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データ
タイトル 奏(騒)楽都市OSAKA プレイ時間 43時間程度
(クリア)
機種 PS ストーリー ★★★−−
ジャンル 小説的SLG キャラクタ ★★★★★
メーカー キングレコード グラフィック ★★★☆☆
TENKY サウンド ★★★☆☆
発売日 1999年 3月11日 ソフトウェア ★★★☆☆
定価 6,800円 ゲーム性 ★★★☆☆
購入価格 2,980円 世界観 ★★★★★
総合評価 ★★★−−
お気に入り度 ★★★★★
備考 一部評価を保留

本文
 川上稔氏が贈る分岐小説。と言ってもビジュアルノベルの類ではなく、あくまで文字媒体の小説。氏の構築する独特かつ強烈に濃ゆい世界で、たまらなく濃ゆい人々が、それぞれの思惑を持って繰り広げる祭を描いた小説。



 この小説の舞台は電撃文庫から発行されている奏(騒)楽都市OSAKAの数年後ですが、世界観と"己の詞を持たない少年"が主人公ということ以外はほとんど共通点がありません。

 しかし、その世界観の独特さが極まっているため、奏(騒)楽都市OSAKAはもちろん、それ以前の都市シリーズもあわせて読んでおかないと人々のやりとり(ノリ)が理解できないでしょう。プレイする方はゼヒ予習を。



 ではストーリー。都市シリーズの世界、とりわけOSAKAでは、詞や歌、舞といったものが重要視されています。

 この世界では現在、世界最大最強出力の広報塔"BABEL"が建造が進められており、今回、その初使用権がある条件で学生に譲渡されることになりました。

 その条件とは、用意された舞台"ネット広報戦争"で勝利すること。

 主人公は、ある広報団体のリーダーとしてネット広報戦争に身を投じます。"己の詞を持たない少年"が"詞"を発するための戦いに。



 システムは、最大6人の仲間と共に、1週間単位でネット新聞を作成して発行することになります。ただ、主人公たちは学生なので、学校生活もこなす必要があります。

 1週間は、平日と日祝日に別れています。

 平日の前半は学校、もしくはBABEL建造の手伝い、放課後はネット新聞の作成、雑務をこなし、学生寮に帰る、というループ。

 休日はひとり、もしくは知人をガイドにして大阪の街を散策し、ネタを探します。

 ネット新聞作成作業は、仲間に指示を出して3つの記事を収集、加筆修正、新聞を掲示するリンク先と契約することで達成できます。ここらへん、チップを使ったシステムもあるのですが割愛。

 確かに手順が多く、最初はもたつきますが、慣れてしまえばスムースに進みますし、攻略本の力を借りれば特ダネを得ることも簡単。日々の作業はそれほど苦にはなりません。



 物語はBABELを軸にした、企業から個人までの思惑を下地に、キャラ毎のドラマを丁寧に描いています。ただ、壊れた世界に生きる壊れたヤツらのやりたい放題を、ですが。

 なので、文章を額面通りに受け取る人にはツラい、というか楽しめないハズ。反面、それを受け入れ、それぞれの目的や信念を追っていければスゴく面白かったり。

 もちろん珍妙もしくは破天荒なイベント、型破りの世界、キャラ、言葉遊びの面白さだけでも充分に面白いのですが。



 新聞作成をこなし、イベントをこなすうち、物語はうねり、静かな終焉を迎えるのですが、ここにひとつ問題が。それは過程があまりに濃密かつ膨大なこと。要はイベント多すぎて終わらない。

 ゲーム媒体だから感じられるモノも確かに存在している半面で、それが新聞作成作業ではないという矛盾。その上で1プレイ30〜40時間、ルートが7つというのは…

 確かに、物語は非常に面白いですし、珍妙な世界は魅力的なのですが、ゲームとしてプレイするより小説にまとめてもらえる方がありがたい、とシッポを巻くボリューム。

 そんなワケで、ゲーム体力がない人、時間のない人にはオススメできない内容。ただ、覚悟があるならゼヒともプレイしていただきたい1作。秀作、傑作ではないですが、まぎれもない怪作なんで。

first edition : 99/09/27
ひとこと むせるような濃密さを持つ1作。

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