"ドラマ演出"日誌(99年4-6月期)

99/04/06 古畑任三郎SP

演出は鈴木雅之さん。最初の15分くらいは、「沙粧妙子」+「ケイゾク」みたいなタッチで圧倒されました。厳密に言うとそんなに似ているワケでもないんですが、“気分はケイゾク”みたいな空気感が画面に漂っていたように思います。今年はこの“ケイゾク気分”みたいなものが、いろんなドラマに波及しそうです。(^^)

屋外シーンがやたらと多いのは、従来の古畑にはない傾向だし、正月にやった「古畑 VS SMAP」よりは、脚本的にも演出的にも洗練されていたように感じました。どっちにしても、すでに完成されているスタイルを解体・再構成するというのは、かなりの重労働だと思いますが、今後もこの方向性で行くんでしょうかね?


99/04/07 緋が走る〜陶芸青春記(1)

脚本:冨川元文
演出:松岡孝司磯智明
制作統括:浅野加寿子

これは「味いちもんめ」の陶芸版といった感じのドラマですね。毎週、対決シーンがあるようですし…。丹波哲郎と山田純太の親子関係は「美味しんぼ」を連想させます。

個人的に印象的だったのは、上原さくらがカントリーバンドで歌っているシーン。妙に様になっていて見とれちゃいました。(^^;; それ以外でもBGMにカントリーが使われているシーンがたくさんありましたが、何か意味があるんでしょうか。

ところで、林隆三の窯場はオープンセットなのか、実在の窯場でロケしているのか、良く分かりませんでした。脚本の冨川さんは、「暴力教師」(NHK)や「失業白書」(TBSドラマ30)などを書いた人ですが、今回は軽いタッチに仕上がっています。ドラマを通じて陶芸の知識も勉強できるようになっているので、料亭好きの人には受けるかもしれません。


99/04/08 魔女の条件(1)

脚本:遊川和彦
演出:土井裕泰
プロデュース:八木康夫

冒頭のバイク転倒シーンで、2人の目が合った瞬間に音楽が入るところを見て、同じ土井Dが演出した「青い鳥」を連想しました。滝沢秀明が倉庫からバイクを出すシーンなども、「青い鳥」第1話で豊川悦司が自転車に乗っているシーンとダブったりします。(^^)

全体的に音楽が控えめで、生活音が大きめに調整されていて、結果的に舞台になっている場所の空気感みたいなものが強調されています。滝沢秀明がカレーパン(?)を食べながら山田麻衣子に話し掛けるシーンなども、袋の音がやたらとデカくて、セリフよりもそっちに気を取られちゃいました。(^^) こうした空気感は「青い鳥」と共通する感覚です。高校のシーンは都内の大学でロケしているみたいですが、他の学園ドラマとは一味違う不思議な雰囲気を醸し出していました。

脚本は「高校教師」というよりは、野島テイストを模した「若葉のころ」の堂本光一&北浦共笑のエピソードに近い感じがします。そういえば、あの時の光一も病院長の息子でした。ただ、第1話を見た感じでは、下世話なストーリーと文芸風の上品な演出が、かみ合ってないような気がしました。

松嶋菜々子は良くも悪くもいつも通りという感じなんですが、滝沢秀明の方が“借りてきた猫”みたいで精彩がないですね。土井さんは自然な演技を要求しているみたいですが、それがコメディアン志向の滝沢秀明にとっては鬼門だったみたいで、気まずそうな雰囲気が画面から伝わってきます。(^^) 滝沢秀明に対しては“したたかでしっかり者”という印象があったのですが、意外に不器用な一面を見てしまいました。

海辺の砂浜のシーンは「ランデヴー」の時と同じ場所でロケしていたんでしょうか。よく似てました。


99/04/09 L×I×V×E(1)

脚本:信本敬子上岡一美
プロデュース:植田博樹
演出:生野慈朗
音楽:伊秩弘将

これは「白線流し」+「ケイゾク」ですね。(^^) つまり、「白線」が目指していたドキュメンタリー志向と、堤幸彦さんが試みてきたドキュメンタリー志向(「サイコメトラーEIJI」「ぼくらの勇気・未満都市」「ケイゾク」)を、ミックスさせるというのがコンセプトなんじゃないでしょうか。これは、考えても見なかったアイデアで、目から鱗が落ちる思いがします。「ケイゾク」の後にこうゆうドラマを作る植田博樹さんって、センス良いかも……。(^^)

もちろん「ケイゾク」のような派手な映像があるわけじゃないんですが、ほぼ全編オールロケで撮影されていることも含めて、「ケイゾク」的なアイデアが散りばめられているようです。ラストのタイトルバックなどは、もろに「ケイゾク」ですが……。(~_~)

地方の港町(横須賀?)を舞台にして、バーチャルな日常生活空間を作り出しているという点では、大林宣彦(音楽:久石譲)の尾道シリーズを連想しました。この点に関しては松本を舞台にした「白線」よりも良く出来ていると思います。(でも宣伝PRは「白線」の方が上手いかも) また“学校クラシック”系の音楽と、ジャズ〜ファンク系のサックスソロ(ケイゾクみたい)との対比も強力で、ノスタルジック一辺倒だった「白線」の音楽コンセプトとは一線を画しているという感じがします。

演出はTBSの重鎮の生野慈朗さん。「金八先生」の時代からやっているだけあって、若いタレントの使い方が上手いですね。ひとり一人の力量を考慮して、ていねいに演技指導をしているんじゃないかとという印象を受けました。今井絵理子の万人受けしそうな表情も印象的です。生野さんのようなベテランが、新しい方法論に積極的にトライしているあたり、TBSもまだまだ捨てたものじゃないなと思わされます。

ただ、ストーリー展開が地味なので、視聴率的には心配な作品ではあります。


99/04/09 週末婚(1)

脚本:内館牧子
演出:佐々木章光
プロデュース:矢口久雄
制作:テレパック、TBS

ストーリー展開が速いせいか、ひとつ一つのシーンに食い足りないような印象を受けました。特に誰がというワケじゃなくて、全体的にセリフが棒読みっぽくて、気持ちが入っていないような感じがしました。リハーサルが上手くいってないんでしょうか?

ドラムンベース系の音楽なども使われていましたが、映像も含めてチープな印象が否めません。脚本が内館さんなので、それなりに期待はしていたんですが、今回はリアリティよりもB級っぽい作劇性を重視しているような感じです。それにしても、テレパックがプライムタイムの連ドラを手がけるのは久しぶりですね。


99/04/11 熱血恋愛道

出演:相葉雅紀、榎本雄太etc

演出は永井英樹さんですが、最近はちょっとネタ切れっぽい感じもあります。魚眼レンズを使った顔アップなどは永井さんらしいカットなんですが、今回はそこに派手な映像処理を加えていて、「お水の花道」を連想しました。

ところで、榎本雄太って「金八先生4」に出ていた人だと思うのですが……?


99/04/12 あぶない放課後(1)

脚本:野依美幸
演出:杉山登
プロデュース:桑田潔(テレ朝)、布施等(ザ・ワークス)
制作:テレビ朝日、ザ・ワークス

「名探偵 保健室のオバサン」や「チェンジ!」で、青春ドラマ趣味を見せていた杉山登さんの初のチーフ演出作。内容的には「保健室のオバサン」の延長線上の作品といえると思います。事件のバカバカしさという点では「ママチャリ刑事」に通じるテイストもあります。自宅のセットは「チェンジ!」に近い感じがします。

カメラワークなどに「熱血恋愛道」に近いものも感じますが、やはり何と言っても音楽の使い方の巧みさが印象に残ります。(主にブルース系の)音楽とカメラワークとのシンクロ率が高いので、ビート感が心地良いです。

特に、曲とシーンが同時に終わるケースがやたらと多いので、編集作業の苦労がうかがえます。曲の長さに合わせてシーンのタイムを算出しているんじゃないかという気さえします。第2話以降もこの演出が継続するんでしょうか? 気になります。(^^)

主演の二宮和也に対しては、予想していた以上に比重の重い演技を要求しているみたいで、彼に対する現場(杉山さん?)の期待の高さがうかがえます。セリフ以外でも表情で演技をする場面がかなり多くて、本人は気が抜けなくてかなりキツイんじゃないでしょうか。第1話に関しては、セリフにしても表情にしても、出来にバラツキがあるように感じましたが、撮影が進むにつれて改善されると思います。

逆に、ドラマ初出演の渋谷すばる(シブタニと読むんだって!)に対しては、あれこれ要求しないで軽く流して撮っているという感じでした。加藤あいも本格的に演技をするのはこれが初めてだと思いますが、思ったより安定感があるので、今後も期待できそうです。声にニュアンスがあるのが良いですね。

それにしても、杉山さんは少年少女の表情を撮るのが上手いですね。加藤あいもそうですが、犯人役の橘実里(3/28の「熱血恋愛道」に出てた)なども、実に良い表情をしていました。まあ、少年少女趣味が高じて、変な事件とかを起こさないと良いんですが……。(失礼!)


99/04/12 リップスティック(1)

澤田鎌作さん初のチーフ演出作。いきなりやってくれましたね。(^○^)

最初の10分くらいは「ケイゾク」みたいな過激な映像でしたが、堤幸彦さんとは明らかに違う澤田さんならではの個性がしっかり出ていたと思います。赤い液体(ワイン?)が入ったグラスが倒れ落ちていくカットとかに、澤田さんらしいセンスの良さを感じました。強いて比較すると、河毛俊作さんのテイストに近いかもしれないです。

演出のタッチとしては「眠れる森」に通じる要素が多かったんですが、永山耕三さんが担当する回でも、この傾向が踏襲されるんでしょうか。実はそれが一番気になっていたりします。アンビエント・テクノ系の音楽を使うところなんかも、完全に澤田さんの趣味なんですが、永山さんとアンビエント・テクノって、想像できない組み合わせだと思いませんか?


99/04/12 ロマンス(1)

原作:つかこうへい
脚本:長谷川康夫小川智子
演出:森一弘
制作協力:テレパック
制作:よみうりテレビ

「あぶない放課後」「リップスティック」の後に見ると、音楽の使い方が野暮ったいのが目に付きます。それ以外でも、チープな印象が強くて、沖縄でのオリンピック選考会のシーンとかも、町の水泳大会みたいで、「ビーチボーイズ」で山本太郎が出てきた回を思い出しました。(~_~;)

他のホームページで、「あんなゲイバーは見たことがない」という趣旨の書き込みを目にしましたが、そういう意味でもキワモノ的な印象がぬぐえません。(-_-;) まあ、松村邦洋はそれなりに面白いんですが…。

演出の森一弘さんは「金八先生」で制作補を務めていたりする人で、95年にABC(テレ朝)で「Change!」(石黒賢、加藤晴彦)というドラマの演出をしていました。加藤晴彦とはその時に仕事をしているせいか、今回も細かいところで彼を積極的に使っているみたいです。(^^)


99/04/13 古畑任三郎(1)

演出は、3シリーズすべてに参加している河野圭太さん。先週の鈴木雅之さんとは打って変わって、オーソドックスな従来の古畑スタイルに戻っていました。

三谷幸喜さんというと、コミカルな部分にばかり注目が集まりますが、ボクは会話の節々に現れる含蓄のあるセリフに魅力を感じます。


99/04/13 傷だらけの女(1)

う〜ん。何ともコメントしづらいですね〜。多分、高島礼子とかが好きな中年オジサンをターゲットにしたドラマなんだと思いますが、ストーリーは安直だし、銃撃シーンとかも迫力がないから、「はぐれ刑事」や「はみだし刑事」に負けてますよね。


99/04/13 ここでキスして。(7)

演出:東康之

第7話。東さんは第5話も演出していた人ですが、東さんの回が一番良いですね。カメラワーク、映像処理、音楽など、すべての面で派手なんですが、マンション内の地味なシーンが連続するこのドラマで、ここまで派手に演出するのは才能だと思います。芝居の処理に関しても、メリハリを強調した演出をしていたみたいで、見ていて分かりやすかったです。――やりすぎると大映ドラマみたいになっちゃうんですが。(^^)


99/04/14 ハッピー 愛と感動の物語(1)


99/04/14 セミダブル(1)


99/04/15 舞妓さんは名探偵!(1)


99/04/16 J家の反乱(2)


99/04/17 ズッコケ三人組(2)

制作統括:小見山佳典
脚本:戸田山雅司
演出:田中賢二


99/04/17 プリズンホテル(1)

原作:浅田次郎
脚本:成田はじめ
演出:堤幸彦
監督補:鬼頭理三
プロデュース:五十嵐文郎(テレ朝)、高橋勝(CUC)、上村達也(?)
制作:テレビ朝日、CUC

「ケイゾク」で人気急上昇の堤さんの注目の新作。エクセレントな「ケイゾク」の後に、こういうB級コメディをやっちゃうセンスは好きなんですが、では、笑えたかと聞かれると、そうでもなくて……。(~_~;)

全体的にウルサイというか、笑えないドタバタが多いので、もう少しネタを絞り込んでくれないとツライかな〜。特に、派手なリアクションに三味線の音をかぶせる手法は、笑いを取ろうとしているのがミエミエで、かえって引いちゃいます。(-_-;) オールロケというスタイルも、コメディだと、深夜の定予算ドラマみたいな印象になってしまいます。

まあ、こういう大人数コメディというのは、笑いのツボを探り当てるのに時間がかかるのか、第1話はつまらないことが多いですね。

ちなみに一番笑えたのは、リーゼントの徳山秀典が幽霊に向かって「気合い、根性、バリバリ!」とか言うところ。(^^) あと、井ノ原快彦もウルサイ系の笑いとは一線を画す芸風を見せていて、センスが若いな〜と思いました。彼に関しては、完全に本人のアイデアで演技しているという感じがします。そういえば、2人とも過去の堤作品に出ていた人たちです。


99/04/17 蘇える金狼(1)

プロデュース:井上健阿部雄一
脚本:丸山昇一
演出:本広克行

う〜む。これは良く分かりません。(^^;;

本広さんらしさはそれなりに出ていると思うんですよ。やたらと広い部屋の中をカメラが縦横無尽に動くところとか…。でも、何かしっくり来ないんですよね。「踊る大捜査線」の第1話を見た時の驚きみたいなものが、今回は感じられないんです。

松本晃彦さんの音楽にしても、単品で聞けば、良い曲がいっぱいありそうなんだけど、附帯音楽としては自己主張が強すぎるのか、映像とかみ合ってないような気がしました。

ボクは月8とかを好んで見ているような人間なので(^^)、アクションシーンに関して、とやかく言っても説得力ないんですが、それでも迫力不足という感が否めません。たとえば、「リップスティック」での広末涼子の蹴りの方が、インパクトがあったような気がします。

香取慎吾に、いまひとつ魅力が感じられないというのも、入り込めない原因かもしれません。見ていて笑っちゃうんですよね。特に、サラリーマンやっているシーンのメガネなんか、スマスマのコントみたいで……。ラストの「けものみち」とか言うシーンなんかは、脚本からして、時代錯誤という感じがするので、香取慎吾だけの責任というわけではないんだとは思いますが……。


99/04/18 熱血恋愛道

出演:生田斗真、安藤聖
演出:大根仁

喫茶店で2人の横顔系のアップが交互に続くシーン。カメラが上下左右に動いていて、新鮮な緊張感を感じました。顔アップを写したカメラが動いているといっても、カメラが揺れているという感じではなくて、円を描くようにゆっくりと動いていていました。

――どうやら、遊園地が出てきたら大根仁さん。海が出てきたら猪俣隆一さん。……という傾向があるみたいです。(~_~;)


99/04/19 リップスティック(2)

今週も澤田鎌作さんの演出。第1話に比べると、落ち着いた感じの演出になってきているようです。それでも、食堂でのケンカのシーンで、カメラが天井の上を移動しちゃうあたり、なかなか大胆だなと思いましたが。(^^)

それにしても、澤田さんは窪塚洋介が気に入ったのか、窪塚がらみのシーンに随分力が入っていたように思います。彼の表情にテクノ〜プログレ風の音楽をかぶせて、台本にしたら数行の部分にかなりの時間を割り当てていたようです。卓球のシーンとか。「天国に…」の時の窪塚洋介よりも数段良くて、演出家のセンスの差を感じます。

逆に三上博史と広末涼子のシーンでは、要所要所で音楽をなくして、セリフのニュアンスや間を強調していたようです。見ていて引き込まれました。それにしても、ボタンのエピソードは、同じ野島さんの「高校教師」を彷彿させるネタですね。(^^)


99/04/19 コワイ童話

「シンデレラ」(1)

脚本:武田百合子
演出:吉田秋生
制作協力:テレパック
制作:TBS

映像は地味なぶん、脚本と芝居に力を入れているという感じがします。クラスメイトのヒソヒソ話など、すべてのセリフがクリアに聞き取れるところに、TBSの伝統を感じました。ジワジワ系の怖さですね。(^^)


99/04/25 熱血恋愛道

出演:村上信五、浜丘麻矢
演出:永井英樹

ラス前ということで、気合いの入った演出が見れました。教室内でのカメラワークも良かったし、公園のシーンにも絵ゴコロが感じられました。

村上信五に関しては、この番組や「ママチャリ刑事」などで何回も見ていますが、良いと思ったことは一度もなかったです。ところが、今回は表情をとらえたカットに、結構良いニュアンスがあって、それが一番印象に残りました。この辺に、演出家のセンスの違いがでるのでしょうか?


99/04/27 古畑任三郎(3)

ゲスト:松村達雄
演出:河野圭太

地方の山村を舞台にして、ロケ中心で撮影されていた異色作。登場人物名が横溝正史のパロディになっていたみたいですが、そこには気がつきませんでした。

河野圭太さんは「古畑」の人間ドラマの部分に重点をおいているみたいで、河野さんが担当した回は、見終わった後に余韻が残ります。今回はそこに、山奥の山村の情緒感が加味されたので、いっそう印象が強まりました。「古畑」第3シリーズ中の白眉と言える作品ではないでしょうか。


99/05/03 美少女H3 少女達の異常体験

「血のような眼」(4)

脚本:浅田聖林
演出:熊谷拓雄(1,4)、小林和宏(2,3)
演出補:有田晃之

心理サスペンス風の「コワイ童話」と違って、こちらはホラー〜スプラッター的な指向性が感じられます。毎回、オープニングに入るカウンセリング(?)みたいなシーンは、「クリスマスキス」(演出:君塚匠堤幸彦)を連想してしまいます。

ただ、映像に凝れば凝るほど、印象が安っぽくなるように感じるのは、ボクだけでしょうか。全般的にアイデアがパロディっぽくて、笑っちゃうんですよね。(^^) コワイ部分もいくつかはあったんですが……。


99/05/05 ナオミ(4)

「GTO」の反町隆史に比べると、藤原紀香はニュアンス不足という印象が否めませんね〜。ただ、このドラマの場合、全体的に人材のムダ使いという印象が強くて、キャスティング主導で企画を立てるフジテレビの弱点が露呈されているような気がします。

登場人物のキャラ設定がいまひとつツメがあまい感じで、たとえば、教頭役の石田太郎とか、もう少しなんとかならないか……と思っちゃいます。好きな俳優さんなので、見ていて痛々しいです。ねらいとしては「ショムニ」の高橋克美とか、「GTO」の中尾彬みたいな路線なんでしょうが、石田さんの芸風と合っていないみたいです。

生徒役では、「美少女H」出身者が大量に出ているんですが、み〜んな美少女然としてて、面白味に欠けます。コメディをやるんだったら、もう少し髪型とかメイクとかに遊びが欲しかったです。その点、第1話冒頭に出てきた青木堅治のソバージュなどは、結構笑えたんですが、その後あんまり出番がないみたいだし…。

チーフ演出の土方政人さんは、「ショムニ」以降、コメディ(水10)を手がけているのですが、この人は基本的にコメディ向きの演出家じゃないと、ボクは思っているんですが、なぜかコメディばっかりやらされているみたいです。

で、この第4話は、ドラマ中で最も存在感があるりょうがメインの回で、元教え子の金子統昭と密室内でやりあうシーンが圧巻でした。2人の表情をとらえるカメラワークに緊張感があって引き込まれました。もちろん演出は土方さん。シリアスな部分の演出はとても良いです。基本的には青春ドラマ&映像派の演出家なんじゃないでしょうか。

余談ですが、音楽を担当しているThe Thrillは、松雪泰子の旦那がいるバンドですね。(^^)


99/05/07 L×I×V×E(5)

やはり生野慈朗さんが演出した回が一番好きですね。表情とか芝居に緊張感があります。あと、BGMに学校クラシック的な音楽を多用しているところも、1〜2話に共通するノスタルジー感覚です。(^^)

あと、今井絵理子を追うカメラワークに、生野さんのスケベ心が垣間見えるような気がして、妙に納得してしまいました。(^^)

なお、第1話の時の日誌にオールロケと書いてしまいましたが、自宅や部室のシーンはセットを組んでいるようです。教室とか音楽室についてはよくわかりませんが、天井付きのセットなのかもしれません。

この種の間違いは他にもたくさんあると思いますが、寛容な心で読み流していただけると嬉しいです。大切なのは「オールロケに見えた」ということであって、「本当にロケかどうか」ではないと思います。視聴者がロケと間違えるというのは、美術スタッフにとっては喜ばしいことかもしれないですし…。(^^)


99/05/08 蘇える金狼(4)

演出:大谷太郎(3)(4)

序盤、職場で香取慎吾が中嶋陽子(太った女子社員)に抱きつくシーン。脚本的にはどう見てもお笑いのシーンのはずなのに、大谷さんは重厚な音楽を使ってシリアスに撮っていました。大胆な演出です。

チーフの本広克行さんは「TVライフ」で、自分は笑いのシーンが必要だと思っているが逆の意見もある……という趣旨の発言をしていましたが、大谷さんは“不必要派”なんでしょう。ボクも必要ないと思いました。

というよりも、3〜4話を見るかぎり、大谷さんは青春残酷物語的な叙情性を重視しているみたいで、ハードボイルド的な要素を極力排しているように思えます。香取慎吾の表情も他の回に比べると心持ちマイルドです。こうしたドラマに対する基本的なコンセプトが功を奏したのか、ドラマ全体の印象に統一感が生まれたように思います。

逆に、お金を渡した平泉成を車で送るシーンなどで笑いを取ったりしていましたが、これは台本ではシリアスなシーンなんじゃないでしょうか。

ところで、香取慎吾がパソコン上で取り引きをしていた証券会社の名前が「大谷証券」で、アタッシュケースの中の偽金に「たろうくん……」と書いてありましたが、これもスタッフの遊びなんでしょう。(^^)


99/05/10 コワイ童話

「シンデレラ」(4)

ホラー〜猟奇的なシーンが増えてくるに連れて、映像の弱さ/センスの悪さが目立ってしまいましたね(いくらなんでもハチミツはないでしょ!)。もっと心理サスペンスに徹してくれた方が、面白くなったような気がして残念です。ラストのオチはなかなか悪くないのですが、そこに至るまでの伏線をもっとていねいに描き込んで欲しかったです。


99/05/11 shin-D 青空麻雀(2)

脚本:坂東賢治
演出:若松央樹
演出補:東康之
音楽:寺嶋民哉
出演:堺雅人、田中美保、橋龍吾etc

一般に映像重視のドラマというのは、ロケをメインにして撮影されるケースが多いのですが(堤幸彦さんなど)、これはオールセットの映像派ドラマという感じがします。セット中心のドラマで、これほど映像が印象に残るドラマは、他に思いつきません。

逆光系の照明で空間が白く霞んだような感じになっていたり、顔のアップが照明で真っ白になっていたりと、白っぽいテイストを強調しつつ、そこに赤〜セピア系のフィルター処理を施しているので、とても斬新な印象を持ちました。それ以外でも、光の使い方が全体的にていねいで、堺雅人の顔に当てる光の調節などにも、細かい配慮の痕を感じました。

――セットにおける映像表現の可能性を追求しているという点では、かなり実験色の強い作品だと言えるでしょう。夜の暗いシーンなどを見ていると、時代劇とかを連想したりもしました。また、カット割りのセンスなどには「熱血恋愛道」あたりの成果が活かされているようにも思いました。

堺雅人という人は、初めて見る人ですが、今期の連ドラでいえば「リップ」の窪塚洋介みたいな強烈な存在感を感じます。若いころの三上博史もこんな感じだったような気がします。


99/05/16 元禄繚乱(19)「刃傷松の廊下」

演出:片岡敬司

このドラマはほとんど見ていないのですが、「松の廊下」ということでTV雑誌でストーリーを確認しながら見ました。(^^ゞ

片岡さんは「冬の蛍」とか「スズキさんの休息と遍歴」などで個性的な演出を試みていた人ですが、今回は歴史検証ドキュメンタリーかなにかの再現ドラマのような演出をしていました。まあ、第19話まで「松の廊下」が出てこないというところからして、異例中の異例なんですが、忠臣蔵の事件を通して元禄の時代の閉塞感を、現在の日本社会のメタファーとして描くというのが基本コンセプトなんでしょう。きっと。地味です。

ただ、東山紀之が石坂浩二に切りかかる直前のシーンは、なかなか緊張感があって良かったのですが、切りかかるシーンはちょっとチャチな感じがしました。本広克行さんだったらどんな風に撮るだろうなんて考えてしまいました。(^^ゞ

それにしても、さすが大河ドラマ。セットがバカデカイですね〜。(^^)


99/05/21 L×I×V×E(7)

今井夏木さんは4話に続いて2回目の演出。4話のときは、人間の生理に反するような派手なカットつなぎとかもあって、良くも悪くも冒険心が感じられたのですが、今回はちょっととらえどころがない演出でした。

今井絵理子の表情があんまり可愛くないのは演出意図かもしれないのですが、全体的に演出にメリハリが感じられなくて、惰性で撮ってるような印象がしました。ラストシーンは、新垣仁絵が記憶で譜面をおこして、1枚だけ古い楽譜をそのまま残しているというオチらしいんですが、いまひとつ分かりづらいんですよね。

今回の信本敬子さんの脚本には、こうした登場人物のストイックな感情表現が多いので、その部分を演出で上手く光を当ててあげると、もっと良くなると思うのですが……。「共テレの小椋久雄さんとか高丸雅隆さんだったら、どんな演出をしただろう?」……なんて思いました。


99/05/21 千年王国3銃士・ヴァニーナイツ(7)

出演:栗林みえ、益子梨恵、永井流奈、渡辺慶、大沢健
監督:舞原賢三(1)(2)、清水厚(3)(4)(7)(8)、広田幹夫(5)(6)(10)
制作:テレビ朝日、円谷映像

「美少女新世紀ゲイザー」でも良い仕事をしていた清水厚さんの回がなかなか面白いです。実相寺昭雄系の変則アングルを多用していても、決してうるさくならないで、30分間を通して統一感を生み出しているところに惹かれます。

4人が住んでいる日本家屋のシーンにも、独特の趣があります。ただ、戦闘シーンに関してはちょっと勘弁してほしい気がします。その戦闘シーンでも、清水さんが演出した回が一番面白いんですが…。

あと、どうでも良いことだとは思いますが、このドラマの主人公は、脚本的に見ても、演出的に見ても、渡辺慶の方なんじゃないかという気がします。それで、彼のキャラ設定が、性欲のあるノビ太くんという感じなんですが、「天国に一番近い男」の主人公も、渡辺慶だったらもっとシックリきたんじゃないかと思ってしまいました。(^^ゞ


99/05/22 蘇える金狼(6)

演出:本広克行

1、2話に続いて3回目の演出。前々から思っているのですが、本広さんは音楽の使い方に特徴がありますね。音楽を“感情”ではなく“感覚”に訴えるような使い方をする人です。別の言い方をするなら、“ノイズ的”とか“効果音的”などと表現できるかもしれません。

序盤の格闘シーンが絵的に面白いと思っていたら、「テレビドラマデータベース」の掲示板に「バーチャファイター」や「鉄拳」のパロディだ……って、書いてありました。なるほど。

あと、映画館のシーンで、「D×D」や「君といた未来のために」に出てくる、映画「忘れ物の森」が上映されていました。(^^)


99/05/23 っポイ!(3)

脚本:下等ひろき
演出:猪俣隆一(1)(2)、大根仁(3)(4)
制作協力:オフィスクレッシェンド

このページの読者の方には、ぜひ一度、見てもらいたいドラマです。内容ゼロだけど、演出はすばらしいです。

日曜お昼の「熱血恋愛道」の後番組で、スタッフは同じだけど今回は連続ものです。はっきりいって、第1話を見たときはチグハグな印象ばかりで、これなら「熱血…」の方が良かった……なんて思ったんですが、第2話からどんどん良くなってきました。

先週の第2話は、カット割りやカメラーワークのリズム感に力が入っていて、撮影の苦労がしのばれました。演出が大根さんに替わった第3話では、映像の質感や情感に比重をおいた演出になっていて、音楽もおちついた曲調のものがメインになっていました。光とか色の使い方に技を感じます。(^^)

とにかく、1時間ドラマと同じくらいのエネルギーを正味15分のドラマに凝縮しているみたいで、一瞬たりとも目が離せない完成度です。猪股さんの作品としては「FIVE」の系譜に属する演出ですが、より洗練度が増しているみたいで、今後どういう形で活かされるのかが楽しみです。

「熱血…」の場合、脚本にほとんど違いがなくて、事実上「3番テーブルの客」と化していたのですが、今回は脚本も含めていろいろと実験ができそうなので、そっちにも注目してみたいです。今週は「金田一」風という、ふれこみでした。――出演者では、古屋暢一の芸風と、山下智久・前田亜季の雰囲気が印象に残ります。


99/05/24 美少女H3「アナタワダレ!」(3)

脚本:小出正之、?、?
演出:小出正之
制作協力:GAINAX

「エヴァ」で知られるGAINAXの制作なので、ボクもかなり注目・期待していたのですが、フタを開けてみたら、ガッカリ!(~_~;) ……どうも2月くらいから月曜深夜は不調ですね。ドラマじゃないけど「哲にいさん」(日テレ)の方が面白そう。閑話休題。(^_-)

第1話を見たときはそれなりに緊張感があって良かったんです。冒頭の雨のカットも味があったし、後半の朝食のシーンも勝村美香のアップだけ色の質感が変えてあったりして、オシャレだな……なんて思ったりしたんです。(^^)

ところが第2話からは、思いついたアイデアを吟味しないで全部実行している……みたいな感じになっちゃって、演出コンセプトがわかんなくなっちゃいました。福井さんの「お茶○杯目」とかいうテロップが、最後に「お酒1杯目」となっていましたが、こういう中途半端なギャグに必然性が感じられないんですよね。

で、第2話が“悪ノリ”だとすると、第3話は“ネタ切れ”という感じがしました。「第九」が流れるところなんて、誰が見たって「エヴァ」を連想するハズなんですが、特に深い意図も感じられなくて、ちょっと芸がなさすぎ!

なお、第4話=最終回は見逃しました。(^^ゞ


99/05/26 ナオミ(7)

出演:小池栄子etc
演出:土方政人

「美少女H」でも、アクの強いキャラを好演していた小池栄子がメインの回。6話まで見た限りではあまり印象が強くなかったので、今回もあまり期待していなかったのですが、思っていたより良い感じでした。引きで撮るとそれほどでもないんですが、アップで撮ると独特のニュアンスが出るコですね、このコは。

映像的に見ても、小池栄子がらみのシーンに力が入っていたように感じました。山小屋のシーンなどもかなり手が込んでいたし、それ以外でも絵ゴコロを感じるカットが多かったです。やはりこの辺が土方さんの個性なんでしょう。――あと、ナオミ先生のサバイバル系のファッションもカッコ良かったですね。


99/05/29 蘇える金狼(7)

やはり、大谷太郎さんが演出した回の香取慎吾が、一番演技に違和感がないように思います。中盤、伊藤高史を林の中に連れ出して脅しをかけるシーンなど、表情やセリフのニュアンスを抑えて、作り過ぎないように演技をコントロールしていたみたいで、そのサジ加減が上手いと思いました。

映像的に見せる部分も多くて、通り過ぎる電車の光で部屋の明るさが点滅しているシーンとか、青いフィルター処理を施した香取のアップを黄色い車のボディをバックに撮っているシーンとか、見どころは多かったです。

そして、なんといっても、新しくなったタイトルバック。ドラマ内では冷酷非情な殺戮をくりかえす主人公の、日常生活でのカジュアルな表情をとらえた内容になっていて、見ごたえがありました。多分、視聴率が下降していることに対する対策の一環なのだと思いますが、最初っからこのタイトルバックだったら……と思うと残念です。


99/05/31 あぶない放課後(8)

出演:伊藤裕子、中沢純子etc
演出:市野龍一(3)(6)(8)

第2話以降、低迷している印象が強いドラマですが、この第8話は、なかなか良かったです。特に前半部分は鈴木雅之さんの影響が濃厚でした。カメラワークなどもそうですが、表情をコミカルに撮ったカットにも鈴木さんに通じるセンスが感じられました。市野龍一さんが演出するのはこれで3回目ですが、今回が一番良かったです。……といっても、2回目の第6話は後半15分くらいしか見てませんが。(^^ゞ

お決まりになっている冒頭の妄想シーンも今回は力が入っていて、「男はつらいよ」のオープニングシーンなんかを連想してしまいました。そういえば、主人公がちっとも成長しないところも同じですね。(^^) 妄想シーンだけならテープ保存しておいても良いかな……なんて思ったりするのは、ボクだけでしょうか?


99/06/01 shin-D 青空麻雀(5)

3〜4話と、映像のクオリティが落ちてるような感じだったのですが、今週はいつになく手の込んだ映像がたくさん出てきました。特に、回っている換気扇から射し込む光を極端に強調していたカットはインパクトがありましたね〜。

演出は先週まで演出補としてクレジットされていた東康之さん。東さんは「ここにキスして!」でも、派手な映像センスを見せてくれた人なので、これからも注目していきたい人です。

前回の日誌で書き忘れましたが、音楽は月8の岡田惠和〜MMJチームの作品(イグアナ、音無可憐etc)でお馴染みの寺嶋民哉さん。このことも、このドラマの雰囲気をボク好みにしている重要な要因でしょうね。

主演の堺雅人ですが、ときどきセリフが舞台役者っぽい、大袈裟な感じになってしまうのが気になります。


99/06/03 恋の奇跡(8)

脚本:中園ミホ、吉本昌弘
演出:中島悟(1)(2)(8)、赤羽博(3)(4)(5)(6)(7)
制作:テレビ朝日、AVEC

最近はコメディが多かったAVECですが、かつてはジェットコースタードラマで一世を風靡した制作会社でした。で、これは久々のサスペンスドラマ。今回は音楽に注目して見ています。

このドラマには音楽のクレジットがないので、劇中の音楽はすべて既発曲の使い回しだと思われますが、これがなかなか良いんですよね〜。(^^) オリジナルのサウンドトラックの場合、どうしても当たりハズレが出てしまうのですが、既発曲の場合、選曲者のセンスが良ければ、いくらで良い曲が集められるというメリットがあります。

このドラマの場合、1曲だけボクがレコードで持っている曲があります。8分の6拍子のちょっと激しい感じのピアノ曲(連弾)なんですが、これはベルギーのクレプスキュール・レーベルから82年に出たソフト・ヴァーディクトの“VELGESSEN”というアルバムに収録されている‘4 MAINS’という曲です。

多分これ意外の曲も、ヨーロッパ系のアーティストの作品から採られているのだと思いますが、ドラマ全体にひんやりとした質感を与えることに成功しています。ただ、音楽ドラマという感じのドラマではないので、あまり注目している人はいないようです。

3話以降、ずっと現場を離れていた中島悟さんですが、「GTOスペシャル」の撮影から解放されたのか、久々の演出です。赤羽博さんの回よりも重たい感じになっているような気がしましたが、それほど気合いを入れて見ているわけではないので、気のせいかもしれません。(^^)


99/06/03 魔女の条件(9)

演出:土井裕泰

先週の土曜(5/29)の深夜に、同じTBSで「個人教授」というフランス映画が放送されていたんですが、少年の視点で描かれていることなどを別にすれば、基本的なコンセプトはこの手の映画と同じなんだということが、よ〜くわかりました。特にロケシーンでの街並みの雰囲気なども、フランス映画風…ですよね。(^^) この点に関しては、かなり確信犯的にやっているように感じます。

ラストシーンは、大映ドラマの基本に忠実な作りになっていました。思うにこのドラマは「まず最初にラストシーンありき」という組み立て方になっているみたいです。各回のストーリーは、すべてラストシーンのカタルシスに向けての御膳立てなんですね。

第3話での滝沢秀明の涙なんかが特にそうなんですが、「水戸黄門」で言えば「この印篭が目に入らぬか〜」、「遠山の金さん」で言えば桜吹雪の刺青に近いインパクトがあります。視聴者にフラストレーションを溜め込ませておいて最後にドカーンとくるやつ。「来た来た来た〜!」という感じで楽しんでます。(^^)


99/06/03 アフリカの夜(8)

このドラマは起承転結で言えば起承承承、序破急で言えば序序序という感じで、プロローグが延々と続いているようなドラマですね。典型的なのが男子生徒の沢木哲で、終盤に向けての伏線なのか、単なるサブストーリーなのか、いまだにハッキリしません。まさか、裏番組に対抗して、急遽デッチ上げたサブストーリーだったりして。(^^;;

室井滋が失踪した6話くらいから、やっと物語が動き始めた感じですが、それでもやっぱり展開が遅い。……この調子で最終回までいっちゃうんでしょうか。(^^) 個人的には、メインの登場人物よりも、前述の沢木哲の存在感とか、松重豊のイッちゃってる目付きとかが印象に残ります。

このドラマは、各演出家が自分が好きな洋楽を自由にかけているみたいなので、BGMを聞いていると誰が演出しているのかがすぐに分かっちゃいます。今週はチーフの石坂理江子さんでしたが、1〜2話で使われていたヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「キャンディ・セッズ」が久々に流れていました。また、石坂さんが演出した回では、ともさかりえの演技がマンガっぽくなる傾向があるみたいです。

水田成英さんが演出した回は、カメラワークや映像処理に手の込んだ部分が多いような印象があります。そして、先週初登場した河毛俊作さんの第7話は、アップがやたらと多くて、登場人物の立ち位置が良く分からなくなる場面が結構ありました。

できれば、劇中で使われている洋楽のリストとかがあると便利なんですが、どなたか詳しい人はいないですか? 


99/06/12 蘇える金狼(9)

本広克行さんが演出するのはこの9話でお終いと聞いて、日テレサイドと上手く行ってないのかな……なんて心配してたんですが、本広さんのホームページ上にある金狼のBBSでの、本広さん自身の書き込みを読んだところ、そうでもないみたいなので安心しました。既に別の映画の撮影に入っているようです。

先週の8話もそうですが、スリルとアクションの比重が高まったら、急に面白くなりましたね。(^^) 物語の構造や心理描写などはかなり単純化・陳腐化していると思うのですが、それが良かったみたいでインターネット上での感想などを見ても「感動した」とか「共感した」という意見が多いようです。ちょっと皮肉な結果ですね。要するに、連ドラ化するにあたっていろいろな要素を盛り込んだのが裏目に出てたということなんでしょう。この手のドラマは、中途半端に内面描写をするよりも単純明快な方が良いということなのかもしれません。

序盤の銃撃戦のシーンでは、3−Dグラフィックの空間移動の感覚を実写で再現したようなカメラワークが印象的でした。また、悪の正体をあらわしたいかりや長介さんがマンガっぽくて良いな…と思っていたんですが、本広さんの書き込みによれば、あれはダースベーダーなんだそうです。(^^) いずれにせよ、最後の最後に本広さんらしさを堪能できて良かったです。あと、宅麻伸の表情も迫力がありましたね。

ここまで見てきた印象で、3人の演出家をキャッチコピー風にまとめると、アクション未来派の本広さん、青春叙情派の大谷太郎さん、アクション伝統派の佐藤東弥さん……という感じがします。佐藤さんについては、「D×D」や「君といた…」のときに円谷趣味みたいなものを感じたんですが、特撮系のドラマ全般に強い演出家なんだという印象が強まりました。


99/06/14 あぶない放課後(10)

演出:六車俊治(4)(7)(10)

スゴイ! スゴイ! この第10話を見た人は得しましたね。\(^o^)/

ラストの10分くらいは、いつもの月8とは思えないような重いタッチの演出で圧倒されました。雨のシーンは明らかに「踊る大捜査線」11話(演出:澤田鎌作)、ユースケ・サンタマリアが撃たれた後のシーンを意識した作り。讃美歌風のBGMを使っているところも確信犯と見ました。

しかし、それ以上にすごかったのが、その直前のシーン。部屋で泣いてる二宮和也に岩城滉一が話しかけるんですが、「北の国から」みたいな演出で、二宮和也が一瞬、吉岡秀隆に見えました。(^^) ベッドに頭をもたげて座り込んでいる二宮和也の姿勢が秀逸で、しかも効果音が雨と雷と時計の音……この辺がシブイというか「北の国」的。月8とは思えない重厚な雰囲気が漂っていました。さらに、加藤あいに会いに行くと決心したときの目元のアップもググっときました。(^^)

このラスト10分以外でも見どころが多くて、六車さんはこの回を演出するにあたって、かなり気合いが入っていたんじゃないかと察します。今回は主役3人の心理描写がメインだっただけに、表情を撮ったカットのクオリティも高かったです。また、足元(または靴)を撮ったカットが効果的に使われていて、芸が細かいなと思いました。この辺は脚本には書いていない六車さんのアイデアなんでしょう。ただ、終盤、二宮が誰もいない学校を裸足(靴下)で歩いているシーンは、ちょっと分かりづらかったので、靴を履いていないことに気がついた人は多くないと思います。残念です。

それ以外でも、細かいアイデアが多くて、大胆な発想のものもあったのですが、見せ方というか押しが弱いため、結果的にインパクトが見ている方に伝わらないで、わかりづらくなっちゃっていました。たとえば、加藤あいがバイクにハネられたときの二宮のボーっとした表情なんて、演出的にはちょっとした変化球なんですが、その意図が視聴者に伝わっているかというと、ちょっと……。(^^ゞ

渋谷(シブタニ)すばるは最初のうちはあんまり良い印象を持っていなかったんですが、ボソボソ系の声質に味があって、最近は好感持ってます。加藤あいは渋谷に告白されたときの、複雑そうな表情に説得力があって、将来性を感じました。そのせいか、二宮和也(カズナリ)を含めた3人が居る光景が眩しく見えてしまう今日このごろです。

この3人の普段の表情をコラージュしたタイトルバックも、個人的には支持したいです。そういえば、今回チーフの杉山登さんが演出スタッフに参加していた「ガラスの仮面2」のタイトルバックも、これと同じコンセプトで、好きだったのを思い出しました。

……それにしても、ラストシーンの雨の量、尋常じゃなかったです。通常の雨のシーンの3倍くらい水を使ってそう。(^^ゞ


99/06/16 女性捜査班アイキャッチャー(5)

脚本:市川森一
演出:鈴木圭(1)(2)、勅使河原亜紀夫(5)
制作統括:木田幸紀

ロケ映像のクオリティが高くて、最初っからちゃんと見ておけば良かったと後悔してます。今回冒頭の、飛び降り自殺のシーンなんて、「眠れる森」みたいなスタイリッシュな映像で見ごたえがあります。惜しいのは、セットのシーンがノーマルすぎて、ロケシーンとの落差が大きいこと。

市川さんの脚本も、セミドキュメンタリー的なリアルな部分とミステリアスな部分のバランスが良いです。さらに、エンディングの主題歌がブランキー・ジェット・シティなんですが、これが妙にドラマのテイストとマッチしています。――制作統括の木田幸紀さんのコーディネイト感覚にも注目したいです。


99/06/18 L×I×V×E(10)

脚本:飯野陽子
演出:今井夏木

今回は今井絵理子の“天然キャラ”っぽい部分をていねいに撮っていたみたいで、個人的にはそれだけで、目尻が下がってしまうような……。(^^ゞ このドラマを見る前は、自分がこんなに今井絵理子にハマルとは思っても見ませんでした。(*^_^*)

ただ、藤原竜也が告白するシーンなどはもうちょっと緊迫感がほしいような気がしました。来週最終回の、生野慈朗さんの緊迫感あふれる演出に期待しましょう。(^^)

でも、今週一番すごかったのは飯野陽子さんの脚本。登場人物のセリフが急に、内省的というか少女マンガ的というか、ブンガクっぽくなってしまいました。「明日地球が滅びても…」とか。(^^) でも、このドラマに足りなかったのはこういう独白的な心情吐露だったのかもしれないと、見ていて納得させられてしまいました。もっと早く飯野さんを起用していれば良かったのかもしれません。

それにしても、良くも悪くも牧歌的だったこのドラマの時空間を、最後の最後に壊すというのが植田博樹Pのねらいだった見たいですね。いままでの平穏なストーリー展開は、この結末(喪失感)を強調するための伏線だったのかもしれません。ラスト間際になって、それまでの流れをひっくり返すという点では「ケイゾク」と同じですが、ボクは「エヴァ」のサブタイトルにあった「終わる世界」というフレーズを連想しちゃいました。どうやら植田さんは、最近のTBSの若手Pには珍しい「悪意」を持っているPみたいです。(^^)


99/06/28 リップスティック(12)(終)

な〜んか、どこかの宗教の洗脳ビデオみたいな終わり方でしたね。(^^) まあ、「天使のお仕事」を見て、宗教臭いと拒絶感を感じた人はいないだろうから、そういう意味ではよく出来ているドラマなのかもしれませんが。

見た人によって大きく賛否が分かれたドラマでしたが、ボクは結構好きでした。「未成年」以降の野島ドラマの中ではイチバン良かったんじゃないかと思っています。

このドラマの魅力を一言で言うなら、三上博史の語りの魅力に尽きると思います。野島さん特有の観念的な長台詞を、ここまで気持ち良く聞かせられる役者は他にいないんじゃないでしょうか。今回は、ナレーションだけでなく、一対一の対話のシーンにも、同様のリズム感が持続していて、見ていて妙に気持ちが良かったです。三上&広末、三上&麻生、そして終盤急に物分かりが良くなった三上&窪塚など。もちろん、いしだ壱成&中村愛美なども良かったですけど。

で、このドラマをストーリーやメッセージではなく、語りの魅力で見ていると、これは「ランデヴー」の野島版なんじゃないかという印象が強く残ります。「ランデヴー」の登場人物を極端に自意識過剰にしたらこんな感じになるんじゃないでしょうか。少なくてもボクは、自意識過剰な人たちの割り切れない“雑念”みたいなものが、そのままセリフになっていると思って見てました。まあ、「ランデヴー」も見る人を選ぶドラマだったんですけど……。

ただ、ボクが“雑念”だと思っていたものが、野島さんにとっては“真実の愛”だったみたいで、そのことが明確になるにつれて、見ているのがツラクなりました。広末にしたって、窪塚にしたって、かなり病的な恋愛観・人間観の持ち主だと思うのですが、それでもある程度までは理解したり共感することは可能だったワケです。でも、野島さん自身はそれを“病的”だとは思っていないみたいなので、そこがついていけないんですよね。(^^)

一部の宗教関係者を別にすれば、世の中の大多数の人たちは“真実の愛”なんて必要としていないわけで、たとえば「ランデヴー」の田中美佐子は“普通の恋人のようにふるまうこと”に憧れたりするわけです。そのことをキッチリ見抜いていた点が「ランデヴー」の岡田惠和脚本のリアリティだったわけです。

野島さんといえば、最近は女優との接し方をめぐって「噂の真相」などで叩かれているみたいです。その報道の真偽はわかりませんが、現実世界から遊離したところで観念だけが増殖している「リップスティック」や「世紀末の詩」などを見ていると、そうした報道もあながち間違いではないのかもしれないと思ってしまいます。(^^)

もっと分かりやすく言っちゃうと、このドラマの広末涼子がそのまま野島伸司本人とダブって見えてきちゃって、こういう人と付き合ったらボロボロにされちゃうだろうな……って思っちゃうわけです。まあ、広末涼子(野島さん)に言わせれば、ボロボロになるのが“真実の愛”だっていうことになるでしょうが、ボクから見ると“真実の愛”に価値があると思うこと自体が、宗教家特有の倒錯で、非現実的なんです。

……ここまでを読み返してみたら、誉めてるんだかケナしてるんだかよくわかんなくなってますが、ドラマ自体は好きだけど、野島さんの方向性は好きじゃないというふうに理解して下さい。(^^)

演出も好きでした。会話のシーンに緊張感があったし……。また、永山耕三さんが演出した回は、女の子の表情がイキイキとしていて、「やはり永山さんは女の子を撮るのが上手いな…」と感心しました。特に中村愛美は、過去のドラマで良いと思ったことは一度もなかったんですが、永山さんが演出した第3話で初めて良いと思いました。中江功さんが演出した第9話は「全体的に画面が暗いな」と思ってたら、後半のキスシーンなんか真っ暗で何にも見えませんでした。そういえば「眠れる森」での陣内孝則のアパートもやたら暗かったですね。あと、第11話で三上といしだ壱成がバスに乗っているシーン。カメラアングルなど、「美少女H」の第1話(黒坂真美)を連想しました。

面倒くさいんで、全部記憶で書いているんですけど、ボクの記憶に間違いがなければ、澤田さんが演出したのが1,2,5,7,10,12話で、永山さんが3,4,6,8話で、中江さんが9.11話のはずです。違ってたらゴメンナサイ。上の文章も適当に読み替えて下さい。



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