"ドラマ演出"日誌(99年7-9月期) |
99/07/03
新・俺たちの旅 Ver.1999(1) |
脚本:小原信治
演出:堤幸彦
プロデュース:櫨山裕子
音楽:増本直樹
サウンドプロデュース:志田博英
撮影:唐沢悟
制作協力:オフィスクレッシェンド
冒頭のフリーマーケットのシーンで、ブルース系のハーモニカが流れているのを聞いて、「またこれかぁ…」と思っちゃったのはボクだけでしょうか。このところ、堤さんのドラマのBGMがワンパターン化してきているように思います。そのせいか、このドラマの第一印象も、「少年サスペンス」のデラックス版……でした。(^^) ちなみに音楽の増本直樹さんは「プリズンホテル」も担当していた人です。
とはいっても、全体的に音楽とカット割りのテンポ感が良いので、気持ち良く見れました。この辺は「プリズンホテル」の成果が生かされているのかもしれません。別の見方をするなら、主役3人の演技に依存しない撮り方をしているという印象もあります。3人の中では、三宅健のシリアスな表情をていねいに撮っていたようです。気になったのは森田剛の演技コンセプトで、ときどきノリがバラエティみたいになっちゃって、違和感を感じます。「カチ〜ン」とか言うのは止めた方かいいと思います。(^^ゞ
映像的に印象に残ったのは、屋内のシーン。「ハルモニア」の時も堂本光一と大坂俊介が住むアパートの、暗くて雑然とした感じが好きだったんですが、このドラマでも同様のテイストが感じられます。暗い部屋に光が差し込んでいる感じとかに独特の味があるんです。
それにしても、脚本はもう少し何とかならないですかね。見る前は、もう少しシリアスな作風を予想していたので、シリアスシーンでの陳腐なセリフの数々に興醒めしました。殴り合った後に友情が芽生える……という定番の展開も、そろそろヤメにしてほしいですね。「あぶない放課後」だって、もっと工夫して作っていたと思います。
99/07/04
怖い日曜日(1) |
最初にやった渋谷すばるのエピソードが、ちょっとした傑作です。渋谷の目のアップで恐怖感を煽る手法なども新鮮なんですが、それ以上に大根仁さんの映像センスの良さに、目を奪われました。この手の学校ホラーというのは珍しくないんですが、大根さんはそこにノスタルジックな質感を加味していて、そこに映像作家としてのセンスの良さを感じます。
大根さんは「Tears」でも、ノスタルジックな映像感覚を見せていましたが、この作品を見て、「大根仁=ノスタルジック系映像派」という印象が強まりました。
その他のエピソードの関しては、特に印象に残りませんでした。また、怪奇現象を深刻そうな表情で報告しているジュニアの顔がマヌケっぽくて、ツライものがあります。(^^ゞ
ちなみに、この日誌でオススメした、前シリーズの「っポイ!」なんですが、ピークは日誌で取り上げた2〜3話だったようで、その後はいまひとつでした。この日誌を見て、見られた方がいらしたら、お詫びしておきます。(^^ゞ
99/07/04
ザ・ドクター(1) |
脚本:中園健司
演出:森田光則(1)、山田高道(2)
プロデュース:森田光則
制作:TBS、木下プロダクション
顔アップを多用したカメラワークが目を引きます。顔アップの多用というと鈴木雅之さんを有名ですが、今回の顔アップは鈴木さんのそれとはリズム感などが違っているので、ボクは、同じ森田さんが演出した「イタズラなKiss」(96年、テレ朝、月8、佐藤藍子・柏原崇)の第1話を連想しました。(佐藤藍子が歯茎から血を流して笑う顔アップが印象に残っています。) 邪推するなら、森田さんはこのドラマにアイドルドラマ的な雰囲気を持ち込みたかったのかもしれません。
それでは、このドラマにおけるアイドルは誰かといえば、もちろん長嶋一茂でしょう。演技以前の存在感だけで、ドラマ内に強烈な磁場を作り出している感じがします。そして多分、この一茂を楽しめるかどうかで、見た人の、このドラマ全体の評価が別れるんじゃないでしょうか。そういう構造がアイドルドラマ的なんです。――ちなみにボクは、演技力がドラマ俳優の必要条件だとは考えていないので、このドラマも楽しんでます。
もうひとつ。「プロデュース 森田光則」で始まって、「演出 森田光則」で終わるタイトルロールも、なんかスゴイですね〜。(^^)
99/07/05
パーフェクトラブ!(1) |
脚本:浅野妙子
演出:高橋正秀(1)(2)
プロデュース:小岩井宏悦
高橋正秀さんという人は、確か「鬼の棲家」でAD(演出補)をやっていた人で、終盤の方で1話だけ演出もしていた人です。最近のフジは、若手・中堅にチーフをやらせて、ベテランがサポートに回る傾向があるみたいですが(オーバータイム、アフリカの夜、リップスティックなど)、それにしても、ADから、いきなり月9でチーフというのは、ちょっと驚きました。
で、そういう先入観があるからなのか、安定感の無さみたいなものを感じました。取りたてて冒険的なことをしているワケではないのに、どこか落ち着かないというか、スッキリ見れない感じ……です。大雑把な印象の問題なので、これ以上は差し控えますが……。
99/07/05
女医(1) |
脚本:森下直
演出:国本雅広
制作協力:東北新社クリエイツ
製作著作:よみうりテレビ
「パッピー」と同じ人が演出してるなんて、思えないですね〜。(^^) ボクが知る範囲では、国本さんのドラマの中で最も手の込んだ映像です。
前クールの「ハッピー」に関しては、一度もコメントしませんでしたが、あのドラマの穏やかな映像やテンポ感、日常の生活感みたいなものが、実は結構好きだったりしました。(^^) ストーリーに感動するほど、ボクは素直な性格じゃないみたいですけど……。(^^ゞ
音楽が渋谷系っぽかったり、中谷美紀の表情に「ケイゾク」的な、とぼけたニュアンスがあったり、いろいろと気になることがありますが、それは宿題ということで……。(^^)
99/07/05
美少女H3 |
タイトル:愛しい人の眠るまで(1)
主演:緒沢凜
脚本:HIROMI
演出:中山高嘉(1)(2)(3)(4)
制作協力:イースト
GAINAX制作、ROBOT制作と、サブカル系の自己満足みたいな作品が続いていた「美少女H3」ですが、今回は大手のイースト制作で久々に力作です。(^^) 緒沢凜の表情を撮ったカットに気合いが入っている感じでコワイです。イーストといえばサスペンスドラマの奇才上川伸廣さんがいるところですが、このドラマも上川さんの作風の影響下で作られているようです。
緒沢凜って、「美少女H」で最初に見たときは、そんなに印象に残らなかったんですが、何回も見ているうちに、だんだん印象が強くなってきますね。「魔女の条件」でも妙に存在感があって、印象に残ってます。そういや「ボーダー」(イースト制作)にも出ていましたね。今回の企画もそこから来ているんでしょうか。
99/07/06
小市民ケーン(1) |
脚本:橋部敦子(1)、福島三郎(2)
演出:星護(1)(2)、平野眞
これは評価が難しいドラマですね。過去のどの作品よりも、星護さんの本質(アーティスト気質)が現れていると思いますが、それがエンタテインメントとして成立しているかというと、ちょっと難しいところです。分かりやすくいっちゃうと、この作品はドラマというよりは、アンディ・ウォーホールとかのポップ・アートに近いような感じがします。
ちなみにボクは、星さんに対してはアーティスト気質、鈴木雅之さんに対しては職人気質の演出家という印象を持っています。
別の角度から見るなら、往年のフジの深夜番組、「カノッサの屈辱」や「IQエンジン」に通じる要素がたくさんある演出なんですが。たしか、星さんは「IQエンジン」のディレクターをやっていたんじゃないでしょうか。(未確認です)
残念なのは、演出やキャスティングに比べて脚本が弱いことでしょう。「これはあなたの物語だ」という部分は、シリアスなテーマを内包しているみたいで好きなんですが、エピソードや主人公の中に、自分と重なる部分がまったく見出せないんですよね。釣り銭の小銭がどうのこうのとか、的外れなエピソードが多すぎるんです。
星さんの演出歴の中で、ターニングポイントになりそうな予感がするので、注目して見ていきたいと思ってます。少なくても、「ソムリエ」とは比べ物にならないくらいの「新しさ」が感じられる作品です。ちなみに、暗めの映像がやたら多いのも、「明智小五郎シリーズ」みたいで、気になっています。
99/07/07
恋愛結婚の法則(1) |
良いヤツに見えたり、悪いヤツに見えたりする、柏原崇の絶妙なニュアンスがスゴイです。逆にツライのが柳葉敏郎で、新味に欠けるキャラですよね。
99/07/07
彼女たちの時代(1) |
いつもの岡田惠和さんとは、テイストが違うような気がするんですけど、この方が視聴率が取れそうだから……。続きは宿題。(^^ゞ
99/07/07
素敵にライバル(2) |
脚本:金子成人
演出:岡田健、土屋勝裕、伊豫田静弘
制作統括:竹内豊
主題歌:「SOMEDAY」佐野元春
制作:NHK名古屋
これは裏番組の「彼女たちの時代」と同じテーマの作品です。脚本はベテランの金子成人さん。両方を比較しながら見るのをオススメします。
映像的には、さほど新味を感じませんが、ロケシーンやセットのデザインに趣があって、なかなかあなどれないものを感じます。(^^)
99/07/09
J家の反乱 |
STORY.13:登校拒否
脚本:小野伸子
演出:北川文彦(FUNS)、谷村政樹
主演:錦戸亮、大石恵
いつになくブラック・テイストなラストシーンが怖かったです。「4年生の時にイジメられてたという話は嘘だ」という錦戸のセリフが嘘だというのは、見ていて見当がついていたんですが、イタズラ書きされた教科書で、イジメが現在も継続していることを示して、唐突に終わっちゃいました。ラストカットの錦戸亮の無機的な表情が強烈で、後味が重たいです。「人間・失格」を思い出しちゃいました。そういえば、ダメ先生役の大石恵は、あのドラマの桜井幸子みたいでしたね。
――それにしてもこの番組、最初に見たときは、バラエティ番組の中にある“ドラマもどき”のワンコーナーという感じで、ドラマ的な興味がわかなかったんですが、いつの間にか脚本・演出のクオリティが上がってきているみたいです。先週の光浦靖子のエピソードもちょっと良い話だったし……。
東京では「ヴァニーナイツ」の後に放送されているので、続けて見ちゃうことが多いんですが、TV雑誌などではバラエティに分類されているようです。実際、ドラマよりも後半のトークの方が面白かったりするし……ね。まあ、テレ東の「国産ひな娘」も面白いのは月に1本くらいだから、似たようなもんかもしれません。いずれにしても、この回は見てて良かったと思いました。
99/07/10
新・俺たちの旅 Ver.1999(2) |
脚本:小原信治(1)、田子明弘(2)
演出:堤幸彦
脚本が田子明弘さんになって、ちょっと持ち直した感じがします。好みの問題なのかもしれませんが、セリフにリアリティとか説得力があるような気がします。森田剛が左幸子に噛みつくシーンとか、オリジナルの「俺旅」に通じるテイストを感じました。
コメディの部分も、ネタの面ではもう少しヒネリがほしいですけど、ノリは良くなっているような気がしました。
今回、気になったのは、「プリズンホテル」に出ていた笠原秀幸が登場したこと。「プリズン」を見たとき、どこかで見たことがある顔だと思って、「子役データベース」で検索したら「びんぼう同心御用帳」で見ていたことを思い出しました。映画「GTO」のCMでも名前入りで紹介されていたし、今後ブレイクするかもしれないです。
堤さんは同じ役者を何回も起用するのが好きなんでしょうか。……でも、笠原秀幸が出てきた回って、鬼頭理三さんが演出してたような気がします。(~_~;) そもそも「俺旅」は4月に収録開始しているから、「俺旅」第2話の方が収録時期が早い可能性もあります。
99/07/12
パーフェクトラブ!(2) |
演出:高橋正秀(2)
連ドラの第1話に派手な仕掛け(海外ロケとか)を持ってくるというのは、定番の手法なんですが、最近、それが逆効果になっていると感じるケースが多いような気がします。このドラマも、日常的なエピソードに戻った第2話の方が面白かったし、「オーバータイム」「PU-PU-PU-」「あきまへんで!」「世紀末の詩」「ボーイハント」などにも、同じような感想を持ちました。
99/07/16
J家の反乱 |
STORY.14:キャッチボール
演出:北川文彦(FUNS)、谷村政樹
出演:河相我聞、今井翼etc
今週は、先週以上にシリアスな脚本で、日誌を書きながらチラチラ見てたら、引き込まれちゃいました。ここに来て、急にクオリティが上がってますね。ストーリーは、河相我聞とその息子が登場して、河相我聞が「息子は自分と血がつながっていないが、それを息子に言えない」と相談する。相談された地井武男は、自分も同じ境遇だったため答えに詰まる……というもの。15分ドラマとしてはかなり密度の高い構成になってました。
今井翼が実の息子ではないことが視聴者に明かされた後に、それを知らない今井に地井武男が「もしお前だったらどうして欲しい」と問いかけるシーン。シェイクスピアから大映テレビに連なるドラマの王道ともいえるカタルシスがありました。(^^) 結局、今井翼は真実を知らないままドラマは終わっちゃうんですが、暗めの画面、セリフの合間の沈黙など、なかなか良い雰囲気でした。余韻が残ります。
しばらく、この番組からも目が離せない感じです。
99/07/17
めぐりあい |
脚本:橋田壽賀子
演出:藤田明二
プロデュース:中山和記(共テレ)、河合徹(フジ)
うわ〜。これ、なんにも知らないで見てたら、絶対橋田ドラマだとは思わないでしょうね。(^^) オープニングの海辺の菅野美穂のシーンに見ごたえがありました。どこで菅野のアップが入るんだろう……なんて思いながら見てました。また、料亭のシーンで料理をアップで撮ったカットを見て、藤田さんが演出している「美味しんぼ」を連想してしまいました。(^^)
ただ、菅野美穂の演技は、「恋の奇跡」っぽいところもあれば、「鶴亀ワルツ」っぽいところもあり、さらにシリアスな部分では「イグアナ」を連想しちゃう部分もあって、ちょっと一貫性に欠けるような気がしました。まあ、この辺は判断/評価が難しいところなんですが…。(-_-;)
99/07/31
新・俺たちの旅(5) |
脚本:小原信治(1)(5)
演出:猪俣隆一(4)(5)
「今週は面白いじゃん…」と思った人は、多いんじゃないでしょうか。脚本自体は大きく変わったという印象は受けないんですが、演出の方向性は明確に変わっていたと思います。猪股さんが演出するのは先週に続いて2回目ですが、先週は顔合わせという感じで、この第5話で猪股カラーが全開したようです。
堤Dが、演技のリズム感と音楽のリズム感をシンクロさせることに重点をおいていたのに対して、猪股Dは演技のリズム感を優先して、音楽の方はあくまでもBGM的に用いていたようです。さらに、猪股Dは表情を撮るのが上手くて、これが結果的に出演者の存在感をイキイキとしたものにしていました。カミセンの3人はもちろんのこと、根岸季衣の表情がシブかったです。(^^) 堤Dの表情アップが静止画的だとすると、猪股Dは動画的な感じがします。また、セピア〜オレンジ系のカラー処理が多いのも猪股Dの特徴です。堤Dはどちらかというとブルー系を多用しているみたいです。
ただ、金持ち役のつるの剛士とか、どうしても脚本〜ストーリーの安っぽさが目に付きますね。第4話の視聴率は6.8%と苦戦しているようですが、これも仕方ないんだろうなと思います。「PU-PU-PU-」みたいだったら嫌だなと心配していたところに、「PU-PU-PU-」のリメイクみたいなものを見せられたら、やっぱツライですよね。深読みするなら、TBSにしても日テレにしても、カミセンの持ち味〜使い方を良く研究しないまま、企画しちゃったということなのかもしれません。「君といた未来のために」が良かったのは、堂本剛という素材の特徴を知り尽くした上で、企画されていたからだと思います。
99/08/07
新・俺たちの旅(6) |
脚本:小原信治(1)(5)(6)
演出:堤幸彦(1)(2)(3)(6)
三宅健は堤幸彦さんが演出した回で、印象的なアップが多いようです。きっと、堤さんとのコミュニケーションが、密に行われているということなんでしょう。「このセリフの前に、こういう表情を入れた方が効果的だから、アップで撮ってくれ」みたいな……。
ただ、この人は、目線の動かし方とか、細かいところまで、よく考えて演技しているようですが、いかんせん不器用というか、わざとらしい感じもあります。とはいっても、上手い下手は別にして、ていねいに演技している感じは好感が持てます。
逆に言うと、森田剛や岡田准一から、このようなキメの細かさは、あまり感じられないです。天性の資質だけで演技している感じがします。よく、「岡田准一は演技が上手い」という意見をよく目にするんですが、ボクが見たかぎりでは3人の中でとりたてて上手いとは思えないです。どの部分を指して演技が上手いといっているんでしょうか。たしかに声質に安定感があるとは思いますが、表情の作り方とかは、ちょっと雑な感じがします。
ところで、脚本は今週も小原信治さんですが、大島蓉子&伊崎充則親子は、先週の根岸季依&山崎裕太親子と同じような設定だったので、ちょっと興醒め……。大島蓉子さんは「プリズンホテル」つながりですね。
99/08/08
怖い日曜日(5) |
演出:永井英樹(4)(5)
ドラマというよりも、MTVみたいな映像作品集になってるこの番組ですが、気合いを入れて見るには、1話が5分くらいの方が良いですね。(^^)
海辺で一緒に遊んだ友達のJくんは既に死んでいた……というエピソード(ボクが知らない無名ジュニアが出演)が、哀愁の怪談という感じで余韻が残りました。永井さんは大根仁さんに比べると色使いのセンスがノーマルですが、表情の撮り方(先週の今井翼とか)に味があります。
ところで、友達のJくんって、日本人で頭文字がJになる名前って何だ? 城島? (^^) ……あと、前にも書きましたが、ジュニアのバカっぽいナレーションはなんとかならんですかね。
99/08/09
天国のKiss(5) |
脚本:楠本ひろみ
演出:唐木希浩(5年D組)(1)(2)、久野昌宏(3)(4)、秋山純(5)
プロデュース:内山聖子、桑田潔(テレ朝)、伊藤正昭(ホリプロ)
音楽:溝口肇
制作:ホリプロ、テレビ朝日
ボクは一応、月8マニアなんですが、今回は久々にツライです。「研修医なな子」(97年秋)以来ですね。このツライ感じは…。(^^)
ストーリーがサイアクで、奥菜恵は生きてるんだか死んでるんだか、ワケわからないし……。「わたし死んじゃった〜」とか言って泣いてるんですけど、ちっともかわいそうに思えない。生きてる人間と同じように生活できる上に、超能力まで使えちゃうんだから、普通に生きてるよりも、得してるんだもん。
しかも、ひとつひとつのエピソードが、安直に解決して終わっちゃうから、いまだに核になるストーリーが見えてこない。島袋寛子にしても、ラクリマのお兄ちゃんにしても、結局何だったの? しかも今週は、藤原竜也がさんざん引っ張っといて、最後にアッサリ戻ってきちゃうんだもん。
唐木さんが演出した第1話の冒頭5分くらいは、良い雰囲気だったんですけどね……。その後がイカンです。奥菜恵は“いつものキャラ”のまんまだし、藤原竜也にしても、「チェンジ!」「LIVE」の時のカットを差し込んでも、誰も気がつかないような気がします。さらに、自宅のセットは「チェンジ」「あぶ放」「天キス」と、どれも似たり寄ったりだし、こういうマンネリ感の積み重ねが、ドラマから新鮮味を削いでいるような気がします。
これまた定番のライバル少女に起用されたのは、片瀬那奈。「GTOスペシャル」でも意地悪な役をやっていましたが、意地悪そうな目線にインパクトがあって、「GTO」「鬼の棲家」の中村愛美より、存在感を感じます。バスケ部の部員に「ナオミ」の生徒だった青木堅治、一條俊が出ているのもチェックです。特にキャプテン役の青木堅治は、二枚目半的な役所で良い味を出す俳優なので期待してます。あと「ナオミ」で力石徹みたいにブッ倒れていた一條俊は、山田まりやの同級生だったらしいです。同級生といえば、奥菜恵のクラスメイト役の松田純と、もうひとりの女の子。……う〜む、あんまし印象に残ってないか。(^^)
残念といえば、溝口肇さんの音楽。「ピュア」のサントラは結構好きだったんですが、今回はいまひとつ。印象に残る曲とかシーンがないです。
99/08/09
パーフェクトラブ!(6) |
高橋正秀さんが演出したのが(1)(2)(5)話で、中江功さんが演出したのが(3)(4)(6)話。で、見ていて笑っちゃったのが(3)(4)(6)話。中江さんが演出すると、福山雅治が面白くなるみたいです。
ただ、ストーリー的には、どういう方向に持っていきたいんだか、よくわかんなくなっちゃいました。武田鉄矢をつかってヘビーな親子関係描写に持っていくのかと思ったら、そうでもないみたいだし。三十男の複雑な心情を描いている……という感じでもなさそうだし。木村佳乃の内面もアッサリ描かれているみたいだし。
99/08/11
田舎で暮らそうよ(5) |
脚本:金谷祐子
監督:佐藤健光(1)(2)(5)、村松弘之(3)(4)
プロデュース:都築博etc
制作:東宝、テレビ東京
今期のドラマの中で、意外に拾い物なのがこれかもしれません。
佐藤健光さんはイースト所属で、「美少女H」の中の佳作「軽い機敏な子猫何匹イルカ?」や、昼ドラ「ぐっどあふたぬ〜ん」(97年・愛の劇場・河合美智子、金山一彦)を演出した人ですが、多分、月8の「カケオチのススメ」や「さんかくはぁと」を演出した佐藤けんこうさんと同一人物だと思われます。また、セカンドDの村松弘之さんは、深夜ドラマの「エコエコアザラク」や「せつない」で演出をしていた人です。
このドラマの最大のポイントは、非常に主観的な言い方になってしまいますが、出演者がみんなイキイキとしていて味があるということではないでしょうか。登場人物のキャラ設定とか、芝居の乗りを重視した演出とか、細かいところに対する配慮の的確さを感じます。
もちろん、八ヶ岳周辺のロケシーンの美しさも悪くないのですが、映像だけ取り出してみれば、ムチャクチャ凄いというワケでもないと思います。それよりも、芝居の合間に風景の映像を挟み込むタイミングの上手さの方を、高く評価したいです。
あと脚本のテーマも、昼ドラみたいだけど、最近の連ドラの中では新鮮な感じがします。実際、愛の劇場にこの手のドラマがいくつかあって(風になりたい、家族になろうよetc)、どれも好きだったのですが、それを夜のドラマに持ってきたという感じです。
99/08/12
てっぺん(6) |
脚本:深沢正樹
演出:新城毅彦(5年D組)(1)(2)(5)、下山天(コクーン)(3)(4)(6)
プロデュース:田中芳之etc
制作:テレパック、テレビ朝日
桑田佳祐やB'zのビデオクリップや映画「CUTE」で知られる下山天さんの、実質的な連ドラデビュー作とも言えるドラマです。だた、ボクの場合、下山さんというと、95年の「木曜の怪談・マリオ」(主演:堂本光一、制作:ROBOT)での、衝撃的な出会いの印象が強いんですが……。
ただ、このドラマに、斬新な色使いやカメラワークを期待すると、ちょっとコケてしまいます。(^^) それもよりもボクが感心したのは、オーソドックスな芝居の演出が上手なこと。こんなことを言ったら失礼かもしれないんですが、映像派の演出家というのは、芝居の演出が下手だったりするケースが多いので、このドラマも見る前は心配していたんです。ところが、フタを開けてみたら、ストーリーとかセリフのメリハリがハッキリしていて、非常にわかりやすい作りになっていました。恐れ入りました。_(._.)_
で、ベーシックな芝居の流れを押さえつつ、要所要所で映像的なこだわりも垣間見れたりするんで、そういう意味では、気合いを入れて見ていると、なかなか楽しいです。たとえば、カメラワークなんかも微妙に遊び心があって、カメラが引いていくと別の登場人物とか部屋が画面に入ってきたりします。
また、第4話の序盤で、坂井真紀と田中好子がレストランで対面するシーン。レストラン内のピアノ演奏と手の込んだカット割りが、サブリミナルな効果を生み出していました。(^^) ただ、ストーリー的にはあんまり魅力を感じません。第1話の香港ロケも、いまひとつだったし……。
99/08/13
to Heart〜恋して死にたい(7) |
脚本:小松江里子
演出:松原浩、遠藤環(7)、那須田淳
プロデュース:伊藤一尋
今週はバラエティっぽい手の込んだ演出が目立っていたので、那須田淳さんかと思ったら遠藤環さんでした。(^^) 暗い画面の中から堂本剛に表情が浮かびあがってくる光のサジ加減など、印象に残る要素が多い回でした。深田恭子の和服(浴衣)姿とかも。(^^)
ただ、このドラマ全体の感想としては、演出的な魅力は乏しいという話になっちゃいます。これは「俊平」にも言えることなんですが、セットにしても、ロケ地にしても、映像にしても、音楽にしても、“いつものTBSドラマ”という印象が強すぎるんですよね。だから、細かいところに注目してアレコレ言っても意味がないような気がするんですよ。――というワケでこのドラマに関しては、脚本に注目して見ていたのですが、この点に関しても厳しいものがあります。
小松江里子さんというのは、日常生活における人間の善良な部分を描くのが得意な脚本家で、このドラマでいえば、深田恭子や原沙知絵、吉沢悠、赤井英和らの描写にそれが表れています。逆にいうと、悪人とか、乱交パーティ(?)をするような人間を描くと、とたんにドラマが安っぽくなっちゃう傾向があります。(^^)
で、第1話を見て、今回は“善良な部分”を作劇の中心コンセプトにしているみたいだったので、結構期待していたのですが、その後の展開を見ていると、……ねぇ。(^^ゞ 畦地令子が演じるエレガと、松尾政寿が演じるライバルボクサーのキャラが安っぽいというか、ご都合主義的すぎて、この2人が絡むエピソードというのは、単に物語を引き伸ばすためだけにある、上げ底みたいな感じがします。同じことは、堂本剛の手のケガとかにも言えます。
これらのことが何を意味するのかというと、“善良な部分 = 日常的なエピソード”だけで物語を紡ぎあげていく力量が、小松さんなり、伊藤組のスタッフにない、ということです。深田恭子の魅力を引き出すことに、ある程度成功しているだけに、かえって、小松さんの限界が露呈されているみたいで残念です。――このことは、「彼女たちの時代」の岡田惠和さんが、表面的な事件ではなく、日常的な会話の積み重ねによって、友情が生まれる過程を描いているのと対照的です。
第2話だったと思うのですが、深田恭子が堂本剛の部屋に入り込んで、冷蔵庫をのぞいたりするシーンが、小松さんらしくって好きでした。しかし、そこで止めとけば良いものを、そのまま堂本剛の部屋で罪悪感もないまま、はしゃいでいるので興醒めしちゃいました。今思えば、このシーンにこのドラマの魅力と、つまらなさが集約されているような気がします。
……個人的には、深田恭子は吉沢悠と付き合った方が、良いような気がします。吉沢悠の愛情表現が一番、良識というか常識があるでしょう…。(^^ゞ
99/08/13
独身生活(6) |
脚本:尾崎将也
演出:吉田秋生(1)(2)(6)、清弘誠、戸高正啓
プロデュース:成合由香
このドラマの第1話の演出手法は、同じ吉田さんが4月に演出した「コワイ童話・シンデレラ」にソックリなホラー風だったので、妙に感心してしまいました。しかし、その後はホラーテイストが後退してしまって、ちょっと残念でした。でも、今週はまたまた吉田さん。ホラーテイストが少し復活していたみたいです。
ボクが、このドラマの中で一番気になるのは、江角マキコと加藤紀子の関係性。ちょっとエロチックな感じがしませんか? 別に「ひとり暮らし」の永作博美みたいな方向に行ってほしいとは思いませんが、このままもっとエロチックな感じになったら、面白くなるような気がします。お互いが相手の中に自分にない部分を見つけて、そこをいとおしく感じているところがエロチックなんです。
99/08/13
千年王国3銃士・ヴァニーナイツ |
先週は見逃したのですが、今週は、緊張感のある映像が30分の中にぎっしり詰まった力作でした。監督はもちろん清水厚さん。全体的に暗めの映像だったんですが、光の当て方やアングルの完成度が高くって、ひとつひとつのカットが、そのまま写真集にできちゃうくらい。日常生活のシーンでは、ドキュメンタリーっぽい感じがして良かったです。
ストーリー的にも佳境に入ってきたみたいで、ラストで、渡辺慶のことをお兄ちゃんと呼んでいた女の子が死んじゃいました。(ストーリーをちゃんと把握していないですね。) この続きは来週で、また清水さんが監督するみたいなので、期待が高まります。
99/08/13
J家の反乱 |
STORY.18:線香花火
脚本:??
主演:斉藤慶子、今井翼etc
演出:北川文彦(FUNS)、谷村政樹
こちらも先週は見逃していますが、今週はまたまた暗い話で、かなりハマってしまいました。(^^) 夫の暴力に悩む斉藤慶子に今井翼が想いを寄せる……というストーリーなんですが、斉藤と今井が線香花火をしているシーンを見ていたら、往年の東芝日曜劇場を思い出してしまいました。――こういうオールセットの貧乏ドラマって、最近では、ビートたけし&トヨエツの「兄弟」くらいしかなかったから、妙に新鮮なんですよね。夏祭りの効果音なども、いい感じでキマっていました。しかも、斉藤慶子にしても今井翼にしても、貧乏臭い感じが良く似合ってる。(^^)
結局、暴力夫が自殺して、葬式が終わった日の夜、寝付けなかった今井が明け方、斉藤の様子を見に行くと、そこには……。というところで、結末を見せないで終わっちゃったんですが、多分、斉藤も自殺していたということなんでしょう。
――物語自体は陳腐なんですが、レトロで貧乏臭い情感がドラマ全体に漂っていて、東芝日曜劇場なんですよ。別の見方をするなら、ライトタッチの“つげ義春ワールド”という感じ……。(^^) 7/9放送のイジメのエピソードの時もそうですが、謎を残した終わらせ方にも、作り手の意欲が感じられて、なかなか刺激的です。こういう路線のドラマって、どこかで復活して欲しいですね。
ビデオに録画して、後でもう1回見たかったと、ちょっと後悔したりしてます。(^^ゞ 予告を見た感じでは、来週も暗そうな雰囲気。このまま、“東芝日曜劇場+つげ義春”の路線で突き進んでいってほしいです。――金曜深夜。気が抜けないです。
99/08/16
天国のKiss(6) |
脚本:山崎淳也(6)
演出:唐木希浩(1)(2)(6)
ゲストの深田恭子を見ていて思ったんですけど、この番組って、タレント(役者)の使い方が下手ですね。キャラ設定にしても、表情の捕らえ方にしても、「to Heart」と比べると、その違いが明白すぎて、ツライものがあります。(その点「あぶない放課後」は良かったですね……) まあ、それ以上にツライのが脚本なんですが……。(^^)
今週は脚本が山崎さんになっていましたが、これといった違いは感じられません。「心が死ぬっていうのは単なる比喩表現だろっ!」とか、「そもそもオマエ(奥菜)は、死んでるうちに入らないだろっ!」とか、違和感ばっかりの1時間でした。――世間では、脳死判定とか臓器移植が問題になっているのに、このドラマは“死の定義付け”について、ちょっと鈍感すぎるように思います。(-_-)
ところで、第1話を見たときも思ったのですが、この番組、ロケーションのセンスは悪くないですよね。橋のシーンとか、その近辺の町並みの雰囲気とか、カメラアングルを含めて、ていねいに撮られていると思います。
99/08/16
同窓会へようこそ |
脚本:成田はじめ、源孝志
演出:源孝志
音楽:溝口肇
プロデュース:鈴木基之、関本広文
演出補:熊谷拓雄
助監督:松川崇史
協力:エーステレビ、渋谷ビデオスタジオ、フジアール、他
制作:ホリプロ、TBS
これ、クレジットだけ見てたら、フジテレビみたいですよね。(^^) 関本広文さんは「白線流し」をやってた人だし、熊谷拓雄さんは「美少女H」でおなじみの人。フジアールっていうのもフジテレビ系の会社でしょう…多分。エーステレビは、「美少女H2」で黒坂真美と柏原収史が出てた回の、制作か制作協力(演出は稲葉正宏さん)。
演出は、NHKのドラマなどに良く見られる映画風の作風。このホームページをよく読んで下さっている方なら気がついているかもしれませんが、ボクは“映画風”というのが、あんまり好きじゃないんですよね。フィルムで撮れば、良い画が撮れるとも思ってないですし……。逆に“MTV風”に対しては、評価が甘くなります。ひとつだけ挙げるなら、エンドロールのバックで峰岸徹が出てきたところが、印象に残りました。
トヨエツと風吹ジュンには、あまり新味を感じなかったんですが、加藤あいと金子賢が予想外に健闘していました。特に、加藤あいは「あぶない放課後」やCMで、ヴィヴィッドな表情を見せていましたが、今回、演出の源孝志さんは、意志の強そうな目付きに重点をおいて、表情を撮っていたようです。これがなかなかハマっていて、ドラマ上のキャラ設定(幽霊)とピッタリ合っていました。結構、オジサン受けする顔だし、10月からは連ドラも決まっているし、この調子で大ブレイクしそうな感じがします。(^^)
ただ、ラストのキスシーンはない方が良かったです。別に、加藤あいのキスシーンは見たくないとか、相手がトヨエツだから心配だ……という話じゃなくて、もっとストイックに終わって欲しかったという話です。幽霊だとわかった後に再登場して、あんなに派手にキスされちゃうと、引いちゃうものがありました。(^^ゞ やはり、幽霊だとわかった後は、しんみりと余韻を残して終わった方が、良かったと思うのですが……。
99/08/16
コワイ童話・ラプンツェル(2) |
脚本:小野沢美暁
演出:藤尾隆(1)(2)(テレパック)
プロデュース:伊佐野英樹、森下和清(テレパック)、千葉行利(テレパック)
制作協力:テレパック
8月になって、月曜の深夜も面白くなってきました。「ラプンツェル」も「美少女H3・赤い波涛」も、同系の怖い演出を狙っているようです。色使いとか映像の質感などは「赤い波涛」の方が凝っていますが、アイデアの量・質・斬新さで「ラプンツェル」の方に、見るべきものが多いと思います。
たとえば、この第2話。殺される男が直瀬遥歩のファミレス(?)に訪ねてくるシーン。男の顔を見て喜ぶ直瀬の顔アップの後、ファミレスの前を2人が歩くシーンに移るんですが、その直後に、また前述の直瀬の顔アップが再度挿入されていました。つまり、物語の時系列を無視したカット割りになっているんです。
藤尾隆さんは、「週末婚」でセカンドDをやっていた人ですが、このドラマでは、凡人離れしたユニークなアイデアのオンパレードで、これから注目したいです。――ただ、3、4話は、別の人が演出するようです。
99/08/25
彼女たちの時代(8) |
脚本:岡田惠和
演出:武内英樹(1)(2)(3)(6)、石坂理江子(4)(7)、澤田鎌作(5)、小池哲夫
プロデュース:高井一郎
加藤晴彦が泣き出すシーン。結構インパクトありました。まさか、あそこで泣くとは思ってなかったので、意外だったんですが、そのこと以上に強力だったのは、あの泣き方。普通、ドラマの中で男が泣く場合、もうちょっと派手な泣き方をするのが一般的だと思うんですが、今回の加藤は、脱力系というか、自閉症的というか、弱々しい泣き方。――こういうのは、演出上の冒険なんだと思います。
できれば、このまま軟弱なダメ男で行ってほしかったんですが、その後の、女を連れ込んで……という展開は、同じダメ男でも裏番組の明石家さんまみたいで、キャラクターに一貫性がないです。やはり、ここは、水野美紀のお金を使い込んで、出張系の風俗(?)にするとか、もっと情けない感じにした方が良かったんじゃないでしょうか。(^^) まあ、これが「怪傑熟女」とかだと、仕事もしないで呑んだくれる暴力系のダメ男が定番みたいですが。そういえば、人生相談番組を批判するナレーションもあったっけ。(^_-)
今週は誰が演出したのかチェックし忘れたんですが、澤田鎌作さんでしょうか。小池哲夫さんでしょうか。椎名桔平が本社の狭い部屋で待機させられているシーンで、部屋全体を写した引きのカットから、いきなり目のアップに切り替わるセンスは、澤田さんっぽいような気がしますが……。
それにしても、これまでパッとしなかった加藤晴彦ですが、今回の"泣き"でやっと味が出てきたという感じです。モラトリアム系のダメ男というのは、岡田さんが得意とするキャラだと思うのですが、後半の展開のためにワザと描写を抑えているんでしょうか。または、あくまでも水野美紀の視点から(断片的に)加藤を描く…という意図があるのかもしれません。
このドラマの脇役で印象が強いのは、奥貫薫、平泉成、山本圭あたりで、加藤晴彦、鳥羽潤、緒沢凜とかは、どうも心に引っかかるものが少ないです。特に奥貫薫は、出番は少ないのに、美味しいところをゴッソリ持っていっている感じ。(^^) 会社勤めの経験がない…という設定がオイシイです。――その他にも、ちょっとした脇役の描写にも厚みがあって、さすが岡田さんだと感心します。深津の上司(温水洋一)とか、見合い相手(笠兼三、笠智衆の孫)とか、営業先の岡本信人とか、年下の先輩営業マン(雨あがり決死隊・宮迫)とか、ドラマに描かれていない日常の生活ぶりが目に浮かぶようです。
話は変わって……。
このドラマで一番自分の色を出しているのは、岡田さんでも高井さんでもなく、チーフ演出の武内英樹さんじゃないでしょうか。芝居の部分はオーソドックスに撮って、セリフのない部分では歌モノをガンガンかけて盛り上げる――「東ラブ」に通じる永山耕三さんのスタイルを継承していると言えるでしょう。脚本面でも、ヒロイン3人が走るシーンを意図的に多くして、主題歌とかを流しやすくしているようです。
ただし、基本的なスタイルは永山さんでも、使用している音楽の趣味は武内さんの趣味になっているようです。バックストリート・ボーイズの新譜をそのままサントラに使っちゃうというのも大胆ですが、バックストリート・ボーイズを選ぶところに、武内さんの趣味・嗜好を強く感じてしまいます。最初のうちは、バックストリート・ボーイズの印象が強かったんですが、第3話くらいから、NiNaの主題歌の方が良くなってきました。最初に聞いたときは“ブリグリみたいな洋楽もどき”という印象だったんですが……。そういえば、前回武内さんが演出した「オーバータイム」は主題歌がブリグリでしたね。(^^)
こういう「東ラブ」スタイルの演出というのは、主題歌の善し悪しが、ドラマ全体の評価を決定しちゃう側面があるのですが、このボクに関していえば、成功しているようです。この日誌を書いている間も、頭の中でNiNaの主題歌がなっているくらいですから……。(^^)
またまた、話は変わって……。
このドラマが、山田太一の影響下にあることは、TV誌などにも書いてありますが、テレビドラマデータベースの新作掲示板2で、ATCQさんが細かく指摘されています。それによるば、第1話での鳥羽潤の印象的なセリフ、「お前ら何にもないのかよ」は、「想い出づくり」で柴田恭平がヒロインたちにつきつけたセリフと同じだそうです。この種の引用は嫌いじゃないのですが、その後の鳥羽潤を見ていると、セリフの密度が落ちてきているみたいで、第1話の時と同じキャラとは思えないような違和感があります。もちろんキャラクターに一貫性がなくても、セリフのテンションが一貫してれば、サブキャラ(触媒)としてはOKなんだと思いますが、そういう感じでもないんですよね〜。
第3話以降は、山田太一色が薄れて、岡田惠和さんのカラーが出てきているので、最終回で全員が一堂に会して討論会……みたいな展開にはならないと思います。ただ、岡田さんのカラーが出てくるにつれて、逆に、ついていけない視聴者も出てくるのかもしれません。人間の“煮え切らない部分”を描くのが、岡田さんの持ち味なんだとボクは考えていますが、それとは逆に「煮え切らないドラマだ」って、チャンネルを変えちゃう人もいると思います。
岡田さんの代表作に「イグアナの娘」がありますが、このドラマは、第2話の小嶺麗奈のセリフの中に、ドラマ全体の結論が出てきちゃいます。だから、そこだけ見れば、このドラマは第2話で終わっているともいえるのですが、そのように考えちゃうと、このドラマの面白さはわからないでしょう。つまり「イグアナ」の第3話以降というのは、ヒロインの菅野美穂が、小嶺麗奈のセリフの意味を、頭で分かるのではなく身体で分かるまでの過程を描いていると考えるべきなんです。――言葉を理屈として理解するのと、実感として理解するのは同じじゃない。これが岡田さんのスタンスなんじゃないでしょうか。
だからなのか、岡田さんのドラマというのは、セリフを出し惜しみしないという傾向があるようです。普通だったら最終回までとっておくようなセリフが、第1話からバンバン出てきます。これが岡田さんの魅力ですが、弱点であるともいえます。岡田さんのドラマの最終回が、いつも中途半端な感じになってしまう原因もここにあります。“最終回でキレイにまとまるドラマ”を見たい人は、岡田さんのドラマとは肌が合わないと思います。で、この意味において、最近のドラマで、岡田さんのドラマに一番近いのは「渡る世間」なんだと思います。登場人物がちっとも成長しないところなんかも、よく似ています。(^^)
「渡る世間」の話が出たついでに書いてしまうと、「彼女たちの時代」も続編を見てみたいですね。(^^) 現在、視聴率は11%前後ですが、1〜2年後にパート2をやれば、15%のラインは越えられそうな気がします。さらに、その1〜2年後にパート3をやれば、20%くらいいくかもしれません。(^^ゞ
これからは“面白いけど視聴率が取れない”番組を、視聴率が取れるように育てていく……という視点が重要になるじゃないでしょうか。「踊る大捜査線」の時もそうですが、情報化が進んでも、情報が伝播するスピードは速くならないみたいですから(情報化のパラドックス?)、時間をかけて育てた方が、新規に企画をたてるよりも効率が良いような気がします。(^^)
99/08/28
双子探偵(7) |
脚本:伴一彦
演出:笠浦友愛(1)(2)(3)、木村隆文(5)(6)、菅原浩(7)
共同制作:NHKエンタープライズ21
伴さんの掲示板で評判が良かった第4話は見逃してしまいました。(^^ゞ で、ボクが見た中では、笠浦友愛さんの演出が際立っているように感じられます。笠浦さんは、NHKの単発ドラマ「熱の島で・ヒートアイランド東京」(脚本:井上由美子、主演:薬師丸ひろ子)を見てから、注目していた人です。
このドラマでは、特に派手なことをやっているわけではないのですが、カメラワークや音楽の使い方に、絵心や遊び心が感じられて、微妙に違うんですよね。ちょっと「怪奇倶楽部」みたいなテイストもあります。(^^ゞ
それにしてもこのドラマ、謎解きの部分は単純なのに、犯行の動機が暗いですね。毎回見終わった後に、重たい余韻が残ります。それだけに、終盤の展開が気になります。できれば、また笠浦さんの演出で見てみたいです。
99/08/28
新・俺たちの旅(8) |
脚本:田子明弘(2)(4)(8)
演出:猪俣隆一(4)(5)(8)
第4話(西岡徳馬)のラストシーンなどもそうなんですが、田子明弘さんが脚本を書いた回は、辛口のテイストになっているようです。陳腐な友情物語にはしたくないという、こだわりが伝わってきます。
今回、印象に残ったのは、三浦理恵子とエリート男の気持ちが離れていく過程を、比較的ていねいに描いていたところでしょうか。石黒賢夫婦の関係なども、サブストーリー的な面白さがありました。まあ、石黒賢と岡田准一が和解するのはお決まりの結末だとしても、急に物分かりが良くなってハッピーエンド……みたいな展開にはなっていませんでした。田子さんも「彼女たちの時代」ほどではないものの、話をキレイにまとめることに対して、抵抗を感じている脚本家なのかもしれません。
猪股さんの演出も、第5話に比べると、遊びの部分が減って、脚本のニュアンスを大事にしていたようです。ただ、第8話まで見てきて、改めて感じるのは、森田剛に違和感があるということ。森田剛って、良く言えば可愛いのかもしれないけど、悪く言うと“重み”に欠けるんですよね。
……「テレパル」によれば、最終回も田子さんが脚本を担当するみたいです。(^o^)
99/08/30
女医(9) |
脚本:森下直
演出:白川士(7)(9)
このドラマで一番派手な演出をしているのは、セカンドDの岡本浩一さんかもしれません。岡本さんは、「奇跡の人」や「ボーダー」でも、エキセントリックな演出をしていた人なので、今後の活躍が期待されます。白川さんは、普段は演出補としてクレジットされています。手の込んだことよりもオーソドックスな演出を好む人みたいです。
99/09/13
女医(11) |
プロデュース:堀口良則、藤田裕一
チーフP:池田典正、近藤晋
AP:渡辺茂、池田禎子、上枝忠乃
音楽監督:近藤由紀夫、小西香菜
最終回。検事役の嶋田久作も良い味を出していたのですが、その嶋田久作が法廷で「極刑」と言った直後に「死刑のことだよ」とチャチャを入れる萩原流行が、ツボにハマりました。(^^) 加賀丈史や古尾谷雅人もそうですが、このドラマはキャスティングが贅沢というか、センスが良かったですね。音楽に例えていうと、スタジオ・ミュージシャンを贅沢に使いこなしたスティーリー・ダンに通じるものがあるような気がします。
音楽といえば、劇伴のクオリティも高かったです。音楽単体での印象は地味なんですが、各シーンでのシンクロ率が高いというか、物語をしっかり補強していたように思います。感動シーンで入る曲とか、ハチミツのシーンで入る曲とか。(^^)
99/09/21
小市民ケーン(12) |
最終回。終盤の脚本に関しては、ネット上で不満をもらしている人も多いみたいですが、ボクの場合は、脚本に関しては第1話の時点からイマイチだと思っていたので、改めて不満を感じるということはありませんでした。できることなら、三谷幸喜さんに書いて欲しかった……なんて思ったりしますが。
先日、「小市民ケーン」のサウンドトラック盤を購入したのですが、これがなかなかオススメなんです。星護さんが音楽の佐橋俊彦さん宛てに書いた、劇音楽の発注書がライナーに収録されています。第1話の脚本に添ったかたちで細かい指示が書いてあるんですが、偶然にも、第1話の録画ビデオだけ消さないで残ってたりするので、ヒマな時にでも発注書を見ながらビデオを見直したいと思っています……が、ヒマがないです。(^^)
星さんはその発注書の中で、このドラマはコメディだけどテーマは結構まじめなので、メインテーマ曲は感動的であることが第一だ、と書いています。ボクはこのドラマのまじめな部分(メインテーマ曲がかかっているシーン)が好きだったので、この発言には、素直に納得できるのですが、ドラマ全体の印象となると、脚本やキャスティングが音楽に負けてると思っちゃうワケです。
99/09/22
彼女たちの時代(12) |
最終回。ナレーションの内容とは裏腹に、セリフとかナレーションがまとめに入っているように感じたのはボクだけでしょうか? まあ、まとめに入ってしまうのはある程度許せるにしても、最終回は陳腐なナレーションも多くて、ちょっと残念です。ただ、ラストの空想シーンはちょっぴり“月8”のノリが入ってたのでOKとしましょう。水野美紀&加藤晴彦のカップルもホノボノしてたし。(^^)
このドラマの“隠しテーマ”は、「ランデヴー」や「可愛いだけじゃダメかしら?」の面白さがわからない人にも、岡田惠和ドラマの面白さをわからせる……ということだったんじゃないかと邪推してます。(^^) 山田太一もどきのエピソードも、説明過剰気味のナレーションも、自己啓発セミナーも、人間開発室も、岡田ドラマ特有のニュアンスがわからない人のための対策というか、補助線みたいなものだったんじゃないでしょうか。
たとえば、「ランデヴー」や「可愛い」(特にラスト3話くらい)において、板倉文や寺嶋民哉の音楽が果たしていた役割を、「彼女」ではナレーションが果たしていたワケです。「ランデヴー」や「可愛い」が好きな人っていうのは、絶対に自分で言葉を補いながら見ているはずで、逆に言うと、「彼女」というドラマは、それができない人のための“解説付きランデヴー”だと言えるんですね。(^^) ただ、いつもの岡田さんより若干毒気が多いような気がしたのですが、これは高井一郎Pのカラーなのかもしれません。
いずれにしても、そこまでして商業主義(?)に徹したのに、最終回視聴率は10%で、その効果は「ドラマアカデミー賞」の審査員止まり。現実は厳しいですね〜。岡田さんは、次は商品としても成功するドラマを書きたいと発言しているようですが、この次はどうするつもりなんでしょうか。“解説&謎解き付きランデヴー”とか。(^^)
――「天国に一番近い男SP」が19%を超えたみたいだから、「彼女」も深田恭子みたいな新キャラを加えてSPを作ってもらえたら嬉しいですね。
99/09/27
美少女H3〜風に揺られて(4) |
脚本:飯野陽子
演出:関卓也(1)(2)、有田晃之(3)(4)
演出補:熊谷拓雄
1年半続いた「美少女H」シリーズの最後を飾る作品だけあって、スタッフやゲスト出演者も「美少女H」を代表する顔ぶれがそろいました。最後のゲストが清水千賀で、ラストシーンで再登場させるセンスもシブイですね。(^^)
飯野さんの脚本も手が込んだ構成になっていて、なかなかの力作でしたが、やはりイチバン光っていたのは有田晃之さんでした。関卓也さんが演出した1〜2話は、ナレーション中心の詩的な部分と芝居中心のホラー的な部分のバランスがいまひとつで、統一感に欠けるような印象を持ったのですが、有田さんが演出した3〜4話は、芝居中心のシーンでも詩的なムードを持続させることに成功していて、ドラマ全体に統一感がありました。
あと、出典はわかりませんが、BGMに使われていた音楽も、エキセントリックな叙情性があって印象に残りました。(^^)