わたしは「おかしい」

誰かに「おかしい」と言われたことがありますか?

この場合の「おかしい」の意味合いは
面白いとか、ちょっと人と変わっている人とか
そういう意味ではなく

普通でなく奇異な感じがする。異常だ。変だ。

の「おかしい」である。
ほかの言葉で言えば、「狂っている」の「おかしい」だろうか。

わたしはこの言葉をばせど〜と診断されるまでに何回も言われた。
自分でも、そう思った。
「もしかして精神病?」
何回も何回もそう思った。
心理学の本を読みあさったり、家庭の医学の精神の項を見たり
とにかく、自分が精神病でない事実がつかめるものを
毎日必死で探していた。

「おかしい」と主にわたしに言ったのは
両親や兄弟、友達や、旦那。
ちょっとでも感情の起伏があろうものなら
速攻「おかしい」と言われた。

たとえば、子供と母と出かけた先で、子供が言うことを聞かずに
その辺を走り回っていた。
わたしの押さえが利くうちになんとか言うことを聞いて欲しいと
思っていたが、そう思うときほど思ったようにはならないものだ。
わたしのいらいらは我慢の限界を超えた。
手に持っていた子供のジャンパーを
思い切り地面に叩きつけた。

「おかしい」

家族で温泉に出かけた。
温泉にはいって、部屋に戻る。
普通に座っていても自分の心臓の音がどくどくとうるさいくらいに聞こえる。
治療前だったので心拍数は普通にしていてもかなりなものだったろう。
そのかなりな状態で、温泉にはいったのだから
心拍数はかなりを超えてすごい状態だったろう。
とにかく暑くて窓を開けて欲しかった。
冷たい空気が吸いたかった。
自分で1メートル先の窓をあける、という行動をとるのも
苦しいくらいだったので、窓を開けてと母に頼んだ。
多分わたしの言い方が、つっけんどんだったせいだろう。
父が自分であけろと言った。
もう一度、窓を開けてと頼む。
さっきより、もっとつっけんどんな言い方で。
母も自分であけろと言う。

わたしは切れた。
泣きながら怒鳴った。
「窓開けてっていってるしょ!!!」

「おかしい」

夏。
わたしは、オーバーオールに半そでを着て友達と出かけた。
夏にしては、気温も高くなく少し肌寒い日だった。
それでも一人汗をかいていた。
友達がわたしに言った。
「暑いならさー、キャミソールとかショートパンツとかもっと涼しい格好したら?」
「だって、そういう格好しても同じだもん。どっちにしろ暑いし」
「でも、少しは違わない?」
「違わない」
「ねーなんでそんないつもいつも暑がってんの?」

ソンナノワタシニモワカラナイ

暑かったら好きな服を着たらだめなの?
涙が出そうになった。

「おかしい」

ある朝、旦那と言い合いになった。
子供の朝ごはんのことについて。
わたしが、働くのをやめたから朝は早く起きて子供のご飯を作るべきだという。
しかし、なぜか体がだるくて起きられない。
目覚ましの音にも反応しない。
どうしても朝は起きることが出来なくなっていた。
それを主張するも、することをしないのは
だらけているから怠けているからだという。
言い合いはどんどんエスカレートし、泥沼化していた。
お互いに過去のことを持ち出し、わたしの言うことはどんどん支離滅裂になっていった。
支離滅裂になったわたしに彼は捨て台詞を残して会社にいった。

「お前、頭おかしいわ。精神病院いけ。精神病院に入院させるぞ」

わたしは、誰もいなくなった茶の間に座り込み、
「わたしはおかしくないもん」と自分に言い聞かせるように泣いた。

自分の体が変だと感じてからばせど〜と診断がつくまで1年8ヶ月の間
わたしは、いろいろな人に「おかしい」と言われた。

だから、診断がついたとき「どうしよう」とうろたえる気持ちよりも
わたしが「おかしかった」のはこの病気のせいだったのだと
うれしい気持ちでいっぱいだった。

もう、「おかしい」なんていわれない。
・・・たぶん。

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