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データ
タイトル 空の浮動産 プレイ時間 6時間程度
/シナリオコンプ
機種 Win ストーリー ★★★★☆
ジャンル ライトNVL キャラクタ ★★★★☆
メーカー 自転車創業 グラフィック ★★★★☆
発売日 2001年 5月 4日 サウンド ★★★☆☆
定価 6,800円 ソフトウェア ★★★★☆
廉価 2,800円 ゲーム性 ★★★☆☆
購入価格 2,800円 総合評価 ★★★☆☆
お気に入り度 ★★★★☆

本文
元素Ma
 昭和七十一年に発見された異世界より召喚される物質。原子番号

呪文
 元素Maを異世界より召喚したり魔法を発動させるための手続き。
 浮動産登記法でMaを召喚するための呪文は以下の通り。
浮動産法一章一条登記ハ浮動産ノ表示又ハ
掲ゲタル浮動産ニ関スル重力ノ設定ニ付キ之ヲ為ス

魔法
 元素Maを呪文履行手続きにより酸化させ発動させることで得る様々な効果。
 その多くは実用性に乏しいとされインチキオカルト手品と揶揄されている。

魔法の六法
 緯影地位法骨法用必法応物象形法伝模移位法髄類賦彩法、および気韻生動法を指す。浮動産登記法とは緯影地位法のことを指す。



 この浮動産という単語に始まり、六法、呪文に至る言葉遊び、そしてそれを科学に 結びつけ世界を構築するセンス、あの、素晴らしい〜もそうでしたが独特の風味が 非常にステキだと思います。



 ストーリーは以下の通り。

 現実とはちょっと違う世界、昭和七十四年の穂積大学の入学式から物語は始まります。
 舞台はその法学部、といっても法律の方じゃなくて魔法の方

 昭和七十一年に発見された元素Maと魔法は、その実用性の低さからわずか1年で インチキオカルト手品のレッテルを貼られてしまい、法学部は2年目にして存続の危機を むかえていました。

 そこに入学してきたのが、身の丈六尺六寸の豪快な女、夏辺水華(なつべみずか)と 対照的に小柄で寡黙な青年、織絵冬星(おりえとうじ)

 適当に願書を出したら試験を受けることもなく合格したといういい加減な水華は、 ここが魔法の方の法学部だと知ると即行で学部変更をしようとします。
 それに対し法学部の講師である花水木秋駿(はなみずきあきとし)は、自分に勝てば、 という条件付で学部の変更を認めます。
 水華は第一回全日本女子格闘大会準優勝という実績を持っており、自信を持って それを承諾しますが魔法を操る花水木の前にあっさりと敗れてしまいます。

 その後も、先輩の春川春菜(はるかわはるな)を交えて水華と花水木の戦いが繰り広げ られることになります。

 この戦いの理由は前半と終盤で意味が全く違うのですが、唯一共通しているのは 終盤の水華を除いたそれぞれが自分のワガママのために戦っているという事実でしょう。
 一応、終盤の戦いは人類の存亡がかかっているっポイんですが、クセのあるキャラの おかげで随分と緊張感を感じさせないものになっています。



 で、そのメインキャラクタをもう少し詳しく紹介しておくと…

■夏辺水華
 身長201cmのガサツな大女。
 魔力の召喚量は莫大だが魔法を覚える能力も気もない残念な人。
 第一回全日本女子格闘大会準優勝者で身体能力は極めて高い。
 主人公らしく物語の中心にはいるがキャラに反して振り回される方だったりする。
 特殊な嗜好の人でないと萌えません。

■織絵冬星
 水華とは中学の時の知り合いで、3年振りの再会を果たすが開口一番殴られてたり。
 寡黙で何を考えているのかわからない青年だが、非常に頭が良く独学で第一回全日本 魔法選手権地区予選東海の部三位に輝いた、ってこれじゃスゴイのか良く解らん…
 この学部に入ったのには何か理由があるのかも。
 ちょっとしか萌えません?

■花水木秋駿
 大学の雇われ講師であり法学の神様と呼ばれる人物であるが、常に飄々とした 態度で人をどうおちょくるかを考えている立派な変人でもある。
 専門は不動産を宙に浮かせる浮動産で、大学の講義も浮動産登記法が中心となる。
 過去2回の実験で浮動産を墜落させており、学部の存続や研究の是非が問われているが 本人は常にやる気満々で研究に没頭している。
 また、反射神経、打たれ強さ共に尋常ではないようだ。
 あまりに激しく萌えません

■春川春菜
 法学部一期生であり、水華、冬星の先輩。優等生タイプ。
 第一回全国女子格闘大会優勝者で水華と決勝で戦った相手でもあるが、その勝利が 魔法を使ったものであったことから余計に水華との間の溝は深いものになる。
 愛に生きていますが萌えません



 ストーリーにしてもキャラにしても、泣きや萌えといった要素を徹底的に排除して ストレートに勝負しようという姿勢が充分に感じられるものになっています。

 その分ストーリーでは燃えを意識してありますし、キャラについても、自己の欲求に 正直な水華、秘めたる思いを持て余すあまり花水木と対峙することになる冬星、 水華以上の純粋さをもって何事にも振り返ることのない花水木、愛という盲目によって 醜ささえも感じさせる春菜という風に、人間クサさというものを前面に押し出しています。
# キャラクタ設定のおかげでドロドロとはしていませんが。

 これは泣きと萌えに偏ったノベル系ソフトへのアンチテーゼといえるでしょう。

 私個人、泣きや萌えが悪いとも思いませんし、その中でも様々な趣向が凝らされて いるとも思いますが、それでも、より多様性が尊ばれるべきノベル系ソフトにおいて 現状が明るいとも考えられません。
 そいうった意味でこういったインディーズ的(失礼)な作品の存在というものを 見直してみるべきかと思います。
 それこそ泣きや萌え路線でヘタな商業ソフトより質の高い同人作品があるのなら なおさらに。



 さて、今回のシステムは、あの、素晴らしい〜で採用されていたANOSの新型と なります。
 基本は既読文章の再読と過去の選択肢を任意に再選択可能にしたものですが、 今回は分岐を利用してキーワードを回収することと、それを特定のポイントで適切に 選択する必要があります。

 キーワード制を採用し、ひとつの物語を辿るようにした結果、あの、素晴らしい〜 にあった周回による選択肢の拡張というものがない=展開に広がりが感じられないのは ゲームとしてもボリューム的にもツラいところです。
 また、システムの都合上、キーワードを適当に選びANOSでメッセージを戻すと 未読部分でノベルモードに移行してしまうのは致命的だといえるでしょう。
 その気がないのに分岐を辿っているだけで解答がわかってしまっては、サスガに 興がそがれてしまいますからね。



 前半、あまりにも思考が不自由な感じの水華が鼻に付きましたが、花水木と打ち解け、 青春モノっぽくなった中盤以降は格段に面白くなりましたし、一度エンディングを迎えた 後も花水木や冬星の心情を追いながら読み返すという楽しみ方もできました。
 その反面、それがゲームである必要があったのか、システムが紙媒体以上の面白さを 演出できていたかといえばこれはかなり微妙なところ。
 確かに分岐を辿って必要なキーワードを推理して…、という要素はありましたが、 パズルのピースをハメる、もしくはピースがハマるという感覚よりは作業に近い印象を 受けました。

 結論として、冒頭にあるような言葉遊びが面白いと思える人や、コンシュマー、PCに 関わらずノベル系ソフトの方向性が偏りすぎていることに不満を感じる人ならプレイする 価値はあるかと思います。
 特に後者においては丁度良いカンフル剤になるでしょう。

 ただ、単純にソフトとしてのデキを比較すると、あの、素晴らしい〜の方が完成度が 高く解り易いんで、未プレイの方にはそちらをオススメします。

first edition : 02/07/10
ひとこと 確かに萌えませんでした。

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