第2話
二つの軸があり、サブの方は、ダメハケンの森ちゃんの苦闘についてで、、メインは春子と東海林主任の「ホチキス対決」です。
まずサブですが、スキルも経験もない森ちゃんは、会社のコーヒーサーバーを壊した(と思い込んだ)り、マネージャーの一ツ木さんからのアドバイスもあって、「キャラ立ちハケン」になろうとします。すなわち、社員の飲み物やタバコなどの買出しに走り回る、春子に言わせれば「おつかいハケン」です。当然、社員からは重宝がられつつ見下され、他の派遣からは嫌われ、「派遣のプライドはないのか」と責められます。この「プライド」というのが一つのキーワードです。結局最後には、「おつかい」を断るのですが、ここに森ちゃんの独り立ちへの道が始まったといえるでしょう。
さてメインの方です。前日、部長に連れられて春子がいる店に行き、フラメンコを踊る彼女を目撃した東海林と賢ちゃん(里中主任)ですが、朝この話題を春子にふると、そっけなくあしらわれてしまいます。面白くない東海林主任は、自分が開拓しているデパートの営業に春子を同行させて、自分の実力を見せ付けてやろうとします。ところが、いざ言ってみると、デパートの店長は、以前春子のアドバイスのおかげで昇進した人で、東海林には目もくれず、春子にお礼を言うため彼女を店長室に連れて行ってしまいます。
会社に戻った東海林と春子ですが、先ほどの店長から、売り場面積を10倍にしてくれるという電話が部長に入ります。東海林は一応自分の手柄のように言いますが、もとろん内心穏やかでありません。しばらくして、再び店長から電話が入りますが、東海林ではなく春子宛です。春子は東海林に代わることもなく電話を終えますが、報告を迫る東海林に対して、東海林の提出した売り場面積の計算が間違っていたこと、さらに、「東海林は大丈夫なのかね」との店長の問いに「さあ」と答えたと返事をしたものだから大変なことに。
東海林は派遣社員がでしゃばり、生意気なことに我慢がならず、ハケンは社員から言われた雑用をおとなしくしていればいいとの考えです。派遣社員に対して「ハケンさん」という呼び方をする彼に、春子は「正社員さん」と皮肉を呼び返しますが、二人の恒例のバトルとなっていきます。ついに激怒した東海林が、自分が得意とするホチキスの早打ち競争で春子と勝負の決着をつけようと言い出します。春子が負けたら謝る。東海林が負けたら頭をまるめて謝るということになります。ちなみに、東海林は強度の天然パーマですが、春子をそれを「クルクルパーマ」と呼んでからかっています。
ついに正社員のプライドをかけた東海林と、他のハケンから応援を受ける春子とのホチキス対決が始まります。勝負は春子の優位のうちに進みますが、春子はわざと最後の1束をしくじって負けます。彼女は自分が悪かったと謝ります。正社員一同は大喜びですが、ひとり賢ちゃんだけは、春子がわざと負けたのに気づいていました。
帰宅のバスを待つ春子に健ちゃんが近づき、なぜわざと負けたのかと問いただします。春子曰く、「正社員のプライドを傷つけることには興味がない。自分にはハケンとして生きていくということが最も大切であり、そのためには、見栄やプライドのかたまりである正社員とも付き合っていかなければならない」
さて、ここで問題です。「派遣」として生きていくためにわざと負けるというのは、単なる処世術なのでしょうか。春子は、単に身を守るために、弱いふりをするのでしょうか。どうもそうではないようです。春子は保身には興味はありません。第1話ですでに、クビになってもいいから残業はしないと言っています。むしろ、ハケンとしてのプライドのゆえの行動です。しかも「プライド」の質が問題となています。正社員のプライドとは、ここでは単なる見栄ですが、ハケンのプライドは少なくとも見栄ではありません。同じ「プライド」という言葉でも、意味が異なっているのです。
ここに重要な聖書的テーマがあります。「ハケン」すなわち遣わされた者としての「プライド」すなわち誇り・・・使徒パウロは言います。「神の福音のために選びわけられ、使徒(遣わされた者)として召されたキリスト・イエスのしもべパウロ」〜彼の誇りは自分自身の中にはありません。しかしながらキリストの福音のために神から派遣された者であるということ一点に最大の誇りを持っていました。そして、その天来の誇りのゆえに、地上においては、どんな辱めもものともせずに、ハケンとしての生涯をまっとうしたのです。言うまでもなく、これはパウロが自分で作り上げた生涯ではなく、神のひとり子として地上に遣わされ、十字架の辱めを自ら引き受けたキリストにならうようにと、神自身が彼に授けた生涯でした。
それにしても、春子はだれによって、何のために遣わされているのでしょうか?
つづく