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データ
タイトル リトルプリンセス マール王国の人形姫2 プレイ時間 24時間程度
/クリア
機種 PS ストーリー ★★★★☆
ジャンル ミュージカルRPG キャラクタ ★★★★☆
メーカー 日本一ソフトウェア グラフィック ★★★★★
発売日 1999年11月25日 サウンド ★★★★☆
定価 5,800円 ソフトウェア ★★★☆☆
+1 3,800円 ゲーム性 ★★☆☆☆
PSone Books 1,800円 小ネタ ★★★★☆
購入価格 2,980円 総合評価 ★★★★☆
お気に入り度 ★★★★★

本文
 前作、マール王国の人形姫のエンディングから14年後の物語。
 マール王国の国王となったフェルディナンドとその后コルネットの間に生まれた娘、クルセイル・シェリー・マール・Qことクルルは12歳になりました。

 春休のある日、両親が新生カヘル王国へ招かれ不在となるや否や、鬼の居ぬ間に おてんば放題、『私の王子様』を探すためにさっそくお城を抜け出すのでした。
 そう、彼女こそ『女は行動力』というモットーの正統継承者なのです。

 そしてそれが、小さなクルルの大冒険の始まりでした。



 いや〜、前作から1年も経たずに発売されてこの完成度ですか…、頑張ってますなぁ。

 確かに、マップまわりのプログラムや、戦闘に使われている人形やモンスターの グラフィックは流用率こそ高そうですが、それにしても、シナリオ、戦闘は完全に 別モノですし、背景美術をはじめとしたグラフィックに対する力の入りようは尋常じゃ ありません。

 マップ移動画面で、キャラ、背景ともに大きく、美しく、そして個性的になったことは 非常に高い効果を上げています。
 特にマザーグリーンオレンジ村の人々のパターン数は多く、その芸の細かさに 感心することしきりです。
# もちろん、フェイス等もレベルアップしてますよ。

 前作の問題点のひとつ、ダンジョンマップの使いまわしについては、残念ながら本作でも おこなわれています。
 ただ、本作のダンジョンは横移動を基本としているため、位置の認識はしやすく、 前作のようなわかりづらさは感じません。

 まぁ、後半の流用の多さはさすがにどうかと思いますが、その分、他の部分に力が 入っていますから、力配分としては間違っていないと思います。



 戦闘は、前作のタクティカル風味から一新され、最大5人のコマンド入力戦闘に 変更されています。

 え〜、なんといいますか、この戦闘が本作のガンです。
 というのも、単刀直入に言って面白くない上に、人形や特殊能力扱いがシステムに 破綻を生んでいるんです。
# 2人パーティの期間が長いのもだが…

 今回、古代文明人の血を引くクルルチェロローゼンクイーン商会の技術力で 人形を扱えるクレアは、3体の人形をパートナーにする(装備する)ことができます。
 人形をパートナーとすることで、HPをはじめとしたあらゆる能力が向上し、 その人形が持っている特殊能力を使うことができるようにもなります。
 また、人形にはジュエルというアイテムを3つまで装備でき、その恩恵も得ることが できます。

 人形の特殊能力はイノチウムという通貨にもなる宝石を代価として使うことができます。
 要はイノチウムがMPの役割を含みます。

 また、仲間になる人形は、前作でコルネットと冒険をしたものを基本に、登場する 大半のモンスターも人形に姿を変え、その力を貸してくれます。

 人形にはレベルがあり、戦闘経験を積めばレベルアップし、より強い特殊能力を 使えるようになったり、パートナーに選択したときに上昇するパラメータが上がったり します。

 人形だけではなく、キャラクターにも特殊能力が使えるのですが、これはHPを代償に することで使用することができます。

 ま、基本的にはこんな感じですね。

 では、なにが問題かをいいますと…

 まず、戦闘難易度が低いため、人形を固定して戦闘してもさほど困らないこと。
# 回復系がひとりいれば充分。

 また、パートナーに選択した人形にしか経験値が入らず、かつ、人形のレベルによる パラメータ上昇値が大きいため、パートナーの人形を変更したくても、まずは育てないと 使い物にならないこと。

 仲間になる人形が多すぎて、使えない人形や余る人形が大半を占めること。

 さらに、戦闘で得られるイノチウムが多めのため、体力回復はもちろん、あらゆる特殊能力が使い放題に近い状態(≒MP無限化)になっていること。

 これは、それこそ敵を1ターンで殲滅できるくらいなんで、極端にバランスを崩す原因となっています。

 また、仮に殴りあいになっても、アイテムを使うより人形の特殊能力で体力を回復する 方が安くつくので、よほど傾いた方法を用いないとアイテムの存在意義すらピンチです。

 確かに、MPを廃することでバランス調整の期間を短縮できたかもしれませんが、 難易度を低く設定して破綻したのでは元も子もありません。
# 難しすぎるよりかは簡単な方がいいとは思いますが…

 また、人形をパートナーにできないメンバー、ランディソニアは、前半こそ強く 設定されているのですが、最終幕ではレベルが低いこともあって、かなり貧弱な印象を うけたのも寂しいところです。

 もう少し細かいところでは、キャラクターが攻撃時に発する掛け声や勝ち名乗りの 音声のあたりでCD読み込みが発生しているのもイライラします。
 ここはコンフィグを設けてON/OFFの切り替えが欲しかったところです。



 次にメニューまわり。

 これは、基本的に軽く、今回追加された要素の、かんさつノートクルル日記が 面白かったです。

 かんさつノートは、春休みの宿題という設定で制作される、人物、人形、モンスターを クルルやクレア独特の視点で分析したもの。
 ツッコミ形式で書かれた文書はクスリとさせられるものが多く、結構楽しめます。

 クルル日記は、現在の進行状況をクルルの感想を交えて書かれたもので、ヒントの 役割も担っています。

 ただ、メニューにはひとつだけ、階層が深いという問題点があります。
 特に人形の特殊能力を使う場合は、人形→人形選択→特殊能力選択→対象選択と 少なくとも4回の選択が必要になり、元のメニューに戻るまでに同じだけの回数 キャンセルをおこなわなくてはなりません。
# やはり2回のキャンセルで元に戻れるくらいが理想ですね。

 確かに人形により効果の差があるのでしょうが、ここはショートカットの採用や、 最も効果の高い特殊能力を選択できるようなメニューを別途用意すべきだったと思います。



 あと、仕方がないこととはいえ不自由に感じた点がひとつ。
 一度パーティを離れたキャラの装備が外れてしまうこと。
 確かに、外れないと問題なんですが、シナリオの性質上、すぐ戻ってきてしまうことが 多く、そのたびに装備と人形を整えるのは面倒でした。
 ここはパーティを離れる直前の設定を覚えておいて、可能な限りそれを復元するように するといった配慮が欲しかったところです。
# わかりにくくなるんで、採用はされにくいでしょうが。



 チョい文句が多いですが、要は、回復、装備といったサイクルには根本的な見直しが 必要だったと考えます。



 しかしですね、全体としてはやっぱり面白い、というか好きなんですよ。

 ストーリー自体は、前作の寓話的なエピソード中心の少しやるせない雰囲気の話から、 クルルというキャラを中心とした成長物語に路線が変わっています。

 これがもう、お約束ながらも笑いあり涙ありで、もしクルルと同年代の娘がいる人が プレイしたら、妙に涙腺がゆるくなるかもしれません。

 少年の成長を描いた物語は結構あると思うんですが、少女のそれは比較的少ないんで、 その分インパクトも高いと思います。
# あくまでゲームという枠内でですが。

 さらに、前作をプレイしていれば、キャラクターやエピソードがより楽しめます。

 たとえば、前作のコルネットとクルルと本作のクルルとクレアの関係を比較できたり、エトワールの変わらぬおせっかいさが見えたり、古代文明人であるシェリーが、 なぜこの時代に存在したかという疑問への解答を得られたりと、その他細々とした部分も 含め面白さが数段違うものになります。

 ただ、裏を返せば、前作をプレイしていなければ、その魅力の半分もわからないと いうことでもあります。

 ストーリー的な問題は、前作と同じで、全体の尺とキャラクターの数が合っておらず、 せっかくのキャラクターを描ききれていないところでしょう。

 特に、シナリオが章立てになっていることもあって、キャラクターイベントが性急に 過ぎていくのが勿体なく思いました。
 ここは、伏線を張ったりしながら少し遠回りして考える時間を与えて欲しかった ところです。

 まぁ、他のキャラクターを、クルルの成長を促すための小道具として定義するので あれば、これくらいでも充分かもしれませんが、まだまだ上を目指すことができると 思います。それこそFFXのギルガメッシュに届くくらい!
# せっかく、アホさ&憎めなさでギルガメッシュ級のキャラがいるんですし。



 闘う料理人!
 …いや、あの、なんだ、マザーグリーンという町には湖の恵み亭ってレストランが あるんですよ、もち前作から。
 そこの料理人と料理評論家の確執と和解や、終盤の料理人たちの生き様を見るにつけ、超龍厨士とか思ってみたり。

 本作の新キャラ、クルルを守る騎士、ランディ&ソニアの声優さんが、それぞれ 檜山修之氏&三石琴乃嬢というメンツで、思わずアニス!! と叫んでみたり。

 このやたらと好を思わせる設定もスタッフのひとつの遊びだと思いますが、本作には これをはじめとしたパロディ要素が随所に見受けられます。

 前作からいえば、マージョリー一家やエトワールとモミーハマーは、悪玉トリオグランディス一家のパロディともいえます。
# って、グランディス達もルーツは悪玉トリオだし、もう少し言えば西遊記まで届くが…

 この日本一ソフトウェアのパロディ好きはエンジェル・ブレードにまでさかのぼって 見ることができますが、正直、好も含めてイマイチ感が漂っていました。

 ですが、今回、少なくとも私は違う印象を受けました。
 例えば、クレアが後半入手する銃のグラフィックが、パレットライフルっぽかったり、 モミーやハマーが使う武器がZZガンダムのダブルビームライフルっぽかったりと、 ビジュアル面から攻めてきたり、ランディと勇者王の声優が同じことを利用して、ヘブン・アンド・ヘルなんて必殺技を用意したりとやりたい放題。
 個人的に、こういったやっちゃった系演出としてのパロディは大好きです。
# そういや、「江田島平八であ〜る」ネタもあったな…

 また、小ネタ関係はパロディだけに限らず、相当数用意してあり、小ネタスキーの 私としては、そういう端っこでも充分に楽しませてもらいました。



 マール王国といえばミュージカル、ということになっていますが、個人的感想では 味付けの域を出てはいません。

 そう考えると、今回は、シリアスなパートや劇中劇として使っている場面に効果を 上げていたと思います。

 これで、キャラクターを利用した軽妙な掛け合いが加われば、さらに高く評価できたと 思うのですが、そういう場面がなかったのは、ちょっと残念でした。

 まぁ、クルクルと良く動くドット絵を眺めているだけでも結構楽しいんですがね。



 戦闘システムまわりで文句が多くなってしまいましたが、最初に述べた通り、前作から 1年かからずリリースされたにしては随分とクオリティが上がっています。

 ボリュームも最低20時間は越えそうですし、様々な小ネタを拾っていくことを 考えれば、2回はプレイできる内容になっているかと考えます。
 逆にいえば、1回目のプレイではカバーできない限定イベントやナイトスポーノが 入手できないといった問題があるんで、キッチリとやり込むのであれば2回プレイする 必要がある、ともいえます。

 なにより、ほのぼのと楽しく、ライトに遊べる作品なんで、RPGやお約束系の話が 嫌いじゃなければ、楽しめるんじゃないでしょうか。

first edition : 01/10/30
ひとこと スタッフロールの加藤直樹氏って、久遠の絆の?

用語
 今回、固有名詞に対する説明が強烈に不足してるんで、追記しておきます。

クルル
 フルネームは、クルセイル・シェリー・マール・Q
 本作の主人公。かぼちゃパンツムチ〜リ系12歳。

クレア
 フルネームは、クレアトゥール・ローゼンクイーンエトワールの娘。
 クルルの親友。天然半分、計算半分の大道寺知代。食えない12歳。マッスル通

チェロ
 クルルの『王子様』というかくん。隠れマッスル通

コルネット
 前作の主人公。今はフェルディナンド王と結婚し王妃となっている。クルルの母。
 古代文明人と現代人とのハーフで、クルルの人形を扱う能力はこの遺伝子によるもの。

エトワール
 ローゼンクイーン商会会長。コルネットの親友で29歳。クレアの母。
 前作ではコルネットを助け、本作ではクルルとクレアをあらゆる面でサポートする。
 ローゼンクイーン商会の技術は世界一〜!

モミーとハマー
 過去、瀕死のところをエトワールに助けられ、その恩返しに人生を捧げる傭兵たち。
 このふたりもそうであるが、エトワールも異常な強さを誇っている。
 ちなみに、もみ上げ長いしモミー、葉巻吸ってるしハマー
 …確かに「少しはヒネれよ」と評したくもなるな。

ランディとソニア
 マール王国の騎士、なんて〜のはどうでもよくて、(ハオ)とアニス
 ランディが「白い髪の女はいるか?」といわないかとか、ソニアが「あたりまえ〜」 とかいいながら活火山麻婆豆腐をつくらないかとか、あまつさえミャオ味魔人に 取り付かれないか心配でなりませんでした。
 この話がわからない人は、クッキングファイター好をチェックすること。
# ウソ、チェックしなくていいです。

マージョリー一家
 古代文明人の栄えた時代から生きているという伝説の魔女とその部下たち。
 強大な力を持つものの、ヌケているため、恐れよりむしろ笑いの対象となっている。
 マージョリーと、ナルシストのクロウディア、魔法使いのミャオ、根性一筋のガオと、ニャンコ軍団から構成されている。

アクージョ一家(本文未掲載)
 マージョリー一家のライバル。
 こちらも、マージョリー一家ほどではないがヌケている。
 アクージョと、筋肉オカマのフォンフォン、妖術使いのニャンニャン、格闘娘のランランニャンシー軍団から構成されている。
# ちなみに、住んでるところは亜空城…
 また、フォンフォンの声優は若本規夫氏、ハマり過ぎである。

クッキングファイター好
 ある意味、日本一ソフトウェアの看板タイトル。
 そのGガンダムMr.味っ子を足して適当に割った風味に愛好者は多い。

エンジェルブレード
 日本一ソフトウェア制作、オンデマンド販売の戦隊パロディーもの。
 デキはともかく、結構好きです。岸上キャラ。
 ハムスターより廉価版が発売予定。

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