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データ
タイトル 俺の屍を越えてゆけ プレイ時間 60時間程度
/クリア
機種 PS ストーリー ★★★☆☆
ジャンル 世代交代RPG キャラクタ ★★★★☆
メーカー SCE グラフィック ★★★★☆
MARS サウンド ★★★★☆
発売日 1999年 6月18日 ソフトウェア ★★★★☆
定価 5,800円 ゲーム性 ★★★★★
廉価 2,800円 オルド ★★★★★
購入価格 5,800円 総合評価 ★★★★☆
お気に入り度 ★★★★★

本文
ストーリー
 平安時代の京の都に現れた鬼〜朱点童子〜。
 ある日、ひと組の夫婦が朱点童子討伐に立ち上がり、そのもとへ辿り着いた。
 しかし、夫〜源太〜はだまし討ちで殺られ、妻〜お輪〜は産まれたばかりの 子供を人質に取られ言葉で陵辱された挙句、どこかに連れ去られてしまう。
 朱点童子はお輪との約束を守り、子供の命を奪う事は無かったが、その代わりに ふたつの呪いをかけた。
 ひとつは、人と交わり子孫を残せないという種絶の呪い。
 もうひとつは、長くて二年しか生きる事ができないという短命の呪い。
# ただしそれだけ成長は早い。

 しかしこの血を絶やす事を惜しんだ神により、この子供に救いの手が伸ばされた。
 その救いとは、神と交わる事により子孫を残す事ができるというものである。
 このおかげで種絶の呪いを克服する事はできたが、短命の呪いは遺伝という形で 一族を苛み続ける事となる。

 プレーヤーは初代当主となり、神と交わり強き力を持った子孫を残し、いつか、 きっと朱点を倒し、一族の血がその呪縛から解き放つ礎となるのであった。



システム
 ネクキンの時も思ったんですが、桝田省治氏のデザインするゲームのシステムは なるべくしてそうなっていると感じます。

 特に説明書で書かれているシステム論なんかは、先に言った者勝ち的な部分が 多くあり、苦笑しながら読む事ができました。
 だって「いや、わかっちゃいるけどこうしました」って、普通はユーザーに届く事の 無い声が、標準添付の説明書に書かれてるんですから。



難易度選択
 このゲーム、RPGのクセに難易度が選択でき、経験値、お金、敵体力の配分、および 子孫のパラメータ設定であっさりからどっぷりまで4段階の調整が行われています。
 で、あっさりモードのクリア予想時間は20〜30時間…、どっぷりモードに至っては 100時間オーバーという恐ろしいまでの時間が必要になります。
 今回、大抵の場合はあっさりモードでプレイしたんですが、それでもかなりの時間が かかりました。
# いや、アイテムとか集めたり、ザコいたぶったりが結構楽しくって。
 で、一度だけどっぷりモードで子づくりをしたんですが、それがまたひじょ〜に弱い 子供が産まれちゃいましてね。
 これで獲得経験や金子は半分以下だし、敵の体力は強いときた日にゃ、いつになったら エンディングに辿り着くんだろう…、って恐ろしい考えになっちゃう事請け合いです。
 ってワケで、あっさりモードでやった人も一度はどっぷりモードで子供をつくって みる事をお勧めします。
 あ、そうそう言い忘れましたが、難易度はゲーム中にも変更可能です。



世代交代
 で、このゲームの幹がこの世代交代システムです。
 朱点童子によってかけられた短命の呪いにより一族の寿命は1年5ヶ月から長くても 2年程度に限られています。
 うちの一族はだいたい1年6ヶ月で死んでしまうサイクルになっていたので、最初の 2ヶ月は親から訓練を受け、1歳2ヶ月で交神の儀を行い子をもうけるというサイクルで 進んで行きました。
 交神の儀を1回執り行うと、それだけで1ヶ月が過ぎてしまう為、4人パーティで 進む場合は、2ヶ月で訓練を受け、4ヶ月を交神の儀で過ごし、2ヶ月で子孫に訓練を つける事になり、実際に戦闘に参加できる期間は10ヶ月そこそこしかなく、これは あっさりモードでゲームを進めた場合、5〜6時間程度に換算されます。
 その10ヶ月の間、生ある限り闘い抜き、その手に掴んだ僅かな奉納点を神に献上し、 自分より強い子孫を残します。
 それも唯一の悲願、朱点童子打倒の為だけにコクワガタより短い一生を全てつぎ込み、 そしてその生き様を、これから何代、何十代と続くであろう子孫に託し、そして子孫は 先祖より受け継いだ自分という財産の全てをなげうち、ただ希望を繋いで行くという 何とも救いの無い展開を見せます。
 つまり、ゲームを終了させるまでに産まれ死ぬ多くの者は、その短い一生を自分の為で 無く、ただ先に続く自分の遥か先の未来に託すという事になります。
 確かにこれは儚過ぎる感はありますが、このサイクルを単純に伸ばせば、 それは現実に人が歩んできた道に過ぎません。
 これこそが、本作で桝田省治氏が提示したかった事でしょう。

 非常に地味な戦闘と交神の儀の繰り返しを通して、先人が後進に遺してやれるモノ、 それを受け継いで生きる事の美しさが確かに存在する事を感じる事ができる。
 今、その末席に自分がいる事の誇らしさと、そして血を繋げて行く事の素晴らしさを 感じる事ができる。
 そう言った点で、今回の試みは確実に成功していると考えます。



スロット
 しかし、今のご時世に単純に戦闘を行うだけのRPGなんて打ち捨てられて当然の 代物です。
 で、俺屍の場合はどうかと言えば、敵との戦闘前にスロットが回転し、そこで確定した アイテムや術を獲得できるという方法を採っています。
 これはマップ上に配置されている敵パーティの種類によって固有のパターンを持たせて ある為、こいつらと闘えばもしかしたらお宝が入手できるかもしれないという目先の 目的と、敵大将を取り逃がさない様に闘わないとお宝がもらえないといいう部分に ゲーム性を持たせています。
 こうして書いてみると、ただそれだけの事にしか感じられないかも知れませんが、 これだけの事で鼻先に人参をぶらさげられている馬の如く戦闘に対する姿勢や苦痛が 和らぐ結果となっています。



フラグ分岐を廃したシナリオ
 シナリオは確かにありますが、ゲーム中盤に行き当たるまでにだいたいの事態は 読み取れてしまいますし、だいたい中ボスや水先案内人の黄川人(きつと)の話以外の 語りは全くありません。
 でも、それでいいんです。
 お話がその程度でも、前述した通り、生きる事と繋ぐ事について、何かしら考える 機会を与える事に成功していると思いますから。
 このゲームをすれば、こんな方法でも趣旨を伝える事ができるんだという事実を 非常に新鮮に感じられる事と思います。

 で、ですね。
 そんな事を言っておいて何ですが、今作も桝田節がキいてますよ。
 もう、横っ面張られまくりって感じ。
 辛辣な台詞や、アマちゃんシナリオが避けている情念、PSとしてキワな表現を 惜しむ事無く使われており、声優陣の好演もあいまってただただ呆然とするばかりの 寸劇が繰り広げられます。
 ネクキンのキャラ設定やシナリオを知っている人や、(私はやってないですが) リンダキューブをやった事のある人なら充分に理解できると思います。
 やって無い人にはチンプンカンプンかも知れませんが、とりあえず一度は触れておく 事をお勧めします。
# それで拒否反応を示す人も多いとは思いますが。



細部へのこだわり
 百四十頁を越えるマニュアルや、一族の者が命の散り際にこぼすひとこと、 京の都の復興とそれに伴うおまけ要素、神より遣わされたスーパーハウスメイドである イツ花の留守番電話などなど、よくぞここまでと感心させられる点が非常に多く みうけられます。
 どれも本筋とは特に関係が無いですし、ともすれば当然の様に流してしまうかも 知れませんが、ハタと手を止めてみてください。
 それによりどれだけの張りが、単調な戦闘と言う日常を彩っているかがわかる ハズですから。



オルド
 いや、やっぱ避けては通れないでしょう、オルドは。
 心血を注いで育てた愛娘も、わずか一年ちょっとで神の元に差し出さねばなりません。
 もうコレ、スンゲぇ嫌です。俺の娘をどこの馬の骨ともわからん神なんぞに 差し出せるかって〜の! って思うでしょ、当然。
 しかも、血を繋ぐ事が最優先な為に、どうしても、ねぇ…
 で、聡明そうな、より強い神を選んで交神するんですが、神とは思えぬ下品な輩が 多くて後悔することしきり。
 まぁ、それも慣れたら交神の儀が執り行われている1ヶ月のロマンスなんて〜のを 妄想したりして、それなりに楽しいんですがね。
# 頭の中で美女と野獣も裸足で逃げ出しそうな展開を用意してみたり。

 で、娘の時は口惜しいんですが、息子の場合は誇らしかったりするんですよね。
 もう「バーンっと! やっちまえ〜!」って応援したくなりますしね。
 しかも、神様に「お友達から始めましょ(はぁと)」とか言われた日にゃ、 「そんな遠回りしてられるほどの余裕はねぇ!」とか言いながらルパンが不二子に 飛びかかって行くアノ状態に絶対なってると思ってるし。
# 当然、デカいボクシンググローブで撃退されるが。

 本家オルドが薄いベールの裏での情事を連想させる鬼畜系(偏見)なのに対して、 俺屍のオルドはそう言った親の視点での複雑な心境や事に至るまでの過程を想像する 事でハートフル系から鬼畜系までのロングレンジをカバーする事に成功しています。
 いや〜、奥が深いぞ、交神の儀は!
# 意味が違います。



総括
 実際のところ、プレー全体の流れを支配する誕生と死以外の部分は、SFC全盛期に あった要素を丁寧に組み合わせていったものという感じです。
 ですから、その世代交代というシステムに興味が無い場合、そして何よりオブラートで 包んだ様な表現しか享受できない人は間違ってもやったら駄目だと言えます。

 ま、説明書にも書いてありますが、値段分は楽しめる仕上がっていると思いますので、 上で述べた様な点が肌に合わない人意外にならお勧めできると思います。
 ただ、非常に時間がかかりますので、その覚悟だけは必要ですが。

first edition : 99/07/13
ひとこと 確かには名曲だ。

遺言集
残る者の手を 煩わせるのは
本望ではない
わしの骸は 野良犬にくれてやれ


最後くらい ワガママを
言ってもいいだろ?
いンや、やっぱ、やめとくわ…


俺のために泣くな
朱点を 倒した時のために
涙は とっておけ


病気が よくなったら
また頑張りますから
今は 眠らせてください…


三三七拍子で 送ってちょうだい
じゃ、いくよ


私の使っていた物を 一緒に墓に
埋めるなんて もったいないコト
絶対 しないでちょうだいよ…


次に 生まれてくるときも
俺は『この』家に 生まれたい


いい家族だったよ
また会おうね


庭に柿の種を 蒔いたんだけど
もしも芽が出たら 水やっといて…


そこらのドブ川に
ブン投げといて くれりゃいいよ
俺の死体なんぞはナ


人は何かをやるために 生まれてくる
それが何なのか 気づくかどうかで
人生の値打ちは 変わると思うんだ
うちは それを探す手間が省けて
へへ 面倒がなかったナ…


できるなら おまえたちより
長生きして、一生を見届けたかったナ


痛い… あちこち痛い…
こりゃ、鬼と戦ってるほうが
なんぼか ましだ…


みんなで集まって 何やってるんだい?
出陣の準備は できたのかい?(コフッ)
ほら、早く…


ありがとね
みんなホントに ありがとね


今日は日が暮れるのが 早いなあ…
もう真っ暗だ…


近ごろみんなに
「人間が丸くなってきた」って
言われてたから…
ヤバイなって 思ってたんだ


あと100ほど 戦勝点があれば
きっと必殺の奥義が 覚えられたのに…
みんなに 披露したかったのに…

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