"ドラマ演出"日誌(99年10-12月期)

99/10/02 疾風(ハヤテ)のように

脚本:マキノノゾミ
演出:加藤拓
制作統括:二瓶亙
出演:森田剛、内野聖陽、水川あさみ、野波麻帆、国生さおり、左とん平
関東放送枠:NHK・土曜夜9時

ロケスタッフ、美術スタッフのガンバリが目立ちました。都内を自転車で走りまわるシーンが多かったのですが、道路や街並みの雰囲気に味があって良かったです。都内湾岸系(?)の映像が特に良かったです。自転車に並走しながら撮ったカットも多くて、気持ち良かったです。あと、携帯で内野聖陽と話す国生さおりのバックに森田剛が映ってたり……小さいアイデアが効果的に決まっていました。

森田剛は「新・俺たちの旅」の時と同じような演技でしたが、今回は弟的なキャラに上手くハマってて違和感はなかったです。内野聖陽はヘンテコなニュアンス満載という感じで、若干疑問を感じる部分もあったのですが、見ごたえはありました。(^^) 脇の水川あさみと野波麻帆は、この日誌で何回も書いているようにボクのお気に入り俳優なので、注目してみていたのですが、水川は「白線流しSP」の時とまったく同じキャラだし(悪くはないですが)、野波は出番が少ないし、それだけちょっと残念。でもまあOKです。(^^)


99/10/03 怖い日曜日

予告では「続・怖い日曜日」だったのですが、結局タイトルに「続」は付かなかったみたいです。タイトルバックが新しくなって、カッコ良くなりましたが、クレジットを見たら“タイトルバック 二階健”とありました。この枠は1年前のスタート当初から、“制作協力オフィスクレッシェンド”となっているのですが、だんだんとクレッシェンド人脈の活躍が目立ってきました。

以前、「東京ウォーカー」か何かで“堤ブルー”という言葉を目にしたことがあって、笑っちゃったんですが、大根仁さんの映像を見ていると“大根グリーン”なんて言葉が浮かんできます。今回のエピソードでいえば、後半の長谷川純のヤツは大根グリーンが全開でしたが、前半の今井翼のエピソードでも、グリーンのライトを隠し味的に使っていて、味があります。貧乏臭い古アパートの雰囲気も、ロケなのかセットなのか良くわからなかったんですけど、凄かったです。大根さんならではのこだわりを感じます。

冒頭でナビゲーターの4人が殺伐とした野原に立っているシーンですが、環境音楽風のBGMがえらくカッコイイですね。こういうのボク好みです。ところで、タイトルバックの二階健さんですが、以前「Tears」や「少年サスペンス」で、腐食したフィルムみたいな色彩の映像を撮っていました。今後ドラマ本体の演出もしてほしい人です。


99/10/04 コワイ童話〜親ゆび姫(4)

脚本:宮藤官九郎
演出:金子文紀(1)(2)、今井夏木(3)、浅野敦也(4)
関東放送枠:TBS・月曜深夜

これ、怖かったですね。ブラックな「南くんの恋人」といった趣で、恋愛感情が純粋であるがゆえに狂気に転じていく……という展開がツボにハマりました。「コワイ童話」も一番最後の作品が力作でした。……と書きつつ脚本家の名前をチェックし忘れてたりします。(^^ゞ

  【追記】 脚本家名をちゃんと調べました。(^^)

第1話でヒロインが夢を見るシーンでは、金子Dのシュールレアリズム的な映像感覚が炸裂していて、印象に残っています。小人化した2人が携帯からブラ下がっている絵面も、安っぽいホラー映像とは違ったコワさがありました。そういう意味でいえば、シュールレアリズム的な映像で深層心理に訴えるという、新しい怖さを開拓した作品だと思います。


99/10/08 J家の反乱

STORY26:白と黒のウサギ
脚本:吉井三奈子
演出:北川文彦(FUNS)、谷村政樹
出演:辺見えみり、錦戸亮
制作:ABC
関東放送枠:テレ朝・金曜深夜

……なんなんだー、この暗さは!

このサイトを読んでくれている人の中で、この作品を見ていた人はどれくらいいるのでしょうか。多分1割に満たないと思いますが、惜しいことをしました。――今回の作品は野球にたとえればノーヒットノーランくらいの価値があるかもしれません。バラエティ番組内の15分ドラマだとは思えないような脚本・演出で、「人間・失格」とか「私の運命」とかを見ているような重たい15分でした。個人的には「ケイゾク」第10話を見たときと同じような衝撃を受けました。

普通に考えると15分のドラマで扱えるようなテーマじゃないと思うんですが、結果的にはそれが功を奏したみたいで、脚本にしても演出にしても、無駄な要素をバッサリと削ぎ落としたソリッドでスタイリッシュな表現になっていました。過去の日誌でも何回か言及した「エヴァンゲリオン」の演出に通じるものがあります。

沈黙が多い会話。引きのカットとアップのカットの落差を強調したカット割り。特に錦戸亮の表情にインパクトがあって、撮る方もかなり気合いが入っていたんじゃないかと思われます。部屋全体を映した引きのカットで重苦しい会話を20〜30秒続けてから、いきなり顔のアップに切り替わって、さらに間を置かずに目元のアップに切り替わる……。カッコイイです。オシャレです。様式美です。「エヴァ」的です。(^^ゞ

極めつきだったのがラストシーン。家族と食事をしながら笑っている錦戸亮の表情のアップ。そこにナレーションが被さります。「お姉さん、どうしてウサギに僕の名前がついているのかわかりますか。それは僕もサトシと同じ、イジメられているウサギだから……」

――「エヴァ」でいえば、「血の臭い、……消えないや」みたいな終わり方です。余韻が残ります。

ところで、この番組は関西では視聴率が良いみたいで、このまま来年の3月まで続くようです。面白いのは、今井翼と錦戸亮が主人公になる暗いエピソードの時だけですが、こういう暗いエピソードが視聴率アップに貢献しているような気がしてるんですが、どんなもんでしょう?

それからもう一つ。この番組でフロアディレクターを務めている倉木義典さんが、この番組のBBSを開いています。それによると、ドラマ部分の演出は実際には2人の方が担当しているようです。しかし、各回の演出がどちらの方なのかはエンドロールではわかりません。そこで、このサイトでは2人のお名前を併記することにしました。
(http://www.nevula.co.jp/~saigetu/kura/news.cgi)

――なお、この番組は毎週面白いわけじゃないので、そのことだけ念のため、書き記しておきます。(^^)


99/10/09 オルガンの家で

脚本:矢島正雄
演出:谷口卓敬
制作統括:二瓶亙
出演:木村佳乃、原田芳雄、高橋恵子、鈴木一真
関東放送枠:NHK・土曜夜9時

ちょっと前にやった「降霊」とかいう2時間ドラマにもいえることなんですが、これはTVドラマの演出じゃないですね。映画の演出です。ボクの場合、TVドラマのテンポ感があたりまえになっているので、個人的には、こういうのはツライです。ストーリー的にも、良くわからなかったのですが。

テレビというのは映画に比べると視聴の障害物が多いメディアです。CMだったり、裏番組だったり、TVの前の家族の会話だったり……。要するに映画が映画館という日常生活から切れた場所で見られることを前提としているのに対し、TVドラマは日常生活の中で見られることを前提にしているワケです。だから、TVドラマというのは映画に比べると、テンポ感とメリハリを強調した演出になっているワケです。

このドラマは、芸術祭に出品されるようですが、こういう非TV的な作品が賞を取るようなことになったら、TVドラマファンとしたらあまり喜ばしいことではないですね。


99/10/11 氷の世界(1)

脚本:野沢尚
演出:光野道夫(1)、田島大輔
プロデュース:喜多麗子
関東放送枠:フジ・月曜夜9時

冒頭の5分くらいは吸引力のある映像でなかなか凄かったですね。「リップスティック」の冒頭場面を思い出しました。ただ、タイトルバック以降は若干絵的なインパクトに欠けるかな。「眠れる森」の神秘的な森のシーンとか、雨が降る惨殺事件現場……みたいなイマジネーションを刺激するような絵がもっと欲しかったような気がします。竹野内が溺れている絵だけじゃ、ちょっと弱いです。ストーリー的にかったるい感じがするのは、「眠れる森」第1話の時と同じなので、そんなに心配していませんが。

ところで、“光野道夫田島大輔”という組み合わせは、「眠森」の“中江功澤田鎌作”と、タイプ的に近い組み合わせだと思います。「眠森」の場合は澤田さんが演出した第4話あたりから、俄然テンションが上がったのですが……、今回も両者の演出バトルが見れると良いですね。

及川光博の出番が少なそうなのがちょっと残念だけど、死体発見のシーンを見ていると、実はミッチー、生きてるかも! ……な〜んて思いませんでしたか? 個人的には、またまた仲村トオル=犯人というのが、オイシイような気がするんですけど。(^^)


99/10/11 ピーチな関係(1)

脚本:鎌田敏夫
演出:日名子雅彦(1)、国本雅広
プロデュース:木村元子大谷弘
制作協力:せいさく者、ノアズ
製作著作:読売テレビ
関東放送枠:日テレ・月曜夜10時

正直いってCMなどの印象は最悪だったのですが、「診療内科医・涼子」や「凍りつく夏」といった、社会派心理ドラマとプロデュースしてきた木村元子さんと、ベテランの鎌田敏夫さんの組み合わせなので、複雑な気分で見ました。(^^ゞ

で、結論からいうと、演出のテイストがコロコロ変わっちゃうので、見ている方が消化不良を起こしちゃうような感じでした。演出に限ったことではないのかもしれませんが、ドラマ全体に統一感が欲しかったですね。京野ことみ&櫻井淳子の2人は、「ショムニ」みたいなコミカルな表情が良かったのですが、共テレ風のテイストで押していくような感じでもないんですよね。ラブサスペンスっぽかったり、人情ドラマっぽかったり……。しかも、ラストで山田花子が出てきて、ますますテイストが混乱しちゃいました。

このドラマで興味がわいたのは、脇役系の人たち、高橋英樹・合田雅史・野波麻帆の一家とか、八百屋の兄ちゃんの青木堅治とか。特に青木堅治は、1年くらい前にこの日誌で注目していた人ですが、今回は出番が多そうなんで、今後の展開が気になります。


99/10/11 Vの嵐(1)

脚本:高木登
演出:岩本仁志
演出補:熊谷拓雄七高剛
出演:嵐(二宮和也、松本潤、相葉雅紀etc)、北川弘美、高杉亘
関東放送枠:フジ・帯(夕方&深夜)

正味5〜6分くらいなんで、ストーリー以前の段階で終わっちゃったんですが、二宮の表情を撮るのにエネルギーの大半を投入していたみたいで、それだけが印象に残りました。10分×10話=2時間弱なんで、単発ドラマ1本分くらいのストーリーはありそうです。

芝居の組み立てとしては、二宮メインでいくか、二宮−松潤のツートップでいくかの2つしかないだろうと思ってたんですが、第1話を見た感じでは、前者のような感じです。どっちのパターンにするにしても、相葉と北川がトッピングですね。(^^)

岩本さんとしては「ナースのお仕事」みたいな、芝居のテンポ感をねらっているんでしょうか? 少なくても「白線流し」の路線ではないようです。いずれにしても、第1話だけじゃわかりません。なお、2週目は熊谷さんが演出するみたいです。

ちなみに、ボクは深夜の再放送の方で見ているんですが、同日再放送というのは、視聴者にとっては便利で良いですね。このドラマでいえば、夕方に見ている層(小・中学生)と深夜に見ている層(二十歳以上のマニア?)できっちり棲み分けができているような気がするし。ホントは「氷の世界」とかも深夜に再放送してくれると、視聴者の裾野が広がって良いような気がするんですけど……。(^^)


99/10/11 賭事女王(1)

脚本:吉永亜矢大森美香
演出:関卓也
プロデュース:関卓也小崎美加
関東放送枠:フジ・月曜深夜

フジテレビ月曜深夜のトイズ・ファクトリー枠の新シリーズなんですが、第1話を見たかぎりでは、何をやりたいんだか良くわかりませんでした。コメディーにしてはテンポが悪すぎるような気がするし、サスペンス風のシーンもあるのですが、サスペンスにしては荒唐無稽な要素が強すぎます(あの場面で家を賭けたりしない)。

アイドルドラマとして見ても中途半端な感じで、「Vの嵐」に負けてる感じです。4人のヒロインの中で一番華があるのが内藤陽子なんですが、彼女の持ち味が充分に引き出されているかというと、過去に「美少女H」で見たときの方がキャラクターや表情に味があったです。(^^) 気合いが入っているな〜と思えるようなカットが、あまりなかったように思います。


99/10/12 OUT〜妻たちの犯罪(1)

原作:桐野夏生
脚本:前川洋一
演出:星田良子(1)、平野眞
音楽:溝口肇
プロデュース:川上一夫石坂理江子(フジテレビ)
制作:共同テレビ、フジテレビ
関東放送枠:フジ・火曜夜9時

物語や芝居を演出するというよりも、ドラマの舞台になる郊外の町の雰囲気〜空気感を演出することに力を注いでいる……という印象を受けました。演出のタッチは、サスペンス〜オカルト風なんですが、音楽・効果音・生活音・画面のトーン・カメラワークなどが、効果的に噛み合っていて、統一感のある世界を生み出していたと思います。キャスティングでは、高田聖子、渡辺えり子らの存在感が、物語にリアリティを持たせることに貢献しているみたいです。

演出の星田良子さんは、ここ数年、フジ以外の局で演出することが多かったのですが、最近では「はみだし刑事」(テレ朝)とか、「フェティシズム」(TBS単発)など、意欲的な作品が目立っていました。ですから、このドラマも期待していたのですが、とりあえず期待通りの第1話といえるのではないでしょうか。

ところで、通常フジで放送される共テレドラマは、フジのスタッフが“企画”、共テレの スタッフが“プロデューサー”とクレジットされることが多いのですが、今回はなぜか石坂理江子さん(普段は演出家)の名前が、プロデューサーとして併記されています。

「金曜日の妻たちへ・犯罪編」という感じのドラマでした。(^^)


99/10/12 砂の上の恋人たち(1)

脚本:伴一彦
演出:藤田明二(1)、小野原和宏
プロデュース:大平雄司(関テレ)、鈴木伸太郎(共テレ)
音楽:オノ セイゲン(小野誠彦)
制作:共同テレビ、関西テレビ
関東放送枠:フジ・火曜夜10時

前半のオーストラリア編は、バブル期のドラマみたいで、ちょっと疑問を感じました。見ていた人の大多数は、菅野美穂が死ぬことを事前に知っていたと思いますが、3人がノーテンキにバカ騒ぎしているのを見て、“コイツらなら死んでも同情しない”と思ったのは、ボクだけじゃないと確信します。(^^)

「愛の意味など考えたこともなかった」というナレーションも、いきなり予定調和……という感じで、引いちゃいました。単なるバカ女にしか見えない菅野が、死の直前に急にブンガク少女みたいなセリフを口にするところにも違和感がありました。もっと、まじめそうな青少年のエピソードとして描けば良かったのに。――これらは、脚本の問題というよりは、演出(脚本解釈)の問題なのかもしれませんが……。

でも、後半の日本編は、バブリーなテイストが影を潜めて、良い感じになりました。長瀬智也にしても、本上まなみにしても、日本編の方が表情に気合いが入っていたと思います。特にラストシーンの手が震える長瀬は、なかなかインパクトありました。(^^)

前クールの日誌にも書いたことですが、連ドラの第1話に海外ロケを持ってくるというのは、時代遅れの発想だと思います。――今の20代は、30代のバブル世代と比べて、海外旅行にあまり興味を示さないという新聞記事を読んだことがあります。

それにしても、三角関係とか浮気とは違って、被害者と加害者が恋に落ちるという設定は、大多数の人が見たことも、したこともないシチュエーションだと思います。だから、2人に恋愛感情が芽生えることに単純に共感できる人は、ほとんどいないでしょう。現時点で一番共感できるのは、補償問題のところでしょうか。(^^) この部分をきっちり描いてくれると、その後の恋愛感情の部分に厚味が出てくるのかもしれません。

しかし、このドラマの白眉は(個人的には)音楽です。小野誠彦(オノセイゲン)さんといえば、NHKの「熱の島で・ヒートアイランド東京」(脚本:井上由美子、演出:笠浦友愛、出演:薬師丸ひろ子、根津甚八)でも音楽を担当していましたが、連ドラを担当するのは、今回が初めてなんじゃないでしょうか。今回はワールドミュージック的な作風の中に、和風テイストもあったりして、この先も気になります。


99/10/13 TEAM(1)

脚本:君塚良一
演出:河野圭太(1)、西谷弘
プロデュース:関口静夫
音楽:服部隆之
制作:共同テレビ、フジテレビ
関東放送枠:フジ・水曜夜9時

オープニングタイトルの音楽がカッコ良かったですね。一般受けするかどうかは良くわかりませんが、音楽的にはかなりディープなものを感じます。服部隆之さんとしても、今回は冒険した…という意識があるんじゃないでしょうか。ただ、音楽がこれだけカッコいいんだったら、演出ももっとスタイリッシュなカッコ良さを追及して欲しかったような気もします。

このドラマは、「コーチ」と同じスタッフ…というフレコミのようですが、厳密にいうと河野圭太さんは「コーチ」のセカンドD(チーフは小椋久雄さん)です。河野さんは共テレの中ではオーソドックスな演出をする人なので、このドラマも見る前は、人間ドラマの部分に力を入れた演出だろうと思っていたのですが、フタを開けてみたら、思ってたよりもオシャレな作風でした。こうなってくるとセカンドの西谷弘さんの演出も楽しみになってきます。

脚本の君塚良一さんは「踊る大捜査線」を書いていた人。今回も、いきなり「エヴァ」ネタを使ったりして、ニヤリとさせられてしまいます。テーマが少年だから、それもOKなんでしょう。よくあるヒューマンドラマと見せかけておいて、最後にひっくり返してしまうところも、まずまず合格点なんじゃないでしょうか。……ただ、ボクの場合、第1話を見たかぎりでは西村雅彦の言い分が全面的に正しくて、クサナギの言ってる理想論に何の重みも感じられなかったんですけど、君塚さん的にはそれで良いのでしょうか?

ところで、少年役の小場賢。若い頃の江口洋介にソックリですね。アップで映るたんびに、江口と2ショットで見てみたい…なんて思ってました。(^^)


99/10/13 隣人は密かに笑う(1)

脚本:橋本以蔵
脚本協力:国井桂森田幸江
演出:大谷太郎(1)、細野英延長沼誠
プロデュース:西憲彦北島和久
関東放送枠:日テレ・水曜夜10時

大谷太郎さん初のチーフ演出作ということで、結構期待しながら見ました。(^^) 「LOVE&PEACE」「世紀末の詩」「蘇える金狼」といった作品で大谷さんが見せた演出に関しては、過去にこの日誌で取り上げた通りです。また、単発ドラマ「入道雲は白、夏の空は青」は、何かの賞を受賞していました。

最初に目を引いたのは、屋内シーンの空間感覚。どこまでがセットなのか良くわかりませんが、天井付き巨大セットの広々とした空間の中を、カメラが派手に動き回る感じが、通常のドラマにない豪快な印象を与えてくれます。広角レンズを多用してヘンテコなアングルから撮っているところは「金田一」の堤幸彦さん、廊下を高速で移動していく“人力3−Dグラフィック”映像などは、「金狼」の本広克行さんの影響でしょうか。

以上のことは、水野真紀が住む豪邸内のシーンに顕著ですが、その他のシーンにおいても、ほぼ同様の空間感覚が感じられます。大谷さんはこのドラマを演出するにあたって、サスペンスの舞台となる水野真紀の自宅に、「金田一」的な空間が必要だと考えたのかもしれません。というワケで、このドラマの演出の第1のキーワードは「堤&金田一」です。

モッ君が水野宅に招かれてパーティをする場面あたりからは、効果音を伴ったサスペンス風の演出が目に付きはじめました。これには、渡部篤郎版「ストーカー」「スウィート・デビル」「ボーダー」を手がけた奇才上川伸廣さん(イースト)の影響が濃厚に感じられます。これは、かなり意識的にパクっていると思われます。これが第2のキーワードです。(^^)

上川さんといえば、この夏に放送された「美少女H3・愛しい人の眠るまで」(主演:緒沢凜、演出:中山高嘉、制作協力:イースト)なども、上川さんの影響が強い作品でしたが、作品の出来映えはいまひとつでした。それに比べると今回の「隣人」は、上川さんの方法論をきっちり学習・習得しているという感じがします。

……と、ここまではホメ言葉ばかりになってしまいましたが、ドラマ全体の評価となると、もう少し物語やキャラクターに面白味がないとツライかな……と思います。この第1話を見て喜んでいる人というのは、主に演出を楽しんでいて、つまらないと思った人というのは、ストーリーを中心にドラマを見ているんじゃないかという気がします。


99/10/14 3年B組金八先生(1)

脚本:小山内美江子
演出:福澤克雄(1)、鈴木早苗山崎恆成
プロデュース:柳井満
関東放送枠:TBS・木曜夜9時

「金八先生」をバカにしている人はいませんか? 確かに、説教臭いドラマではありますが、それだけの理由で切り捨ててしまうのはもったいないです。

そもそも「金八」というのは、パート1の頃から実験的なドラマだったはずです。中学生の出産、生徒がホントに泣いてしまう最終回、全共闘みたいな学校占拠、警察導入&中島みゆき「世情」、パート1で出産した子供がパート4で生徒として登場してイジメにあう……など。他のドラマではお目にかかれないような実験が、たっぷりと盛り込まれていて、それは現在まで受け継がれていると思います。特に前回のパート4をボクは高く評価していて、1時間近い芝居をノーカット一発撮りで収録したシーンなんて、見ていて背筋がゾクゾクしたものです。

そんな「金八」の、重要エピソードの多くを演出してきたのが生野慈朗さんなんですが、今回のパート5には参加されないようなので、個人的には、それが最大の事件だったりします。生野さんが撮ると、少年少女の表情や演技に緊張感があるんですが、今回はそれが見れないのかと思うと残念です。

で、今回はパート4にも参加していた福澤克雄Dと鈴木早苗Dが中心になり、演出陣が完全に世代交代したようです。ただ、福澤さんがパート4で演出した回というのは、ボクもいくつか見ていますが、映像やアングルなどに福澤さんらしいこだわりが感じられるものの、ドラマ全体の印象を変えるところまではいっていませんでした。だから今回のパート5では、チーフになった福澤さんがどこまで新しいテイストを導入しているかに注目していました。

最初に目に付いたのはタイトルバック。夕陽をバックに「金八先生」のロゴが登場しました。今までの金八はすべて“朝の登校シーン”だったのに、今回はいきなり夕陽。“夕方の下校シーン”ということなのでしょうか。だとすると今回のテーマは、アフター5〜夜の金八(?)なのかも……なんて考えてしまいました。――ただし、主題歌はつまらないです。前回の「スタートライン」の方が遥かに良かったです。誰か“ダメ出し”できなかったのかな……。(^^;;

本編。カメラの動きが派手なのは、福澤Dの意向というよりは、時代の流れと考えた方が良いのかもしれませんが、学校内の雰囲気とかロケ地の雰囲気が、今までと微妙に違うような気もします。具体的にどこが違うのか指摘はできないのですが、やはり“夜の金八”というか、暗い感じ。^/^

ラサール石井がボコボコにされるシーンは、第1話の見せ場ともいえるシーンでした。教室の照明も暗い感じでしたが、カメラワークがサスペンス〜ホラータッチで、いつもの金八とは違うという印象を持った人も多かったんじゃないでしょうか。特に、ラサールを見下ろす生徒をラサールの視線から映したカット、さらに風間俊介の蹴りへと続くところは怖かったです。ちょっと「コワイ童話」も入っていたような気がします。

それにしても風間俊介、凄かったですね。(^^) つかこうへいじゃないですが、ジャニーズおそるべし!……でした。まじめそうな表情と邪悪な目付きの対比がバンバン決まってて、福澤Dとの息もピッタリという感じでした。演技経験もほとんどない新人で、初顔合わせで、第1話だというのに、ものすごい完成度です。ホラー風にスローで悪の顔を映したカットなどは、やり過ぎるとウソ臭くなって、「金八」としてのリアリティがなくなっちゃう危険性もあるんですが、第1話に関しては成功しているといえるでしょう。

「金八」の生徒役というのは、演技経験のある子とない子の両方がいるので、初期のエピソードでは、ジャニーズなど演技経験のある子を多用する傾向があります。過去のシリーズでもそうです。風間俊介の場合、過去の演技経験といっても「眠れる森」のユースケの少年時代くらいしかないと思うのですが、この第1話で視聴者の心をガッチリとつかんだようです。ジャニーズといえばもう一人、「怖い日曜日」でマヌケそうな顔でナレーションやってた人もいましたが(ラサールにパンチを入れてた人、亀梨和也)、このドラマでは結構カッコイイ感じで、お見逸れいたしました。(^^ゞ

あと、ジャニーズジュニアじゃなくて金八ジュニアの佐野泰臣。彼もなかなか良い味出してました。これって、結構拾い物なんじゃないでしょうか。(^^) 今回は星野真里よりも彼の方が活躍するようです。――また、演技経験のない子の中から、面白いキャラが出てくるのは1月頃だと思うので、その辺にも注目してみていると面白いです。こういうところも「金八」の実験性から生じる面白さです。

福澤Dの演出に関してはもう1つ印象に残ったシーンがありました。最後の方で生徒に、約束を破ったらブン殴ると言うシーン。「それって脅迫なんじゃないか」と(しごくまっとうな)ツッコミを入れる生徒に対して、金八の険しい顔のアップがド〜ンと入ってきました。ああいうインパクト系のカット割りって、過去の「金八」では、あまりなかったような気がします。先のラサールのボコボコや、風間俊介のスローなど、今回の「金八」は、ハードタッチですね。(^^)

小山内美江子さんの脚本ですが、前回のパート4くらいから、教育界の最前線のトピックをセミドキュメンタリー風にドラマに取り入れる傾向が強くなっているようです。学級崩壊や老人問題などもそうなんですが、ボクが感心したのは、“デラ”と呼ばれているノビ太みたいな顔をした落ち着きのない生徒のことを“多動性”と呼んでいたことです。ちょっと前に話題になった症候群(性格?)の名称で、NHKなどで特集を組んでいたように記憶してます。描き方が適切かどうか、ボクには良くわからないし、ちょっと安直な感じもしますが、そこは大目に見ちゃいます。

ドラマというのは、他のメディアに比べて情報密度が低い表現形式なんですが、ボクとしては、もう少し報道性やドキュメント性があっても良いんじゃないかと思っています。「彼女たちの時代」の人間開発室や自己啓発セミナーなんかにしても、あのドラマで初めてその存在を知ったという人もいるワケです。ボクなんかは、2年くらい前にNHKでやった「流通戦争」というドラマで、流通業界の内情が描かれているのを興味深く見たことがあります。また「美味しんぼ」なんかも一種のグルメ情報ドラマといえるでしょう。今回の「金八」もそうした情報〜ドキュメンタリードラマの一環として、楽しむことができそうです。同じロングシリーズでも「北の国から」には、こうした情報志向はないですから……。(^^)

ラストの生徒の名前が出るエンドロールも、いままでと違ってましたね。(^^)


99/10/14 危険な関係(1)

脚本:井上由美子
演出:中江功(1)、木村達昭水田成英
プロデュース:山口雅俊
関東放送枠:フジ・木曜夜10時

ドラマとしては面白いんだけど、コメントしたいことがあまりないドラマですね。演出全体の印象としては、「眠れる森」第1話と「青い鳥」第1話を足して割ったような感じなんですが、今回は第1話の段階でストーリーが動きはじめちゃったんで、俳優とストーリーだけで、十分に引き付けられちゃうものがありました。この点は、前振り〜状況説明に終始した「氷の世界」や「OUT」の第1話とは違いますね。……というか、このドラマの場合、状況(トヨエツの内面)そのものが物語上の謎(テーマ)になっているみたいですが。(^^)

「氷」の光野道夫さんもそうですが、中江功さんも時代の流れに逆らえないのか、近作では手の込んだ映像が増えていく傾向にあります。数年前だったら、スゴイッとか言って喜んでいたと思うのですが、最近は“堤〜本広”的な映像が急増しているので、「中江さん、お前もか…」という思いもあります。正直いって。(^^ゞ

まあ、ボクの場合、中江さんが得意とするソフトな質感の映像が元々好きじゃない……というのもあるんで、その部分は割り引いて読んでいただきたいのですが、カメラワークにしても、脚本にしても、ちょっとギミック的な要素が多すぎるような気がしました。音楽もちょっとうるさい感じで、特に映像と連動してジャラ〜ンと流すのは、せっかくの雰囲気を壊しちゃってるような気がします。

でも、ドラマとしては面白くなりそうな感じです。別の人物に成りすます……という荒唐無稽な物語設定は、シェイクスピア〜大映ドラマ〜野島伸司の系譜に属する作風ですね。もちろん井上由美子さんや野島さんがスゴイのは、別人に成りすまそうとする人間の屈折した動機をきちんと描けるところです。ボクが“月8〜土9”系のドラマを見て、いつも不満に思うのはその部分です。


99/10/15 チープラブ+

脚本:林誠人
演出:戸高正啓(1)、松原浩那須田淳
監修:伊藤一尋
プロデュース:丹羽多聞アンドリウ
関東放送枠:TBS・金曜夜9時

このドラマ、見る前は結構期待してたんですけどね〜。戸高正啓さんと反町隆史って、相性良いかもしれないって……。(^^ゞ

以前にも書いたことがありますが、戸高さんと言うのは、わかりやすい演出をする人だと、ボクは思ってきました。芝居の見せ方とかリズム感とか、視聴者の生理に反しない作りになっていることが多かったし、実験的な手法を使っているときでも、わかりやすさはキープされていることが多かったです。これは、作風が保守的だとかいうレベルの問題ではなく、むしろ先天的な資質の問題だといえます。“わかりやすい文章を書く能力”とかと同じで、学習すればすぐに身につくというものじゃないので、特撮の手法みたいに単純にパクることはできないんです。

なのに、今回はわかりづらい上に、テンポも良くない……。たとえば牛丼屋のシーン。反町の支払いの一件の意味をちゃんと把握できた人はどのくらいいるでしょうか? ――あれはパチンコのコインで代金をごまかしたと見せかけておいて、イスの上にちゃんと500円玉が置いてあるという、反町のイタズラだったんですが、ボクはビデオで見直して初めて意味がわかりました。

また、「GTO」と比べると反町のニュアンス表現のノリが悪いのも気になります。このドラマで良い味を出しているのは、股間をツネられたり蹴られたりで大変な吉沢悠と、いつになくマンガっぽいキャラクターの黒坂真美なんですが、この2人にしても、魅力が全開しているかというと、そうでもないんですよね。前日の「金八」における福澤克雄Dと風間俊介みたいな、撮る方と撮られる方のイキが合っている……という感覚が、このドラマには一切感じられません。たとえば、反町と吉沢の掛け合いの部分を、カメラがちゃんと拾ってないような気がして、かわいそうな気がしました。

仕掛けに凝り過ぎて、時間が足りなくなっちゃったのかな? それとも、撮影現場の雰囲気が険悪なのかな……なんて、いろいろ考えてしまった1時間でした。(^^ゞ


99/10/15 美しい人(1)

脚本:野島伸司
演出:土井裕泰(1)、吉田健遠藤環
プロデュース:伊藤一尋
関東放送枠:TBS・金曜夜10時

音楽が少なめで、生活音が多め……というのは「魔女の条件」のときと近い印象ですが、今回は屋内のシーンが多いせいか、全体の印象は地味目です。

常盤貴子の顔がラストシーンまで出てこないというのが、最大の演出ポイントなんですが、ボクの感想としては常盤なしのドラマを見ているみたいで、ますます地味な印象が強くなっちゃいました。「恋の奇跡」の葉月里緒菜のデブメイクと、正反対の方法を取ったということになるワケですが、う〜ん……! 常盤貴子の顔なしで1時間というのは、ツライものがありました。(~_~;)

名字に“野”が付く脚本家は、終盤になるにつれて自己満足度が高まって、つまらなくなるんですが、このドラマはどうなるんでしょうね?

そういや、3人の演出家のうち一番若い土井さんがチーフなんですね。(^^)


99/10/16 青い鳥症候群(1)

脚本:吉本昌弘
演出:今井和久(1)
演出補:長谷川康
プロデュース:佐々木基(テレ朝)、春日千春(大映)
制作:テレビ朝日、大映テレビ
関東放送枠:テレ朝・土曜夜8時

この枠はまだ方向性が固まっていないようですが、今回は月8路線で行くようです。で、スタッフの顔ぶれを見ていくと、脚本の吉本昌弘さんはジェットコースタードラマで一世を風靡したAVEC所属、演出&演出補の今井和久さんと長谷川康さんは「音無可憐」「可愛いだけじゃ」など、岡田惠和さんの月8アイドルドラマでお馴染みのMMJの人たち、そして、制作(プロデュース)は大映テレビ……と、異色の組み合わせになっています。

まあ、建築物にたとえていうと、施工主が大映テレビ(「乳姉妹」とか「アリエスの乙女たち」あたり)で、設計がジェットコースタードラマで、施工業者が月8で、建材が「ガラスの仮面」……という感じでしょうか。近年、大映ドラマの制作力がパワーダウンしていることを考慮して、こうしたスタッフを揃えたのだとしたら、テレ朝もなかなか鋭いですね〜。(~_~;)

で、第1話を見た感想ですが、結論を言うと設定ストーリーはコテコテだけど、演出が薄味すぎて、ちょっと物足りないという感じでしょうか。設定は、ものすごく面白いと思うんです。大映お得意の複雑な血縁関係があって、その血縁の秘密を知らない主人公の愛憎劇があって、少女マンガ的な恋愛描写もあって、金持ちと貧乏人の対比があって、臓器移植というタイムリーなネタもある……と。

でも、設定の派手さに比べて、安達祐実以外のキャスティングが弱いような気がします。野際陽子、野口五郎あたりはOKなんですが、羽田美智子、朝加真由美、辰巳琢郎、別所哲也あたりの人たちがノーマルすぎて、荒唐無稽な設定に負けてるような感じがします。病弱な義兄の上里亮太は、同じジャニーズでも松本潤とかの方がハマリ役だと思うのですが、寝たきりの役みたいだから許容範囲内でしょう。できれば、松村雄基みたいな濃いキャラが欲しいな……なんて思いながらTV誌をパラパラ見てたら、松村雄基の名前もちゃんとありました。第1話には出てこなかったような気がしますが、この先が楽しみですね。

  追記:松村雄基はちょっとだけ出ていたようです。m(__)m

演出は、音楽が良くないのか、今井さんも演出していた「ガラスの仮面」と比較しても、派手さに欠けるのが残念です。安達祐実が羽田美智子を恨むというのも、逆恨み以外の何物でもないので、違和感が残りました。そこを大袈裟な演出と演技で納得させてしまうのが、大映ドラマの本領のはずなんですが、この第1話ではその辺が弱いです。この点に関しては、この先改善されることを期待したいです。とにかく基本的な設定は悪くないので。(^^ゞ

蛇足ですが、ラルクの主題歌は、通常のシングル曲よりもマニア好みのギター・サウンドになっていて、シブイです。(^^)


99/10/16 サイコメトラーEIJI2(1)

脚本:小原信治
演出:猪俣隆一(1)
プロデュース:伊藤響櫨山裕子内山雅博
音楽:仲西匡
制作協力:オフィスクレッシェンド
関東放送枠:日テレ・土曜夜9時

このドラマを見ていると、いろいろなことを考えさせられます。一つの方法論が成熟して陳腐化していくサイクルについて……とか。『TVライフ別冊・秋ドラマの本』をパラパラ見てたら、井ノ原快彦が面白いことを言ってます。「コレ(このドラマ)のために2年間、それぞれのグループや個人で勉強してきたんだよ。通過点じゃない。」と。――つまり、方法論の成熟期間と、俳優の成熟期間が、ぴったりシンクロしているワケです。そこが「メトラー2」の面白さなんですけど、「メトラー1」の時から堤幸彦さんや“土9ドラマ”に注目してた人じゃないと、理解してもらえない感覚かもしれません……。(..)

2年前(97年1月)に「メトラー1」を見たときの衝撃は、もうここにはありません。というか「メトラー1」でさえ、先日の再放送でチラッと見たら、フツーの“土9”ドラマに見えちゃうんです。この2年半の間に「メトラー」の方法論は“土9”ドラマの枠を超えて、日本のテレビドラマ全体に波及し始めているワケで、改めて衝撃を受けるような新しい手法ではないんですね。その代わり、この「メトラー2」には、“円熟”とか“洗練”といった言葉で表現したくなるような安定感があります。いくつかポイントを指摘してみると……。

猪俣隆一Dは、主役の3人にある程度自由に演技させているみたいで、演技のノリの良さ、切れの良さがパート1とは比べ物にならないくらい向上しています。特に今回は井ノ原快彦の存在感が大きくて、松岡昌宏とどっちが主役なのかわかりません。形式上は助演なんだと思いますが、実質的にはダブル主演ですね。ちなみに猪股Dは「新・俺たちの旅」第5話でも、今回と同じような演出を試みていて、その第5話のカミセンが全作品中で一番ノビノビとした演技をしていました。今思えば、「メトラー2」を念頭においた実験(パイロット版?)だったのかもしれないですね。山崎裕太も出てたし。(^^ゞ

もう一つ印象的なのが、シリアスシーンにおける表情アップ。このドラマは、ギャグ〜ドタバタ〜アクション〜特撮〜アドリブと、いろんな要素がテンコ盛りなので、インパクトが拡散しちゃう危険性があります。実際パート1ではそうした部分もありました。それに対して、猪股Dはストーリー上の重要ポイントでシリアスな表情アップをキッチリと入れ込んでいて、物語の流れをキープしていました。猪股Dは表情アップの撮り方も上手いです。

映像的なコンセプトとしては、堤Dの「メトラー1」がストリート〜ドキュメンタリー志向だったのに対して、猪股Dの「メトラー2」はコミック〜劇画的な絵をねらっているような感じがします。スモークをガンガン焚いているところもそうですが、戦闘シーンの際に入る顔アップとか、取調室でグッタリしている井ノ原快彦の構図・陰影とかが、劇画っぽいんですよね。(^^ゞ あと、「ぼくらの勇気・未満都市」を思わせるスケール感のあるシーンも多かったですね。そういう意味でも、土9〜櫨山ドラマの集大成っぽい印象が強い作品です。

ただし、戦闘シーンは(エキストラ数を含めて)スケール感はありましたが、ちょっと迫力不足という印象でした。この辺は「蘇える金狼」の方が凄かったですね。まあ、アクションシーンの組み立てとか、カット割りとかって、難しそうですけど。

そういえば、去年の暮れにTBSで「校長がかわれば学校が変わる2」という2時間ドラマがあったんですが、あのドラマは、ケンカとか決闘のシーンが、ドラマのテーマと不釣り合いなくらいカッコ良かったんですよね。で、後で調べたら、監督の小野田嘉幹さんって「鬼平犯科帳」を撮っている監督なんですよね。納得しちゃいましたよ。――“土9”も時代劇の演出家を起用したら、新しい可能性が開けるかもしれないですね。(^^) ちなみに、「校長が…」にも後藤理沙が出てました。(^o^)


99/10/16 終(つい)のすみか

脚本:大石静
演出:長沖渉
制作統括:木田幸紀
出演:段田安則、田中好子、茂山宗彦、茂山逸平、岡本綾、夢路いとし
制作:NHK大阪
関東放送枠:NHK・土曜夜9時

久々に重厚な手応えのあるドラマを見ました。ここ数週間、この枠で放送されている芸術祭参加作品の中でも、これがベストの出来なんじゃないでしょうか。大石静さんも「ふたりっ子」以降、イマイチな作品が多かったので、今回は久々のヒットという感じがします。「長男の嫁」の中に、「人生というのは、上手く行かなくて普通なんだ」というセリフがありましたが、このドラマにも、それに通じる大石さんのシビアな人生観が反映されていて、見ごたえがありました。

演出の長沖渉さんは「ふたりっ子」「ふたつの愛」で大石さんと組んでいた演出家で、自身も神戸で大震災を経験しているそうです。このドラマではカメラワークが秀逸で、おやっと思わせる遊びの部分と、的確なタイミングで表情をとらえるシリアスな部分が、違和感なく両立していました。特にドラマの中盤部で、兄弟が大ゲンカをして、両親の秘密をばらすシーンの演出が良かったです。

強いて難を言うと、岡本綾の父親が自爆するシーンは、なくても良いような気がしました。“土9”じゃあるまいし、もうちょっと現実味のある描き方ができなかったんだろうか……な〜んて思いながら、よく考えたらこのドラマも土曜9時でした。(^○^)

茂山兄弟は、最初のうちは見慣れていたせいか、宗彦のヒステリックな感じの方が面白かったのですが、見ているうちに逸平の朴とつとした感じも気に入りました。さすがです。(^^)

茂山兄弟も良かったのですが、それ以上に気になるのは、プロデュースの木田幸紀さん。今年の5〜6月に水10枠で放送された「女性捜査班・アイキャッチャー」(脚本:市川森一)を見てから、注目していた名前なんですが(日誌にも書きました)、このドラマを見てますます注目度が高まりました。


99/10/17 ヤマダ一家の辛抱(1)

脚本:青柳祐美子
演出:久世光彦(1)、爲川裕之竹村謙太郎
プロデュース:小野鉄二郎
制作:KANOX、TBS
関東放送枠:TBS・日曜夜9時

今期のドラマの中では、貴重なコメディなんですが、微妙な作品ですね。

久世光彦さんといえば、70年代の「寺内貫太郎」「ムー」から、最近の向田邦子ドラマに至るまで、セット中心のドラマで異彩を発揮するカリスマ演出家なんですが、セットが現代風になっちゃうと絵的なインパクトがなくなっちゃうんですよね。数年前に放映された「メロディー」というドラマもそうでした。

セットに中途半端なリアリティがあると、荒唐無稽なキャラクターとかギャグが死んじゃうような気がします。鈴木その子とか、由紀さおりとか。やはり、お笑いをやるんだったら、「SMAP×SMAP」のコントみたいなチープなセットの方が合うような気がします。しつこいようですがセットに対する違和感ばかりが残りました。……と言いつつ、ドラマ方向性は嫌いじゃないです。キャスティングも悪くないし。

ちなみに久世さんの名前は“てるひこ”と読むそうです。――本来は“輝彦”だったのを“軍”という文字を嫌って“光彦”にした……というのが、ボクの推理です。(^^)


99/10/18 ベストフレンド(1)

脚本:矢島正雄
演出:森田光則(1)、冨田勝典
プロデュース:桑田潔(テレ朝)、森田光則西口典子
音楽:渡辺博也
制作:木下プロダクション、テレビ朝日
関東放送枠:テレ朝・月曜夜8時

安っぽい暗さがドラマ全体に充満してましたね〜。(^^) 特に安っぽいのが渋谷にあるという設定の貸スタジオ内のセット。あれじゃスタジオなのか教室なのか区別つかないです。(-_-;)

物語の設定は「あぶない放課後」の女の子版という感じですが、木下プロ(森田光則P)の学園ドラマという点では、「変(HEN)」(佐藤藍子・青木伸輔)「イタズラなKiss」(柏原崇・佐藤藍子)の系譜に属する作品と言えるでしょう。実際、音楽の渡辺博也さんは「変(HEN)」の音楽も担当していたので、今回の第1話を見ながら「HEN」連想してしまった場面(劇伴)がいくつかありました。また、浅田美代子は「イタズラ…」で、カッシーのお母さん役でした。

ただ、「変(HEN)」の場合はチープなセットや音楽が、ドラマの内容と一致していたので、問題なかったのですが、今回のようなシリアスなドラマだとちょっとツライです。コメディだった「イタズラ…」と比較してみても、セット、ロケ地、カメラワークと、すべての面でスケールダウンしているという印象が否めません。この場合のチープさというのは、お金や手間ヒマの問題というよりも、感性の問題だと思いますが……。

さらに、ストーリー上の問題点も多々あって、いちいち指摘していくときりがないのですが、一つだけ挙げておきます。手元のTV誌を見たら、加藤あいのことを“都会派不良少女の典型”って書いてあったんですが、あの第1話を見て、そんな風に思った人は何人いるんでしょうか? ボクの感覚では、加藤あいはもちろんのこと、あのロックバンドのメンツからして、品行方正な高校生の集まりという印象しかないのですが……。黒須麻耶のどこに不良性を感じろっていうのでしょうか? (^^ゞ

しかし、こうしたマイナス面を差し引いても、加藤あい&前田愛コンビの存在感は大きいです。個人的な好み(~_~;)を差し引いても、加藤あいはタダモノじゃないと思います。1年前に「P.A.」でブツブツとしゃべっていた子とは思えない成長ぶり。CMやバラエティで見せる天然ボケっぽい表情と、シリアスなドラマで見せるシャープな表情、その落差が凡人離れしています。この第1話でも、加藤あいを撮ったカットに、一番気合いが入っていたように感じました。

加藤あいに比べると、前田愛は普通の良い娘という感じで、演技に関してもとりたててスゴイと感じたこともないし、エキセントリックな要素もないです。たとえば、加藤あいの幽霊(または悪女)だったら絵になると思いますが、前田愛の幽霊(悪女)は絵にならないと思います。(^^ゞ ただ「怪奇倶楽部」の頃から見ているせいか、非常に好感度の高い娘なので、屈折した加藤あいのライバル役としては、十分に強力な存在です。

――それにしても、加藤あいの屈折した心理って、良くわからないです。(^^ゞ


99/10/18 氷の世界(2)

演出:光野道夫(1)(2)

BGM過多というか、全体的に音楽をタレ流しているという感じがして、かえって緊迫感を削いでいるような気がするんですけど……。光野さんは「セミダブル」でもBGMをガンガンかけていて、これがフジの王道だとわかりつつも、トゥーマッチな印象が強かったんですが、今回も同じような印象です。

また、松嶋菜々子が危険な女に見えないという意見も多いようですが、これも演技力の問題というよりは、撮り方〜演出の問題のような気がします。(-_-)


99/10/18 ピーチな関係(2)

山田花子が入ってきてコメディの部分は若干改善されたと思いますが、それ以外は、良くわからないです。いしだ壱成が海に飛び込んじゃうのは、さらにワケわからないです。(^^)

ちょっと気になるのが、セックスの会話をしているシーンで、作り手の思惑としてはコメディとして見せたいんだと思いますが、ボクの目にはあまりコミカルには見えなくて、むしろ下品な会話に見えちゃうんですよね。しかも、後半になると人情ドラマみたいなテイストになるから、さらに始末が悪いです。人情路線に持っていくならセックスに関する会話は、もうちょっとマジメっぽく演出した方が良いんじゃないでしょうか?

ただし、ときどき味があるセリフが出てきたりするので、その辺は、さすが鎌田敏夫さん!……なんて思っちゃいますけど。(^^ゞ


99/10/19 OUT(2)

演出:平野眞(2)

第2話にして早くも演出家が替わってしまいました。そのせいなのか、第1話にあった、ひんやりとした緊張感が持続してないように感じました。もちろん、第1話に比べて、ストーリーが大きく動いているので、単純に演出だけの問題じゃないとは思いますが。

ボクが気になったのが、ローアングルから顔に向かってズームしていくカット。「世にも奇妙な物語」みたいで、笑っちゃうんですよね。言い換えると、作為的な演出が陳腐に見える瞬間があったということです。田中美佐子が雨の中、伊藤英明に襲われるシーンも、2時間モノのサスペンスみたいで、印象が安っぽいです。もう少し、抑えた演出で、第1話にあったドキュメンタリーっぽいテイストをキープして欲しかったです。

この点を除外すれば、なかなか見ごたえのある第2話だったと思います。特に風呂場で死体をバラバラにするシーンは、渡辺えり子のニュアンスが秀逸でした。残虐なシーンのはずなのにユーモアがあって、しかも現実のバラバラ殺人でも、こういう会話がなされているのかもしれない……というブラックテイストなところもあって、ボクのツボにハマりました。(^^ゞ


99/10/19 砂の上の恋人たち(2)

長瀬智也の演技が面白いです。基本は、この人が得意な“バカ系いい人”なんですが、深刻なシーンで欠伸をしてみたり、指を唇に当ててみたりと、意外性のある細かいアイデアが目に付きました。あと、ガスコンロに手を当てているシーンも、結構気合いの入っている映像で、主演俳優としての責任感みたいなものが感じられました。

ストーリー的には、弁護士が間に入って、話がややこしくなる感じが、視聴者に適度なストレス(もどかしい感じ)を与えていて、良かったんじゃないかと思います。


99/10/19 Vの嵐(7)

演出:熊谷拓雄

第6話から、演出が「美少女H」でお馴染みの熊谷さんに替わりました。

結局、このドラマにとって、ストーリーはどうでも良いみたいで、小ネタ、一発ネタに力を入れているような感じです。特にオイシイのが、唐突にバレーボールの歴史を語り始める松本潤で、気がついたら、二宮和也よりも存在感が大きくなってたりします。まあ、この番組の制作趣旨は、ワールドカップバレーを盛り上げることだから、その意味ではマツジュンの語りが、このドラマのエッセンスだということになるんですが……。(^^)

でも、これをやるんだったら、鈴木雅之さんですよね。もう、これは絶対に鈴木さんの得意なジャンルだから、それが一番残念です。

演出が熊谷さんに替わって、カット割りやギャグのセンスが鈴木さんっぽくなりましたが、いまひとつ切れが悪いです。逆に、表情をとらえるのが上手いのは岩本仁志さんなので、この辺が難しいところです。で、両方上手いのが鈴木さん。(^o^) ……それにしても、話が進むにしたがって、マツジュン以外のキャラクターがどんどん薄くなっているような気がします。北川弘美なんて、この先どうなるの?

T-LEVELさんも書かれていましたが、オープニングが「僕たちのドラマシリーズ」、特に「放課後」を彷彿させるテイストになっていて、妙に懐かしいです。


99/10/21 恋愛詐欺師(1)

脚本:田辺満
演出:星護(1)、村上正典
プロデュース:黒田徹也(テレ朝)、稲田秀樹(共テレ)
音楽:本間勇輔
制作:共同テレビ、テレビ朝日
関東放送枠:テレ朝・木曜夜10時

星護さんと村上正典(むらかみ・しょうすけ)さんが連ドラで組むのは、「勝利の女神」「いいひと。」「ソムリエ」(すべて関テレ・火曜10時枠・音楽:本間勇輔)に続いて、4回目になります。しかも「勝利…」以外は、稲田秀樹さんがプロデュースを務めているので、共テレ“火10”人脈が、そのままテレ朝に移動してきたような印象を受けます。

その心は、黒田徹也さんとなるんでしょうか。黒田さんは元々共テレに所属していたプロデューサーで、星さんの出世作「放課後」(92年・フジ)のプロデューサーの一人だった人です。現在は共テレとテレ朝をつなぐパイプ役を果たしているようです。

で、この作品の演出に関していうと、星さんが演出している「明智小五郎シリーズ」の影響が強いようです。冒頭の椎名桔平の逮捕シーンにしても、本間さんの音楽にしても、昭和初期のモダニズムっぽいテイストが濃厚です。また、「ソムリエ」「明智小五郎・吸血鬼」「小市民ケーン」と、このところの星演出は、映像処理が派手になる傾向があるようです。率直にいって、映像処理に関してはオフィスクレッシェンド系の人たちの方が上だと思いますが、星さんとしては、日常的な手触りを映像から排除することを目的としているのかもしれません。

星さんは自分のことを“記号派”と呼んでいるようですが、ボク自身は「放課後」の時から“レトロ〜ロマン志向”みたいなものを感じてきました。それは、古いハリウッド映画などを見たときに感じる感覚――ボクたちが住んでいる生活世界とはちがう、遠い世界に憧れる感覚です。そういう意味では、星さんは“記号派”なんかじゃなくて“ロマン派”なんだと思います。

このドラマはストーリーだけとったら、「笑ゥせぇるすまん」と大差ないのですが、そこに星さんの“レトロ〜ロマン志向”が加わって独特の世界を生み出しているといえるわけです。ただ、それが成功しているかというと、ちょっと難しい印象があります。星さんとしては日常感覚を排除したいのだと思うのですが、それでもまだ、日常っぽい部分が映像から排除しきれていないように感じます。――このドラマを見ながら、いっそのこと、星さんの演出で大河ドラマを見てみたい……なんて思ってしまいました。忠臣蔵の討ち入りとか。(^^)


99/10/21 危険な関係(2)

中江功さんといえば、カット割りの鬼……というイメージがあります。この第2話でも、細かいカットを丁寧につなぎ合わせて、個々のシーンの流れを組み立てているのが良くわかるので、ボクみたいな些細なことにこだわる視聴者が見ると非常に疲れます。(^^)

思うに、中江さんという監督は、引き算の発想で映像を組み立てているのかもしれません。つまり、インパクトのある映像をモノにすることにエネルギーを費やす…というよりは、ドラマの雰囲気を壊すような要素を映像から徹底的に排除している……という感じがします。

たとえば、引きのカットでセット全体を映すと、安っぽい感じになってしまう場合は、手や顔のアップ映像だけで、そのシーンを組み立てる。その結果、引きのカットで撮れば1カットで済む部分が、10カットくらいに増えてしまうけれど、そのための苦労は惜しまない……。「眠れる森」のとき、撮影が大変で“眠れぬ森”と呼ばれた、というエピソードがありましたが、このドラマも見ていると現場の人の悲鳴が聞こえてきそうで、ホント疲れちゃいます。

良い子の皆さんは、細かなことにこだわらないで、素直にドラマを楽しみましょうね。(^^ゞ


99/10/23 離婚疎開

第11回ヤングシナリオ大賞
脚本:大竹研
演出:平井秀樹
プロデュース:杉尾敦弘
出演:橋本裕貴、谷口紗耶香、塚本高史、他
関東放送枠:土曜午後3時

放送日から1ヵ月以上過ぎてからコメントするのもマヌケっぽいんですが、一応簡単にコメントしておきます。(^^ゞ

ヤンシナはフジの若い演出家が演出するという慣例があるようです。今回の平井秀樹さんは、現在「危険な関係」の演出補を務めている人で、深夜ドラマなどでも見掛けた記憶がないので、多分これが初演出作だと思います。第一印象は、顔アップが多い人……という感じ。心持ちローアングルからとらえた表情のアップでガンガン押していくシーンが多くて、その思い切りの良さに若さを感じました。お風呂場のシーンとか、ほとんどアップばっかりだったし。(1ヶ月前の記憶で書いているので、違ってたらゴメンナサイ)

ただし、単に顔アップが多いだけじゃなくて、表情を捕らえるセンスも良かったと思います。放課後の教室で主人公の少年と先生が話をするシーンなども、(何の話をしていたのか覚えてませんが)表情のニュアンスでストーリーを組み立てているのがよくわかって、見ごたえがありました。一方、あまり多くなかった引きのカットでは堤幸彦さんあたりに通じる構図のセンスみたいなものを感じました。

それにしても、主役の少年(橋本裕貴)を坊主頭にするというのは誰のアイデアなんでしょうか。ポイント高いと思います。長髪のときはあんまり存在感を感じなかったんですが、坊主頭になったとたんに表情に深みが出てきました。――やっぱ、テレビドラマは演技力より演出だよ!……なんて思ってしまいました。(^^)

それから、共演の谷口紗耶香は今年の2月に放送された深夜ドラマ「Trars」に出ていた子です。共演が大竹まことで、演出は「怖い日曜日」でおなじみの大根仁さん。この日誌でもコメントしてます。

ところで、ヤングシナリオ大賞に選ばれるシナリオって、毎回同じような内容が多くないですか? 「白線流し」の二番煎じみたいな地方を舞台にした青春ドラマ。審査員の好みなのかもしれませんが、もっと物語性の強い脚本家に光を当てて欲しいなと思います。きっとサイバーパンクみたいな作品は、応募しても落とされちゃうんだろうな……なんて思いながら見てました。(^^)

……ここ数年の作品を見ていると、芸術祭参加作品のミニチュアみたいな感じで、「この脚本家に注目しよう」という気持ちになれる作品がありません。別に芸術祭参加ドラマが全部つまらないといっているワケじゃないんですが、全体的な傾向として上品すぎるという印象があります(ヤンシナも含めて)。ボクとしては「終のすみか」の大石静さんみたいな毒がないと物足りないですね。(^^) まあ、ボクの個人的な感想なんてどうでもいいんですが、「白線」みたいな視聴率的に失敗した作品の二番煎じが大賞に選ばれるというのは、商売的に見てもマズイような気がします。


99/10/25 ピーチな関係(3)

選曲のセンスを疑いたくなる場面がいくつかあって、特に疑問だったのが、ドラマの後半、主役の3姉妹が激しく言い合いをするシーン。10〜20年くらい前の人情系ホームドラマみたいなホノボノとした音楽がかかっていて、なんで?、なんで?、なんで?……という感じで、開いた口がふさがらなかったです。(^^)


99/10/28 3年B組金八先生(3)

演出:福澤克雄(1)、山崎恆成(2)、鈴木早苗(3)

先週の第2話が、脚本的にも演出的にもトーンダウンしていて、箸休めみたいな印象だったのですが、第3話はまたまた風間俊介が大活躍。……すっかりハマってしまいました。(^^)

風間俊介って、TV雑誌など、写真で見ると地味な顔してるのに、ドラマで見るとホントに味のある顔をしていますね。たとえば、小西美帆を見るときの表情は、悪魔的な表情とは違う、彼のもうひとつの顔が、しっかり伝わってくるので、見ていて飽きないです。小西美帆が、自称GTOの男教師のバイクに乗るところを、複雑そうな表情で見つめているカットも印象的です。――存在感では他の生徒はもちろんのこと、主役の武田鉄矢でさえも食われてる感じがします。

「美少女H」出身の小高早紀は、「金八4」の小嶺麗奈みたいなキャラクター設定のようですが、とにかく風間俊介が凄すぎて、印象がかすんでいます。(^^)

鈴木早苗さんは、第1話のサスペンス風の演出を受け継ぎつつ、ドキュメンタリーっぽい臨場感も重視していたみたいで、特にロケシーンなどで、その空気感を伝えるカメラワークが印象に残りました。また、笑いのシーンとシリアスなシーンを切り替える際のカット割りも上手くて、そういう意味で非常に完成度の高い演出だったと思います。

もうひとつ。鈴木さんは音楽の使い方/選曲のセンスが若いです。あくまでも比喩ですが、モーツァルトやショパンじゃなくて、サティとかドビュッシーがわかる世代の音楽センスといったら、わかってもらえるでしょうか?


99/10/28 Vの嵐(14)

この日の脚本について、一言コメントしておきたくなりました。松本潤が「父さんみたいな、つまらない大人にはなりたくない」という、青春ドラマの定番中の定番といえるセリフを言うシーンがあるのですが、それに対する父親のセリフが出色でした。

「つまらないのは私じゃない。人生なんてものは、誰にとってもその程度のものなんだ。」\(^o^)/

まるで「彼女たちの時代」の平泉成みたいなセリフです。テレビドラマというのは、安直な解決や無責任な夢を安売りしている傾向があります。それはある程度、仕方ない面もあるのですが、そうした傾向に抵抗する部分がなくなっちゃうと、どんどんつまらなくなっちゃいます。そういう意味では、やはり山田太一岡田惠和的なこだわりは大切だと思います。――「つまらないのはテレビじゃない……」な〜んて反論されたら困っちゃいますけど。(^^ゞ

このドラマ、上記のセリフに限っていえば「TEAM」などよりもクオリティが高いような気がします。もちろん、「砂の上…」に出てくる本上パパ(西岡徳馬)に、こういう含蓄があるセリフは期待できません。高木登さんは、新人の脚本家だと思われますが、この一言に脚本家としてのこだわりを込めたのではないでしょうか。ひょっとしたら、たまたま執筆時に「彼女たち……」を見て、深津絵里のナレーションに影響を受けただけなのかもしれませんが。(^^)

演出は1週目の岩本仁志さんに戻ってますが、岩本さんの場合、あくまでも青春ドラマのフォーマットをキープしたいみたいで、笑いの要素を入れるにしても、そのフォーマットを壊さない範囲内で取り入れてるようです。全体的にオレンジっぽいカラー処理が多くて、カメラアングルや表情の撮り方がオシャレです。ただ、バレーボールの試合のシーンは、もっと迫力が欲しかったです。


99/10/29 チープラブ+(3)

演出が松原浩さんになって、ドラマ全体のテンポ感が「ママチャリ刑事」みたいになりました。(^o^) ただ、ボクの場合、主役の2人のキャラクターにまったく魅力が感じられないので、そこが見ていてツライです。(-_-;)


99/10/30 青い鳥症候群(3)

演出:今井和久(1)(2)、徳市敏之(3)

このドラマ、結構気に入ってます。第1話の時の日誌では書き忘れましたが、このドラマは大映ドラマだけじゃなくて、“ネオ大映ドラマ”の系譜も意識しながら見ると、いっそう興味深く見れます。といっても、“ネオ大映ドラマ”というのはボクがかってに作った造語で、「家なき子」「闇のパープルアイ」「若葉のころ」「青の時代」「ガラスの仮面」あたりの作品を指しているのですが……。過酷な運命に翻弄される主人公を描いた、現実離れした物語という意味では、「この世の果て」や、今回の吉本昌弘さんが脚本を書いた「もう誰も愛さない」「あなただけ見えない」なども、その系譜の中に入れても良いかもしれません。(^^)

このドラマの場合、すべての事情を知っているのは視聴者だけで、ドラマの登場人物は善人にしても悪人にしても、秘密の一端しか知らないワケです。その辺の入り組んだ構造が大映ドラマ的です。演出の方も、第2話になってから持ち直してきたみたいで、安達祐実と羽田美智子が視聴覚室で対決するシーンとか、安達祐実&上里亮太の貧乏臭い純愛シーンなど、ウソ臭いけどインパクトのあるシーンが増えてきました。(^^)

第3話は「ショムニ」「ソムリエ」「なっちゃん家」「ナオミ」など、主に共テレ系のドラマで名前を見掛ける徳市敏之さん。音楽の使い方/選曲のセンスが確実に違っていて、サスペンス〜ホラー系のギミック(仕掛け)を多用していました。芝居そのもののテンションは、今井さんが演出した第2話の方が高かったと思いますが、ドラマ全体のインパクトは、サスペンス〜ホラー風の第3話の方が高かったかもしれません。(^^)

それにしても、すっかり悪人役が板に付いてしまった野口五郎に比べると、羽田美智子はやはりインパクト不足かな……。(^^ゞ


99/10/31 元禄繚乱(43)

第43話「吉良の茶会」
脚本:中島丈博
演出:大原誠

気が付いたら「元禄繚乱」が佳境に入っています。ここ数ヶ月、ほとんど見ていなかったので、TV雑誌で最近のストーリーをチェックしながら、またまた見始めました。(^^)

先週の第42話「帰らぬ人々」(演出:片岡敬司)というのが凄くて、ほとんど大映ドラマのような展開になってます。要するに、運命に翻弄される人たちの悲劇がいっぱい出てくるワケです。(^^)

中山エミリが出てる……な〜んて思ってたら、あっけなく自殺しちゃうし、その自殺の動機が「ロミオとジュリエット」みたいな勘違いだから悲劇的です。その他にも、死(討入り)の恐怖から錯乱して、辻斬り(通り魔?)になってしまった若い浪士を、思い余って斬り殺してしまう六平直政とか。――「スクールウォーズ」でイソップ、岩崎良美、梅宮辰男ら次々に死んでいった場面を連想しちゃいました。「討ち入り後に、あの世で詫びようぞ」とか言ってる中村勘九郎の顔が、山下真司にダブってきます。(^^ゞ

これ以外でも、運命のイタズラ的なエピソードがいくつかあるみたいで、滝沢秀明と今井翼は、お互いに敵だとは知らないで友達になってるみたいです。この2人はいつ真実に気がつくんでしょうか。討ち入りの現場でしょうか。だとしたら、それはそれで大映ドラマ的なカタルシスが全開ですね〜。(^o^) このドラマの滝沢秀明には興味なかったんですが、こうなってくると、滝沢を吉良側にキャスティングしたのは正解かもしれないですね。「父(上野介)は自分が守る」なんて言ってるようだから、悲劇的に派手に死んでくれることでしょう。(^^)

また、高橋一生は実の父親が吉田栄作で、育ての親が村上弘明のようです。村上はこのドラマでは、悪の権化みたいなキャラで、討ち入りを機に朝野本家も取り潰そうとしている策略家だから、高橋一生の苦悩がオイシイです。この日の放送でも村上から「どっちにつくんだ〜」と問い詰められて、不敵な笑みを浮かべていました。

演出の話は、またそのうちに……。来週はサブタイトルに「討ち入り」とあったけど、もうやっちゃうの? まさか、討ち入りシーンだけで2〜3週間持たせるつもりなんでしょうか。……それはそれでスゴイかも。(*^_^*)


99/10/31 ヤマダ一家の辛抱(3)

演出:爲川裕之(3)

このドラマも持ち直しつつあるようです。特に今回は、深夜ドラマみたいな実験的なアイデアや、共テレ的なカメラワークが登場していました。カノックスも若手の台頭が進んでいるということなんでしょうか。「母を訪ねて三千里」の主題歌が出てくるところとか……ね!(^^)

それにしても、このドラマ、脇役のキャスティングが渋いですね。由紀さおり、利重剛、鈴木その子もそうですが、若手でも、ともさかりえの友達で直瀬遥歩、ボーイフレンドで天野浩成、家庭教師役で伊藤英明、となかなかオイシイところを揃えています。天野浩成は、1年前に堤幸彦さんが演出した「少年サスペンス」(テレ朝・木曜深夜)の最終シリーズで主役をやってた人で、ちょっと顔が羽賀研二みたいですが、印象に残っています。現在は、月曜深夜の「賭事女王」にも出ています。


99/11/06 青い鳥症候群(4)

演出:今井和久(1)(2)、徳市敏之(3)(4)

演出にしても脚本にしても、完成度は相変わらず高いです。安達祐実や野口五郎の悪党ぶりや、ハムの人よろしく良い人のままアッサリ殺されてしまいそうな別所哲也など、いろいろ見どころはありますが、上里亮太&安達祐実のイケナイ近親愛にも注目しておきたいです。(*^_^*)

この2人、第2話のころから、エロチックな雰囲気があったのですが、今回はキスで盛り上げてくれました。(^^) 安達祐実が眠っている兄にキスして病室から出て行くと、寝たふりしていた兄が目を開ける……。思わずテレビの前で「このスケベ野郎!」と口走ってしまいましたが、演出的にはもう一押し工夫が欲しかったです。それでも、今期のドラマの中で一番エロチックなカップルだと思います。(^_^.)

ところで、「ガラスの仮面」のB'zに比べると、今回は、ラルクのテーマ曲がかかっているシーンが少ないような気がします。


99/11/06 サイコメトラーEIJI2(4)

脚本:小原信治(1)(2)、田子明弘(3)(4)
演出:猪俣隆一(1)(2)(3)(4)

第1話の日誌で「通過点じゃない」という井ノ原快彦の発言を引用しましたが、その言葉の重みを改めて実感しています。(^^) たとえていうと、「土9ドラマスクール」の卒業記念制作を見ているような感じがします。出演者やスタッフの過去の作品(メトラー1、FIVE、LOVE&PEACE、天国に一番近い男、熱血恋愛道etc)での経験が、このドラマで結実しているような手応え……というか充実感が、画面から伝わってきます。

ボクの場合、「メトラー1」の時は、主役3人のギャグに違和感がありました。「目の前で人(友達)が死んでるのに、何でギャグなんて言ってられるんだよ〜」なんて思ってました。ところが今回はそうした違和感が一切ありません。ドラマのテイストが劇画調になったこともあるとは思いますが、やはり3人の演技力〜引き出しの違いによるところが大きいです。同じネタを別の人がやっても面白くないはずですから、コメディにおける演技力の重要性を再確認しました。爆笑問題のギャグだって、演技力が占める比重が大きいでしょ。

第4話の話をまったく書いていませんが、とりあえずこんなところで……。(^^ゞ


99/11/07 怖い日曜日

演出:二階健
撮影:斑目重友
出演:藁谷亮太、辰巳雄大

タイトルバックの二階健さんが、本編のドラマも演出してくれました。(^o^) 今回はドラマになっていない第2話を別にすれば実質2話構成なんですが、梨本威温が出た第1話が極端に短くて、放送時間の半分以上を第3話に費やしていました。たしかに、7分くらいのドラマを2本見せられるよりも、3分+11分とかの方が面白いかもしれません。

で、その第3話の主演は藁谷亮太という生田斗真みたいな顔をした子供で、おじいちゃんの死を通じて死の意味を学ぶというものなんですが、お話としてはこの前の週にやった錦戸亮と犬の話の方が良かったかな。(^^) それは置いとくとして、子供とおじいさんの回想シーンでは、二階さんお得意の“腐食したフィルムみたいな映像”が見られました。それ以外の映像にも妙なこだわりが感じられるので、やはりクレッシェンド一派の映像感覚というのは、尋常じゃないですね。あと、音楽/選曲のセンスも若い感じがして、ミュージック・ビデオ畑で仕事をしている人の特徴なのかな……なんて思ったりしました。涙を誘うシーンも多かったですが、ボクの場合、映像やカット割りよりも音楽の方にインパクトを感じました。

ところで、斑目(まだらめ)重友って名前に見覚えありますか? 「ケイゾク」で村井克行が演じていたSWEEPの役名です。ところが「ケイゾク」の撮影スタッフにも、唐沢悟さんと一緒に斑目重友さんっていう人がクレジットされているんですよね。ドラマ見てたときは、うそ臭い名前が面白いって思ってたんですが、実在する人物・名前だったみたいです。(^^) ここ数週間、この「怖い日曜日」の撮影のクレジットが斑目重友さんになっています。(^^)


99/11/07 元禄繚乱(44)

第44話「いざ討入り」
脚本:中島丈博
演出:遠藤理史

前半の作戦会議のシーンが重厚で良かったですね。特に印象に残ったのは、討入りに失敗したときの対処について話をするところ。「縁起の悪いことは口にするな」という日本人特有の風潮に対する批判とも取れる内容でした。失敗したときの想定をしないというのは、戦争期の日本軍の特徴らしいですから。日本政府も敗戦時のマニュアルなんて用意してなかったみたいだし……。現在でも「負ける」とか「死ぬ」という言葉を口にすることを嫌う風潮は残っていますね。

話を演出に戻します。大河の場合、俳優の重々しい演技に依存した演出をするという伝統があるみたいなので、そういう意味で、面白味に欠けるという一面があります。この回は重々しい雰囲気が全体に漂っていたんですが、大きく分けると、中村勘九郎のセリフ回しで重くするケースと、表情で重くするケースに分けられるようです。たとえば、前述の作戦会議のシーンでは、部屋全体(赤穂浪士が全員集まってる)を映したカットに中村勘九郎のセリフを組み合わせて、重々しさを出していました。

部屋といえば、赤穂側の部屋は昼間でも照明が暗くなっていて、貧乏臭い雰囲気を醸し出していたようです。ちなみにこのドラマの演出に関しては、公式サイトからリンクされている「電脳細見・元禄繚乱」というサイトに連載されているスタッフのエッセイに詳しく書かれています。なかなか面白い内容です。ただし、コンテンツが多すぎて、どこに何があるのか良くわからなくなっているので、以下のリンクからダイレクトにジャンプすることをオススメします。(^^)
(http://www.mm-taiga.com/taiga/free/kotohajime/butaiura/diary/index.htm)

ところで、今回最大の見どころは、今井翼が滝沢秀明の素性を知ってガクゼンとするという、大映ドラマ的なシーンだったんですが、ふたを開けてみたらものすごくアッサリした演出で、45分中で最もテンションが低いシーンになってました。2人の演技を批判する声もあるようですが、ボクが見た感じでは、演出の責任も大きいと思います。(1)収録時間が足りなかった、(2)演技力に依存しない演出が苦手だった、(3)このエピソードを重要と考えていなかった、(4)ジャニーズか嫌いだった、(5)単純に手を抜いた……の、どれかなんじゃないでしょうか。(-_-;)

滝沢秀明は友達と別れるのが辛くて、正体を明かす決心をするワケでしょう。なのにその辺の心理描写を考慮したカメラワークをしていないから、ドラマチックにならないんですよね。今井翼が吉良邸に招かれてビビるシーンも、ちょっぴりサスペンス風の演出をしてやれば、かなり印象は違ったと思うんですけど……。足音とか、門が閉まる音を強調するとか。

ただし、その直後の中村勘九郎と今井翼のシーンには緊張感があって、中村勘九郎の存在感の大きさを感じました。ただ、そのシーンでも極力今井翼を撮らないようにしていたような感じはありました。――ジャニーズファンの女の子は、共演女優にカミソリを送っている暇があったら、NHKに絵コンテ(カット割りを絵に描いたもの)でも送りつけてやりましょう。(^_-)


99/11/08 ベストフレンド(4)

脚本:矢島正雄
演出:森田光則(1)、冨田勝典(2)、根本実樹(3)、倉貫健二郎(4)

ははは……。1話から4話まで全部演出家が違うドラマってめずらしいと思います。ただ、芝居の演出に関しては2話以降、少しずつレベルアップしているような感じがします。特に今回は、主役2人の人間関係が若干発展して、単純なケンカとは違うニュアンスが増えていたようです。脇役系も少しずつ出番が増えているし。(^^)

このドラマは脚本(基本的なキャラ設定)に問題点が多いので、ボクなんかは、意味もなく「セックスした」とか「ここは東京よ」などと言いまくる加藤あいに対して、“田舎者なのはお前の方だよ”などとツッコミながら見ていました。まあ、“エッチした”と言わないで“セックスした”と言っているところに、ある種のこだわりを感じましたが……。(^^)

ただ、この4話あたりから物語が大きく動き始めたみたいで、その結果、設定上の違和感が気にならなくなりました。「セックス」とか「東京よ」も、あんまり出てこなかったし……。また、物語の方も単純な予定調和には行かない気配もあって、ここは矢島さんの腕の見せ所でしょう。複雑な予定調和を目指してください。(^^ゞ


99/11/08 ピーチな関係(5)

先週から演出が国本雅広さんに替わりました。だからなのか、音楽の使い方とか、シーンの切り替えがスムースになりました。先週の、いしだ壱成が厨房で悩んでいるシーンとか、松下由樹と別所哲也が大喧嘩するシーンなどに、違いが明確に表れていました。松下−別所の大喧嘩は今週もありましたが、カメラワークや音楽の使い方が同じだったので、このままワンパターンの美学を追及していって欲しいと思います。(^^)

また今週は、歌モノをBGMに流すところも上手いと思いました。曲自体はあまり好きじゃなかったですが、音楽そのものの感情曲線と、ドラマ(物語)の感情曲線を巧みにシンクロさせていて、曲が終わったときに「このシーンに着地させたかったのか」という手応えがありました。京野ことみが八百屋の前を素通りしながら、青木堅治にチェックを入れるシーンのカット割りもオシャレでした。(^^)

それ以外でも、カット割りや音楽のセンスが全体的にオシャレになっていて、エッチに関する会話も減っていたので、見た後に残る印象かスッキリとしたものになりました。――演出家の違いを実感するのに格好のテキストになりそうなドラマですね。(^^)

それにしても、国本さんは月10枠に登板することが多い演出家ですね。過去2年間を振り返ってみても、「凍りつく夏」「奇跡の人」「女医」「ピーチ」と、登場率5割です。……それはともかく、セックスを描くという当初のテーマは、どこにいっちゃったんでしょうか?


99/11/08 賭事女王(5)

脚本:大森美香
演出:稲葉正宏

今週から演出が関卓也さんから稲葉正宏さんに替わり、ドラマ全体の雰囲気が変わりました。(ただし、先週のクレジットをちゃんと確認していません) シリアス〜サスペンス風の演出が増えて、コメディ風――特にドタバタ風の要素を抑えていたようです。その結果、ドラマ全体のテンポ感が落ち着いた感じになっていました。もちろん、笑いの要素もしっかりとあるんですが、そうしたシーンでもうるさくしないで、クールでスマートな笑いにシフトしている感じがします。

……勘の良い方なら、すでにわかっているかもしれませんが、こうした演出は、共同テレビの小椋久雄さん、高丸雅隆さんが得意とするスタイルです。具体的な作品名でいうと、「ニュースの女」「殴る女」あたりです。ちなみに、最近の稲葉さんの仕事として思いつくのは、「美少女H2」(黒坂真美、柏原収史)の演出です。演出補としてもときどき目にする名前ですが、作品名までは思い出せません。(^^)

それにしても、ドラマ後半のサイコロ勝負のシーンでの、木内晶子の目がすごかったですね。この“目”をモノにできただけでも、このドラマにとっては大きな収穫でしょう。このシーンにおける表情をとらえるセンスにも、「殴る女」の和久井映見に通じるものを感じました。


99/11/10 TEAM(5)

演出:河野圭太(1)(2)(4)(7)、西谷弘(3)(5)(6)(8)
出演:仲根かすみ、矢沢心、etc

この日誌を書いている時点では第7話まで見ていますが、その中ではこの第5話が一番良くできていたように思います。お笑い部分もシリアス部分もカッコ良く決まっていました。

西谷弘さんは、「走れ公務員」「リング」「ナオミ」「らせん」「TEAM」と5クール連続のドラマ演出なんですが、この間に演出の引き出しを増やしたのでしょうか。「走れ公務員」のときのコメディはいまひとつだったんですが、今回の「TEAM」ではスタイリッシュな笑いの方法論がきっちり形になっているようです。

「TEAM」(特にこの第5話)における西谷演出は、コミカルな表情のアップをテンポ良くつないでいくことにエネルギーを注いでいるみたいです。第3話における戸田菜穂のケチャップ顔とか、第5話で戸田の留守電にメッセージを入れているときの草なぎの表情など、“表情の面白さ”に対するこだわりが強く感じられます。こうした表情のアップの断片をパズルのように組み合わせて笑いを作っているシーンが多かったです。たとえば、車の中でおにぎりやハンバーガーを食べるシーンは、表情の面白さと、カット割りのパズル的なテンポ感のシンクロが、笑いのキモだったように思います。

また、セリフ(やりとり)を聞いている人物のリアクションの表情を丁寧に撮っていたのも印象に残りました。たとえば、西村雅彦と女子高生の会話――「だったら、なんでこんな高いバッグを持ってるんだ」「パンツ売ったから」の直後に挿入される、仲根かすみの笑い顔とか。草なぎの「アレの時」という言葉を、黒木瞳が「セックス」とハッキリ言ってしまったとき、横で聞いていた水野美紀が吹き出しているカットとか。

シリアス部分では、仲根かすみが簡単に改心しちゃうあたりがイマイチだったんですが、その後の矢沢心の援助交際肯定論がインパクトあって、さらに仲根かすみが別れ際に「女はプレゼントだ」とダメ押しを入れるところも上手かったです。しかも、その後のエンドロールでは「買う側の言い分」をしっかりと盛り込んでいたりするので、予定調和を壊したいという君塚良一さんの悪意(?)が、頼もしく思えました。(^^)

ところで、君塚さんというと、90年代初期の“冬彦さん”とか90年代後半の「コーチ」「踊る」などが有名ですが、実は90年代中盤に視聴率的に低迷していた時期があります。作品でいうと「時をかける少女」「青春の影」(94年)「ヘルプ!」(95年)で、すべて夜8時台のドラマですが、君塚さんという脚本家について考える時にこれらの作品は重要だと思います。たぶん君塚さんは、十代とか少年に対するこだわりがかなり強いんじゃないかと予想してます。だから、今回の作品を見ていると「青春の影」という異端の月8ドラマを思い出しちゃいます。出演は河相我聞、袴田吉彦、持田真樹で、暴力に走る十代の心の闇を描いた意欲あふれる失敗作でした。(^^)


99/11/19 キャッチボール日和

原作:重松清
脚本:高木凛
演出:笠置高弘
プロデュース:笠置高弘
出演:宇崎竜童、真野響子、栗山千明、竹内勇人、萬田久子
制作:関西テレビ
関東放送枠:金曜夜9時

このドラマは脚本に疑問を感じますね。単純な予定調和にはなっていないと思いますが、基本のラインは“息子は父親の背中を見て育つ”みたいな古臭い親子像の焼き直しという感じです。21世紀を前にして、以心伝心みたいな親子像しか描けないというのは、ツライものがありますね。なんか“父性の復権”とか“歴史教科書の見直し”とか言ってる連中と、同じメンタリティに依拠しているような気がします。高倉健の映画を縮小再生産しているような感じもあるかな。

作劇上のテクニックついていうと、父子の関係がテーマなのに、父子の会話の部分を徹底的に省略していたのが特徴でしょうか。「昨夜息子が……と言っていた」みたいなセリフが多すぎました。まあ、テーマがテーマだからね……。このドラマのテーマに共感できる人が見たら、すばらしい作劇テクニックとなるのでしょう。以心伝心がテーマのドラマで、親子が「朝まで生テレビ」みたいに議論しちゃまずいし。(^^)

でも、笠置高弘さんの演出は悪くなかったと思います。冒頭、栗山千明と竹内勇人が会話している真夏の公園の回想シーンとか、映像の質感や光の加減を含めてなかなかいい雰囲気でした。笠置さんは芝居の間とかセリフの合間のニュアンスを生かすのが上手くて、「こいまち」(99年1-3月)のときの演出が印象に残っています(河相我聞と戸田菜穂の回)。

基本的には暑苦しい演技よりもストイックな感情表現を好む傾向があるような気がします。このドラマのラストシーンなどは、演出家の趣味が反映されやすいシーンなんですが、笠置さんは、息子の竹内勇人が父親にボールを投げた後に浮かべる微かな笑みに、ドラマのクライマックスを託したようです。竹内の声で音楽や効果音が消えて沈黙、その後、風の効果音が入って投球、捕球の音にはエコーを掛けまくり……(^^)。で、親子の顔アップがしばらく続いて竹内の微かな笑み……とまあ、こんな感じでした。この表情は良かったです。

ちなみに竹内勇人は、もうひとつ面白い(?)表情があって、それはアザだらけの身体でシャワーを浴びているシーン。夢遊病者みたいな無表情がウソっぽくて笑っちゃいました。(^o^) シリアスなドラマの中で、このシーンの演出意図は、笑わせることだったんでしょうか?

笑っちゃうといえば栗山千明。「コワイ童話・親ゆび姫」の印象がまだ頭の中に残っていたんで、意味深な笑顔を見るたびに、小人化した高橋一生をいじめているシーンを連想しちゃいました。(^^) それはともかく、いろいろと使いでがありそうな子ですね。「エコエコアザラク」の頃の佐伯日菜子とか、水川あさみに通じるものがありそうです。(^^)

ところで、ラストシーンに出てきた建設途中の高速道路。どこから見つけていたんでしょうね。せっかくだから、もう少し映像にスケール感が欲しかったです。エンドロールを見ながら、まさかオープンセットじゃないよな……な〜んて考えてました。(^_-)


99/11/20 ズッコケ三人組2(6)

第6回「ズッコケ大運動会」
脚本:藤本匡介(6)、江頭美智留(7)
演出:兼歳正英(6)(7)
出演:石坂晴樹、斎藤慧、内村智章、芝崎義紀、木村良平、他
関東放送枠:土曜夜6時

このドラマの舞台が何処なのか良く知りませんが(架空の町かな)、ドラマを見た印象だと、東京近郊で海が近くにある町のようです。特に学校の校庭から海が見える光景は、合成なのかもしれませんがなかなか味があります。

で、この第6話はロケシーンが多かったせいか、地方都市の風情みたいなものが画面から伝わってきて、印象に残りました。ロケーションの良さに加えて、カメラアングルなどにも微妙なセンスの良さを感じたりして、良質の地方局ドラマを見ているような気分になりました。少年たちの表情なども、いつもより微妙に味があったような感じましたが、これはボクの気のせいかもしれません。(^^) なお、兼歳正英さんという演出家の名前を意識するのは今回が初めてで、パート1に参加されていたのかどうかもわかりません。

このドラマは、パート1の時は戸田山雅司さんが脚本を担当していましたが、今回のパート2は一話ごとに脚本家が替わるみたいです。ちなみに今回の藤本匡介さんは、初めて見る名前です。

ドラマと関係ない話を一つ。第7話エンディングのトークコーナーで、主人公3人の宝物を紹介していたのですが、ハチベエ役の石坂晴樹の宝物がKissのアナログ盤(帯付き!)でした。親の影響なのか事務所の影響なのかわかりませんが、なんか異様な光景ですね。彼はジャニーズだから後者の可能性が高そうですが、いたいけな小学生をKissファンに洗脳しちゃうジャニーズ事務所って何考えてんだ!?(~_~;)


99/11/21 元禄繚乱(46)

第46回「討入りの日」
演出:大原誠

この回は緊張感がありました。大原誠さんは表情の捕らえ方に凄みがあって、見ているこちらまで力が入ってしまいます。心持ちローアングルで、画面の上端が眉の上あたりで切れるアップに、良いカットが多かったです。光のあて方も真横からあてて、表情に独特の陰影をつけていました。特に松平健とか。

また、村上弘明と柳沢慎吾が軒先で会話しているシーンで、そばで聞き耳を立てている高橋一生の顔アップをド〜ンと挿入していたのも、インパクトがあって良かったです。そういえば、以前この日誌でコメントした、不敵な笑みを浮かべる高橋一生のカットも大原さんが演出した回でした。

討入り直前のシーンの緊迫感も良かったです。部屋の中に人が入ってくる度に、四十七士たちが身構えていたのが、緊迫感を高めていました。また吉田栄作に討入り参加を告げる場面でも、四十七士の表情を「金田一少年」風にバン!バン!バン!と挿入していて、カッコ良かったです。(^^)

いずれにしても、この第46回の緊迫感というのは、1年続いた『元禄繚乱』における陰のクライマックスと呼んでも良い出来だったんじゃないでしょうか。ちゃんと見ていないボクが言うのもおかしいんですけど……。(~_~;)


99/11/24 TEAM(7)

演出:河野圭太(1)(2)(4)(7)、西谷弘(3)(5)(6)(8)
出演:升毅、etc

西谷さんがカット割りのテンポ感でドラマを組み立てている印象が強いのに対して、河野さんは芝居のテンポ感〜緊張感を重視しているようです。たとえば河野さんが演出した4作はすべてそうなのですが、取調室での少年とのやりとりのシーンに緊張感があって、ボクは結構好きです。特に少年の顔に正面から光を当てないで、表情をわかりづらくしているところなども、少年の心の闇を象徴しているみたいで味があります。

取り調べのシーンに限らず、1対1で会話をするシーンに緊張感があるケースが多く、「古畑」3シリーズすべてに参加している河野さんならではの演出と言えるかもしれません。この回で言えば、西村雅彦と黒木瞳のシーンとか。升毅の逮捕シーンも「古畑」っぽかったです。(^o^)

ちなみにドラマアカデミー賞の脚本賞は、野沢尚さんに決まったそうですが、ボクとしては、このドラマの君塚良一さんにとってほしかったです。ハッピーエンドにならない一話完結のスタイルに挑戦していたと思います。


99/11/24 悪いオンナ・プレイヤー(4)

脚本:大野美智代
演出:石井康晴(1)(2)、金子文紀(3)(4)
プロデュース:植田博樹荒井光明、他
出演:国仲涼子、橋龍吾、他
制作:TBS、VSO
関東放送枠:TBS水曜深夜

いろいろ忙しかったので、ちゃんと見たのはこの第4話だけなんですけど、なかなかの力作でした。1〜3話は後半15分だけとか、仕事しながらとか、断片的にしか見ていません。……というワケでストーリー展開とかは、よく飲み込めていないのですが、最終回は2段オチないし3段オチという手の込んだ終わり方になっていました。

1〜3話の物語はすべてTV局が仕掛けた実験ドラマの収録で、主役の橋龍吾だけがそのことを知らされていなかった……というのが最初のオチ。ところが、橋だけが知らないというのもドラマ内ドラマで、収録が終わって、橋を含めたスタッフで打ち上げパーティーをやる……というのが2つめのオチ。で、パーティーの後にプライベートタイムを過ごす国仲&橋を隠しカメラが撮影していて、これはプロデューサーの指示で行われている続編の収録だった……といのが3番目のオチ。強力だったのは最初のオチだけで、2番目3番目は良くあるタイプのオチなんですけど……。(^^)

このドラマで一番最初に気になったのは、ロケ映像がきれいなこと。どういう処理を施しているのかはわかりませんが、画面の質感に深みがあって良かったです。スタッフの名前を見ると、「天国に一番近い男」と「ケイゾク」の関係者がそろっているみたいなので、将来のTBSを担う若手スタッフが作った実験ドラマといえるのかもしれません。

金子文紀さんに関しては、「コワイ童話・親ゆび姫」のときの日誌にシュールレアリズム的だと書いたのですが、今回も独特の映像センスが感じられました。断言はしませんが(笑)、共テレ系とかオフィスクレッシェンド系の映像作品の影響だけでは説明できないようなオリジナリティを感じます……? ――ただし、第3話のラストシーン(屋上〜転落シーン)は、石井康晴さんが演出した「コワイ童話」(アリスガワさんの話)を連想しました。


99/11/25 3年B組金八先生(7)

演出:福澤克雄(1)(4)(7)

この回は演出的には見どころが多かったです。1年前に福澤さんが演出した『あきまへんで!』で大活躍したステディカム(ブレない大型ハンディカム?)が、この第7話でも活躍していました。――なお、この第7話に関しては、テレビドラマデータベースの掲示版でメカワカミさんが面白いコメントをされていましたが、そちらは既に消えちゃっているので、以下の日誌は、メカワカミさんのコメントを無断盗用しながら書かせていただきます。(^o^)/

で、ステディカムなんですが、ロケシーンでは全面的に使用されていたみたいで、切れ目のない長いカットが多かったです。登校時の万引シーンや、階段の踊り場で風間俊介(兼末)が「俺の顔をつぶすんじゃねぇ」と脅しをかけているシーンは、シーン全部が1カット一発撮りで撮影されていました。また、風間俊介が小西美帆(渡辺先生)にアタックをかけているのを目撃した岡あゆみ(ちはるちゃん)が、狭い路地を走り去るところから佐野泰臣(幸作)にバッタリ出会って夕食を作る話になるくだりも1カット。その後の風間&小西の2ショットウォークもほぼ1カットでした。……以下省略。(^^)

今回の金八は一話完結のスタイルを完全に放棄してしまったみたいで、この回も変則4部構成と呼べるような作りになっていました。
(1)幸作→ちはる→兼末→渡辺先生という三角関係描写
(2)兼末兄のバイオレンスホラー
(3)第1話以来の金八の長説教
(4)「学校に行こう」で選ばれた不良3人組によるおバカモード

(1)では、下町の狭い商店街のシーンに趣があって、「金八」にはめずらしい映像的な味わいがありました。ただ、金八宅での幸作&ちはるのシーンは、幸作の片想い描写が古臭い感じがして、いまひとつピンときませんでした。これは演出というよりは脚本上の問題だと思いますが。ところで、ちはる役の岡あゆみって、山田麻衣子に雰囲気が似ていませんか? この後の展開が気になるキャラです。似ているといえばもうひとり、兼末の子分役の亀梨和也。「危険な関係」と連続で見ているからなのか、トヨエツに似ているような気がします。(2)は「モッくん刑事猟奇系」(?)みたいなカメラワークになっていて、これも「金八」らしからぬ演出。ここは笑うところなんでしょう。(^^)

(3)は定番シーンなので、オーソドックスな撮り方になっていたようですが、風間俊介の表情演技は、相変わらず的確かつ正確でした。さすがです。ただし、この回は風間以外の生徒の表情アップにも力が入っていて、撮影現場における生徒役の成長ぶりがうかがえます。

ところで、今回の金八先生は生徒に対する態度がどこか威圧的です。自分が押し付けた3つの約束を「みんなで決めた」などと言ってみたり……。この時、生徒の不満そうなリアクションをきっちりカメラが捕らえているところから推察すると、これも後半の展開に向けての伏線なのかもしれません。

今回の「金八」に対する感想は、ネット上でいくつかチェックしていますが、金八の態度に疑問を呈したものは一つもありませんでした。唯一、第8話の「アイツは毒だ」発言に対して、公式サイト上で批判の声があったくらいです。金八ファンの人たちは、金八先生は絶対に正しいと思い込んでるみたいなので、ボクみたいに邪推する人はいないみたいです。(なお、公式サイトでの全発言をチェックしているわけではないので、誰かが同じ指摘をしている可能性はあります。)――ボクとしては、後半戦で金八が自分の誤りに気がついてくれることを期待しています。

(4)に関しては、特にないかな。(^^) ……いや、一つだけありました。土手の上から自転車で急降下して、自転車ごとコケちゃう大森巡査。一見地味だけど、良く見ると結構危険な演技をしています。「サイコメトラーEIJI」もびっくりしちゃうような体を張ったアクションシーンです(冗談抜きで!)。日頃から鍛えていないと、あの演技はできないでしょう。(^○^)

この回のサブタイトルは「迷える子羊たち」だっとと記憶しているのですが、もう少しセンスの良いタイトルにできませんかね。この回に限ったことじゃないんですが、サブタイトルのセンスは、20年前から進歩していないような気がします。サブタイトルを決めているのは、柳井満Pなんでしょうか? (^^;


99/11/28 元禄繚乱(47)

第47回「四十七士討入り」
演出:遠藤理史

視聴率が28.5%だった討入りですが、アクションドラマとしても人間ドラマとしても消化不良な感じがして、いまひとつでした。45分のダイジェストを見せられているみたいで、もっとネタを絞り込んでほしかったな〜〜と。また、全体的に引きの絵が多くて、照明も暗い感じだったため、四十七士の心理(芝居のニュアンス、表情)を、カメラが捕らえきれていないような印象もありました。^^;

遠藤理史さんは、NHKの公式HPや「電脳細見・元禄繚乱」で、この47回の演出について細かく解説しているのですが、そこに書かれている演出の数々が効果的に表現されているようには見えなかったんですね。事前に知っていたのにもかかわらず、ものすごくわかりづらかったです。

たとえば、大石主税が人を刺して腰を抜かすシーンですが、最初に生で見たときは腰を抜かしているのが誰なのかわかりませんでした。ビデオで見直してみて初めて主税だとわかりました。また、村井克行の目の前に弓矢が飛んできてビックリするシーンも、ビデオのサーチボタンで探し回って、やっと見つけました。……単にボクが鈍感なだけなのかもしれませんが、ビデオで確認した後でも、全体の中に個々のアイデアが埋もれているという印象は否めません。

この回のハイライトは石坂浩二の表情で、これは予告で見た時から気になっていたのですが、予告で見た以上のインパクトはなくて、演出〜カット割りでもう少し工夫できなかったのかな……という感想を持ちました。でも、このシーンの石坂さんはすごかったです。先のことも考えずに刃傷沙汰を起こした内匠頭よりも、上野介の方がよっぽどかわいそうなんじゃないかと思いました。(^^ゞ

あと、ガンダムのパロディ(オマージュ)になっていたというのが、杉本哲太の殺陣シーンですが、これも思っていたよりもアッサリとした仕上がり。もう少し、間とかニュアンスを織り込んでほしかったです。同じことはジャニーズ対決にもいえるんですけど……。今井翼の顔に気がついた滝沢秀明が、わずか数秒後には「そうだったのか」とかいって斬りかかっていくのを見て、「お前、物分かりが良すぎるよ!」とツッコミたくなりました。あの場面は、人間の心を捨てて殺りくマシーンと化した今井と、戦意を失って恐れおののく滝沢……の方が、ドラマチックで良かったような気がするんですが。(^^ゞ

柳沢慎吾があっさりと殺されちゃうシーンも、いろいろ考えた結果ああいう風な演出になったんだと思いますが、ボクにはその意図がよく分かりません。また、小林平八郎の最期も、あれじゃ単なる悪人みたいでかわいそう。彼の無念な思いみたいなものを、カメラに収めてほしかったです。ボクの場合、吉良側を応援しながら見てたので、なおさらそう感じたのかもしれませんが……。(^^ゞ


99/11/29 ディア・フレンド

脚本:山元清多
演出:竹之下寛次
プロデュース:八木康夫
出演:緒形挙、岡田准一、永作博美、山田麻衣子、伊東四朗、他

裏番組の方は1週くらい抜けてもなんとかなるだろうとタカをくくって、ビデオ録画もしないでこちらをオンタイムで見ました。ストーリー的にはちょっと食い足りない感じもあるのですが、面白かったです。

緒形挙は若者に絡む役のが上手いですね。芝居のリズム感がとっても良いです。伊東四朗と絡むシーンも良かったです。ボクの趣味でいうと、「ヤマダ一家」の伊東四朗よりも面白かったです。また、永作博美と山田麻衣子が、良いアクセントをつけてました。まさにトッピング女優ですね。(^^) ただ、岡田准一は「PU-PU-PU-」の時と同じようなキャラクターでいまひとつ。この人の演技って型にハマリ過ぎていて、新鮮味に欠けるんですよね。器用貧乏っていうほど器用でもないんだけど、下手じゃないんだけど味がないという感じ。(^^)

中盤はロードムービー風の展開でしたが、こういうのをやりやがるドラマ関係者って多いみたいですね。――見てから、何日も過ぎているので、細かいことは忘れちゃいました。スミマセン。m(__)m


99/12/02 3年B組金八先生(8)

プロデュース&演出:柳井満(8)

すでにTBSを定年退職されている(はず)柳井満さんが、今シリーズ初演出です。古き良き「金八」のテイストを再現させたいという意図があったのでしょうか。まあ、今回の「金八」はオールドファンの受けが悪いみたいなので、こういうのもアリかなとは思います。ただ、公式サイトを見ていたら、三者面談のシーンは20年前とまったく同じで時代錯誤的だという書き込みがあって、笑っちゃいました。

確かに、いくら下町だとはいっても、いまどきあんな親子はいないだろう……っていうのは正解なんですが。ただ、20年前なら実在したかというと、いなかったような気がします。つまり、ああいう、三者面談で親子ゲンカ……みたいなエピソードは、ドラマに彩りを添えるためのフィクションにすぎないので、あまり目くじらを立てても仕方ないような気もします。ただ、フィクションとして見てみても、古臭いという印象は残ります。(^^ゞ

99/12/04 サイコメトラーEIJI2(8)

脚本:田子明弘
演出:猪俣隆一(1)-(4)、五木田亮一(5)-(7)、大根仁(8)

「怖い日曜日」でお馴染みの大根さんの演出なので、ちょっと注意してみていたのですが、大きな違いはなかったような気がします。ちなみに、(1)(2)(5)話のサイコメトリー・シーンの演出も大根さんらしいので、シリーズ全体の演出トーンに大根さんのセンスが反映されていると考えるべきなのかもしれません。(なお、このドラマの収録順は(1)(2)(5)(3)(4)(6)(7)……となっていたようです。)

それよりも気になったのは、黒田勇樹が小原裕貴に犯行動機を告白するシーン。セリフに毒があって味わい深かったです。「君だって、本当は天文で食っていけるなんて思っていないから、留学試験を受けるんだろう」(記憶で引用しています)――すばらしいです。小原裕貴は黒田勇樹に好意を持っていたのですが、その好意から発した言葉の中に暴力性が潜んでいることを暴き出していました……なんて書いたら大袈裟でしょうか。(~_~;) 田子さんの脚本に関しては以前もコメントしてますが、土9系脚本家の注目株です。


99/12/05 元禄繚乱(48)

第48回「四家お預け」
演出:片岡敬司

今週は良かった……と思って、テレビドラマデータベースや大河ファンの掲示板を見てみたら、不評でした。(T_T) まあボクの場合、大河にも時代劇にも詳しくなくて、普段は月8とか土9を喜んで見ている人なんで、その辺の感性の違いなんでしょうかね。(~_~;)

今週の片岡敬司さんは、最後の演出だからか、えらく気合いの入ったスタイリッシュなカメラワークを披露してくれました。今週のカット割りを考えるのに、かなりの時間をかけたんじゃないでしょうか。ハッとするようなカット割りがたくさんありました。

今週のみ、やたらと美味しかったのは深水三章でしょう。滝田栄と一緒に村上弘明(柳沢吉保)の陰謀つぶしに暗躍してた人です。意味ありげな表情アップを、サスペンスドラマ風のテンポ感で挿入する感じが絶妙でした。今期のドラマでいうと「OUT」とか「隣人」に近い手法でしょうか。

討入り前の46話を撮った大原誠さんが、表情アップを静的に捕らえて重厚な雰囲気(緊迫感)を作り出していたのに対して、片岡さんは表情の捕らえ方が動的な感じがします。たとえば、萩原健一(綱吉)が「オヌシもワシの心が読めなくなったのう」と言って吉保の前から立ち去るシーンのカット。動き出す綱吉の身体をアップで捕らえて、その身体が画面の外に出て行くと、いつになく取り乱した表情の吉保のアップが現れる……。エヴァに通じるようなスタイリッシュなカットで、テレビの前で思わず声が出ました。(^o^)

また、内蔵助が四十七士(四十六士?)に別れを告げるシーンでも、カメラワークはかなり派手なのに演技のニュアンスはキッチリと拾っていて、緻密に計算をしているなと感心しました。特にすごかったのが大石主税の撮り方。このシーンの一番最後に主税のカットが入るというのは、セオリーだと言えなくもなんですが、まさか後ろ姿のカットから入っていくとは思いもしませんでした。動いていくカメラが主税の小刻みに震える肩を捕らえた瞬間――。これが今週のベストカットだと思います。こういうところに片岡さんの演出家としてのセンスの良さを感じます。\(^o^)/

もう一つ。先週の予告編に映った滝沢秀明の表情に、いつになく味があったので、そこにも注目していたのですが、そのシーンのカット割りはフジテレビのドラマみたいでした。(^^) しいて具体例を挙げるなら「白線流し」「救命病棟24時」あたりの岩本仁志さんあたりでしょうか。

上手いなと思ったのは、寝ていた滝沢がちゃんと身体を起こさないところ。横になっているカットから始まって、一度45度くらいに起こして、最後は、また横になっている顔のアップになっていました。さらに、夏木マリが滝沢の寝床から離れて、庭を見ながら上野介の思い出を語った後、いきなり滝沢の涙顔のアップがバ〜ンと入って、このシーンを終えていました。大河らしからぬトレンディ・テイストなカット割りです。

それまでは人形みたいな印象だった滝沢秀明ですが、今週は血の通った人間に見えました。(^^) 「魔女の条件」とは違う意味でエロティックなセンスの良さが光るシーンでした。(ただし、セリフ回しはエロティックじゃなかったです。) 片岡さんといえば、以前の回でも、奥菜恵や中山エミリの表情を積極的に撮っていたので、アイドルドラマ的な感性の持った演出家だと考えてもいいみたいです。来年は、ぜひ土曜6時枠を手がけてほしいものです。(#^.^#)

若手といえば、栄作−保奈美Jrの高橋一生は、大原さんの演出した回で印象的な表情アップが多いみたいですが、今週は、ちょっとカジュアルな感じになっていたようです。これも片岡さんの意向なんでしょうか。そういえば、ラストに出てきた、落ち込んでいる吉保を映したカットも、疲れたサラリーマンみたいなダラッとしたニュアンスがあって、人間っぽいと言うかカワイイ感じがありましたね。――こういう演出センスが、正統派の大河ファンの不評を買う原因なのかもしれませんが……。(^^ゞ

来週最終回は、大原誠さんの演出。重厚な余韻が残る演出を期待します。(^^)


99/12/06 賭事女王(9)

脚本:樋口卓治
演出:稲葉正宏
ゲスト:桜庭あつこ

この回は内藤陽子の表情が良くて、演出家のセンスの違いを見せつけられたような感じがします。稲葉さんは表情を撮るのが上手いですね。……ゲストの方は、まあこんなもんでしょう。特にコメントはありません。(^^)


99/12/09 3年B組金八先生(9)

演出:森一弘(9)

森一弘さんは、制作補(AP)として、長年「金八先生」に関わってきた人で、今年は「ロマンス」の演出も手がけていた人です。「金八先生」を演出するのは今回が始めてかもしれません。

今週の見せ場は、金八&兼末の対決シーンですが、期待したわりにはちょっと物足りない感じがしました。特に風間俊介の表情にもう少し切れがほしかったです。かなりていねいに撮っていたのはわかるんですが、「これは…!」と思うようなカットがなかったです。

――ちなみにボクは、すっかり兼末ファンに成り下がっているので、「がんばれ兼末! 陰険な金八になんか負けるなよ!」などと思いながら見ていました。別れた後に、「君にはもう騙されないよ」などと呟く金八が、「チープラブ」の内藤剛志にかぶって見えました。(^^ゞ

生徒に吊るし上げられる金田明夫(北先生)を、金八が助けようとするシーン。「君のコメントは必要ない」とか言って小高早紀を黙らせているのを見て、やっぱコイツ、悪徳教師だって思いました。(^^)


99/12/10 美少女ドラマ・クロイツェルソナタ

脚本:?
演出:久野昌宏
プロデュース:?
出演:平山綾、小沢真珠、吹越満etc
制作:テレビ朝日
関東放送枠:テレ朝系・金曜深夜3時過ぎ

「美少女H」みたいなドラマ……と思ってみていたら、「美少女H3」みたいな展開になってきて、また最後は「美少女H」みたいな感じで終わりました。ハイビジョン・アワード99で賞をとった作品だそうですが、その辺のことはよくわかりませんでした。

冒頭&ラストの駅のシーン(江ノ電)に味があって、ちょっと期待したのですが、演出的にはちょっと決め手に欠けるような感じでした。雰囲気は悪くないんですが、俳優(表情など)の使い方〜撮り方がいまひとつなんですよね。物語の中心が室内で進行するので、もう少し芝居とかカット割りに緊張感がないとつらいですね。決め手に欠けるといえば、脚本の方も中途半端な感じがしましたが……。とはいっても、音楽ドラマは好きなので、ビデオは消さないで保存することにしました。

ところで、小沢真珠が一瞬、佐藤藍子に見えちゃったのはボクだけでしょうか? なんか妙に雰囲気が似てきました。そういえばこの2人、「イタズラなKiss」で共演していましたね。それから「クロイツェル・ソナタ」というのは、ベートーベンの作品名のようです。


99/12/11 青い鳥症候群(9)[終]

演出:今井和久(1)(2)(5)(7)(8)、徳市敏之(3)(4)(6)(9)

最終回なんですが、むりやりパッピーエンドにしちゃったという感じですね。まあ、大映ドラマって基本的にはみんなそうだから、予想通りの結末なんですが。このドラマのピークは、川島なお美がゲスト出演した第7話あたりでしょうか。個人的には橘実里のエピソードにもう少し厚みがほしかったです。――でも、大映ドラマの可能性を広げたという意味でも重要な作品でしょう。今期のベスト3に入ります。


99/12/12 元禄繚乱(49)[終]

最終回「忠義の士」
演出:大原誠

なんか、駆け足でつじつまを合わせた1時間という感じでした。そういう意味では、前日に見た「青い鳥症候群」の最終回と同じです。(^^ゞ まあ、ボクの場合はこの「元禄」にも大映テイストを感じていたので、その意味では予想通りの最終回といえなくもないんですが、でもなんかやっぱり物足りないです。たとえば、綱吉と内蔵助の対面シーンなんて、それだけで1話分作れそうなネタなのに……もったいない。(~_~;)

それ以外にも、面白そうなエピソードがいっぱいあっただけに、討ち入り後の関係者の姿を、もっとじっくり見たかったです。柳沢親子のエピソードもそうですが、宿の女将とか、井出らっきょなどの脱盟組のその後とか。それに、柳沢慎吾に拉致された奥菜恵は、それっきり出てきませんでしたが、ちゃんと助けてもらえたのでしょうか。(^o^)

あと、切腹の場面を省略するのはアリだと思うのですが、四十七士全員が出てこない最終回っていうのは……? 四家お預けなのに、最終回に出てきたのは二家だけでした(多分)。(^^) 久々に「片落ち」という言葉が出てきましたが、「片落ちなのはこの最終回だろ!」な〜んて思ってしまいました。(笑)

でも、なんとか親王(中村橋之介)のセリフは良かったです。「死もまた慈悲」ですか。これも一種のエロスですかね。(^^) 特に「年少者が生き延びて、この先、身を誤るようなことがあったら、せっかくの忠義に傷がつく……」とか言ってるくだり。今井翼のことを言ってたんでしょうか。それとも主税? どっちでも良いんですが、「確かにその可能性は高いわ…」って、納得させられちゃいました。(^^ゞ

もう一つ、高岡早紀が赤穂浪士と過ごした日々を振り返るシーン。“青春の終わり”という感じでシミジミしてしまいました。シミジミ系で言えば、滝沢秀明が今井翼のことを思い出すシーンなんかもあれば良かったですね。


99/12/13 ベストフレンド(9)[終]

演出:森田光則(1)、冨田勝典(2)(5)(8)、根本実樹(3)(6)(9)、倉貫健二郎(4)、高野英治(7)

いちおう最後まで見ましたが、第1話の時に書いたことと変わらないですね。とにかくチープでした。最後のライブシーンなんて衣装や振付けが学芸会みたいだし……。ちなみにTV誌で確認してみたところ、大浦龍宇一は“世界的に活躍する音楽プロデューサー”という設定だったようですが、ボクには、音楽の夢に敗れてビデオ屋でバイトしている兄ちゃんにしか見えません。(^^ゞ

それでも何とか楽しめたのは、ホームドラマの部分がまあまあだったからでしょうか。俳優でいうと、Wあい、浅田ママ、羽場パパの4人のガンバリのみが唯一の見どころという感じ。それ以外は、マネージャーらしい仕事は何一つしていない赤西仁とか、キヨカ(加藤あい)が好きになるような魅力があるとは思えない坂口憲二とか……ツッコミがいのあるドラマでした。

ラストに病気&死別ネタを持ってきて、すべての問題を帳消し(うやむや?)にしてしまうという手法も古臭いです。


99/12/15 隣人は密かに笑う(10)[終]

演出:大谷太郎(1)(2)(5)(7)(9)(10)←多分違ってる

最終回にしっかりクライマックスを持ってきている……という意味では、いい出来だったと思います。まあ、見終わった後に何の感動も残らないドラマなんですけど、この日の視聴率も19%台だったらしいので、それでOKなんでしょう。

炎の中の決闘シーンとかは「蘇える金狼」みたいで笑えました。カット割りに動的な躍動感があって、そういうところも土9的でした。ベストカットは、佐戸井けん太のアップの後ろから、真犯人の深水三章のシルエットが現れるカット。このアイデアには、感動しました。(^^)


99/12/16 3年B組金八先生(10)

演出:鈴木早苗

前半にCMをバンバン入れて、後半の短歌合評会のシーンはCMなしで一気に見せるという「金八」ではおなじみの手法が見れました。ただしノーカットで一発撮りしているかどうかはわかりません。一発撮りして部分的に別撮りの映像をはめ込んでいるような感じもします。

短歌を詠んだ人の顔をアップで映すことによって、誰が詠んだ歌なのか視聴者にわかるようにしていたのですが、兼末(風間俊介)に関してはアップが多すぎて、どれが兼末の歌だったのか、最初に見たときはわかりませんでした。(^^)

どうやらクリスマスの歌が兼末の歌のようですが、あの部分だけカメラワークが凝り過ぎていて、かえってわかりづらくなっちゃっているような気がします。特に、歌に潜む孤独な影を指摘する金八の解説や、兼末の歌だとは知らないで「だせーよ」などと野次を飛ばしていた明彦(亀梨和也)のインパクトが弱くなっちゃいました。――明彦くん、君の来年は暗い。兼末にボコボコにされることでしょう。^/^


99/12/18 サイコメトラーEIJI2(10)[終]

脚本:小原信治(9)(10)
演出:猪俣隆一(1)-(4)(9)(10)、五木田亮一(5)-(7)、大根仁(8)

ラスト2話は、「ぼくらの勇気・未満都市」みたいなストーリーでした。たぶん櫨山裕子Pの趣味だと思われます。櫨山Pって、手塚治虫、特に「アドルフに告ぐ」とかが好きなんじゃないでしょうか?

最初のうちはナチスの突撃隊のパロディーでもやるのかなと思っていたんですがそういうワケでもなかったようです。ちなみに突撃隊というのは、初期ナチスの武装集団で、ナチスの政権獲得後に粛清されちゃいました。ボクはあんまり詳しくないのですが、ナチス好き(?)の人たちは、この突撃隊にシンパシーを感じている人が多いみたいです。(^^)

再登場した真木蔵人が「この国は本当は平等じゃない」というセリフなども、月9ドラマではお目にかかれないようなヘビーなセリフなんですが、そのことを具体的なストーリーで見せてくれないから、抽象的な言葉だけが空回りしているという感じでした。でも、「地獄を見せてやる」とか言って出てくる雪山のエピソードなどは絵的にもインパクトありましたね。最後に、2人の真木蔵人が松岡&井ノ原になっちゃうところも、ちょっとシュールな感じで良かったです。櫨山Pのアンチ・トレンディ志向が反映されたアイデアだと思います。

最終的には友情物語みたいになっちゃうんですが、まあそれはそれでOKなんじゃないかと思います。21世紀のドラマに求められるのは“問題”のクオリティであって、“解決”のクオリティじゃないような気がするので……。岡田惠和さんの「彼女たちの時代」もそんな感じでしょう? ――できることなら、ラスト2話を膨らませて1クールを作ってほしかったですね。パート3を作るなら、ぜひその路線をお願いしたいと思います。「ぼくらのEIJI・未満都市」とか。(^^ゞ


99/12/18 鯨を見た日

脚本:岡田惠和
演出:佐藤峰世
制作統括:浅野加寿子
関東放送枠:NHK・土曜午後9時

1年前に放映された「35歳・夢の途中」に続く、岡田惠和さんのNHK土曜ドラマですが、結論からいっちゃうとイマイチかな〜。演出にしても物語にしても新鮮味が感じられなかったです。だいたい“少年時代の約束”というのが最近のドラマにやたらと多い設定で、そろそろ何とかしてほしいと思います。先日見た「怖い日曜日」は挫折して故郷に帰ってきて約束を思い出すという設定で、「J家の反乱」では、雛形あきこが幼少時の約束を果たすために幽霊になって現れるというストーリーだったりします。「またかよ」って言う感じでした。(^^ゞ

あと、これは「35歳」にも言えることなんですが、青春時代を美化し過ぎているような印象もあります。“輝いていた青春時代”と“パッとしない現在の自分”という2項対立の図式がウソ臭くって、「ホントにそうなのか?」って思っちゃいました。(^^)

とはいっても、真田広之と少年役の遠藤雄弥のやりとりとかには、岡田さんらしいリアリティ(リアルとは違う)と批評性があって結構好きでした。ところで、ラストシーンはクジラが現れないまま終わるのかなと思ったら、現れちゃいましたね。(^^) 「新・俺たちの旅」第4話で、最後のサーフィンにトライしようとする西岡徳馬に波が来なくて、「これが現実だ」っていうオチがついていたのを思い出しました。脚本は田子明弘さん。

それはともかく、あのクジラのシーン、どうやって撮影したのか気になりました。(^^)


99/12/21 OUT(11)[終]

最終回。原作の桐野夏生さんは、ドラマ化の条件として「予定調和で終わらせない」という要望を出したそうですが、なるほどそう来たか……という感じの最終回でした。ただ、最後の柄本明の再登場は意味がないような気がするんですが……。今期の連ドラのラストシーンって、無意味に視聴者を混乱させるのが多くないですか。「隣人」「チープ」「TEAM」「危険」など。

ただ、星田良子さんの演出は最後まで緊張感があって、この最終回も、変則アングル〜覗き見風アングルが嵐のように出てきました。また、田中美佐子&飯島直子の2ショットのシーンに漂うエロチックな空気感みたいなものも印象に残りました。(^^) 音楽・映像・演技など、個々の要素(アイデア)が有機的に噛み合っている完成度の高い演出だったと思います。ドラマアカデミー賞の監督賞は、星田さんにとってほしかったですね。

段田安則とか伊藤英明とか、良い人がアッサリ殺されちゃって、かわいそうでした。高田聖子は自業自得だから、あれでOKなんですけど……。(~_~;)


99/12/21 砂の上の恋人たち(11)[終]

最終回。このドラマは評価が難しいですね。最初のうちは演出は悪くないけど、脚本はイマイチ意味不明……なんて思っていたんですが、伴一彦さんのホームページでの発言などを読むと、伴さん自身は実験的な作風にトライしたかったみたいです。ただ、出来上がったドラマだけ見ると、実験なのか手抜きなのか判断に苦しむ場面が多くて、いまひとつ作り手のコンセプトとか意気込みとかが伝わってきませんでした。

たとえば、第1話で省略してしまった菅野美穂の死に気がつくシーンですが、たしか第4話くらいで奥菜恵のセリフで説明・描写されるというオチ(?)がついていました。でも、そのアイデアに感動するかというと、全然そんなことなくて、なんか釈然としない気分だけが残りました。

もちろん、わかりづらいこと自体を批判するつもりはないですし、たとえば「エヴァンゲリオン」や「ケイゾク」のわかりづらさなんて「砂恋」の比じゃないです。ボクが気になったのは、ストーリーではなくてコンセプトがわかりづらいということです。たとえば「砂恋」は、視聴者のイマジネーションを刺激するような仕掛けが少なすぎるんじゃないでしょうか。「エヴァ」なんて「わからない…、わからない…」と思いながらグイグイとその世界に引き込まれてしまうような吸引力(演出?)があったんですが、「砂恋」にはそれがありませんでした。

そういう意味では、脚本だけではなくて演出にも問題があったというべきなんでしょう。脚本家・演出家・出演者の間で、コンセプトに関するコンセンサスが、ちゃんと得られていたんだろうか…という疑問も湧きます。このドラマに「ケイゾク」みたいな演出をしていたら、評価も違っていたかもしれません。逆説的な言い方をするなら、もっとわかりづらく作っていたなら、面白くなっていたような気もするんですね。(~_~;)

オノセイゲンのサウンドトラックは格調高いし、ACOの主題歌は砂原良徳(まりん)の編曲・プロデュースだし、やたらと音楽のクオリティが高いドラマでもありました。ただ、それがこのドラマに合っていたのかどうかは疑問が残ります。


99/12/22 TEAM(11)[終]

テーマがシリアスなのに、登場人物のキャラクターは安っぽいですよね。この最終回でいえば、元部下の羽場裕一とか、犯人に興味を示さない同級生とか。しかも、個々の事件が一話完結と言うスタイルをとっているから、見終わった後に、どこか食い足りない感じが残ってしまいます。……オチのつけかたは上手いんですが、物語に深みとか重みとか厚みが足りないんですよね。

西村雅彦が撃たれて終わる、第10話の無音のエンドロールも、何か仕掛けてくるだろうと予想していたので、あまり驚きませんでした。


99/12/23 X'masドラマスペシャル

プロデュース:古賀倫明栗原いそみ
監修:吉野洋
制作協力:日活株式会社
制作:日本テレビ
関東放送枠:日テレ系・午後4時〜5時30分

(1)勇気を出して(脚本:飯野陽子、演出:松島宣正
(2)クリスマスツリー(脚本:浅野有生子、林宏司、演出:古賀倫明
(3)花摘みじいさん(脚本:山田珠美、演出:高橋直治

有名童話を下敷きにしたオムニバスドラマ。「勇気」はとにかく森廉がいっぱい出てたというドラマ。(^^ゞ 「ツリー」は「美少女H」みたいな内容ですが、ヒロインの浅井江里名がただのバカ女にしか見えないところが難点。王子姿(?)の徳山秀典もバカ殿っぽかったし。そういえば、古賀さんは「世紀末の詩」「卒業旅行」「ツリー」と、ほぼ1年間に3回も徳山秀典の演出をしていますね。

で、ちょっとした力作だったのが「花摘みじいさん」。テレビドラマデータベースで、数名の人が絶賛していましたが、ボクの場合、絶賛とまではいかなくて、あくまでも力作という感じですね。脚本にしても演出にしても、いろんなことを詰め込みすぎて消化不良になってしまったような気がしました。

高橋直治さんは「怖い日曜日」でおなじみの名前で、このドラマも「怖日」風の演出の応用例という感じなんですが、桜のシーンはどこかB級ぽかったし、冒頭のオカルトっぽい部分もなくても良いような気がしました。子役の表情が豊かだったのが一番印象に残りました。千葉の小湊鉄道が出てきましたが、同じ高橋さんが演出した12/12の「怖日」に出てきた踏み切りも、小湊鉄道みたいな気がします。

脚本の方も母子を描きたいのか、花摘みじいさんを描きたいのか、ハッキリしないまま終わっちゃいました。


99/12/23 危険な関係(11)[終]

トヨエツの犯行動機(内面)がいまひとつよくわからない……と思いながら、ずっと見て来たんですが、そんな視聴者に対する対策なのか、最終回では説明過剰なくらい犯行動機が語られていました。そういう意味では、視聴者の疑問(視点)を代弁するような登場人物がいた方が良かったのかもしれないですね。

以前にも書きましたが、このドラマは隙のない演出をしているので、見ていて疲れます。(^^) どうしても「氷の世界」と比較しながら見てしまったのですが、演出……特にカット割りの完成度の高さでは、「危険」の圧勝という感じでした。変則アングル系のアップを多用しているという点では「OUT」に近い演出ですね。ただし、こちらは屋内のシーンにおける引きのカットが極端に少なかったような気がします。

一番印象に残っているのは、モロ師岡(野々さん)の後ろ姿。藤原紀香との最後の別れとなるシーンです。このドラマで一番株を上げたのはモロさんでしょう。演出は確か水田成英さんでした。ただし、今回は各演出家の違いについては、よくわかりません。(^^) あんまりちゃんと見ていなかったです。(^^ゞ だって、いつのまにか山下智久が出ていましたが、いつから出ていたのか、さっぱりわからない状態ですから。

しかも、最終回の新聞のテレビ欄にしっかり山下の名前が出ていて、「何なんだよこれは!」と思っていたら、重要な役まわりでした。結構ありがちなオチなんですが、それとは別の意味で、あのシーンは妙に笑えました。「若者のすべて」の井ノ原快彦を連想しました。連ドラの終盤になって意味不明のジャニーズJrが出てきたら、主人公が刺される――。ドラマ版マーフィーの法則ですね。(^^)


99/12/24 風の行方[終]

出演:坂口良子、山辺有紀、鈴木藤丸
制作:東海テレビ、泉放送制作
関東放送枠:フジテレビ 帯ドラマ午後1時30分

ほとんど見てないドラマなので、あれなんですが、家族の崩壊を淡々と描いていて、結構面白そうなドラマでした。子役の鈴木藤丸という子に存在感があったので、名前だけチェックしておきました。この日誌って、メモの役割もあるんです。(^^ゞ 「渡る世間」の“あかり”(山辺有紀)も出ていました。(^^ゞ


99/12/24 ケイゾク/特別編

「金田一」+「プリズンホテル」みたいな演出でした。「プリズン」みたいなセット(ロケ?)も出てきました。(~_~;) ボクは一部で言われているほど「ケイゾク」を高く評価していないので、このスペシャルもそんなに期待しないで見たのですが、はっきりいって「ケイゾク」本編よりも面白かったですね。「ケイゾク」も「プリズン」も「新・俺たちの旅」も、すべてこの「ケイゾクSP」のためのテストだったんじゃないかという気すらします。(^^ゞ

「プリズン」と比較して、笑いの作り方がスマートになっているような感じがしました。特に、映像的なこだわりと笑いのツボがきっちりシンクロしているところが、「プリズン」との違いじゃないでしょうか。連ドラと違って、時間をかけて作れたので、その分キメの細かい演出ができたのかもしれませんが……。

改めて考えてみると、堤幸彦ヒストリーの中で「プリズン」というのはエポックとなるような作品なのかもしれません。要するに、「ケイゾク」は第1期堤幸彦の集大成で、「プリズン」が第2期の始まりという意味です。(^^)

「ケイゾク」で堤さんを知った人と違って、「金田一」の頃から堤さんに注目していたボクにとって、「ケイゾク」というのはラスト3話くらいの“悪ノリ”がすべてなんです。だから、その部分を増幅させたこのSPは、最新型の堤スタイルを示した重要作だと考えるワケです。「エヴァ」的な、思わせぶりな仕掛けも増えているし。

――この日の夕方、「ケイゾク」再放送の最終回があって、ラストの映画予告がどうなっているのか気になってチェックしたのですが、例の「フィクション」の文字が「ノンフィクション」になってました。(^^)

それにしても、「メトラー2」とか「OUT」が残酷シーンを排除して、ほとんど血が出てこないのに対して、これは随分派手に血しぶきを上げていましたね。大丈夫なんでしょうか?(^o^)/


99/12/26 怖い日曜日[終]

この日で最終回ですが、12月に入ってから習作が多かったですね。最近の「J家の反乱」がいまひとつなのと好対照です。以下、簡単にまとめてみますが、サブタイトルはいいかげんです。(^^) 撮影はすべて斑目重友さんです。

●12/5 「夢」 出演:中丸雄一

これは脚本が秀逸で、誰だろうと思ってチェックしたら、真柴あずきという初めて見る名前の人でした。同じ夢を何度も繰り返すというホラー風の展開と、さわやかなオチの落差が見事で、握手で終わるラストシーンが印象的です。演出は古賀倫明さん。ラストの表情が良かったですね。

●12/12 「約束」 出演:古屋暢一、小場賢、梨本威温

これも脚本は“少年時代の約束”で、「鯨を見た日」と同じなんですが、冒頭の線路〜踏み切りのシーンが情感豊かで印象に残りました。挫折して田舎に戻ってきたというナレーションが入るのですが具体的な内容がさっぱり分からないから、イマジネーションが刺激されないんですよね。演出は高橋直治さん。――以前「中学生日誌」で同じ名前の演出家がいたんですが、同一の方なんでしょうか?

●12/19 「八甲田山」 出演:今井翼、赤西仁
●12/19 「廃校」 出演:小場賢

「八甲田山」は傑作。カメラワークやアートワークに、凡人離れした映像センスの良さが炸裂していて、しかも怖かったです。この番組で、怖いと思ったのはこれが始めてかもしれません。(^^) 演出は二階健さん。さすがです。「いつもの「怖日」と同じじゃないか」と思われる人もいるかもしれませんが、絵心の違いみたいなものが確実にあると思います。一方「廃校」は、ストーリーらしいストーリーもなくてモノローグ中心の詩的な作品。BGMのピアノ曲に『ディーバ』のサントラが使われていました。雰囲気はすばらしいのですが、何かひとつグッとくるシーンがあれば、傑作になっていたと思います。単に、小場賢に魅力がないだけかもしれませんが(失礼)。

●12/26 「クリスマスプレゼント」 出演:生田斗真
●12/26 「ドッペルゲンガー」 出演:山下智久、田中聖

最終回の演出は、プロデューサーを務めている池田健司さん。「プレゼント」は、実は自分も死んでいたというオチが渋かったですが(脚本:大前典子)、家族愛がテーマなのに家族のシーンはチープな印象でした。「ドッペルゲンガー」ではアップテンポ系の音楽を使っていたのが、ちょっと新鮮でした。映像的にもかなり凝っている感じはありましたが、先週が二階さんだったので、普通の感性の人ががんばっているという感じがしちゃいます。(~_~;) 見ていて笑っちゃう場面(アイデア)も多かったです。今回出演の3人は、ナレーションを務めてた人たちですが、田中聖という子は声質に味がありますね。



トップページに戻る