index / Impression
データ
タイトル キャプテン・ラヴ プレイ時間 15時間程度
/コンプ
機種 PS ストーリー  ★★★★★
ジャンル ラヴ・バイブル キャラクタ  ★★★★★
メーカー TOSHIBA EMI グラフィック  ★★★★☆
Rit’s サウンド  ★★★★☆
発売日 1999年 3月11日 ソフトウェア  ★★★☆☆
定価 5,800円 ゲーム性  ★★☆☆☆
廉価 1,500円 エンクミ ±★★★★★
購入価格 2,980円 総合評価  ★★★★☆
お気に入り度 (*´д`*)圧倒的…

本文
 ファミ通の新着ゲーム通信で一目惚れ。
 正義のヒーローにラヴ敵の秘密結社にラブっていう発音の違いを持たせている点、 ただそれだけをみても「ちゃんと考えてつくってるんだ」って思えたから一目惚れ。
 キャプテン・ラヴ購入確率120%

 ファミ通のFACEでハートブレイク。
 かねてから生理的嫌悪を抱いていたエンクミをヒロインの声優に起用したんで ハートブレイク。
# しかしプレイ後は全然大丈夫に…、恐ろしい…
 キャプテン・ラヴ購入確率 50%

 電撃PS D16で幻滅。
 体験版をやって、バカバカしさと丁寧さを併せ持ったつくりを見るも、エンクミの 声と演技にやはり幻滅。
 キャプテン・ラヴ購入確率 30%

 BBSで開眼。
 以下の激亀仙人氏の書き込みを見て開眼。

 > ヒロインの方を振りたくなる(しかしゲームオーバー)ような仕掛けとして、
 > エンクミを使うとは、まさに確信犯ですね〜☆

 キャプテン・ラヴ購入確率100%
 ただし¥3,980以下で発見した場合に限り。

 京極で購入。
 京極で¥2,980で売ってるのを発見し即購入。



 以上に示した様なプロセスを経て購入に至ったキャプテン・ラヴ。
 箱を空ければスンゲぇデキでやんの。

 まず、説明書。
 ストーリーや操作の説明は当然として、キャラクタプロフィールから雑君保プの 4コマ漫画(ゲーム中で使用されているのの流用だが)など、お楽しみの要素を 詰め込んでおり、手持ちのゲームの説明書でもかなりレベルの高いデキと言えます。
# 主人公のプロフィールに書いてある尊敬する人で吹き出した。

 んで、ゲームを始めるとプレーヤーがラブラブ党に入党する場面から始まり、 そこで名前等の入力と5種類のラブラブ党入党アンケートに答える事となる。
 後で説明書を詳しく読んだら書いてあったんだけど、このアンケートは出演声優にも 実施されていて、何とOPムービーに反映されているのだ。
 で、これだけでは芸が細かいなぁ…、程度の感心で済むのであるが、関智一の回答が イカしてるのでたまんない。
 例を挙げると…、

 恋人とは何? :餃子屋の娘
 理想の恋人は?:抱けるお母さん
 告白の言葉は?:レッツ・エンジョイ・メイク・ラブ

 こりゃ全部観たいでしょう? ねっ、観たいでしょう? たとえエンクミの歌を 聴く事になっても、ポップな音楽とテンポの良いムービー、そして何より関智一の回答を 観る為なら! …って製作者の思うツボですか?



 で、ゲームの方は、1話完結形式のアニメを30程度のシーンに分けて、途中に 選択肢や戦闘を挟んだだけのもので、基本的にあまりする事はありません。
 近いシステムはメタモルX等のフェイクラフト作品ですかね。
# まぁ、今作は、ヒロイン紹介→OP→シーンって感じでEDも次回予告も無いですが。

 こ〜ゆ〜つくりのゲームでは、キャラとストーリーが命となるワケですが、これがもう 悶絶モンのデキになっています。

 まず、サブキャラがスンゲぇ立っているんです。
 主人公の親友であり映画キチGuyかつつかみどころの無い性格の杉江範宣 (CV.関智一)、手が早いのが玉に傷である親友の近藤香織(CV.小西寛子)、 ヒロイン永堀愛美(CV.エンクミ)の父であり、大学教授、しかしてその実態は ラブラブ党党首である永堀義光(CV.八奈見乗児)、変身前、変身後共にライバルと なる幸長幸一(CV.関俊彦)などが設定、台詞、演技など隅から隅まで 光り輝いています。
 もうこの点については、百聞は一見に如かず、とにかくやってみるしかありません!



 次に、ヒロインの使い方も心憎い、憎すぎます。
 私は声の入っているゲームはコンフィグでOFFにできる場合でも、基本的にONに して遊んでいます。
# ここでついでに言っておきますが、このゲームはフルボイスではありません。
 そうなると当然、このゲームの場合はエンクミの声が聞こえて台無しになるハズです。 …いや、ハズでした。
 そう、最初に語られるヒロインとの出会いから相思相愛になるまでのプロセスが 非常に上手く、エンクミの声にも関わらずとすんなりと墜とされてしまったのです。
 それだけでも「やられたっ!」って思ったのに、第2話以降でエンクミがヤキモチを 妬く演技をする事により鬱陶しいんじゃ効果が生じ、ラブラブ党の刺客の罠にハマりに ハマって、また「やられたっ!」って思う事になったんです。
 そう、狙ったかどうかは別として結果としてゲームバランスの調整にエンクミが ひと働きしているんです。
 だって、そうでもないとヒロインが可愛くって仕方ないじゃないですか!  もし、脇役を固めてるレベルのCVがヒロインの声をあてていたら、絶対浮気なんか するもんかっての!
 そう、愛の最終難関はヒロインが持っているその声なんですよ!  そこまで全てひっくるめて好きにならないといけないなんて…、スゲェ! 凄すぎる!
 相手の良い点も悪い点もひっくるめて受け入れる、これこそ愛なのか〜!?



 そしてまた、そのテキストレベルの高さにも驚かされました。
 特に2話までは島本和彦の漫画よろしく屁理屈めいているくせに納得せざるをえない 台詞や常識の範疇のはるか外にある日常を当たり前の様に思わせる展開、巧みに主題を すり替えていく禅問答の様な会話、詳しくない人間でもクスリとさせる映画ネタなど とにかく上手い、そう表現する以外に言葉が見つからない程です。

 でもね、そのテキストの内容も2話の終わりの頃から内容が変わってきます。
 それまでのおちゃらけに本音を混ぜてくる方法は同じなのですが、徐々に本音の比率が 上がってくるのです。
 それはつまり、おちゃらけがフェードアウトしていき、その結果バカの要素が 駆逐されていくという事です。
# いや、比較して…ですよ、慣れもあるんでしょうが。

 えぇ、私もただのバカゲーだと思ってこのゲームを買ったクチで、バカの部分を楽しむ 為にお金を払いました。
 で、見事に裏切られたワケです。ですが、全く不快にはなりませんでした。
 何故なら、その頃にはこのゲームにおけるバカの要素が主題への導入であり、 また主題により重くなりがちな雰囲気を和らげるための緩衝材であると理解して いたからです。

 その主題こそ愛、とりわけ愛する事の喜びと痛みです。
# 別の取り方も当然できるが、今回はこのスジで話を進める事とする。

 主人公が女性から受けたトラウマが引き金となって入党したラブラブ党、 このラブラブ党はいわば愛に臆病になったり、裏切られたと感じ殻の中に閉じ篭った 臆病者の集まりです。
 この愛の敗者集団を問題提起者として、プレーヤーに愛について考えさせるのが このゲームのやろうとしている事です。
 普通のテンションでは、その重い主題の為にプレーヤーが引いたり押しつぶされる 可能性があります。
 そこで余計な部分でプレーヤーの気持ちを沈ませない為にバカの導入となるワケです。

 友人が常に真摯である必要は無い、敵組織なんて穴だらけで一介の大学生に潰せる 程度で良い、ライバルもヌケサクで結構、だが言いたい事は言うぜ!
 コレ、コレなんですよ、この切り口をバッサリと変えた部分がこのゲームの本当に 凄いところなんです。

 愛…、恋人への愛、男同士の友情、女同士の友情、男と女の友情、同性愛、家族愛、 私が通ったストーリーだけでもそれだけの愛について語られており、そのこだわり具合は ハッキリ言って感動モノです。
 特に、ここで注目すべきは最後に家族愛に帰結しているところです。
 えぇ、締めとして当たり前過ぎるでしょう? 生まれて初めて受けるであろう愛、 そして紆余曲折を経てたどりつく愛、多くの人間が最も長く触れるであろう愛、 そこへの帰結は愛を語る上では必然です。
 でもね、何の考えも無い人間がやったとしたらヒロインとの愛に終始して、結局 他のどんな愛も語られる事はなかったと思うんです。
 考えられ、詰めこめるだけの愛について挑み、最後に家族愛までたどりつく、その 主題への執拗なこだわりに惜しみない拍手を送りたいと思います。



 その他、遊びの部分…特にフリー行動でバイトを選んだ時の雑君の4コマや、条件を 満たす事によって観る事のできる愛美とヤマガタくんのラブラブ党日記、また、 フリー行動で選択する行き先によってサブシナリオが起こったり…が充実していて 一度や二度では遊び尽くせない様につくってあります。
# 初プレーで、雑君の4コマの為にバイトを選択しまくり、同性愛シナリオに突入した人多数とみるがどうか?



 あと、忘れるところでしたが、システム面のふたつのウリについて言っときます。
 ひとつはファジー選択システム
 これは特に言う事はありません。なんせ、入力に時間制限がある以外はただの 4択でしかありませんから。
 まぁ、ただの4択では見栄えが悪いから演出を派手にして時間制限を付けよう 程度にしか思えません。コレをウリにするのは無理がありますね。
 もうひとつは論激バトル
 コレは、要約すればラブラブ党の怪人とタイマンで口喧嘩しようってヤツで、相手の 主張にツッコミを入れてヘコまそうってモンです。
 展開が決まりきっているので奥の深さは全くありませんが、どれを選べば良いか 何となく分かる選択肢や、追い詰められてもたった一撃の論激で相手を打ちのめす事が できるバランス(当然逆も然り)などがよくできており、結構楽しませてもらいました。
 最初の方はコツが掴めず、負ける事もありましたが、3話以降はシナリオ上仕方が無い 場合を除けば無敗伝説を築けましたしね。
 ま、どちらもシステムは取りたてて良いワケではありませんが、載っているデータが 面白いので、ゲームの面白さに良い影響をもたらしているといえるでしょう。



 以上に述べた様に、外装から想像する以上に、とにかくエンターテイメント性に富んだ 骨太な作品に仕上がっているので、機会があったらゼヒやってみるベシ!
 特に島本和彦氏や今川泰宏氏の作品が好きな人なら感度ピッタシ保証済みなんで、 そのスジの人は必須だ!
# ラブラブ党員10ヶ条とかに反応する人とか。

 にしても、繰り返しプレーしたいゲームがまた1本増えたよ。嬉しい事にね。

 締めとして、劇中で使用された言葉を添えておきます。
 何せこの言葉がこのゲームを表すのに一番良いと思いますから。

フザケんな!
オレはただバカやってんじゃない!
マジメにバカやってんだ!

first edition : 99/05/05
ひとこと 全ての人々に(キャプテン・)ラヴを!
(キャプテン・)ラヴの共産化を!

index / Impression