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データ
タイトル おとぎストーリー
天使のしっぽ
プレイ時間 18時間程度
/4周+α
機種 PS ストーリー ★★★☆☆
ジャンル 育成SLG キャラクタ ★★★★★
メーカー バンダイ グラフィック ★★★★☆
ワンダーファーム サウンド ★★★☆☆
発売日 2003年 2月27日 ソフトウェア ★★★☆☆
定価 6,800円 ゲーム性 ★★★☆☆
購入価格 5,980円 電波、届いたっ!!
総合評価 ★★★☆☆
お気に入り度 降q(*´д`*)p参

本文
 え〜ん、え〜ん、ウマのジュンがいないよぉ〜(棒読み)

 MegamiMAGAZINE創刊より始まる電波企画、P.E.T.S.
 おとぎ話の要素を取り入れながら、主人公がかつて飼っていた(そして殺した)動物たちがめいどの世界から守護天使(メイド)になって復讐恩返しにやってくるというトンデモ系。
 しかも各キャラには前世の死因によるトラウマが設定してあるという冗談のような話。
 死因だけでも重いのに、それにまつわるトラウマ持ちだとっ?
# なんかここまでで既にオモシロワードが複数含まれているような…

 トラウマの例:焼死(白蛇)、孤独死(ウサギ)、溺死(キンギョ)、墜落死(インコ)、餓死(ハムスター)、銃殺(キツネ)、中毒死(タヌキ)

 最初は3人(?)だった守護天使もゾクゾクと増えて1匹目のドジョウであるアレをも越えてしまったワケだが、アニメ、ゲームでは6・3・3で12人のみ。
 おとぎストーリーであることやキャラが飽和状態ってのはわかるケド、それでもウマ(以下略)



 内容自体は意外と手のかかった育成シミュレーション。
 育成対象は12人の守護天使。目的は次期女神候補の育成。

 期間は1年間で、月単位、週単位、平日/日曜の3種がゲームループの単位となる。

 は1日に提示されるイベントを成功させるために『特定のコマンドを指定回数成功させる』という目標が提示される。
 で、目標をクリアすると集合イベントが発生し守護天使の能力値にボーナスが加算、失敗すれば何事もなかったかのように次の月。
 コマンドは炊事、お話、アルバイトなど、女神候補というより花嫁候補に近い内容だが気にしない。コレ、めいどの世界の常識。

 は平日と日曜でワンセット。土曜祝日は平日としてカウントされる。

 平日は月曜に各守護天使が実行すべきコマンドを入力。
 このとき同じコマンドに3人まで登録が可能で、過半数が成功すればコマンド全体が成功。
 また、特定の組み合わせで全員成功すればコンボ成立
 で、それぞれの守護天使にコマンド成功率や感情度に応じたボーナスが能力値に加算される。

 育成においてはそのコマンドが不得手なキャラを得意なキャラが引っ張ってやるのが効率の良いプレイとなる。
 もちろんコンボが成立すればなお良い。

 日曜はマップ画面から移動場所を選んで日常イベントを鑑賞。
 日常イベントは必ず3人セットで週2種類が存在。全体では約100種が存在する大ボリューム。
 全ての画面においてフルボイス&口パクありなのを考えると昨今の冷え込んだギャルゲ市場からは考えられない力の入りよう。



 プレイとしてはコンボ探しや効率の良い育成を考えたり、多数存在するイベントを楽しむことができるのだが実は大きな落とし穴が。
 それはシミュレーションとしては箱庭が狭く乱数に支配されたシステムに起因する。
 要はコマンドの成功が次の成功に、失敗が次の失敗に繋がる仕組みになっているということ。

 能力値が低いと成功率が低い。成功率が低いと育ちにくい。コンボも成立しにくい。
 失敗すれば感情度が下がりボーナスも低くなるという悪循環。
 逆もまた真のため、序盤に執拗なセーブ&ロードを繰り返したものだけが勝者となりえる。
 初期能力が低い年少組を攻略するなら特にその傾向は顕著に。
 ここは2周目以降に育成効率が上がるようにする、クイックセーブ/ロードを実装するなどの救済策が欲しかった。

 このあたり六月十三作品らしいといえばそうなのだろうが、正直なところひと昔前のつくり。
 さきほど『手の込んだ』ではなく『手のかかった』と評したのはこれを受けてのこと。

 では『手のかかった』部分はというと、例えば12種類用意してある起動時のお出迎え、メッセージの読み返し前のひとことに代表されるお遊び。
 ギャルゲ全盛期ならまだしも21世紀の今となってはほぼ絶滅したサービス精神旺盛なつくり。これは素直に嬉しい。



 話を戻して本作の問題点を要約すると繰り返しプレイに耐えないつくりだという結論になる。
 もちろんその原因のほとんどは前述の育成問題。
 あとは、日常イベントが2〜3周のプレイでネタ切れになること、育成画面の演出がスキップしても遅いのがナンとも。
 ここはイベントの既読を通知/スキップしたり、育成画面の思い切ったスキップ処理を実装するなりして欲しかったところ。



 と、システムまわりには苦言を呈するところであるが、逆に言えばそれだけの魅力/魔力を秘めているということ。
 それは電波企画として斜に構えた態度で接していたハズなのに、いつの間にかバカにできないようになっていたことからも明白。
 断言しよう。本作をプレイすれば守護天使のことが好きになる。そういう意味で本作は最高のキャラゲのひとつである、と。
# ジャンルは育成SLG、内容はキャラゲ⊃ギャルゲと解釈していただきたい。

 アニメ版は尺が足りない上に四聖獣なんかを持ち出したために各キャラの魅力はおろか電波の方も薄目という期待ハズレのデキだった。
 しかし本作では彼女たちの日常を過剰なほど描くことで穏やかな世界を構築するに至っており、感情移入能力が高い(ダメ)人間ほど楽しめる内容に。

 逆に個別イベントは設定をなぞるフォローに近いものが多く、あざとさはあまり感じられなかったりするが、キャラゲならそれで充分。
 むしろペットを愛でるような感覚で接するのが正しいという名実ともにP.E.T.S.ゲー。

 また、3人の新キャラ、人間の女性たちが守護天使のフォロー役に徹底していたのも納得の仕上がり。
 最初は不要だと思っていたのだが、いくつかの守護天使固有イベントでお互いを高めていたことを考慮すると総合的には正解だったかと。
 このあたり、守護天使のカウンターとして存在した四聖獣と比較すると面白い。



 しかし、本作を楽しむには広く高く厚い壁を越えなければいけない。それすなわち一見さんお断りの電波設定。
 いきなり12人の娘から、ペットの生まれ変わりですよ〜、守護天使ですよ〜、ご奉仕するですよ〜、ご主人様(はぁと)って言われてもなぁ…
 まぁ、ノンケの人間がこんなモノ(失礼)に手を出すかは別として、知らずに触ればヤケドするのも事実。
 そこらへん目をつむってプレイすると死因とトラウマを持っているからこその苦悩やいじらしさを感じて、たまんなくなっている自分を発見できたり。
 いかんせん道のりは険しく遠い上に辿り着けたからといって幸せなのかはわからないが。

 そういう意味で試金石となるのはコミック版。アレがOKなら充分楽しむ資質アリ。
 逆にMegamiMAGAZINEの企画が素で楽しめたら人生を考え直す必要アリ。最悪病院行き。



 本作の売りのひとつであった12通りの呼称についてはいくらかのイベントでネタにはなっているものの、ハジケ具合が全然不足。
# 婿殿、ダーリン、旦那様、あなた、キャプテン先生、兄貴、兄ちゃん、お兄さん、お父さん、パパ、ちゃん
 これは家族ごっこのイチ要素程度に捉えておくのが良いかと。

 グラフィックのクオリティは高くバストアップの種類も多い。
# 1〜2ドット幅の超長アホ毛は一瞬バグかと思ったが。
 ただ、背景画がイマイチ、衣装が少ないために季節感に乏しいという面も。
 季節感といえば、南の島でアルバイトはオールシーズンOKとして夏〜秋にそこらでスノボってのはちょっとどうかと。
 他にも動物の身体能力を侮っているところは守護天使/視聴者をナメすぎではないかと。おとぎ話にある設定以外のものは特に。
 基本的な部分でいろいろ目をつむっている分こういうところはしっかりして欲しい。

 サウンドまわりはBGM、音声ともにレートが低め。
 これは容量の関係だろうが、むしろCD1枚に収まっていることを評価したい。
 SEはそれなりに用意されているもののBGMは少なめ、もしくはそう感じるのは寂しいところ。

 おまけ要素はグラフィックモード、サウンドモード、エンディングモード、メッセージ集が用意されており充分。
 これで日常イベントの再生があれば、というのは贅沢な話か?

 キャラに関しては今まで地味だったミドリさんが重要なイベントでオイシイところを持っていきまくり。
 すなわち株上がりまくりで本作最強の称号すら軽やかに(σ´▽`)σゲッツ。
 あとはルルたんの微笑ましさは圧倒的。そして棒読み&語尾に洗脳されまくりだぉ〜。あやや〜(これはナナです)
 反してルルたんのお水を飲ませてもらったり体中の汗を拭いたり、ナナにペロペロされる主人公は最低のペド野郎
 どんな努力も報われないミカが不憫だ。
 ゴメン、半分は捏造。本作の睦悟郎はプレイヤーの邪魔をしないので安心。



 実際のプレイは、1周目2月になぜかセーブデータが消え、2周目は全員不合格エンド、3周目はアカネエンド達成、ここで根が尽きた。
 学生時代のように時間がある(そして金がない)ならそのまま続けていたと思うが、今はちょっとムリ。

 そんなワケで4周目からPARを使ってみたらストレスから開放され見事に復活。
 というか生まれ変わりすぎてこんなに面白くていいのかと思うくらい。
 基本的にPARは邪道として禁じているのだが、本作だけはむしろ推奨。もちろん1〜2周は普通にプレイすべきだが。

 もし普通にコンプするなら誕生日をバレンタインあたりに、血液型を年少組と相性が良いものに設定。
 最初の4ヶ月でセーブ&ロードを繰り返し、平均的に感情度を上げたデータを用意すると効率が良い。
 あとは目当てのキャラを重点的にサポートし、休日にできるだけ会うようにすれば個別エンドは約束されたも同然。
 これなら2週間に1回くらいのセーブで充分攻略できるしストレスも少ない。
 ただ日常イベントを全てフォローするには同一のセーブファイルで最初からプレイするのが最短であることに注意。
# なのでプロローグ直後のセーブデータは残しておいた方が良い。



 今のご時世この手の作品が発売されるだけで御の字なのに、プレイすれば脳がとろけるほどのぬるま湯気分を味わえるという貴重品。
# 当然、いろんなことに目をつむる&かなりの適性が必要だが。
 萌え中心のギャルゲを想像していると肩透かしを食らうだろうが、既存の企画モノをうまく調理しておりキャラゲとしては極上品
 多少タルくても1〜2周目は普通に楽しめるハズなんで、ノリに付いていけそうなら。モチロンある程度の予習は必須。
 でも道を踏み外したくないならスルーすべき。どちらが幸せか良く考えてから踏むこと。お兄さんとの約束だ。

first edition : 03/03/12
ひとこと 素直に楽しめたのが嬉しいような悲しいような悔しいような、複雑な気持ちなのれす(ミドリさん口調、すなわち棒読みで)

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