですから実働週30時間で当然加入できる社会保険・ 労働保険にも加入できませんでした。 後で明らかになりましたが、T社は正社員さえ社会保険・労働保険に加入させていません でした。 ◇ 改善要求を無視しつづけたT社 7月末頃からは残業が増え、定時に終業出来る日が少なくなりましたが、土日の休日出勤 以外は時間外の割増も無く、時給のみしか支払われませんでした。Dさんは就業時に家族 の介護があり残業は出来ない旨申し出ていましたが、9月末には決算と棚卸が重なり、夜9 時まで残業せざるを得なくなりました。 Dさんは「毎日残業が続くようでは体力的にも自信がない」と申し出ましたが、社長は「出来 ない時には断ればよい」「無理にしろとは言わない」というものの、残業をしなければ納期に 間に合わない実態を改善しようとはしませんでした。 挙句の果てに「健康管理は自分でするもの。ウチは去る者は追わない」と「文句があるなら 辞めろ」と言わんばかりの言葉をDさんに浴びせ、Dさんが改善策を求めたのに対しては 「あんたにそんな事言われなくたって判っている」とどなりつけ高飛車な対応をとってきたの です。 ◇ 残された社員のために一矢報いたい ! DさんはやむなくT社を退職せざるをえなくなりました。しかしDさんは 1 パート2名では到底出来ない作業を人員を増員することなく残業でこなさせようとしている 2 残業手当が出ない 3 契約書が交わされていない 4 社会保険・労働保険(とりわけ雇用保険)に加入できない 5 年次有給休暇が与えられていない 6 タイムカードの時計が誤っていても改善されない などT社の問題点を指摘し、残った社員とパートタイム社員やこれから採用される社員・パ ートタイム社員のためにも一矢報いたいとユニオンに相談に来られました。 ユニオンは早速、 1 Dさんの雇用保険を入社時に遡って加入させ、保険料を全額負担すること。 2 Dさんが退職せざるを得なくなった経過を反省し、今後社員が働きやすい環境を整備す ること。 3 パートタイムを含む全ての社員の希望を聴取し、社会保険、厚生年金、雇用保険に加 入させること。 4 残業代を支払うこと。 5 パートタイム社員にも年次有給休暇があることを周知し、有給休暇を取得させること。 等を要求し、団体交渉を要求しました。 ◇ 会社は全面的な改善を約束 ! 団交で会社側は「申し入れを受け、社会保険労務士に相談した結果、組合の要求は全て 正当な要求と判断しましたので速やかに改善したい」と全面的な改善を約束してきました。 Dさんがハローワークに相談した際、ハローワークは「T社には何度も雇用保険加入を指導 しているが加入しない。ハローワークとしては指導は出来るけれど強制できない」とハロー ワークは言い逃れて来ましたが、ハローワークの指導に従わなかった会社が一回の団交で 雇用保険加入を含め全ての要求を認め改善を約束したことは特筆すべき事態です ! 同時にハローワークや労基署の無為無策を改めて痛感させられました。行政がやるべきこ とをキチンとしていれば、労働者はもう少し安心して働くことが出来るのです。 ◇ 勇気ある『告発』が勝ちとった成果 ! T社は新たにパート社員および事務社員を増員し採用したとのことです。Dさんはじめ全社 員の雇用保険加入の手続きミスもその後発生しましたが、これからも約束の履行を監視し Dさんが望まれたようにT社の労働者が働きやすい環境を獲得し、維持・向上出来るように ユニオンは闘い続けなければなりません。 Dさんの勇気ある『告発』が勝ちとった成果を生かし、パートタイム労働者の権利を全ての 職場で実現させるため闘いを拡大しよう ! |