たぶんなにも変わらない

 

わたしはある日医者から
「あなたは立派な甲状腺機能亢進症です バセドウ病という名前の病気です」
と言われました
今までは「ただのわたし」で生きてきましたが
その日から
「ただのわたし」ではなくて
「甲状腺機能亢進症いわゆるバセドウ病をもつわたし」になりました

バセドウ病は
喉にある甲状腺が腫れる病気です

甲状腺が腫れると
手が震えます
声も震えます
足も震えます
体中震えます
ついでに心も震えます

心臓がどきどきします
まるで体が心臓になったみたいで、ちょっと動くと苦しいです
毎日無理やり走らされてるみたいに
どきどきどきどき
心臓も走っています
夜眠るときは自分の心臓の音が、とってもとってもうるさくて
眠ることができません

首が腫れます
甲状腺が首にありますから
触って見ると卵が入っているようで
ちょっとぽっこりしています

汗をかきます
暑くても寒くても汗をだらだらとかきます
いつも汗をかいてます
あまり汗をかくので洗濯物が増えて大変です

おなかが減ります
毎日毎日食べてばかりです
おなかいっぱい食べたとしても、すぐにおなかが減っています

おなかいっぱい食べるのになぜか体重が
10キロも減ってしまいました
(常々痩せたいと思ってはいましたが これは少し痩せすぎです)

いらいらします
なにがなんだかわからずに
いつでも何かに追われるように
気持ちが焦っていらいらします
首の辺りがぎゅっと締まって、首を絞められてるような
そんな感覚に襲われます
いらいらするのを止めようと、努力したけどできなくて
自分を嫌いになりました
はじめて嫌いになりました

目が出たり腫れたりするそうです
眼球突出と言われています
わたしは突出しませんでしたが、まぶたが少し腫れています

心にささくれができてるようです
指のささくれを剥くように
剥いてみたら
なんだか死にたくなりました
いつでもなんだか悲しくて、いつでもわたしが一人のようで
毎日死にたくなりました

心に石を乗せられて、重くてつぶれそうになっていました
石があんまり重いので動かすこともできなくて
うまく息ができなくなりました

ある日 立てなくなりました
正座してたら足の力がなくなって、自分で立てなくなりました
トイレに座っていたら、自分で立てなくなりました
周期性四肢マヒというそうです

次の日はベッドから
起き上がることが出来なくて
わたしは泣いてしまいました

病院へ行き、メルカゾールという薬を
一日6錠飲むようにいわれました
わたしは毎日薬を飲みます

FT3とかFT4とかTSHとかTRAbとか

よくわからない

この数値が基準値というものに
ならなければ
病気は治ったことにならないようです

薬を飲んで2ヶ月たったころ
足がつるようになりました
手も首も肩もお尻も背中も 

筋肉のあるところなら
どんなところでも
つるようになりました
これはとてもつらいです

病院にいくと
薬が3錠減りました
どうやら少しよくなると、体がつってくるようです
薬が2錠になるまでの
4ヶ月間
わたしの体はよくつりました

今は1錠薬を飲みます
毎日飲まなければいけないのですが

わたしはよく忘れてしまうのです
薬が1錠になるまでに、4年間ほどかかりました
とりあえず基準値になりました
けれどTRAbという数値が今でも基準値ではありません
この数値が基準値になってから
2年間基準値を薬で保って 

それから薬をやめると
再発率は5%になるそうです

いつ薬を飲まなくてもよくなるのか
ちょっと今はわかりませんが
こんな体になってしまっても
わたしはわたしでわたしから逃げることはできません


手が震えても
死にたくなっても
心臓がどきどきしても
首が腫れても
汗をかいても
おなかが減っても
おなかいっぱい食べるのに なぜか体重が10キロも減っても
いらいらしていても
目が出たり腫れたりしていても
心にささくれができてるようだとしても
心に石を乗せられて 重くてつぶれそうになっていても
ある日 立てなくなったとしても
メルカゾールを飲んでいても
FT3とかFT4とかTSHとかTRAbとか よくわからないとしても
体がつっても
薬を飲んでも飲まなくても
基準値でも基準値でなくても

どこまでも わたしはわたしでわたしなのです

Q.いつかわたしじゃない日が来るのでしょうか
A.いいえ 絶対やってきません

「ただのわたし」も
「甲状腺機能亢進症いわゆるバセドウ病をもつわたし」も
やっぱりわたしで

結局は 甲状腺が腫れていないときの「ただのわたし」と
なにも変わらないのだと思います。





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