しなちく日記


2001年12月20日(木)
 深夜喉の奥から絞り出すような咳をしていた。毛玉でも詰まっていたのだろうかと思ったが、その後何事もなかったようにいつもの通りのしなちくに戻った。


2001年12月21日(金)

 いつもの通り寝ようと思いベッドにしなちくを連れて行く、しばらく腕の仲で喉を鳴らしていたが、急に咳き込み始めた。また毛玉だろうか?かなり長い時間咳き込んでベッドを出ていってしまった。
2001年12月24日(月)
 時折咳き込む。なんだか元気が無いような気がする。食欲はあるようだ。
 寝るときベッドに連れて行くが、腕の中でなにかひゃっくりの様な動きをしている。ゴロゴロ喉を鳴らすとなるようだ。自分が喘息持なので、ひょっとして気管支炎なのでは?と考える
2001年12月25日(火)
 やはり元気がない。食欲もあまり無いようだ。なんだか痩せてきた様な気がする。
 大好きなオモチャもちょっとしかじゃれない、動いたり興奮したりすると苦しそうで、たまに咳き込んでいたりする。毛玉が取れなくて困っている可能性もあるので明日猫草を買ってくることにする。
2001年12月26日(水)
 猫草を買ってくるのを忘れてしまった。相変わらず元気がない。急に大人になって しまった様な印象を受ける。病院に連れて行こうと思ったが、明日は獣医さんの定 休日である。大好きなレーザーポインタで遊ぼうと思ったら、興奮して咳き込んで しまった。可愛そうなので、やめた。
2001年12月27日(木)
 猫草を買ってきた、物珍しいのか一心不乱に食べている。これで毛玉が出てくれるといいのだが。やはり痩せてきている。いつもあげているドライフードの減りが遅い。食欲がないようだ。夜中コンビニで猫缶を買ってきて、あげてみた。ゴロゴロいいながら元気良く食べている。ドライフードが嫌いになったのだろうか?それなら別にかまわないのだが、やはり咳が気になる。ベッドに連れて行ってもゴロゴロする前に出ていってしまう。
2001年12月28日(金)
 今日で仕事納めである。明日から東北の実家に帰郷する予定で、猫達を連れて行かなければならない。大丈夫だろうか?明日くじらが皮膚病の診察なので、一緒に連れて行って見て貰いその上でどうするか決めることにする。缶詰のご飯は気に入ったようでちゃんと食べている。食欲が戻ってきたから回復に向かうのでは?と多少楽観する。咳はあまりしなくなったが、なんとなく我慢をしているようで、呼吸するのが苦しそうだ。


2001年12月29日(土)

 朝、獣医に連れて行くのでくじらをキャリングバッグに、しなちくをカゴに入れて車で出かける。途中でしなちくが暴れ出す。かごから出すと口から泡を吹いている。呼吸困難でチアノーゼをおこしている。獣医に駆け込みチアノーゼおこしているとつげ、ぐったりしたしなちくを抱えて診察室へ駆け込む。すぐさま主治医の医師からかなり危険な状態であることを告げられる。緊急のカンフル剤を注射され、すぐさま酸素室で酸素吸入を受ける。約1時間後医師に呼ばれ、説明を受ける。レントゲン写真を見せられ、肺の8割ほどが機能していない事を告げられる。単純な肺炎だとしても、治るのに最低2週間はかかり生存率は5割、もし腫瘍なら絶望的であり、検査をしてみないと解らないと言われる。面会しても良いというので、妻と2人で酸素室のしなちくを見舞う。ぐったりとしているが、目には光が戻りこちらに気が付いて目で追いかけている。触っても良いというので、なでてやる。
 くじらの皮膚病の診察もしてもらい緊急の携帯の連絡先を告げて、とりあえず家に戻る。
 夕方獣医に電話で症状を聞く。現在は安静に戻ったこと。肺にチューブを入れ検査したところ、肺炎や炎症をおこしている時に見られる膿が全くでないこと。恐らく腫瘍(癌)である事。血液検査で猫白血病がポジティブだったこと。本当に癌かどうか調べるには、開胸して生体検査する必要があり、それに耐えられる体力が無いこと。このまま入院しても治療は出来ず死ぬまで酸素室での延命措置しかできない事を告げられる。
 一旦電話を切り、妻と相談して家に連れて帰り、最後を2人で看取ってやることに決め、獣医に引き取りに行った。興奮しないように毛布でくるみ、頭をなでながら連れて帰る。
 医師の話を聞いたときは、もう動けない程なのかと思ったが、家に着くとご飯を食べ自分でトイレにも行く。匂いをかぎに来たくじらにパンチまで繰り出すほど元気である。朝死にかけたのが嘘のようで、昨日までのちょっと元気がないしなちくに戻っている。夜中には抱っこをねだりにきて、膝の上で喉を鳴らしている。こんなに元気なのに、死ぬなんて獣医は嘘を言っているのでは?と疑いたくなってしまう程である。元気なしなちくをいっぱい残そうと思ってビデオやデジカメで沢山撮影したが、一緒に写っている人物がみんな泣き顔で人には見せられない写真ばかりになってしまった。

 猫の肺の病気はわかりにくく、咳などあまり出ずに猫は我慢してしまうそうで、咳をするようになって、具合が悪くなったと解る頃には、もうかなり症状が進んでしまっているそうである。本来猫の呼吸は静かなもので、身体で息をするような場合はかなり調子が悪いということであり、早急に獣医師に診察をして貰うべきだと言うことである。
 

2001年12月30日(日)
 昨日はとても長い長い一日だった。
今日のしなちくは、元気だった。といっても、寝ている時間と座っている時間が多いのだが、それでもソファで爪を研いだり、台所に立つとご飯をくれ!とにゃーにゃー鳴いたり、足にまとわりついたりする。猫じゃらしに反応もするし、Tシャツの中で指を動かすと飛びかかってきたりもする。なんだか、一昨日より元気になっている感じだ。食欲もあり猫缶をやるとちゃんと食べるし、水も飲む。トイレもちゃんとしているようだし、カンパチの刺身も半分食った。ちょっと具合が悪いので大人しめ程度にしか感じないのだが・・・。
しかしやはり呼吸は浅く早い。体重と体温、呼吸数、心拍数を記録していくことにした。直腸検温はやはり可愛そうなので、耳で計る体温計を明日買ってきてみることにした。うまくいくだろうか?
 確かに寝ている時間が多いし、激しく遊んだりはしないが、昨日死にかけたとは思えない程元気である。獣医の誤診ではないのか?実は誤診で単なる肺炎であって今は快方へと向かっているのではないか?としなちくを見るたびに考えてしまう。昨日はあんなに覚悟したつもりになっていたのだが、元気な姿を見ているとこの子が死ぬはず無いと思ってしまう。
リビングにホットカーペットを敷きその上に毛布を置いて人も猫も寝れる様にして、食料を大量に買い込んで、今年の年末年始は妻と私と猫2匹の家族四人で何処へも行かず寝正月と決め込むことにした。
2001年12月31日(月)
 ●バイタルデータ [体重:3.9Kg 体温:37.7度 脈拍数:128/min 呼吸数:46/min 食欲:あり 排泄:している]

 獣医に行ってしなちくが死にかけて、自宅で看取る覚悟で引き取ってきた時は2002年をしなちくと迎えられるとは、思っていなかった。ところが、嬉しいことに予想に反してしなちくは回復している。客観的なデータが無いので印象でしかないが、回復しているように見える。しかし油断は出来ないのは間違いないので、客観的なデータをつけ始めた。
 猫の血圧を測る方法は知らないので、直腸検温用に人用の口内5秒で測定出来るデジタル体温計と脈拍数測定用にオモチャの聴診器(大人のオモチャ売り場に置いてあった)を買ってきた。それとデジタルの体重計で体重を量り、呼吸数を数え、それらを朝夕記録することにした。基礎データであるので1日でそんなに変化はしないだろうが、猫のバイタルを知ることにより、ある程度悪くなっているのか良くなっているのか、停滞してるのかが解るはずである。
 猫のバイタルデータの正常値としては、体温が38度前後で40度超えると明らかに異常。脈拍数は1分あたり130〜160。呼吸数は20〜30である。しなちくの場合、呼吸数だけが正常値の範囲を超えて早いことがわかる。しかも浅く不規則である。事前にレントゲンで肺の状態を見ているがやはり、データ上からも呼吸器官に異常があることが数値となり出ている。呼吸数に関しては、寝ているときと起きて安静にしているとき、起きているときで極端に違うので、とりあえず起きて安静にしているときで測定しているが、ばらつきがあるかもしれない。ともかくしばらく続けてみることにする。
 なにはともあれ、家族4人(2人+2匹)で新年を迎えられたのは嬉しい限りである。



2002年1月1日(火)

 ●バイタルデータ [体重:4.0Kg 体温:38.8度 脈拍数:128/min 呼吸数:46/min 食欲:あり 排泄:している]

  体重が増えている、人間用の体重計なので100g単位でしか解らないが、12/30に計り始めたときは、3.8と3.9をいったりきたりしての3.9kgであったのが、今日は3.9と4.0を行ったり来たりの4.0である。食欲があるので順調に体重も増えてきている。排便・排尿もきちんとしており、色も艶も量も悪くない。毛艶もいいし、今日は1週間ぶりぐらいに天井からゴムで吊してある猫のオモチャに飛び付いて遊んでいた。ただやはりすぐ疲れてしまうらしく、ちょっと遊んでは休憩、ちょっと遊んでは休憩という感じである。
 呼吸はまだ速く浅く不規則ではあるが、食欲が旺盛で、排泄を正常に行っていて体重が増えていて、遊ぶようになってきた。これはやはり回復していると見るべきではないだろうか?
 よく瀕死であったペットが、死ぬ寸前に元気を取り戻し、飼い主にに甘えて、そのあと逝ってしまった。という話を聞くが、しなちくの場合、それでもなさそうである。獣医の正月休みが終わったら、もう一度しなちくのレントゲンを撮ってもらい、状態が改善しているのか、そうでないかを確認しようと思う。
 来年のお正月も2人と2匹で新年を祝えられる事を願って、おめでとうを言いながら、おとそを猫の鼻に塗ってみた。

 
2002年1月2日(水)
 ●バイタルデータ [体重:4.0Kg 体温:38.8度 脈拍数:128/min 呼吸数:48/min 食欲:あり 排泄:している]

  今日もしなちくはとても元気である。くじらと取っ組み合いでじゃれ合っていたりするし、食欲旺盛快食快便である。気になるのは呼吸数が夜になって若干増えたことである。ここ3日ほど、寝るときベッドにしなちくを連れて行ってるのだが、腕枕するとゴロゴロと喉を鳴らす様になった。元気な頃と較べて喉の鳴らし方がおかしいとか早いとかは、これといって感じない。呼吸が早いのだから前と音が違っても良さそうなものなのだが、ひょっとすると彼は先天的に肺に障害を抱えているのかもしれない。つまり元々彼の肺には欠陥があり呼吸は早かったのではないか?と言うことが考えられる。それで、昨年の年末に体調を崩して(恐らく風邪?)ハンデキャップを持っていた肺に強く症状が現れあのような状態に陥ってしまったと言うことではないだろうか?
 現在のしなちくは、死にかけたあの日以来咳をしているところを見ては居ないし、苦しそうにしている所も見ていない。よく眠り、よく食べ、遊んでいる。なんだか1日見ていると年中寝ているという印象を受けるが、大体猫というのは一日の8割は寝ているという動物だし、同じペースでくじらも昼寝している。改めて見ていると、猫というのは良く寝る生き物である。これはほぼ元の状態に戻っていると思っても良いのでは無いだろうか?

2002年1月3日(木)
 ●バイタルデータ [体重:4.0Kg 体温:39.3度 脈拍数:128/min 呼吸数:47/min 食欲:あり 排泄:している]

  しなちくの状態は今日も特に変化はない。ちょっと体温が高めで相変わらず呼吸数が多いが、見た目は具合が悪そうな感じではない。
 動物というのは何処が痛いとか、熱があって苦しいとかは言わないので、実際には辛いのかもしれない。なんとかそこを解ってあげたいのだが、なかなか難しいものである。赤ん坊と似ている気がするが、動物は我慢してしまうので辛いからといって、泣いたりはしてくれないのだ。
 しなちくの騒ぎで前回の診察は手抜きになってしまったが、くじらの皮膚病もなかなか良くならない。真菌の皮膚病なのだが、患部がどんどん外側に広がっており、最初はほっぺだった患部が、今では首から胸あたりまで広がっている(というより移動している)。広がらないように患部の外側の毛をバリカンで刈ってそこへ薬を塗っているのだが、その外側へ患部が飛び火してしまう。寒くて可愛そうだと思い、毛を刈る範囲をなるべく狭くしてあげようという気持ちが、かえって災いを招いてるのかもしれない・・・・。難しいものだ。
 

2002年1月4日(金)
 ●バイタルデータ [体重:3.9Kg 体温:39.4度 脈拍数:136/min 呼吸数:51/min 食欲:あり 排泄:している]

   今日は熱が少しあるようで、涼しい台所のマットの上で寝ている時間が多かった。マンションはファンヒーター1つつけているだけで、かなり部屋の中が暖かいのだ。呼吸数も多くなっているようだし、呼吸するときのお腹の動きも大きくなっているようだ。呼吸が苦しいせいで眠りが浅いのか、寝返りを打つ回数が多いような気がする。
 明日は獣医の正月休みが明けるので連れて行ってレントゲンを撮るつもりだったが、やはりやめることにした。日々つけているバイタルデータと状態の推移を獣医師に相談して、その上で連れて行くかどうか決めることにした。もし彼が回復の見込みが無く、少しずつ残った命を燃やして一日でも長く生きようとしているなら、検査や通院は確実に彼の命を縮める結果になってしまう。辛い治療や入院で寂しい思いをさせてまで延命しようとは思わないが、辛い思いをさせて命を縮めるような事はもっとしたくない。
 ただ、熱があるなら下げてあげたい。痛みがあるなら止めてあげたい。そう言ったことを明日獣医医師に相談してみようと思っている。

2002年1月5日(土)
 ●バイタルデータ [体重:3.9Kg 体温:39.2 脈拍数:152/min 呼吸数:57/min 食欲:不振 排泄:している]

 しなちくの体調はおもわしくない。今日は結局獣医に連れて行くことは諦めた。
徐々に呼吸数が増えており、食欲も落ちているし、獣医にへの通院・診察でのストレスは、彼の体力を確実に奪うであろうと判断したからだ。獣医師にもそれが正解です、家で症状が落ち着いてるならそれが猫のために一番良いことです、と言われた。
 くじらを皮膚病の診断で連れて行ったので、ついでに血液検査をしてもらった。検査結果は、猫白血病ウイルス・猫エイズウイルス共にネガティブであった。一安心した。そうするとやはり、しなちくは母子感染か別経路で我が家に来る以前に、猫白血病ウイルスに感染していたことになる。
 猫というのは、酸欠に強く、かなり長い間苦しんで仕舞うそうで、安楽死というのも考えてあげてください。と獣医師に言われた。前回はあまりにも突然だったので、安楽死なんて何を言っているんだ?としか思わなかったが、この先のしなちくのことを考えると、やはりその選択肢も考えないといけないことだと思った。もちろん自分でご飯を食べたり、喉を鳴らして甘えてる彼にそんなことはしようとは思わない事に変わりは無いが。
 

2002年1月6日(日)
 ●バイタルデータ [体重:3.9Kg 体温:未計測 脈拍数:136/min 呼吸数:57/min 食欲:不振 排泄:している]

  座っている時間が長くなった。横になって寝ていてもしばらくすると座ってウツラウツラとしている。食も大分細くなってきた。飲み込むのが辛いのか舐めるように少しずつ食べている。
 それでも、欠伸や伸びをするし頭をなでてやるとゴロゴロ喉を鳴らす。それほど勢いは無いがジャレたりもするし、トイレを覗きに来たりもしている。自分が具合悪いときを考えると、相当辛いときはそんな余裕はないだろうなと思うので、苦しいといってもちょっと息苦しいだけなのだろうか?と考えてみた。実際色々調べてみたが、呼吸困難は苦しいと色々なところに書いてあるし獣医師にも言われたが、苦しいといったいどうなってしまうのか?ということが解らない。年末に獣医に行ったときにチアノーゼをおこして口から泡を吹いていたのは、見ていられない程苦しそうだった。あれと較べると今は、とても落ち着いている。この先病気が進んでいくと徐々に肺の機能を失っていって、最後は酸素が不足して窒息死する。というのは理解出来るが、事故などで急に肺が機能しなくなる訳ではないので、いったいどうなってしまうのかどのくらい苦しみが続くのか等、想像が出来ないのである。
 獣医師の話では、熱が出ることはまず無いと思うし、熱を下げる為の錠剤も飲ませてあげられないだろう、と言われたので少しでもしなちくが嫌なことをするのはやめようと思い、体温の測定をするのをやめることにした。
 

2002年1月7日(月)

       ●バイタルデータ [体重:3.9Kg 体温:未計測 脈拍数:未計測 呼吸数:61/min 食欲:不振 排泄:している]

 相変わらず座っている時間が長い。横になるのも辛いようで、寝転がってもすぐ起きあがる。座ってウツラウツラとしている。呼吸も身体全体で息をしている。口を開いて息はしていないが、やはり時折苦しそうな様子を見せる。
 それでも身体をなでてやると、気持ちよさそうに目をつぶっている。時折座っている側にやってきて、身体をくっつけたりして甘えたり台所に立つと、足下にすり寄ってくる。ご飯は時々舐めるように少しだけ食べる。
 苦しそうで可愛そうで見ていられない、だから早く楽にしてやろう。これはやはり人間のエゴではないか?動物は苦しいから死にたいなんて思わないだろうし、一秒でも長く生きようとするのがやはり自然なはずだ。ということで、我が家では安易な安楽死は選択しないことにした。確かに事故などとちがって、病気でだんだん弱っていくところを見るのは、辛い。
 猫というのはプライドが高い生き物で、死期を悟ると、家の中から居なくなってしまって(大抵は縁の下などに行くのだが)ひっそりと死ぬのだが、屋内で飼っているかぎり、可愛そうだがそれも出来ない。だからこそ最後を看取ってあげる、どんな苦しそうにしていても、抱いて看取ってやる。それがやはり動物を飼うと言うことではないだろうか?
2002年1月8日(火)

       ●バイタルデータ [体重:3.8Kg 体温:未計測 脈拍数:未計測 呼吸数:61/min 食欲:不振 排泄:している]

 しなちくは頑張っている。少しずつであるが舐めるように食事をし、猫草をかじり、トイレにも自分で行く。必死で生きようとしている。だいぶ呼吸は苦しそうだし、うつろな目でじっとうずくまっている時間が長いが、それでも生きようとしている。
 やはり苦しそうだから楽にしてあげたい等と言うのは人間のおごりではないか?と彼を見ていると思う。もちろんそれが間違っているか?等と言うことを議論する気も無い。人それぞれ考え方があるだろう。
 何もしてあげられないが、彼が過ごすのに出来るだけ快適な環境を作っていてあげたい。触られるのが好きな子なので、いっぱいなでて声をかけてあげる事が、今私たちが出来る唯一の事である。今はメソメソ泣いていてもしょうがないのだ。泣いて病気が治るならいくらでも泣いてあげたいのだが・・・・。
2002年1月9日(水)

       ●バイタルデータ [体重:3.7Kg 体温:未計測 脈拍数:未計測 呼吸数:61/min 食欲:不振 排泄:している]

 食事は量は少ないがそれなりに食べているが、やはり体重が落ちてきた。食べられないのだからしょうがないのだが。時折口を少し開けて呼吸をしている。だいぶ苦しいようだ。それでも毛繕いをしたり、爪を研いだり身だしなみに気をつけているところは、やはり猫はお洒落な生き物だなと思った。苦しそうにしているときに顔を見られるのは嫌なようで、すぐに後ろを向いてしまう。格好悪いところは見られたくないらしい。猫はプライドの高い生き物なのだ。ましてや彼はタキシードをまとった伊達猫なのだから、当然であろう。
2002年1月10日(木)

       ●バイタルデータ [体重:未計測 体温:未計測 脈拍数:未計測 呼吸数:41/min 食欲:不振 排泄:している]

 かなり苦しそうである。呼吸も深く遅くなってきた。食事は缶詰を開ける音を聞くと足下にすり寄ってくるが、ほんの少量だけ食べてごちそうさまになってしまう、猫草はちょこちょこと食べている。味とか歯触りがいいのだろうか?新鮮な猫草を買ってきてあげようと探し回ったが、残念ながら何処にも置いていなかった。
 多分呼吸が苦しくなったりしてきちんと眠れていないみたいだ。眠そうにうつらうつらしている。比較的調子のいいときは、ファンヒーターの上に乗って座っていたりするが、少し苦しいときは前のめりに座っている。そのまま頭をつけて眠っていたりする。左目がきちんと開けにくいらしく半開きのときがある。
 出来る限り座って調子が良さそうな時は身体をなでてあげる。幸せそうに目をつぶってじっとしている。気持ちがよいのかゴロンと横になるときすらあるが、さすがに苦しいらしくすぐに起きあがってしまう。たまにお兄ちゃん猫のくじらも寄ってきて、ペロペロと首筋を舐めてあげたりしている。家族総出でしなちくに愛撫攻撃である。
 病院に入院していたり、安楽死を選んでいたら絶対こんな事は出来ないのだ。苦しいかもしれないけど目をつぶって幸せそうになでられている姿を見ていると、やはり選択は間違っていなかったんだなと思う。
2002年1月11日(金)

       ●バイタルデータ [体重:未計測 体温:未計測 脈拍数:未計測 呼吸数:52/min 食欲:不振 排泄:している]

 やはり日増しに具合は悪くなっている。目もうつろに口を開いて呼吸をしている。それでも帰宅するときちんと座って出迎えてくれる。ご飯をあげようとすると足下にやってきてご飯を食べようとはするのだが、ちょっと舐めてあとはごちそうさまのポーズをする。起きて座っているときに身体をなでてあげると幸せそうに目を閉じている。苦しそうなしなちくを見るとかなり辛い。正直もう楽になってもいいんだよと、思ってしまうが、別にしなちくは我々のために頑張って生きている訳ではない。それは人間の勝手な思いこみである。彼は自分自身のために頑張って生きているのである。そのために出来る限りのことはしてあげたいが、なにも出来ない自分が悲しい。
2002年1月12日(土)

       ●バイタルデータ [体重:未計測 体温:未計測 脈拍数:未計測 呼吸数:52/min 食欲:不振 排泄:している]

 昼間出かけていて、帰ってきたら玄関に迎えにきていた。なんだか昨日より調子が良さそうな感じである。と、おもったがやはり相当具合は悪いようだ、口を開けハァハァと息をしている。ほとんどの時間を部屋の隅で寝て過ごしている。時折ご飯をちょっとだけ舐めて、人の居るところにやってくる。なでてあげると目をつぶって気持ちよさそうにしている。出来る限り身体をなでてあげている。少しでも苦しいのを忘れられるとよいのだが・・・。
2002年1月13日(日)

       ●バイタルデータ [体重:未計測 体温:未計測 脈拍数:未計測 呼吸数:38/min 食欲:不振 排泄:している]

 ずっと口を開けて息をしてる。前のめりに座って、前足を踏ん張って、頭をコトンと床につけたポーズでずっと居る。座っているのも寝ているのも、うつぶせになるのも、どんなポーズでも苦しそうだ。時折ガバ!と起きあがって息を整える仕草をする。朝の様子を見て、もうダメだろうと思い、出先からも何度も抜け出して家に様子を見に帰ってきた。しかし、彼はこんなに具合が悪いのに、まだ水を飲み、食事を食べようとする。もう恐らく食事を食べられる状態では無いはずだ。
 動物というのは強い物だ、最後の最後まで生きようとして必死である。トイレすら自分で行く。苦しそうに喘いでいるところを見ていると、格好悪いところ見ないでくれる?とばかりに別の部屋へいってしまう。猫はプライドの高い生き物なのだ。格好悪い姿など人に絶対みせたくないのだ。


2002年1月14日(月)

 16:22分、くじらと私が見守る中、妻の腕の中でしなちくは逝ってしまった。生後8ヶ月、まだ0歳のままであった。
直前まで友人が教えてくれたプロポリスを入れた水を飲み、自分でトイレにも行き、ご飯も必死に食べようとしていた。本当に最後の最後まで絶対生きてやるという意志が感じられる強い子だった。ほんの5分ほどだったが、最後はかなり苦しそうに、声を出しながら呼吸をしていて、抱いてあげた腕の中で体中に爪の跡が残るぐらいもがき苦しんでいた。今はやっと苦しみから解放されて、お気に入りのカゴの中で眠っている。本当に眠っているようにしか見えない。
 家に来てからたった5ヶ月程しか経っていないのに、もう何年も一緒に居るのでは?と錯覚してしまう程、思い出がいっぱい残っている。ともかく何をやるにも全力で負けず嫌いの強い猫であった。 年末からの2週間はたくさんの思い出と写真が残った。よくがんばったね、ありがとうしなちく。安らかに眠ってください。



2002年1月15日(火)
 1月なのに、ポカポカと暖かくまるで春のように暖かい日でした。午後3:00しなちくは、横浜動物火葬センターで荼毘に付されました。
外からみても煙突から煙は出ていませんでしたが、ゆらゆらと陽炎が立っていて、しなちくがお空に登っていくのが見える様な気がしました。3:40頃骨になったしなちくを拾骨してあげました。担当のおじさんは猫の骨のことを色々と説明して下さって、やっぱりしなちくは子猫のままの骨であることを説明されました。病気のせいで成長がやはり遅かったようです。いずれ家を建てたら、庭に埋めてあげるつもりなので、小さくなったしなちくを家に連れて帰りました。
 火葬センターでいれてくれた骨壺が可愛くないので、そのあとデパートへ可愛い容器を探しに行きました。これならしなちくも納得するだろうという、紅茶を入れるとても可愛い瀬戸物の入れ物を見つけました。小さな香炉も買い、立ち寄ったファンシーショップで、偶然しなちくそっくりの猫が描かれているカップを見つけ購入しました。なんだか、どの買い物もしなちくが導いてくれたように売り場へと吸い込まれ、最初に気に入ったものや偶然目にとまったものばかり買ってしまうという不思議なお買い物でした。家に帰って部屋の中全体が見渡せるTVの上にしなちくの写真や香炉を置いて、お線香ではなく「ひのきのお香」を焚いてあげました。なんだか爽やかな香りで心が静まるようでした。まだ部屋の中にしなちくが居るような気がして、不思議な感じがします。