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データ
タイトル チョコレート♪キッス プレイ時間 12時間程度
/コンプ
機種 PS ストーリー ★★★★☆
ジャンル 王道青春萌えADV キャラクタ ★★★★★
メーカー デジキューブ グラフィック ★★★★☆
infinity サウンド ★★★★☆
発売日 2002年 2月14日 ソフトウェア ★★☆☆☆
定価 3,800円 ゲーム性 ★☆☆☆☆
購入価格 1,780円 九条姉妹 (*´д`*)激萌へ
総合評価 ★★★★☆
お気に入り度 チュッ(^ε^*)♪

本文
 2月14日、聖バレンタインデーに発売されたチョコレートの名を冠するギャルゲ。
 全国の勇者が発売日にコンビニでチョコレートと一緒に購入したであろう究極の 自虐系ソフト。

 ちなみに私はソフトのデキに不安を感じたことと予算不足、またテキスト系ソフトに 飽き飽きしていたこともあり勇者への道をあきらめてしまいました。
 まぁ、これはLaLa♪Luというキラメロ出身者が多数参加したユニットが声優を 担当するということも念頭に入れての決断だったワケですが、まさか半年後の真夏、 バレンタインと対極にある時期にこの判断が間違っていたことを思い知ろうとは…



 この物語は、主人公、有崎尚斗が通う男子校の校舎が30年振りの記録的な大雪で 倒壊する場面からはじまります。
 復旧までの間、近くの女子高に通うことになった尚斗は、そこで幼馴染の椎名麻里絵を はじめとする個性豊かな少女たちと出会うことになります。
 期間は1月15日から2月14日までの1ヶ月間。
 最終日の聖バレンタインデーにどのような結末が待っているのでしょうか?



 ゲームの方は典型的な紙芝居アドベンチャー。
 1日のうちに幾度か表示される選択肢を選びテキストを読むだけ。
 場所移動やデートの選択肢では対象キャラ名が表示されていて、攻略に際して考える ことはほとんどないという思い切った仕様になっています。

 システムは、フルボイス、1ブロックで15ファイルのセーブが可能、とここまでは いいんですが、メッセージスピード固定、既読判定なし、R1ボタンで高速表示、 R2ボタンで強制スキップ、L1ボタンでシーン単位のバックログ、選択肢での誤選択に 対する配慮なし、と昨今の同系ソフトと比べてやや見劣りするものになっています。

 また、フラグやシナリオ管理がなっておらず、主人公が知らないハズの単語が急に 飛び出したり、身に覚えのないイベントが起こったりと、ぶっちゃけソフトウェアと してのレベルは低い方だといえるでしょう。
 それこそ、1500シリーズ系の方が良くできているんじゃないかというほど。



 と、システム面だけみるとちょっと残念な感じなんですが、本作はこのマイナス面を 補って余りあるものを持っているんです。

 それは、作品の中に流れる空気。言いかえれば雰囲気といでもいうものです。
# 80年代学園少女漫画的な味わいとでもいいましょうか…
 たとえば、戸部淑嬢特有の柔らかな色彩で動きを伴って描かれたキャラ、多彩でこそ ないものの的確に使われている音楽、プレイを重ねるごとにみえてくる優しい人間関係、 そこにイヤなヤツがいないという事実、そういったものが積み重なり、格別の居心地の 良さを生み出しています。それも、私がプレイしたギャルゲの中でトップクラスの。



 お話の方は、5人のメインヒロインと4人のサブヒロイン、合計9人分のルートがあり、 そのうち、椎名麻里絵と一ノ瀬紗智九条弥生九条御子橘夏樹入谷結花の3組は 物語の核を共有しながら、どちらの視点に立つかで違った面をみせてくれます。

 …う〜ん、どう説明していいのかわかんないんで、とりあえずキャラとお話を簡単に 書いてみます。


■椎名麻里絵(メインヒロイン)
 中学に上がるまで尚斗と共に過ごした幼馴染。
 もうひとりの幼馴染、みちろーと同じ中学に上がり、恋人同士となったはずが、 みちろーは遠く離れた高校へいってしまう。
 一方、彼女の親友、一ノ瀬紗智は、そんなみちろーに対する反発から、麻里絵と 尚斗をひっつけようと実力行使にうつる。
 紗智の強烈な監視下で送る1ヶ月間の仮面恋人の結末は、というお話。

 こう書くと三or四角関係修羅場バリバリといった感じですが、本編にみちろーが 登場しないため、非常にライト。つか収まりが悪い。
 お話を重くしないための不作為か、開発の都合で削られたのかはわかりませんが、 ちょっと肩透かしでした。

■一ノ瀬紗智(サブヒロイン)
 腐女子。終わり。嘘。
 衛星ハッキングまでして尚斗と麻里絵の行動を追跡するわ、蛙グッズコレクターだわ、 空手有段者だわと共通点のない設定を持つキャラ。
 麻里絵の親友であるが、みちろーが好きで、そのことを麻里絵も知っている。
 自分の理想のカップルであった麻里絵とみちろーの現在の関係を快く思っておらず、 それゆえに尚斗と麻里絵をくっつけようとするが、同時に、自分の振り払えぬ感情を 持て余してもいる。
 麻里絵ルートでの小姑的うるささと、ヒロインルートの思いつめたような表情との 差が激しいキャラ。

 …かと思えば、ギャグパートでは、ひたすらやおい方面を突っ走り、藤本綺羅先生と 組んで宮坂×尚斗を推し進めるというありがたくない一面も持つ。

■九条弥生(メインヒロイン)
 華道の家元である実家と衝突してプチ家出中の少女。
 部活でバンドのボーカル&ギターを担当しているが、ピカイチなボーカルに対し、 ギターの腕は散々。
 最近、リードギターに欠員が出たため、少しかじったことのある程度の尚斗が 引きずりこまれることになる。
 非常にパワフルな男前であるが、それは幼少より厳しくしつけられた反動でもある。
 現在は、可愛がっている妹の御子に華道の道を譲り、やっと見つけた音楽の道を 目指しているが、それもナカナカうまくいかないようである。

 キャラとその背景、展開、エンディング、どれをとっても最強のデキ。
 もう、激しく萌えますよ。

■九条御子(メインヒロイン)
 花と華道を愛する弥生の妹。
 チビでおかっぱ、おっとりと、姉とは対照的に保護欲を刺激してくるロリキャラで、 尚斗でなくとも頭をなでなでしたくなること請け合い。
 ごっき〜が気絶するほど嫌いで、最近はアメリカンまねきネコにご執心。
 プチ家出中の姉を尊敬しており、連れ戻そうと考えているが、生来の気の弱さと ある事情がそれを邪魔している。

 単純な萌えという観点からみれば姉を凌駕する素養を持つが、総合的には及ばず。
 偉大な姉を持つと苦労するな…

■橘夏樹(メインヒロイン)
 ファンクラブまで存在する演劇部の花形。要はヅカキャラ。
 本人は裏方志望であったが、廃部寸前だった演劇部を立てなおすために舞台に立ち、 そのままズルズルと3年生になっている。
 脚本の仕事をやりたい気持ちを抑え、このまま卒業して廃部寸前のころに逆戻り することを憂いながらも、いままで頑張ってきた仲間、とりわけ入谷結花のために 不満の残る舞台に望もうとしている。
 物語は、尚斗が夏樹の落とした自作の脚本を拾うところから始まる、(いい意味で) クサい青春モノ。

 無類の可愛いもの好きで、その容姿がコンプレックスになっているという、個人的 ツボキャラであるが、それでも弥生には敵わなかったという…
 いや、萌えましたが。

■入谷結花(サブヒロイン)
 夏樹信者のお子ちゃま。こ〜ひ〜みるく娘(謎)
 高校1年生ながら天才的な頭脳と的確な判断力、実行力を持っているまさに完璧超人
 廃部寸前だった演劇部を救った立役者でもある。
 夏樹と同じく演劇部の行く末を憂いているが、それ以上に、夏樹の舞台を成功に導く ことを願っている。
 物語は、結花と夏樹、お互いを敬うがゆえのすれ違いを描くことになる。

 この娘は、夏樹ルートではただのうるさい小娘であるが、本ルートに入ると一気に 化ける、メインヒロインでないことが心底惜しまれるキャラ。

■天野安寿(メインヒロイン)
 天のアンジュ…、天国の天使…、ま、自称天使の天然/電波系少女ですわ。
 とはいえ、登場翌日からいきなり不自然なことが起こるんで、ただの不思議少女だと いう認識は生まれないと思いますが。
 そんなワケで、彼女だけは尚斗以外のキャラとこれといって絡むことはありません。
 また、お話的にはスラップスティックコメディをメインにヒザまくらとカレーで 構成されています(謎発言)

■香月冴子(サブヒロイン)
 麻里絵が所属する写真部部長ということで知り合い、尚斗にモデルを依頼しながら なぜか「男のヒトって…黒い下着って…好き?」とかいうエロトークに走る先輩。
 一応、エンディングでその真意を聞くことはできるんですが、まぁ、細かいことは 考えずにエロトークを聞くのがよろしかろう。
 本当の意味での箸休めキャラですし。

■藤本綺羅(サブヒロイン)
 腐女子。終わり。嘘。
 幼稚園から大学、教師と、人生のほとんどを同学園で過ごしている究極の箱入りで、 それゆえに 男性との付き合いに慣れていない。
 というのは過去の話、確かに男性慣れこそしていないものの、天然か計算か、スグに 男子生徒を操る術を身に付けてしまい、あまつさえの本性に目覚めて尚斗を狙う。
 普段は生徒から頼られる先生の鏡だが、紗智と組んだときだけは腐女子の本領を発揮。
 時には下僕13号の宮坂を使ってやおい小説朗読会が始まることも…

■宮坂幸二(サブキャラ)
 尚斗の悪友で、女々エンドを担当。声優は石田彰氏。
 序盤の印象こそイマイチでしたが、プレイする毎に株が上がっていったキャラ。
 なんせ、チョコパンひとつで各種情報から自分の貞操まで売り渡す、ある意味 絶対的な公平(バカ)さと、困ったときには文句をいいながらも(面白がって) 手を貸してくれる男気(?)を持っているんですから、オイシ過ぎです。
 それにしても、コイツが、海辺で筋肉モリモリのお兄さんに追っかけられるバイトに 参加したのか、非常に気になります。当然捕まったかどうかも含めて。

■有崎尚斗(主人公)
 本作の主人公でかなりイイヤツ。しかもギャルゲ主人公としては理想的なほど。
 男には強いが女には押され気味。そのおかげでやおいネタのターゲットに…


 導入部と安寿は別として、内容がコレといって突飛でもなくお涙頂戴でもないお話、 ○痴のような行動も妙な語尾があるワケでもないキャラ、それらを寄り添うかたちで 構成するやり方は、非常にオーソドックスな手法だといえるでしょう。
 しかし、ギャルゲバブルがハジけて以降こうした手法でこれだけの雰囲気と萌えを 実装した作品にはついぞお目にかかったことはありません。

 そういう意味で、本作の方向性を決めたスタッフとシナリオライターの仕事には 敬意を表したい思います。



 冒頭に書いた懸念項目、LaLa♪Luも結果的には全然OK。
 ぶっちゃけ技量は全然足りませんがそれがむしろ雰囲気にマッチしていましたし。
 まぁ、ウィザーズハーモニーまで覚悟していた割には、というのもあるんですがね…
# OPテーマ、YOU&Iはヘビーローテになりました。ヘタですが。



 雑誌掲載時に気になっていたキャラの顔色の悪さも印刷の問題だったようで、画面を 見る限りではノープロブレム。
 むしろ、バストアップ、イベント絵ともに丁寧な仕上げが好印象でした。
 特にバストアップは、豊富な表情パターンと大胆な動きのついたものを組み合わせて コロコロと変化させることでキャラの性格をあらわすことに大きく貢献していたと 思います。
 また、ヘボくなりがちな実写背景についても、キレイとはお世辞にもいえないものの 見苦しさは感じませんでした。
 ただ、素材のせいか加工の結果か真冬というより晩秋を思わせるものが多かったのは ちょっと気になりました。



 あと、特筆すべきは各ヒロインが歌うエンディングテーマでしょう。
 要は別ボーカルの同じ曲が9曲+インストの計10曲入っているんですが、なんと 途中でこっ恥ずかしいことこの上ないモノローグを読み上げるんです。
 もうこれは転がるしかありません。カユいけど快感ってな感じで。
# 締めの「〜役〜でした チョコレート♪キッス チュッ」ってのはサムかったですが。

 これからプレイされる方はいつでも転がれるようにクリア寸前のデータを残しておく ことをオススメします。
 ホント、サウンドテストがないことが悔やまれます。



 グラフィック至上主義のギャルゲにおいて、少人数制作のシワ寄せがシステムに くるのは当然のことで、本作においてもそれが例外ではないことは前述の通り。

 しかしその反面、強力な萌えと独特の空気を生み出すことで値段以上の価値を持つに 至っているとも考えます。
 ですから、もし安価で見かけることがあったら手に取ってみることをオススメします。
 特に、星の丘学園物語 学園祭あたりの雰囲気が好きならゼヒ。

first edition : 02/08/25
ひとこと 御子の頭をなでなでしてぇ…

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