第二章.興正会館の攻防
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定刻に新大阪に着いた「なは」に別れを告げ、日の光の眩しいホームへと歩みを進める。ここで一端、~あずあず氏と別れ、重い荷物を抱えつつ、京都行の車両に乗りかえる。新大阪から目的地京都までは、快速で30分ほど。道中、うら若き女性が乗車運賃の謎に翻弄されている時、さりげなく助け船をだした篠原氏に、改めて「鉄」の魂を感じた。鉄路の上にいる限り、最強の味方となることだろう。
やがて、京都駅に到着。まだ新しい駅舎はこぎれいで、古都のイメージは、あまりない。コンコースは、高い天井をガラス張りにしたモダンな造りだが、まだガメラの襲撃から間がないせいか、意外と殺風景である。天井は高いが、意外と奥行きが狭く、よく怪獣が2匹も入ったなと感心する。ここで別行動をとる魅衣呼婦人とご令嬢と別れる事となる。一抹の寂しさを感じた我々を、EARUM氏、やとがみ氏、山崎円花(弟)氏の各人が、出迎えてくれた。混雑するコンコース内で不思議とお互いがわかってしまうのは、なんだかえもいわれぬパワーのようなものを感じさえする。きっとあずき色のオーラが立ち昇っていることだろう。彼らが放つにこやか(意味ありげ?)な笑顔に、旅の疲れが、すこし癒される。しかし、ゆっくりとしている暇はない。すぐに会場へと向かわねばならないのだ。
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喧騒につつまれた京都駅
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駅舎は最新の建物だが、一歩外へ踏み出すと、昔ながらの京都タワーに出迎えられる。低い建物ばかりの京都は、空が広い。ご存知の通り、京都の町は碁盤目状に道路が造られ、それぞれの通りに名前がついているので、通りの名前さえわかれば、何処へでもいける。しかし、名前が分からないと似たり寄ったりの建物ばかり(寺ばかり)なので、非常にわかりづらい。今回は、主催者である篠原氏と同行しているため、道に迷う心配はないが、一同夜逃げしてきたような大きな荷物を抱えているため、タクシーで会場へ向かうこととした。ほどなく、今回の会場のある興正寺が見えてきた。
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行く手を阻む七条警察署の札
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文化財である興正寺は、現在改装中であり、その姿はシートに隠され、残念ながら見ることはできない。さっそく会場の会館へと向かう。入口の柵に「ゲリラから文化財を守る」と書かれた札がついている。メンバーを見回し、改めて「我々は、ゲリラじゃないんだ」と自分に言い聞かせつつ、中へと入る。寺の脇に立つこじんまりとした建物が、今回の会場の興正会館だ。(入口には、婦人会館とあるが、今回婦人の利用者は、極めて少ない)中は畳敷きで、奥に見える襖の向こうには、仏壇が鎮座しているらしい。ここでヤルのか、と不可思議な感慨を胸に秘めつつ、手続きに向かった篠原氏の帰りを待つ。すると、あずき色のオーラを放つ一団が近づいてきた。「もしかして、AZ−CON関係の方?」あっさりと、正体がばれた。我々もオーラを放っていたのだろう。まずは、お互いに自己紹介である。自己紹介といっても、お互いにハンドルネームを名乗り合う、OFF会などによくある風景だ。人によっては、そのユニークな名ゆえの気恥ずかしさが、場を和ませる。メーリングリストやホームページで、おなじみの方々が多かったが、初見の人ばかりだったため、その名前と本人の風貌とのキャップに、少々戸惑いを覚える。おそらく、私に対しても、同様な感情を持たれていたに違いない。
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やがて、篠原氏がやってきて、我々を会場内へといざなった。仏教の歴史に包まれた一行は、高まる期待感と、一抹の不安を胸に、次なる展開を静かに待っている。すると、隣りに控えていた御仁が、私に声をかけてきた。
「竹4号さんですね」
メーリングリストでお世話になってる、そらまめ氏だ。どうやら、AZ−CONホームページの写真で、我々九州勢の顔を知っていたらしい。(だから、目の所に線を入れろと言ったのに)知られた以上、そのまま帰す訳にはいかない。明日までに、あずき中毒でがたがたにし、もはやあずき無しには、生きられない体にすれば、口を割る事もないだろう。しかしその考えは、通用しなかった。ここにいる連中は、すべて重度あずき中毒者だったのだ。おそらく彼らなら、我々が秋葉原などで妖しい同人誌を買っていても、黙って見逃してくれるだろう。
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今回の舞台、興正会館
足場の向こうが、興正寺
手前の人物は、無関係
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興正会館内部
中央が御本尊、じゃなく篠原氏
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そして、篠原氏の舵取りにより、会場設営が始まる。座卓を並べ、サークルスペースを確保する。会場の広さと机の大きさが想定していたものと違ったため、一部配置の変更が行われる。座布団を並べてみると、意外に狭い事がわかる。しかし、今回の即売会では、お互いの交流が最大の目的であるため、これは問題にはならない。~あずあず氏デザインのサークル名の札も好評のようだ。やがて、徐々に見慣れたサークル参加者もそろい、賑やかさも増してきた。私も、開店準備を急いだ。並べる物は、ほとんどないのだが、唯一の売り物であるラミバッチを作成しなければならなのだ。
そして、時が来た。篠原氏の会場を告げる声が、高らかに響き渡る。AZ−CON2の開催である。
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第三章につづく
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