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データ
タイトル てんしのかけら プレイ時間 18時間程度
(ED、きおくのかけらコンプ)
機種 Win ストーリー ★★★☆☆
ジャンル まったりNVL キャラクタ ★★★★☆
メーカー 株式会社イオ グラフィック ★★★★★
発売日 2003年10月 3日 サウンド ★★★☆☆
定価 5,800円 ソフトウェア ★★★☆☆
購入価格 5,800円 ゲーム性 ★★☆☆☆
まったり ★★★★★
総合評価 ★★★☆☆
お気に入り度 ★★★☆☆

本文
 記憶の修理屋。こう書くとオカルトめいたものかと思われるかもしれない。

 ちょっとした失せ物、忘れた人、心残り。それらが原因となり、時に切り離され、時に苛まれ続ける記憶。大なり小なり人が持つそういった記憶を思い出させ、清算させることで、壊れた過去を想い出に昇華させる。いってしまえば探偵兼カウンセラー、それが本作における記憶の修理屋。主人公、麻生郁のもうひとつの顔。

 今の郁はというと、大学こそ卒業したものの教員枠からあぶれた冴えない青年。過去の経験を活かせば仕事くらいナンとでもなりそうだがそれは置いといて、本作は郁のもとに私立萌黄女子高等学校の臨時講師の話が転がり込んだところから始まる。それは4人のヒロイン、4つの記憶のかけらの物語。



 システムはオーソドックスなテキストアドベンチャー。Flashで動いてるがそれを意識させることは少ない。言い換えれば結構普通。DirectXアプリでないことからフルスクリーンモードは解像度変更ではなく画面のストレッチで実現。しかし違和感は意外と少ない。あとはメッセージスピードの記憶ができないことを除けば、セーブデータが25ヶ所、履歴もみずのかけらより使いやすくCGモードも実装、ヒロイン4人のみフルボイス、と相応の体裁は整っている。



 テキストに関してはこれといった特色は見出せない。ただ、全体を通して誤字が多い、文章がおかしい、整合性がとれていない、既読スキップできない、などといった凡ミスが目立つ。これは発売後しばらくしてのパッチを適応してもまだまだ残っているのでもうチとしっかりして欲しかったところ。特に後半のチェックが怪しいのは見切り発車ではないかと不信感すら覚えてしまう。



 シナリオは過去に負った心の傷がメインになっているためやや重め。ただ、作中での郁は記憶の修理屋として無能、というか行き当たりばったりでそのあたりの説得力や掘り下げには疑問が残る。ナンというか記憶の修理屋というものがネタでもダシでもなく調味料未満の役割しか果たしていないというか。場合によってはなくてもかまわないというか。

 この傾向は七使さなルートで顕著で、記憶の修理屋としての調査はなにひとつ実を結ばず、瓦礫ひとつと師匠のアドバイスだけで全てが解決しているありさま。せいぜいさなを口説き落とす道具にしかなっていない。確かに記憶の修理屋としての郁は二枚目半くらいが理想だと思うが、コレはサスガにいただけない。

 ただ郁の見せ場が全くないかといえばそうでもなく、過去、特に今伊叶ルートでの回想は非常に良かった。それこそ本編を食っちまいそうなくらい。コレはヒロインにスポットを当てるか、記憶の修理自体にスポットを当てるかの違いになるのだが、サイドストーリーとして記憶の修理屋に関するオムニバスは見てみたい。例えばかけらファンディスクの展開として。

 もひとつ不満、というか妙に感じたことを。それは演出としての音楽が軽視されてるように感じたこと。例えば平時に無音状態が目立つこと、例えば山場で曲が引っ込んだままであること。後者は出力環境に問題があるのかもしれないし音声との関係もあるが、それでも曲のアレンジやスクリプトでの改善ができたのではなかろうかと思う。



 とりあえず引っかかったのはそんなトコ。あとは学園祭を背景に、たかみち氏の描く魅力的なキャラと草薙の美麗な背景、優しい人々の生み出す空気を心地良く感じながらプレイすることができる凡作以上佳作未満。比較的小さなできごとが発端となっているためともすれば地味に感じるかもしれないがそれこそが魅力でもある。むしろ叩きつけるようなバッドエンドにビックリするくらい。

 シナリオは天乃翼ルート/Very Good Endingが全体を通して納得のいく仕上がりでイチオシ。嫌味のない完璧超人とそこに至る脅迫性障害(全員そうだが)のギャップ、混乱、解放がうまく処理できていたと思う。そして新生翼くんの押しの強さにうろたえる郁に萌え。

 逆に第一ヒロインとして配置されている七使さなルートは、やや飛び道具気味なのと、前述の行き当たりばったり具合が納得できなかった。キャラ的には無表情系で好きな方だし(というかど真ん中方面)、流れだけ追ってくなら綺麗な話なんだけど。

 春の日向のようなねぇさん、といっても郁と大学で同期なのだが、の嶋凪夕日ルートはそのまったりマイペースなキャラに尽きる。それがどれだけ計算に基づいた行動かは別として。また、生徒視点ではないところから『学園祭モノ』しているのも良かった。このあたりの追体験を郁というフィルターを通してもう少し描いて欲しかったな、と思うくらい。

 本筋の方は、後半をファンタジーとして描くのはいいが、最後の対立の構図が本当に必要だったのかという疑問が残る。問題自体は既に自己解決してるんでちょっと中途半端。ここでも記憶の修理屋云々の設定が邪魔になってるんではなかろうか。

 今伊叶ルートはサブヒロイン扱いなのか完成形でないのか微妙。いや、別に文句はないんだけど、選択肢ひとつでCommon Bad行き、エンディング数も他のヒロインより少ない、イベントCGが他のルートに分散、イベント数が削られてるように思える、など疑問材料が多すぎるので。

 内容的には前述の回想シーンの方が頭に残っているし、そもそもその回想とシナリオ中盤のいざこざや終盤へのなだれ込み方など取って付けたようで練り込み不足に感じる。絵とテンションに救われているというのが正直な感想で、いっそのことかけら関係ナシのハチャメチャな救済ルートにして良かったのではなかろうかと。

 う〜ん、全体的には微妙やねぇ。翼くんのルートは全体、さなはいろいろ気にしない方向で、夕日さんは学園祭まで、叶は…、郁の回想? と、楽しめるところが限定されてるのがナンとも…



 キャラはヒロインをはじめみな魅力的で、気の置けない先輩、諒太センセイのキャラや立ち絵すらないイチ生徒とのやりとりなど、とにかく空気が良いのが特徴。

 中でも主任教諭の笹原先生(初老、基本は柔和、郁たちには鬼軍曹、痩身、ザマスメガネ、若い頃は美人、と勝手に想像)は立ち絵すらないありさまなのに一番のお気に入りだったり。
# ちなみにセリフすらない校長先生はおしとやかなお嬢様がそのまま歳をとったポッチャリ系。

 こうキャラがしっかりしてるとなるとフツーの学園モノがみたいなぁ。私立萌黄女子高等学校へ臨時講師としてやってきた麻生郁は実は記憶の修理屋だ(デュアルブレードのナガサパを参照)。それはどうでもいいとして、体育会系数学教師の諒太センセイに振り回され、主任の笹原先生には怒られ、保険医の夕日先生(バツイチ)に癒されながら生徒たちイジられる毎日…、とか、鋼鉄のガールフレンド2ndみたいに(縁起でもない)ベタ方面で。…ダメ?



 結局、終盤の構成/校正/展開/ボリュームがイマイチなのことや叶イベントの奇妙な分散など、見切り発車を感じさせるところがあるのは残念。全体が翼くんルート以上のデキなら胸を張ってオススメしたところだが、全体的には練り込み不足。ゆえに今回はマッタリした空気が欠乏している向きにのみオススメしておく。

 あと追記としてまんだらけの設定資料集について書いておこう。

 今回も背景、バストアップについてはCD-ROM内の別コンテンツに収録、イベントCGも一度みればいつでも参照可能、その上で音楽CDも入ってるんで素材面についてはソフトだけでカバー可能だといえる。

 ただ、ラフ、その他を含めたボリュームはオマケの範疇をはるかに越えており、持っているだけでナニゲに幸せなアイテム。豪華な同人誌として定価買い&送料負担分は充分にモトはとれた。

 問題はあのまんだらけに金を払うのがシャクだっつ〜こと。通販の対応も結構悪い(取引でウソついちゃいかんよ、しかも3つも)しムカツクのだが今回は負け。クソオタクってツラいなぁ、チクショウ。

first edition : 03/10/23
ひとこと ハニーホッパーで弁当とケーキを買って、ななみんトレカをコンプしたい。転生はづきを攻撃表示でターン終了。

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