西部大開発と地方都市―徳陽市―

西部開発の鍵を握る地方都市の役割、四川省徳陽市の場合

 徳陽と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか?三国志ファンには落鳳坡のある地として有名だが、一般的な日本人にはなじみの薄い地だろう。詳しくは四川省研究を参照にしてもらいたい。以下人民日報の記事より。(原文のまま)

四川省:徳陽に国内初の特許技術産業化モデルゾーン

  国内初の特許技術産業化モデルゾーンが29日、四川省徳陽市に誕生した。中新社が同日伝えた。同ゾーンは、国家知識産権局が西部大開発を支援するための重要施策として建設された。

  徳陽市は、四川省の代表的な工業都市。中国最大の大型機械と動力設備の製造拠点で、中国医薬の近代的生産拠点のひとつでもある。

  ゾーンの敷地面積は14.5平方キロメートルで、自治区内には交通、エネルギー、電信、金融、コミュニティー関連などのサービスが完備している。

  徳陽市政府は、5年以内に5千万元を投資し、ゾーン内の特許プロジェクトの開発、試験、転化、産業化に向け、手当てと利息補助貸付金などの資金援助を行う。同時に専門的な「人材導入資金」を設け、ハイテク関連の人材を広く求める。

  「人民網日本語版」2001年3月30日

 一般的に貧しいとされている西部地域ではあるが、都市単位で見た場合、成都、西安、昆明などはかなりの経済規模を誇っている。しかし、省単位で見た場合、四川、陜西、雲南の経済規模はかなり小さい。さらに四川省は、農業、電子工業、医薬品などの個々の分野では全国有数を誇る。しかし、貧しいままにあるのはなぜだろうか?その原因のひとつに、都市と都市における連携にあるのではなかろうか?都市の連携にはハブ的機能を果たす都市が必要となってくる。現在重慶と西安が西部地域における省と省を連携させるハブ都市となることが期待され、昆明が中国と東南アジアを連携させるハブ都市となることが期待されている。しかし、それらは国と国、省と省の連携である。今後重要になってくるのは域内の都市と都市とを連携させるハブ機能を持った都市の構築、そして流通の整備ではなかろうか?
 そこで徳陽市であるが、地理的に省都成都市と第二の工業都市である綿陽市の中間に位置している。また鉄道は四川東部、湖北省に通じ、高速道路は重慶まで通じている。
 産業構造を見ても、国有企業の比率が高いとされる西部地区において、郷鎮企業の比率が高く、かつ重工業に偏っているわけでもなく、酒造、食肉加工などの産業も発達している。GDPの規模にしてもほぼ全国平均レベルである。
 そこで、人民日報の記事であるが、徳陽に特許技術産業化モデルゾーンを構築するとのことだが、今後、徳陽のような優良都市に産業を集中させ、全方位的に発展させていくという方法も西部大開発の戦略の中で、1つの大きな可能性を秘めた戦略と言えるのではなかろうか?流通が弱い西部地区においては、インフラ整備も大事だが、同時に流通センターをつくることも必要だろう。ハブ的役割を果たす都市も必要となってくるはずだ。産業構造が比較的よく、インフラが整っている都市は、たとえ今大きな役割を果たさなくとも、今後発展の可能性はあるだろう。
 西部大開発において、大都市間の連携、流通整備はかなり行われているが、地方都市レベルではまだ不十分である。このままでは、結果的に大都市の経済成長が省全体の経済規模を押し上げるかもしれないが、地方都市レベルの経済改善ができるかは疑問である。ゆえに今後は地方都市の開発とハブ都市を構築し省内の各地域を連携させることが必要となってくるあはずだ。貧困層の改善なしに、西部大開発はありえない。

2001年4月


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