Hillockのカナダ便り Vol.6  ( 2002/6 )

Hillock Diary from Canada April. . 2002

マノアー・モンセンチレア 老人の家へギロックを弾きに行く

モンセンチレアの山の麓に有料の老人ホームがある。ここに住んでいるお年よりは平均年齢が80歳。アパートのように一人であるいは夫婦でプライベートな部屋を所有でき食事は希望によってこのホームのサロンでいただける。ここでは月に一回のお誕生会、その他プール、いろいろなサークルなど生活を豊かにするための催しがある。

今年の初めここのサロンでギロックの音楽をピアノで弾かせてもらえないかとお願いに行った。しかしなかなか返事はもらえなかった。それでも懲りずに足を運んでやっとOKをもらった。

 この日に至るまでどんな音楽をこの国の人々は好まれるのか周りの人に尋ねてみると、フランス民謡とカナダの古くから伝わる歌が皆さん好きなようだ。しかしはじめからポピュラーな音楽だけ弾いてはなじみの薄い曲は聞いてもらえないかもしれないと思い、第一回目であるにもかかわらず、全曲ギロックと仲間の作品にした。曲が短い分いろいろその曲のエピソードなどを話しながら弾きたかったので仲間のリリアンに通訳で加わってもらった。ここの人たちは大半がフランス系カナダ人でフランス語しかわからない。

しかし残念なことにマイクの調子が悪くマダム・パリー(このホームでいろいろな催しの お世話係)しかうまく使いこなせない。リリアンもいろいろと試してみるがリリアンが使うと言うことを聞かない。それでマダム・パリーがマイクを持って通訳をしてくれた。が、なかなかうまく伝わらない。こんな気持ちが積もってピアノの演奏をするときより自分の気持ちをうまく伝えたいと思った。

プログラム
日本の寺・・ミア―

カーボーイ・ブルース・ワルツ・・ロリン
レッド・ローズ・ランデブー・・ミアー
バロック・ジャズ・・ロリン
ホリディー・イン・パリス・・ギロック

オータム・グロウ・・ミアー
秋のスケッチ・・ギロック
リオのカーニバル・・ギロック

フランキーとジョニー・・ギロック
ニューオリンズのたそがれ・・ギロック

ブギ・プレリュード・・ギロック
ブギ・時計・・ロリン
舟歌・・ギロック
オリエンタル・ウィンド・チャイム・・ギロック
雨の日の噴水・・ギロック
ホリディーイン・スペイン・・ギロック

会場は皆さんが食事をされるサロンで、小さなスピネットピアノがある。一つのテーブルに4人から6人座れる。それが10席ほどあったので50人は聞きに来て下さったのだろう。静かに聞いてくださり一曲が終わるごとに拍手が来る。

 オータム・グロウと秋のスケッチはここでも人気でざわめきがぴたっと止まる。目の前で聞いてくださっていた車椅子に乗った男性はじっと身動きもせず聞き入り、その目には涙が浮かんでいた。きっとすてきな過去を思い出されたのかもしれない。ブギ・プレリュードも人気の曲だった。演奏するや否や「ブギだ!」と声がかかった。すると歩行器で歩いている女性が歩行器といっしょにブギを踊りだした。周りから「ワーワー!」と声援が入った。

ブギ・時計ではいつものように手拍子を入れてもらったが、早い動作はやっぱりしんどうそうだった。ピアノを弾いて手拍子の相手が出来ないのが残念だった。次回は動きを考えないと…と反省した。
 「オリエンタル・ウィンドチャイム」をそよ風にゆれるチャイムと中国の力強い武道をイメージしたものと二つのパターンを弾いてみた。同じ曲がこんなに違ったサウンドに聞こえることに驚きの声があがった.
 
 ホリディー・イン・スペインが終わり「ギロックの曲はいかがでしたか?こんな曲は皆さん好きですか?」と尋ねると大きな拍手をしてくれた。そしてアンコールをもらって私も調子に乗ってあと3曲も弾いてしまった。

終わってからたくさんの人が「ありがとう!とっても良かった。いいひと時だった」と挨拶に来てくれた。曲は短かいけれど、何よりバラエティーに富んでいるので退屈せず、

 次々楽しんで聴けた」と言ってくれた。またある女性は「もっと長い曲はないのか?」と尋

 ねた。「どの曲も大きな曲の中の一部を弾いているのかと思った」と言う。よく話を聞いてみると夫婦そろってクラシック音楽のファン。たくさんレコードを持ち、よく音楽を聞いているそうだ。そういう人にはギロックの音楽は大きな音楽の中の一部に聞こえると言うことはギロックが狙っていた点でもある。音楽はたくさんの一部の集まりである。何回か回を重ねるうちにこの方もギロックの音楽の意味を解ってくれるだろうと思った。

ある夫妻が「ピアノを弾くとき私たち聴衆のことを考えながら弾いていましたか?」と尋ねてきた。それで私は一瞬考えてしまったが、「いいえ、ピアノを弾いているとき自分が感じたり思っていることを聴衆の皆さんに伝えようと思いました。聞いてくださっている方と心の交流を持ちたいので」と答えると「そうでしょう、私たちにはとてもあなたの気持ちがわかりました。だからピアノを聴いていて会話をしているように思ったので、私たちのことを考えていたのかと尋ねたのです」と話してくれた。嬉しい言葉だ。

 マダム・パリ―が「この方は音楽家だったのですよ」と紹介してくれた男性はかつてイギリスでオルガニストだった。しかし脳溢血で倒れてから左半身が麻痺して動かなくなってしまった・・ととても悲しそうに話し出した。そこでギロックの楽譜を見せて、オルガンを弾くことをあきらめないでください。私が今日弾いた曲はこんなに簡単な曲です。「誰もがピアノ音楽を楽しんで弾けるようにギロックはシンプルに作りました」と楽譜を見せると、彼はとっても驚きました。こんな簡単な楽譜だとはとても思えないほど豊かなサウンドだったと言ってくれた。「簡単だから左手が動かなくてもピアノやオルガンで音楽を演奏することはできますよ。今度いっしょに連弾しましょう」と言うと満面の笑みを見せてくれた。そして自分の部屋へ戻り30年前オルガンを演奏している写真を持ってきて見せてくれた。嬉しい出会いだ。

 初めてギロックを訪れる時、ギロックは「英語ができなくても音楽でコミュニケーションがとれるから来なさい」と言ってくれたことを思い出した。

 音楽は万国共通語だ!

Hillock

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