■有馬記念 VTR Vol.1 〜1997年第42回大会〜
 
 牡馬の意地
 この年の有馬記念は、良くも悪くも話題の中心は牝馬であった。それもそのはずで、ダンスパートナー、エアグルーヴ、メジロドーベルという3世代のオークス馬が顔を揃えていた。

 ダンスパートナーはこれが引退レースも、前走のエリザベス女王杯では健在なところを、エアグルーヴは牝馬として17年ぶりの天皇賞制覇を成し遂げ、続く前走のジャパンカップでは2着と充実著しいところを見せていた。そしてメジロドーベルは、秋華賞で3つ目のG1を獲得し、この有馬記念で牝馬としては初めてとなる「G1・4勝馬」を狙っていた。

 そんな中一番人気に指示されたのは、宝塚記念以来の出走となるマーベラスサンデー。であった2番人気にはエアグルーヴ、3番人気にはメジロドーベルと続いていた。

 レースはカネツクロスがペースを作る展開となり、タイキブリザード、インターユニークなどがそれに続いた。そして人気のエアグルーヴは5、6番手、その後方にメジロドーベル。そしてらさらに後方にマーベラスサンデーが位置取っていた。

 正面スタンド前を通過、第1コーナー、第2コーナーを過ぎても隊列は縦長のままで向こう正面に入ったところで、早くも逃げていたカネツクロスが脱落して、内ラチ沿いを馬群に飲まれていった。またそれと同時に、最後方を進んでいたダンスパートナーも脚色が鈍ってきていた。そしてタイキブリザードが押し出されるように先頭に立つと、馬群に動きが見え始める。

 後方を進んでいた馬たちが一斉に追い出しに掛かり始めると、一気に最終コーナーへ。人気のエアグルーヴとメジロドーベルの両牝馬は内と外へ別れ、メジロドーベルをマークするようにマーベラスサンデーが外目を上がってきた。まず、エアグルーヴが先頭に立つと同時に、マーベラスサンデーが外からメジロドーベルを斬って捨て、メジロドーベルは脱落。エアグルーヴとマーベラスサンデーの一騎打ちになった・・・、かと思ったそのときであった。

 2頭が叩き合っている中、外目を進んでくる一頭の馬がいた。その年のダービー2着馬で、菊花賞で1番人気にまで指示されたシルクジャスティスだった。マーベラスサンデーがやっとの思いでエアグルーヴを振り切ったとき、すでにシルクジャスティスが捕らえていた。残り10メートル。シルクジャスティスがゴールしたとき、マーベラスサンデーよりもアタマだけ出ていたのであった。

 シルクジャスティスはこのレース4番人気で、結局、牡馬の1、2番人気の決着だった。3世代のオークス馬の出走に沸いたこの年の有馬記念だったが、最後は牡馬が意地を見せた有馬記念でもあった。

【牧場長@@】