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データ
タイトル あの、素晴らしい をもう一度 プレイ時間 5時間程度
/シナリオコンプ
機種 Win ストーリー ★★★★☆
ジャンル ループモノNVL キャラクタ ★★★★☆
メーカー 自転車創業 グラフィック ★★★☆☆
発売日 2002年 3月22日 サウンド ★★★☆☆
定価 2,800円 ソフトウェア ★★★★☆
購入価格 2,800円 ゲーム性 ★★★☆☆
総合評価 ★★★★☆
お気に入り度 ★★★★☆

本文
 満開製作所よりX68K最後の商業ソフトとしてひっそりと発売された本作。
# なんか今度、空の浮動産のX68K版が発売されるらしいですが…
 当時の広告からはループモノらしいということしかわからず、そのタイトルの特異さも 手伝って興味だけが膨らんでいったのを覚えています。
 ただ、気になったとはいえプレイ環境は整っておらず、そのときはただ指をくわえて 見ているしかありませんでした。

 時は移り、X68K版発売から約2年半…
 満開製作所がなくなり、本作の存在が記憶の片隅に追いやられるのに充分な時間が 経ったころ、このWin移植版が発売されることを知りました。
 当然、小躍りしながら予約を入れたワケですが、実際にはそのタイトルと満開製作所の 広告に載っていたわずかな情報しか知らなかったワケで、小躍りするには早かったり したのですが、さて…



 天界と地上、異界の3層にわかれた世界、剣と魔法とドラゴン、そして堕天使くらいは 存在する、そんな地上が本作の舞台。

 物語は、主人公が過去の記憶を失ない、荒野に放り出された状態からはじまります。
 不幸中の幸いか、その場には主人公の同行者という少女『リト』がいて、なんとか 自分が何者かもわからないという最悪の事態は回避できました。

 リトの証言と自分の中に残る知識を総合すると…
 主人公の記憶喪失の原因は、天使『リビリュート』の堕天に起因しているということ。
 リビリュートは、時と世界の構成を司り、また、地上をつくり、そこに人間、時間、 記憶の概念を定めた存在で、その堕天は世界崩壊の危機を意味しているということ。
 そして、主人公はそれを倒す勇者『ライ』であるということ。

 その後、知人である医者『ヴェル』との出会いを経て迎えた朝、リトの身に異変が 起こります。
 それはリビリュートが持つ歪んだ再構成の力による呪い。
 突然、ある時点以降の記憶が失われる病気。
 ヴェルは、これが前向性健忘、別名くりかえし病と呼ばれる症例であると診断し、 治療手段がないことを告げます。
 もし、治ることがあるとすれば、それはリビリュートの額にある水晶の力を用いて 世界を再構成することによってのみであろう、と付け加えながら。

 こうして、過去を失った主人公と未来を失った少女はリビリュート打倒の旅にでます。
 世界を再構成するその日まで続く旅へ、何度も、何度も、何度も、まるでリトの かかったくりかえし病のように続く旅へ…



 システムは1周目と2周目以降で別モノになっています。
 1周目は普通のビジュアルノベルとして状況説明とANOSの欠片を入手するまでの 経緯を描き、2周目以降はANOSの欠片の力を用いて過去の選択肢まで戻り、別の 可能性を試すことができるようになります。

 このANOSは作中とシステムとで別々の意味を持ちます。
 作  中:ANgel mnipotent tone
 システム:dvanced ovel peration ystem

 要は、作中でのANOSは、くりかえし世界における経験を蓄積し、その場その場で 世界を再構成する力を持つ石を意味し、システムとしてのANOSは、バックログを 拡張して、選択肢をバックトラッキング的に再試行できるようにしたものであると いえます。

 こうして、いくつもの平行世界をたどりながら、幾度も悲劇をくりかえすうちに、 ひとつの疑念が生まれることでしょう。
 それは、この世界はもう既に何者かの再構成を受けており、自分たちはその何者かの 意思によってくりかえしを強要されているのではないか、という疑念。
 その瞬間から、この物語の結末は単にリビリュートを殲滅しただけで終わるような 単純なものではなくなります。
 誰が? なぜ? その疑問の先には意外な事実と悲しい結末が待っています。



 ちょっと侮りすぎていたかな、というのがプレイを終えたときの正直な感想です。
 もっと軽いお話だと思い込んでいたこともその一因ではあるんですが、それ以上に 終盤に入ってからのギミックはループモノの醍醐味を充分に体現していましたし、 シナリオをコンプした後もいくつかの疑問が想像する余地として残ってる点も絶妙の サジ加減だといえます。

 ただ、そのギミックが原因で思わせぶりなセリフや登場人物の人間関係のブレなどが 生じ、プレイヤーを余計に混乱させている部分もあり、このあたりは改善の余地が あるかと思います。
# 個人の受け取り方による誤差の範囲ではありますが…

 あと、リトに関してはもう少しあざといキャラとして表現した方が残るものがあった かとも思います。
 まぁ、あまりやりすぎると作品の雰囲気に合わなくなるのですが、未来を閉ざされた 悲壮感や、手に余る力を持ったものの苦悩を際立たせるために、もう一段崩した方が 効果的だったと考えます。

 ともあれ、プレイ時間という意味でのボリュームは少し物足りないですが、実際に プレイしてみると時間以上の満足感を得ることはできますし、何より安価で提供されて いますから、ループモノが好きな人ならプレイしておいて損はないと思います。
 いやホント、意外にいいですよ。

first edition : 02/04/22
ひとこと で、結局は『あの、素晴らしい』何だったのか???

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