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データ
タイトル ファーストKiss☆物語 プレイ時間 11時間程度
/7クリア
機種 PS ストーリー ★★−−−
ジャンル ギャルベンチャー キャラクタ ★★★−−
メーカー HuneX グラフィック ★★★☆☆
発売日 1998年11月26日 サウンド ★★★☆☆
定価 5,800円 ソフトウェア ★★★★☆
購入価格 1,480円 ゲーム性 ★☆☆☆☆
総合評価 ★★★−−
お気に入り度 ★★☆☆☆
備考 一部評価を保留

本文
導入
 ひょんなことから、父の知り合いであった織倉家に居候するハメになってしまったアナタ…

 って説明書に書いてあるんだよ! 何だよそのひょんなことって!

 ちゃかして無いでストーリーを簡単に説明すると…
 高校卒業まであわずかだというのに父親の転勤が決まってしまった主人公は、 父親の知人である織倉家に1ヶ月のあいだ居候する事となった。
 だが何と、織倉家は未亡人とその娘二人という高校生男子にはオイシイ刺激の多い 家庭環境なのだった。
 そんな状況で送る高校最後の1ヶ月を主人公はどう過ごすのだろうか?



構成
 ゲームは2月1日から2月22日までの第1章と、2月23日からシナリオ最終日 までの第2章に分かれており、基本的にはアドベンチャー風の画面でイベントを観て、 たまに現われる選択肢を選ぶ事で進んでいきます。

 第1章の1日は基本的に、朝(→学校)→自由時間(→バイト)→夜といった流れに なっており、自由時間パートでは、物語の舞台である秋月市のマップから移動先を選び、 そこで起こるイベントを観る事で進んでいきます。
 プレーヤーが能動的にアクションを起こせる場面はココだけなんで、このパートで どれだけお目当てのギャルに会えたかが重要になっています。
 逆にそれ以外のパートでは、過去の行動や選択肢の内容により多少の分岐はあるものの 基本的に同じイベントが起こるようになっています。

 第2章は、第1章で仲良くなったギャルからひとりを選んで、そのギャル専用の シナリオを追う事になり、選択肢がたまに現われる以外は観ているだけで進んで いきます。

 ジャンル自体はアドベンチャーに分類されると思いますが、プレイ感覚はむしろ ビジュアルノベルに近いノリ…、とりわけTo Heartに近く感じます。
 更に言うと、ノベルじゃなくして設定を変えたTo Heartと説明すれば、 やった事のある人には理解しやすいんじゃ無いかと思います。



ボクが萌えなかった理由
 この作品、私は没入できませんでした。
 いや、インサイドしようとしたら何かにはじかれてモニタの外に意識が固定されて しまったと言った方が正解ですね。
(参考図書:島本和彦著 ワンダービット インサイダーケン編)

 んで、何にはじかれたのかを考えてみると、以下の二つの原因に行き当たりました。

 ひとつは周囲の人間の無関心。
 例えば、プレーヤーが打ちひしがれた気持ちになっているとしたら、普通、全員では ないにしろ周囲の人間が気を使ったり心配してくれるじゃないですか。
 でも、その部分の描写があまり無く、あまつさえ日々のドタバタイベントが 挿入されるんもんで、思わず「放っておいてくれ!」って叫びたくなる事がありました。
 えぇ、シナリオをたくさん入れて、データや分岐が増え、対応ができない程度の事は 理解していますよ。
 でも、それが私の感情移入を徹底的に拒んでいるのも事実です。
 そういう周囲の無関心が、シリアスなイベントでは特に気になってテンションが 下がる結果となり、その結果、キャラやシナリオに対して何の感想も持たないまでに なってしまいました。

 話は変わりますが、FX時にパンチラシーンであったであろうシーンが全然見えない 様になっているのも興がそがれます。
 いや、この際、見える見えないは本題では無く、無理やり入れていたサービスカットが その役目を果たす事無く残っているのが見苦しいって事です。
 どうせなら、この点もPS版に移植する際に変更して欲しかったですね。

 ふたつめ、画面に主人公がやたらと登場する事。
 このテの恋愛系ゲームの約束事として、「製作者は、主人公とプレーヤーの同一化に 可能な限りの努力をする」って〜のがあると思うんですよ。
 そりゃ、カットの構成とかでどうしても主人公を画面に登場させなければならない 場合もありますよ。でもそれは、主人公の視点からみて体の一部が入るとかギャルと 横並びになっている場合といった、どうしてもそのアングルでしか表現できない 理由がある場合に限ると思うんです。
 でもね、違うんですよ、このゲームは。
 主人公の視点から見て何の問題も無い構図の場合でも、しっかりと主人公キャラが 描かれているんです。それもかなり頻繁に。
 いや、主人公が描かれていてもいい場合はありますよ。
 でも、それは例えばFFの主人公の様に完全にプレーヤーと異質な存在として 定義した場合の事で、少なくともこのゲームにおける主人公はそうでは無いと 判断しています。

 ついでに言っておくと、本作中に多数用意してあるムービーにも主人公キャラは 登場していて、しかも喋りが字幕で表示されています。
 大運動会の時もそうだったんですが、ムービーに主人公の台詞だけ字幕が入るのって 物凄く不自然で馴染めません。
 それだけならまだしも(いや、もう充分ひかせてもらってますが)、そのムービーが 滅殺なデキなんですよね。
 もとになったキャラデザがイラスト向きの絵柄なんで、動画にする場合にリファイン されるのは当然の事だとは思います。
 でもね、違うんですよ、そういう次元じゃ…
 何て言うか、全体の骨格が無視されややぎこちない動きをするキャラクタ、人物と 物体の比率がおかしいといった状態で安定した作画が行われている為、見る人によっては 異形をみるような眼になってしまうんですよ。
 こんなんじゃ、ラストシーンも台無しだ! ってな程にね。

 まぁ、この様に人によっては全く問題にもならない点がいちいち気になり、感情移入が できなかった次第。って、言うだけだと簡単なんだが、この単純なシステムの ギャルゲで感情移入ができないって事はとてつもないマイナスポイントなワケで、 これでキャラもストーリーも駄目なら晒し首モンなんですがねぇ…



シナリオ短評
 このゲームには13人のヒロインがいて、ヒロインによっては複数のエンディングが 用意されおり、遊び尽くすにはかなり繰り返しプレーをする必要があります。
 とは言え、「チョっとそれ飛ばしすぎ!」ってくらいのメッセージスキップ機能が 搭載されている為、二回目からのプレー時間は1時間〜1時間半程度で収まるので、 総合時間としてはそれ程かかるワケではありませんのでご安心を。
 でも、正直「ビジュアルノベルの既読文章のスキップ機能があればなぁ…」なんて 思いますが…、まぁ、それはワガママと言うモンなんでしょう。

 で、とりあえずクリアした5人のシナリオについて感じた事などを書いておきます。



蒼月ひより:舞い降りた翼
 原因不明の病気に蝕まれ、2年以上の闘病生活を送る薄幸現在進行形の美少女。
 その彼女の心の支えになって、病気回復の手助けをしてあげようってなシナリオ。

 まず気になったのが原因不明の病気ってモノについて。
 シナリオを一通り終えても、病気の設定があやふやな為にいつの間にか悪化して、 いつの間にか回復しているって印象しか受けなかった。
 心因的な部分が大きく関与しているという部分も含め、もう少し病気に対する 描写をしてくれないと「病気を克服する為の力になる」っていう事に説得力が 生まれないのでは無いか?

 次に両親不在について、多忙だからっていう説明だけではどうも納得できない。
 特にBADエンドであんな状態になっているのに両親が影も形も現さないのは どうかと考える。
 もっと言わせてもらうと、少なくとも夏までは高校に通っていたはずなのに友人が 訪ねてくる事もないってのも「チョっとナンだな…」って感じである。
 高校入学以前の事は語られていないが、秋月市で生まれ育ったのだとしたら親友の ひとりもいるハズだと思うのだがどうか?
 この点、専用グラフィックが用意できなかったってことだろうがちょっと納得できかねる。

 あと、この娘が恋焦がれる自由を表す空や、そこに羽ばたく為に必要としている 翼と言う単語が、彼女の感情に乗ってやってこなかった。
 取説に書いてある「おとなしい性格」ってのが邪魔してんのかわかんないけど、 その憧れを激情のレベルまで持っていって、キャラクタにメリハリを持たせれば、 ずっとシナリオが引き締まった様な気がするんだが…、まぁ結果論やけどね。

 クリアしたシナリオ全体についてそうなのだが、とにかくキャラクタに焦点を あてるという点にとらわれ過ぎて、その背景にある設定がないがしろにしている様な 印象を受けた。
# 説明書のストーリー説明にひょんなことからなんて書いてあるのも今や納得です。

 キャラクタとしてはやさしくていい娘だし、イベント単体としてみていけば悪くは無い つくりになっていだけに、そういった不明瞭な点が残念でならない。

 あと、美穂シナリオをクリアしてからだと、やり方によってもうひとつの エンディングにたどり着く事ができるのであるが、個人的にはそちらの方が好みかな。



森村恭子:笑顔の約束
 ブルーブレイカー? って、まぁHunexやしね。

 何をしてもうまくいかない彼女は、自分を革命するという誓いを胸に役者を 目指して努力をしています。
 そんながんばり屋の彼女を応援して、オーディション合格の手助けをしてあげましょう ってなシナリオ。

 彼女だけしか見えない…、いや、他のキャラとのからみが無いって事なんだけどね。
 って事はだ、出会ってから終わりまで二人の世界って事になるんやけど、それって 何の深みもないやん。
 確かに演劇学校の先生や意地悪をする先輩も登場するんだが、全然活かしきって いない。
 先生は主に彼女を落ち込ませるだけに存在し、先輩はただ意地悪をするだけで、 他に何もしてくれない。これじゃ駄目でしょう。
 特に先輩については、彼女が意地悪をする理由、自分の眼前に現われた脅威として 恭子を認識しているという描写をどこかに混ぜないと、せっかく登場した意味が 無いやん?
 ま、そんな事を思ったシナリオ。



織倉香奈:同居人は16歳の女の子!?
 幼い頃に父親を亡くし、思い出の中の父親を美化し、父親以外の男という存在に 嫌悪感すら抱いている少女。ま、実際には複雑なお年頃って程度だけどね。
 そんな彼女との同居生活は、彼女の裸を偶然見てしまうという最悪の始まり方で あったが、ある日を境に彼女の気持ちは徐々に主人公に向かって行く。
 しかし、親友の綾華が主人公に恋人宣言をしたり、ファザコンである事が、 その気持ちを押さえつける事となるのであった。
 そんな彼女の心をあなたは癒すことができるのでしょうかってなシナリオ。

 でもオイラにはファザコンってのがどんなモノか良くわかんないし、彼女の父親が どの程度の男かもわからなかったんで、クライマックスあたりの心の揺れ具合が 全然伝わんなかったっス。
 でも、それ以外の部分はさすがメインヒロインだけあって、ボリューム、内容共に 全然OKっス。でも萌えまでは遥か彼方でしたが…



春日野美穂:落し物は何ですか!?
 3年前、高校入学を果たせないまま死んでしまった娘の幽霊。
 ということは主人公と同学年ってヤツで、実は主人公の親友である綾乃の同級生だった というストーリーラインで進むシナリオ。

 いや〜、成仏までの期間限定シナリオだよぉ。オイラにはコレは飛び道具だよぉ。
 憑依イベントや死神(CV.子安武人)を始めとしたお約束が充分に盛り込まれて いるので、安心して楽しめると思うよ。
 でも、5年後に…ってのはどうかと思うんだがどうか?

 この娘のエンディングは由希子との途中までの親密度によって変化するらしいんで、 最初は由希子を無視して終わらせ、次に由希子と同時攻略っぽく終わらせてみた。
 で、感想としては「どちらも観るべき所のあるデキ」と断言できるでしょう。
 特に由希子との同時攻略の相性は最高なんで、時間の無い人は分岐点(18日くらい?) のデータを取っておけば、時間を有効に使えます。
 ま、お薦めの進み方は美穂のみで終わらせた後、由希子メイン、美穂サブで進め、 由希子を一旦終わらせた後に、美穂の後半に行くってのが理想かと思います。

 また、美穂シナリオが終わったらひよりのもうひとつのEndingを観ることを お薦めします。



杉崎由希子:友達以上、恋人未満!?
 お・さ・な・な・じ・み・の・さ・ん・か・く・か・ん・け・い・っ!
 小学校からずっと一緒の学校に通う主人公と由希子、そして綾乃(♂)
 密かに主人公に思いを寄せる由希子、それを知っている綾乃。
 由希子に思いを寄せる綾乃、それを知っている主人公。
 ってなお約束トライアングルで送るシナリオ。

 とにかく綾乃の漢っぷりが最大のみどころであろうな。って〜か、結構このゲームは 男キャラがいい味出してるから、そこらへんを楽しめるなら結構いいカモ。
 いや、由希子の今までの危うい均衡を崩せないっていう心の揺れもあるんだがね。

 でも、シナリオ終盤で主人公が言い放った「通信空手」はシナリオライターの 感性を疑った。とてもじゃねぇけど、こんな最低なギャグで笑えねぇ…



総括
 ここまで中に入る事を拒まれたゲームはあまり記憶にありません。
 それゆえに、プレーヤーを世界に招き入れる事の難しさと大切さ、そして何より 自分がキャラクタだけでなくストーリーやその背景を一応気にしているらしい事が わかりました。

 いろいろとイタイ事ばかり書いてしまいましたが、文中にもある様にキャラクタの 掘り下げという点にでは非常にがんばっていると思いますし、ストレス無く短時間で 終わることができるんで、「オレはキャラ萌えに自信があるぜ!」って断言できる 強者はやってみてもいいんじゃないでしょうか。

first edition : 99/04/29
ひとこと お兄ちゃんネタが好きなら序盤は必須! つか水橋かおり嬢。

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