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データ
タイトル Never7
the end of infinity
プレイ時間 20時間程度
/コンプ
機種 DC ストーリー ★★★★☆
ジャンル ループモノNVL キャラクタ ★★★★☆
メーカー KID グラフィック ★★★☆☆
発売日 2000年12月21日 サウンド ★★★★★
定価 6,800円 ソフトウェア ★★★★★
廉価 2,800円 ゲーム性 ★☆☆☆☆
購入価格 2,980円 いづみキュア お見事
総合評価 ★★★★☆
お気に入り度 ★★★★☆

本文
 説明不足の上設定の破綻した、しかしチョい萌えるギャルゲかな?
 最初の2人、川島優夏樋口遥のエンディングを迎えたときはそう思いました。
 ところが…



 ゲームのシステムは至って普通のノベルタイプアドベンチャー。

 背景とバストアップの上にメッセージウインドウがかぶさる画面構成で、メッセージ ウインドウにセリフや状況、心理描写がつづられていき、たまにあらわれる選択肢を 選ぶことで分岐していくという、ことKIDにおいては完成されたシステムです。

 よって、動作は非常に軽妙で、メッセージスキップ、バックログ、既読文書の文字色 変更をはじめとした読むための機能や、その時の状況がわかりやすいセーブファイル、 クリアしたシナリオの途中からゲームを再開できるショートカットなど、その機能は 非常に高く評価できます。



 大学のゼミ合宿に参加することになった主人公が、宿泊初日である4月1日に見た悪夢。
 誰か大切な人が死ぬ夢。

 前日に初めて顔を合わせたはずなのに、まるで旧知の間柄のように振舞うゼミの面々。

 突発的に起こるほんの少し未来の予見。

 悪夢に登場した不吉な鈴の登場。

 容易に説明できない現象が、主人公にもたらしたひとつの結論。

 このままでは4月6日に大切な彼女が死んでしまう。

 そして訪れた運命の刻、予見は実現となり、そして幾度目かの4月1日の朝を迎える。



 まぁ、おおまかなストーリーはそんな感じの時間のループを題材としたもの。
※.システムとしてはループしません。シナリオがループするだけです。

 ある4月1日に主人公と一部のヒロインに前回の記憶を残し、なぜ時間がループして いるのか、どうすれば4月7日を迎えることができるのかを探ることになります。

 攻略対象となるヒロインは5人で、1周目後半でルート確定、2周目は専用シナリオと なっており、適切な対応ができればグッドエンドを迎えることができます。



 さて、ここで冒頭に記述した「説明不足の上設定の破綻した」云々の部分について、 なぜそう思ったのかを書きますと、要は1人のシナリオに焦点を当てた場合、矛盾を 抱えたまま、そして何のフォローもないまま終了するシナリオばかりだったからです。

 例えば、樋口遥が守野くるみのクローンという設定で、あきらかに遥の方がくるみより 年上であることや、朝倉沙紀が遥がクローンであるという事実を知っていた理由、時間が ループする理屈が無視されたり、矛盾を抱えたままだったりといった具合。

 正直、この調子で全てのキャラが処理されているのであれば、私は怒りのあまり 冷静さを欠いていたかもしれません。

 しかし、朝倉沙紀、守野くるみまでの4人をとクリアーすると、ループの理屈は ともかく、そういった設定に関する説明はある程度網羅され、いづみキュアと呼ばれる シナリオではその総括をおこなっていたのです。

 えぇ、個人的に単体のシナリオで重要な部分をスカしていることに問題はあると 感じますし、もう少しなんとかならなかったのかとも思います。

 ただ、本作には「設定はアレだけど、ま、いいか」と思わせるだけの力、いわゆる キャラ萌えが存在していたため、その評価が甘くなっているのもあります。
# ギアナ高地で敗れたマスターアジアが本戦になにくわぬ顔で登場したのと同じ 「面白けりゃ大抵なんでもアリ」の法則。



 次に、いづみキュアと呼ばれるシナリオについて。
 これは他の4人のキャラをクリアすることによって到達することができるエクストラシナリオというべき存在。

 このシナリオではシュレディンガーの猫という量子力学のパラドクスを例に挙げ、キュレイシンドロームという精神病理学の症例、その第3の特徴「妄想を現実とする力」 によって時間のループがおこっているのではないか? という仮定で話が進められます。

 極端な要約をすると、キュアシナリオでのループ世界は 「いづみが死なないという妄想を現実とするために主人公が、 主人公が死なないという妄想を現実とするためにいづみがつくりあげた箱庭である」 と仮定されるのです。

 その結論はエンディングやプレーヤーの解釈によって変化します。

 特にキュアAと呼ばれるエンディングでは、プレーヤーの解釈に全てが委ねられるの ですがその含みというか余地を残した終わりは正解だったと思います。

 おかげでタイムスリップとキュレイシンドローム、その他の可能性を材料に 様々な考えをめぐらせることが可能になってますから。



 正直な話、いづみキュアは1周目の終盤に気分の良くない終わり方をするんで ストーリーとしてはあまり好きではありません。

 しかし、他のストーリーの美味しいトコ取りであることと、その問題点の解消を しようとした姿勢は高く評価できると考えます。

 えぇ、いづみキュアはね…

 ではなにが悪かったのかといいますと、そりゃもういづみノーマル

 詳細は伏せますが、いづみキュアとは全く逆ベクトルのプレーヤーをひたすら気分悪く させるだけのシナリオだったことは間違いありません。

 特に他では好青年と呼ぶ方がしっくりくる飯田億彦の扱いが、いづみノーマルでは 最悪の扱いを受けていますし。
# 他にもストーリーの歪みを一身に受けている不幸なキャラなんすよ、コイツ…

 なんか話によれば、これがPS版のいづみシナリオだったってことですが、こんな クソみたいな終わり方されたらCD−ROM叩き割りそうになりますね。
# よくもまぁ、キュアシナリオのあとにこれを残す気になれたもんだと思いますよ。

 えぇ、これまでが好印象だっただけに勿体無さ爆発、よって私はいづみノーマルを 記憶から消去してNever7という作品を完結させることに決定しました。



 グラフィックは、そうですねぇ…、なんか歪んでますよね、全体的に。

 特にバストアップは目の左右の高さが合ってないレベルですし、1枚絵の方も、 他はともかく横顔とかゆがんでますし…

 影崎夕那さんの絵って、バストアップとかならもっとマシだと思ってたんですが いったいどうしたんでしょうかね?
# DCへのコンバートの影響? まさかね。



 本作は声優さんの演技によって救われている点も多くあります。
 なんせ、キャラクターが良いと思わせるそのほとんどは声優さんの力といっても 過言ではないのですから。

 川上とも子嬢、山崎和佳奈嬢、井上喜久子嬢についてはいまさらですから割愛して、千葉進歩(すすむ)氏と松岡由貴嬢について少し。

 千葉進歩氏は、シリアスからギャグまでこなす器用さを持っており、ポスト置鮎として 期待ができるんじゃないかと思います。

 松岡由貴嬢は、え〜、スゲーです、マジでマジで
# 「ピロピロピンポンドーン」とか「かぷかぷ・ばぶばぶ・ばびりんこ」なんて 普通ならサムくて聞いてられないセリフを流せるようにしているんですから大したモノです。

 彼女は綾波系の樋口遥とロリ系の守野くるみの2役をこなしており、それだけで 充分凄いと思うんですが、なんと、あのおジャ魔女どれみあいこ役でもあるんですよ。

 えぇ、同じロリ系でもくるみとあいこは全く別ですから、その幅の広さたるや冬馬由美嬢クラスといって差し支えないでしょう。マジ、要チェックです。



 結論としてはやはり、いづみノーマルさえなけりゃぁなぁ…、ってところですね。

 まぁ、理屈を重視する人には間違ってもオススメできないのは確かですが、キャラを 重視する人なら結構楽しめますし、いづみキュアのような面白い題材を鼻に付かない 程度に調理してありますから。

 それにしても珍しいよなぁ、私が一番気に入ったキャラクタがロリキャラってのは…
# っつても、設定上は高校生なんですが。

first edition : 01/03/18
ひとこと 本作1番の謎は、主人公キャラのモテ具合だと思うに1票。

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