■有馬記念 VTR Vol.4 〜2000年第45回大会〜
 
 オペラオーの、オペラオーによる、オペラオーのための競馬
 前年の有馬記念で、3歳馬にしてグラスワンダー、スペシャルウィークに差のない競馬をしたテイエムオペラオーは、その能力を余すことなく発揮し、2000年に入っても快進撃を続けていた。年明け初戦の京都記念を皮切りに、天皇賞春秋連覇、宝塚記念、ジャパンカップ制覇と古馬G1戦線の王道とも言える5連勝に王手をかけて望んだ有馬記念であった。

 1番人気はテイエムオペラオー、2番人気には、遅れてきた大器メイショウドトウがつけていた。メイショウドトウは年明けの日経新春杯で全国区に名乗りを上げ、宝塚記念、天皇賞・秋、ジャパンカップと3戦連続でテイエムオペラオーの後塵を拝していた。負けられないテイエムオペラオー、今度こそのメイショウドトウ、復活をかけるナリタトップロード、同期の馬3頭の思いが交錯する中、ゲートは開いた。

 逃げると思われていたホットシークレットが出遅れた。変わってジョービッグバンが先手を取り、ゴーイングスズカ、アメリカンボスなどが続き、マチカネキンノホシ、ナリタトップロードなどが集団を形成し、最初のホームストレッチに入った。

 一週目のゴール板前にさしかかると、出遅れたホットシークレットが3番手まで上がってきていた。人気のテイエムオペラオーは後方から3頭目の14番手、メイショウドトウは11番手に位置していた。テイエムオペラオーの横には、アドマイヤボスがピッタリとつけていた。そして16頭が一段となり正面スタンドを過ぎていった。

 向こう正面に入っても、アドマイヤボスのマークは続き、テイエムオペラオーは出るに出られない状況。ペースはスローのまま、3コーナーにさしかかり、各馬いっせいに追い出しにかかった。楽な手応えでナリタトップロードが先頭を奪う勢いだった。後方では、メイショウドトウが早くもムチを入れながら外目を上がっていく。しかし、テイエムオペラオーだけは、馬群の中でもがいていた。

 最終コーナーを回って、ナリタトップロードが先頭に立とうとしたが外からダイワテキサスが来ていた。そして、まずダイワテキサスに交わされたナリタトップロードが脱落。坂上ではダイワテキサスが1頭抜けだし、完全に必勝パターンだった。しかし、ここでやっと有力馬が顔を覗かせてきた。メイショウドトウが外から敢然とやってきた。ダイワテキサスを差しきる手応えだった。しかし、そのとき、1頭ものすごい勢いで馬群を割ってくる馬がいた。

 テイエムオペラオーだった。アドマイヤボスに閉じこめられ、やっとの思いで、馬群をこじ開け、割って出てきたときはすでに、残り100メートルしかなかった。しかし、テイエムオペラオーに100メートルも必要なかった。馬群を割って出てきたテイエムオペラオーは、あっという間にダイワテキサスを捕らえると、メイショウドトウも凌ぎきり、ここに誰も成し遂げられなかった「古馬G1・5連勝」を完成したのである。

 結果だけ見れば、テイエムオペラオーの強さだけが際だったかもしれない。しかし、5連勝に王手をかけて、馬群にもがき、そして、最後は劇的な差し切り勝ち。まるで、2002年の競馬は、監督、脚本、演出、主演をテイエムオペラオーが一人でやったかのようなものだった。

 まさに、「オペラオーの、オペラオーのための、オペラオーによる競馬」だった。 

【牧場長@@】