南水北調、生態環境保護問題

水が足りない・・・

 現在、長年「黄金水道」と呼ばれてきた長江が、その交通インフラとしての機能を失いつつある。ここ数年長江中流域は毎年大洪水に見舞われており、その水害は甚だしいものがある。この点を見る限り中国は水害に悩まされているように見えるが、実際はまったくの逆で深刻な水不足に悩まされており、なんと数千年にわたり中華文明を育んできた黄河が断水を起こしている。また首都北京から北に100キロほど行けばそこはもう砂漠地帯で、今年の夏に朱首相が、首都北京の移転を検討しなければならないと語っている。それほど中国の環境問題、特に砂漠化は深刻である。現状中国では全国の水道の25%以上を地下水に頼っているとされる。南方は長江があるが、黄河流域はそのほとんどを地下水に頼っている。そのため最近は地盤沈下現象も起きるようになり、西安市の有名な観光地である「大雁塔」は年々傾きつつあるという。また、以前外国の学者が中国に対して、このままでは世界的な食料危機が起きると警鐘を鳴らした。それを受けた中国政府は食料の自給自足を目指すために穀物等の食料の大増産計画目標を設定し、それを行った。結果その目標数値は数年繰り上げて達成された。中国は世界的に面子を保つことができたが、大きな負の遺産を背負ってしまった。それは生態環境を破壊してしまったことである。食料を大増産するために中国は多くの未開の森林を切り開いてしまった。その結果必然的に環境問題が起きてしまった。以前中国の環境問題と言えば、まず大気汚染や弁当のからによる、いわゆる白色公害だった。しかし、現在中国が目の前に突きつけられた問題は、いかにして水資源を確保するかである。

 最近中国では"退耕還林"、"南水北調"といったスローガンが掲げられている。"退耕還林"とは一度開拓した耕地をもう一度森林にもどすプロジェクトである。そして、"南水北調"というのは、長江から、黄河へ運河を建設し、それによって北部黄河流域の水不足を解消させようとするのが狙いである。このような環境問題を解決すべく行われる生態環境保護プロジェクトは、今後国家レベルで、2001年より始まる第十次五カ年計画の柱としておこなわれる。

 われわれは日本に住んでいて水問題など考えたこともない。ほとんどただ同然と考えている。蛇口をひねれば水が出るのは当たり前。中国はそうはいかない、大河があっても水が足りないの現状である。


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