マッキーに対する再反論について

マッキーの反論に対しては、再反論も提出されています。
そのひとつに、最近日本の、あるキリスト教出版社から出版された本があります。
その主張によれば、マッキーが持ち出した、「白鯨」や「戦争と平和」から「暗号」を とりだすやりかたにはトリックがある、なぜなら、マッキーのものは、 テキストの分量が「ラビ」のものより多かったり、 等距離文字列の間隔が長かったり、あるいは、ラビの名称の扱いが恣意的だから ということです。

テキストの分量のちがいについては、そのとおりでしょう。
しかし、「白鯨」では、英語とヘブライ語という条件の違いも考慮しなければ なりません。
言うまでもなく、子音字だけで構成されているヘブライ語よりも、母音も含む 英語のテキストの方が、条件がはるかに厳しいでしょうから。

また、「戦争と平和」のヘブライ語訳から、創世記と同じ分量だけを持ってきて 行ったテストでは、テキストの条件は創世記と同一です。

再反論の本では、「戦争と平和」の文字列間隔の方が長いとか、 「ラビ」の名称の選びかたについても、リップスたちの選びかたは正当であり、 マッキーのは恣意的であるなどと、リップスのものとマッキーのものは別であるかの ように書いてありますが、両者の違いは、前者は、作為的な操作はないと言い、 後者はそれを公然と認めているという点だけです。
作為的といっても、でたらめというのではなく、リップスらが設定したサンプリングの 条件内で、最大の効果が出るサンプリングをしたということです。
つまり、問題は、サンプリングに作為はないというリップスらの主張を 「信じる」かどうかという点だけなのです。
そのような性質のものでは、とうてい暗号の存在が科学的な証明されたと言えないと、 例えば、ヘブライ大学の数学教授であるルボツキ氏なども書いています。 ハ・アレツの記事

それどころか、リップスらの一見「科学的」なやりかたが、実はいかに科学的根拠の ない恣意に満ちているか、という 記事や、そもそも、2つの文字列の「近さ」というものじたいが、科学的な根拠の ないものであるとする 論文を読むと、リップスらの「ラビ」論文自体に、巨大な、「?」がつかざるおえません。

最後に、45人の数学者や統計学者たちが、「暗号」存在の主張に科学的根拠はないとする 声明を発表していることを付け加えておきます。