昔学生の頃、アルバイトをしていた時のことだった。
一緒に作業をしているパートの中年の女性が、ある一人の女性のことを
「さより」と呼んでいた。
その女性はいつも「さより」と呼ばれる度に嫌な顔をしていた。
私は別に気にもせずにいた。
ある日、その中年女性が私に聞いてきた。
「おなかの部分が黒い「さより」って魚知ってる?」と。
続いて「あの人は腹黒いから「さより」って呼ばれてるのよ。」と私に教えてくれた。
ここからは、私の身近な「さより」についての話。
彼女との出会いは今から4年前の彼女がまだ16歳の時だった。
彼女の名前はM。
Mの特技は瞬時に自分より上か下かを計算する能力だ。
もちろんそれは年齢ではなく、自分の家来になるかならないかだ。
初対面の相手を家来と判断した場合、あからさまに高圧的な態度にでる。
あるMの倍以上の年上の女性は「なんだ。もっとバカな女だと思ってたよ。」と初対面の時に平然と言われたらしい。
また、家来にできそうも無いと判断した場合は次の作戦にでる。
1.媚びをうる。
2.自分の不幸話で同情をひく。
3.自分功績を話し尊敬の目を向けさせる。
4.嘘をつく。
この1234の作戦でも家来に出来ない場合は逃げる。
どうやらMは私を家来に出来ないと判断したらしく、1の作戦に出た。
ある日Mの家を失礼する時、私に向かってMは「Mはね、大人って言われるけどね、ホントはね、まだ子供なの。。。」と、腕をつかんで帰らないで欲しいとだだをこねた。
何度思い返しても寒いセリフと顔の表情だ。
なんてクレイジーな女。
これで「まぁなんてかわいい子なの。」なんて一瞬でも思ってしまったら、あっという間にMの家来になってしまうのだ。
Mは最近家出をした。123の作戦も効き目がなく家には家来ができないからだ。
家出する前日までそんなそぶりは少しも見せずに着々と家出の準備をしていた。
家出先はMのいとこの家。
アルバイトだけでは生活が厳しいことや突然家出をしたら必要な荷物を全部持っていけないことを承知していて、一人暮らしをするのではなく、Mのいとこを家族ごと作戦2の同情話で丸め込み、事前に荷物を送りそこに転がり込んだ。
用意周到に小遣稼ぎの為に新しいアルバイト先まで見つけていた。
親戚の家であれば、風呂、洗濯、食事、全てが無料でついてくることを計算ずくなのだ。
そして何よりもMが望んでいた新しい家来が誕生した。Mの作戦に引っかかってしまったそのいとこ家族は、その時からMの家来なのだから。
さすが「さより」である。。
SMAP×SMAPの計算マコちゃんは、男にだけ「計算」するが、Mは老若男女問わず「計算」するのだ。
ところで、家族に損得勘定は必要なのか。
Mと出会うまで自分の家族を「計算」する人間には出会ったことがなかった。
確かにMの家は家庭環境は複雑であった。
だが、母親はそんな病的な計算をするMを更生させようと必死だった。
一時はそれに答えるそぶりを見せるのだが、それはあくまでも上辺だけ。
腹の中は真っ黒。「さより」なのだからしょうがない。
あれでは彼氏もできないだろう。
できたとしても、すぐに飽きられるだろう。
犬は無償の愛で尾っぽを振るし、飼い主を裏切らない。犬以下のMは一体いつ、どんな人間と出会ったら自分の愚行に気づくのだろうか。
きっと、気づかぬまま一生計算しながらうまく生きていくのだろう。
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