"ドラマ演出"日誌(2002年7-9月期) |
02/07/01
ランチの女王(1) |
脚本:二木結希(1)
演出:水田成英(1)、川村泰祐、唐木希浩
プロデュース:山口雅俊、現王園佳正
主題歌:スリー・ドッグ・ナイト「ジョイ・トゥ・ザ・ワールド」
挿入歌:井上陽水「森花処女林」
脚本協力:大森美香
助監督:白川士
関東放送枠:フジ・月曜9時
「ロンラブ」のスケール感とは正反対
ビデオがトラぶってしまったため、録画に失敗してしまいました。おかげで前半の30分はまったく見ていません。(:_;) それでも、基本的なキャラクターとか設定は理解できました。要するに、よくあるタイプのドラマで、あまり新味がないという意味でもあるのですが、こういう作風自体は嫌いじゃないです。(^^ゞ
スタッフもキャストも「ロング・ラブレター〜漂流教室」とダブっている人が多いのですが、ドラマの作風だけはなぜか「ロンラブ」のスケール感とは正反対です。今回は、やけにこじんまりとしていて、そこが妙におかしいです。第2話で、洋食屋が未来に漂流したりしなければ、「ひとつ屋根の下」の洋食屋版みたいなホームドラマになると思われます。(^^ゞ
手堅いキャラ演出 伊東美咲に注目!
設定に意外性が少ない分、キャラクターの演出は手堅い印象です。特に竹内結子、堤真一、江口洋介の3人は特に新味のあるキャラではありませんが、安心して見ていられるような安定感があるので、この3人が嫌いじゃなければ十分に楽しめると思います。
このドラマで、特に注目したいのは伊東美咲でしょうか。彼女は「水曜日の情事」や「こくせん」では美人キャラを演じていましたが、「ランチ…」のキャラは、それとは違っているように見えました。一般的に言って、“美人キャラ”とか“二枚目キャラ”というのは俳優的にはあまり美味しいキャラじゃありません。面白くないからです。美人なのに貧乏臭いとか、美人なのに笑えるという風に、付加価値が付いたときに、はじめて美味しくなるわけです。最近では仲間由紀恵がこのパターンですね。伊東美咲の場合、「ごくせん」の番宣とか「スマスマ」とかで天然ボケっぽい要素を感じたのですが、この第1話ではそれに近いニュアンスを感じました。(チラッと見ただけですが)
個人的には山下智久に和んでいる自分にちょっと驚いていたりします。この人のことは実はあんまり好きじゃなくて、「カバチタレ!」の時もいい印象がなくて、この日誌にも声質がよくないなどと書いたこともあります。彼の場合、ニックネームが“山P”だからなのか、山口Pの連ドラに出るのはこれで4回目になりますが、サブリミナル効果なのか何なのかよくわかりませんが、いつの間にかその声質にも慣れてしまいました。――山田孝之との2ショットが、やけに似合っているように見えちゃうのも不思議といえば不思議です。(^^ゞ
ちなみに、山田孝之は必要以上にアップが多くて、しつこいような気がしたのですが、何か伏線でもあるのでしょうか? また、妻夫木聡だけはイマイチ精彩がないように見えました。身振りとか口調が少年っぽいのですが、ちょっと違和感を感じます。
白川士さんの名前が気になる
スタッフでは助監督の白川士さんの名前が気になります。白川さんは、月曜10時の読売テレビ枠でおなじみの名前で、「永遠の仔」「女医」「R-17」(これのみテレ朝)「天国への階段」といった渋めのドラマで演出をしている人ですが、フジテレビのドラマで見かけるのは、初めてかもしれません。そういえば、サードDに予定されている唐木希浩さんも読売テレビ枠でおなじみの名前だから、従来のフジとは微妙に違うテイストを意図した人選なのかもしれません。
なお、白川さんの名前の読み方がわからなかったので、学研漢和大辞典で「士」を引いてみたのですが、それによると「あきら」「おさむ」「つかさ」「まもる」といった読みがあるそうです。うちのパソコン(IME2000)だと、「つかさ」で変換すると「士」が出てきますが、他の3つはダメです。「つかさ」の可能性が一番高いといえるのでしょうか。――余談ですが、上記の辞書の「士」の解説(解字)を読んでいたら「象形。男の陰茎の突きたったさまを描いたもの」な〜んて書いてあるのを見つけてしまいました。(^^ゞ 実はエッチな由来を持つ漢字だったんですね。金八先生が黒板で説明しているところを見てみたいです。
≪緊急追記≫これは現代版「お荷物小荷物」か?
テレビドラマデータベースの「雑談掲示板」を読んでいたら、練馬大根役者さんという方が「お荷物小荷物」(70年・TBS系)というドラマの名前を出されているのを見かけました。それで、「お荷物小荷物」と「ランチ…」を比較してみたら、このドラマに対する印象が180度変わってしまったので、緊急報告させていただきます。
ボクは過去に何回か、山口Pが「お荷物小荷物」を好きだ発言しているのを見かけたことがありますが、このドラマを見ている時にはそのことをすっかり忘れていました。録画に失敗したこともあって、ドラマに集中できなかったという事情もあります。いずれにしても、このドラマの設定が「お荷物…」にソックリだということは、天地がひっくり返るくらいの大事件です。ただし「お荷物…」と言っても見たことのない人が多いはずだし、ボクも見たことはないで、「トリック」の日誌(00/09/01)で紹介したときの引用文をそのまま再掲します。出典は切通利作の『怪獣使いと少年』です。
運輸業を営む男ばかりの滝沢家に女のお手伝いさん・田の中菊(中山千夏)が入り込む。彼女は素性を隠しているが実は沖縄人であり、かつてこの家の長男に孕ませられ、捨てられ自殺した姉の復讐を誓って乗り込んで来たのである。〔中略〕
ゴダールの『彼女について私が知っている二、三の事柄』(66年)の影響を受けていた『お荷物〜』は、出演者が演技の途中で突然、自分の役柄を批評したりする〈脱ドラマ〉でもあった。たとえば、菊の姉を死に追いやった長男・仁を演じる河原崎長一郎が突然演技を中断して「ひどい役をもらったもんです」と画面に話しかけるといった具合である。
どうです? とんでもない展開でしょう。でも、「漂流教室」と同じスタッフが作っているドラマだったら、このくらいのオチがあっても不思議じゃないし、山口Pが過去に作ってきたドラマのことを考えるなら、むしろ、普通のホームドラマで終わっちゃう方が不自然というものです。「タブロイド」のオチとか覚えていますか? ただし、竹内結子の標的が堤真一なのか江口洋介なのかは今ひとつはっきりしません。
朝ドラ「ひまわり」との関係は?
もうひとつ、考慮しなければいけないのは、このドラマの当初の脚本担当が井上由美子さんだったということです。井上さんが降りてしまった理由はわかりませんが、「ランチ…」のベースが「お荷物…」であるのなら、井上さんを起用した理由は明快です。つまり、山口Pは「お荷物…」+「ひまわり」をやりたかったんじゃないでしょうか。――ボクにとって、この企画は「漂流教室」のドラマ化を越えるくらいの超一級の企画です。ワクワクしちゃって眠れません。(^^ゞ
ボクは朝ドラをたくさん見ているわけではありませんが、ボクが知ってる範囲で言えば、「ひまわり」は朝ドラ史に残る金字塔のような作品です。ドラマアカデミー賞の審査員をしている松尾羊一さんはこのドラマのことをミステリーと評されていましたが、まさにそんな感じの作品でした。「ひまわり」は、4月のスタート当初は人情コメディ風のホームドラマだったのですが、7月を過ぎてから、水面下に隠れていた家族の秘密やら感情やらが噴出してきて、4月時点では予想もしていなかったようなカタルシスを感じさせてくれました。
ただし、秘密といっても、10年前に夫がオーストラリアで銀行強盗をしていたというような作為的なものではありません(朝ドラだし)。「あの時のことは納得したことにしておこう」とか「あの一件については、ほじくり返さないことにしよう」というような、“家族内タブー”みたいなものと言えばいいのでしょうか。それで、普段は表面化しない“過去の一件”が、ある事件をきっかけに表面化してくる――という構成だったわけです。視聴者は、序盤のホームドラマ風の世界観をデフォルトとして受け取っているから、後半の展開でガツ〜ンとくるわけです。(^^ゞ 井上さんの場合、「ひまわり」以外でも、人間の心の奥をミステリー風に構成したドラマが多いですね。
予想するに、「ランチ…」の洋食屋一家にもタブーになっているような過去の事件があって、それが後半の展開のキーになるんじゃないかと。ただし、「ひとつ屋根の下」の長女の一件がそうだったように、下の兄弟は真実を知らない可能性が高いです。また、洋食屋一家のタブーと、堤真一が家出した本当の原因と、竹内結子の過去がつながっているのか、いないのか、興味がつきないところです。
テレビ雑誌の記述では……
念のために書いておきますが、ここに書いてることは全部ボクの勝手な予想にすぎません。普通のホームドラマのまま終わっちゃう可能性もあります。ただ、テレビ雑誌の記事をいくつか見てみたところ、どれも竹内結子のことを経歴不明の謎の女と書いてあるので、何らかの過去があるのは間違いないです。「TVライフ」では、山田孝之が竹内結子の過去を知っているみたいだとありました。ボクは姉弟の可能性を疑っています。――なお、上の日誌で、ボクは山田孝之のアップが多いと書いています。そんなに深い考えがあって書いたわけじゃないのですが、今になって思えば、我ながら鋭いところを見てますよね。(^^ゞ (←偶然だよ!)
本当だったら、これらの問題をふまえた上で、第1話のビデオを見直したいのですが、録画に失敗してるんで、ボクには出来ません。どなたか、この件に興味のある方がいらしたら、ビデオを見直して、掲示板にレポートしていただけると嬉しいです。最初にチェックしたいのは、竹内と堤の出会いは本当に偶然なのか、ということです。
ところで、主題歌のスリー・ドッグ・ナイトの「喜びの世界」は、「お荷物小荷物」と同じ1970年の作品です。全米1位になったのは71年の4月なんですが、70年発表のアルバムに収録されているみたいです。――単なる偶然とは思えなくなってきたでしょう? (^^ゞ
02/07/01
私立探偵 濱マイク(1) |
原作:林海象
脚本:青木研次
監督:緒方明(1)、青山真治、石井聰互、岩松了、須永秀明、 竹内スグル、
萩生田宏治、前田良輔、行定勲 他
製作:藤門浩之(YTV)、益田康久、畠中基博(PUG POINT)
エグゼクティブプロデューサー:堀口良則(YTV)
プロデューサー:仙頭武則(サンダーボルト)、古賀俊輔(S1-T3)、岡野彰(Rocket Punch)
主題歌:EGO-WRAPPIN'「くちばしにチェリー」
制作協力:サンダーボルト、Rocket Punch
制作:よみうりテレビ、PUG POINT
製作:「私立探偵濱マイク」製作委員会
関東放送枠:日テレ・月曜10時
「一見さんお断わり」みたいな無愛想なドラマ
見る前は、期待していいのか悪いのかよくわからなかったんですが、第1話を見た感じでは、ちょっとつらいかな〜。(^^ゞ 「一見さんお断わり」みたいな、無愛想な雰囲気のドラマでした。
キャラクターは美味しいし、シュールなギャグも面白いし、映像にも雰囲気があると思います。なのに、その面白さをテレビの前の視聴者に伝えるための、努力や工夫が欠如しているように思います。たとえば、密閉された映画館の中で大スクリーンで見れば、もっと面白く見れると思うのですが、お茶の間の視聴者に見せるにしては、見せ方があまりにも無愛想です。セリフもわかりづらいし、テンポもかったるいし。
ストーリがわかりづらいのは許せるとしても、キャラクター描写に関してはもっと工夫できると思うし、そうすることでこのドラマの面白みが損なわれてしまうとは思えないのですが……。個人的には市川実和子と中島美嘉の2人に期待していたのですが、「雰囲気だけでOK」みたいな撮り方だったんでガッカリです。セリフがある場面でも、ほとんど背景と同化していました(もったいない!)。もちろん、これはこの2人に限った傾向じゃないんですけど……。(^^ゞ
映画人はテレビから学んでいない?
で、ここでちょっと脱線しちゃうんですが、映画畑の人たちが傲慢に見えることってないですか? テレビ畑の人に「映画から学ぼう」という姿勢を感じることは、ままありますが、映画畑に人たちに「テレビに学ぼう」という姿勢を感じることは滅多にありません。たまにインタビューとか読んでても、テレビドラマをバカにしているように感じることが多いです。(^^ゞ このドラマにもそれに近い雰囲気を感じます。
映画には映画の美学があると思うし、それを否定する気はありませんが、テレビドラマをやるのだったら、ちょっとはテレビの生理・特性を考慮してもいいように思います。このドラマを見ながら思ったのは「堤幸彦さんってテレビ的だな」ってことです。(^^ゞ 堂本剛の「金田一少年」にしても「池袋ウエストゲートパーク」にしても、圧倒的にわかりやすいでしょう? 窪塚洋介のキャラ設定とか。(^^ゞ
オフィスクレッシェンドといえば、2月ごろに日テレ深夜枠で放送された「東京ぬけ道ガール」が、このドラマと酷似した70年代風のドラマでした。主題歌がEGO-WRAPPIN'なのも同じです。演出は、「中学生日記」出身で現・日テレ所属の俊英高橋直治さん。何かの賞を受賞したらしくて、深夜ドラマとしてはめずらしく、昼間に再放送されていました。日誌には書いていないですが、「東京…」(と「室温」)は、今年前半のテレビドラマを代表する佳作だと思っています。その「東京…」と「濱マイク」の違いを比較してみていただければ、ボクが言ってる「無愛想さ」のニュアンスが良くわかっていただけるかと思います。BGMとかロケーションのセンスにしても、「東京…」の方は70年代東京風なのに対して、「濱」の方は外国ドラマの翻案風(国籍不明風?)。現実感が微妙に違うんですね。
いずれにしても、CMの合間に「スマスマ」にチャンネルをまわして、そのまま戻ってこなかった人がたくさんいそうな気がします。この第1話を見る限り、視聴率的には厳しいものを感じます(追記:13.5%でした)。というか、視聴率のことを考えて作っているとは思えないです。同じ日にオンエアされた、同じ読売テレビ制作の「名探偵コナン」に、濱マイクが登場したみたいですが、そんなことをしてもあんまり効果ないと思います。そもそも「コナン」を見ている子供たちが「濱マイク」を喜んで見るとは思えないでしょう?
まあ、このドラマの場合は、毎回監督が違うみたいだから、テレビをバカにしている監督とそうじゃない人を判別するのに便利かもしれないですが。(^^ゞ
濱マイクとマイク・ハマー
ところで、ボクは原作のことも、映画版のこともまったく知らないのですが、濱マイクっていう名前はマイク・ハマーのパロディなんでしょうか? マイク・ハマーというのはミッキー・スピレインのハードボイルド小説の主人公の名前で、82年には『探偵マイク・ハマー 俺が掟だ! 』なんて映画も作られているようです。タイトルからしてよく似てますよね。(^^ゞ
ハードボイルドといえば、ボクも高校時代にロス・マクドナルドの社会派ハードボイルドを読んだことがありますが、第1話の「僕を探してくれ」という出だしを見たとき、ロス・マクドナルドを連想しました。最後まで見たらシャーロック・ホームズの「赤毛連盟」みたいなオチになっちゃいましたが……。(^^ゞ 個人的には、いまさらロス・マクドナルドを読みたいとは思いませんが、連ドラのネタとしてはそこそこ使い道があるかもしれない……なんて思ったりもしました。(^^ゞ 野沢尚さんの夫婦愛ミステリーをハードボイルドにしたような感じ?
02/07/02
新・愛の嵐(2)(第1週) |
脚本:大久保昌一良、田部俊行、林誠人
演出:金子与志一(第1週)、小池唯一、島崎敏樹
音楽:山下康介
主題歌:吉村まさみfeat.De Voice 「Delight of my love」 企画:出原弘之(東海テレビ)
プロデューサー:市野直親(東海テレビ)、平野一夫(泉)、福田誠(泉)、小松貴生(泉)
制作:東海テレビ放送、泉放送制作
関東放送枠:フジ・月〜金13:30〜14:00
兼末健次郎=風間俊介を彷彿させる才能!
実は、上の日誌を書きながら「真珠夫人」の後番組をチラチラ見てたんですが、あまりの凄さに手が完全に止まってしまいました。(^^ゞ このドラマは86年に同じ枠で放送された「愛の嵐」のリメイクだそうで、86年版で主演を果たした田中美佐子と渡辺裕之は、それがきっかけでブレイクしたとのことです。
しかし、そんなことはこの際どうでもいいです。とにかく、主人公の少年時代を演じている落合扶樹(もとき)が凄すぎです。「神木隆之介が可愛い」とか、「松崎駿司が貧乏臭い」とか、そういうレベルをはるかに超えてます!!! あえてたとえるなら「金八5」の風間俊介でしょうか。怖い表情と寂しそうな表情のインパクトと、その切り替えの鮮やかさが兼末健次郎を彷彿させるんです。――とにかく一見の価値があるのでオススメしておきます。ボヤボヤしてると、要潤に交代しちゃうんで今週中にチェックしてください。(^_-)
落合扶樹のことは、去年のヤングシナリオ大賞「ほたるのゆき」の日誌(01/11/17)で一度触れたことがあります。名前を出しただけで、具体的な言及はしていませんが、一応記憶には残っていました。で、ボクが知っている範囲でいうと、「初/体/験」で藤木直人の少年時代を演じていたのも彼です。(水野美紀の少女時代を演じていたのは井料彩美)――これ以上のことは、検索してみないとわかりませんが、……でも、そんなことをする前に、明日の「新・愛の嵐」を録画予約しておきましょう。(^^ゞ
演出の金子与志一さんは、かつてはTBSで「人間・失格」などの演出をしていた人で、その後は月曜10時枠で「明日を抱きしめて」(2000年10〜12月・松本幸四郎・高島礼子・鳥羽潤)などをチーフ演出していました。昼ドラの演出も何回かやっていたような気がしますが、そこまではチェックしていません。(^_^;)
02/07/06
FNS27時間テレビ ドラマSP 東京物語 |
原作:野田高梧・小津安二郎(シナリオより)
脚本:永田優子
演出:宮本理江子
プロデュース:喜多麗子
関東放送枠:フジ系「FNS27時間テレビ」内・土曜9:30頃〜11:30頃
小津安二郎、成瀬巳喜男について予習?
オンエアの数日前にNHK教育「ETV2002」で徳島テレビ祭の特集があって、そこで、フジテレビの制作センター室長の大多亮さんが小津安二郎のことを力説しているのを見ました。大多さんによると「小津安二郎や成瀬巳喜男の映画に(ホームドラマの)すべてがある」とのことです。
ボクは成瀬巳喜男がどういう人なのかまったく知らなかったので、ちょっと調べてみたりしました。作風的には小津安二郎に酷似しているそうです。マイクロソフトの「エンカルタ百科事典2001」には、「死後に海外で評価が高まり、現在では黒沢明、溝口健二、小津安二郎とともに日本映画の4大監督といわれる」などと書いてありました。(余談ですが、4人ともサイレント映画の全盛期に自己形成した世代である点に、興味を持ちました)
……といった状況証拠から推察するに、今回の企画にも大多亮さんが深く関わっていそうです。ただし、ボクは小津安二郎の「東京物語」を見たことがないので、松たか子でリメイクするのは、視聴率的にもオイシイ企画だな〜、なんて思った程度です。(^^ゞ とはいえ、小津安二郎や日本映画について、活字レベルの情報を仕入れた直後だったんで、それなりに興味深く見れました。
ちなみに、平凡社の「世界大百科事典」で小津安二郎を引くと「生涯を通じて,映画は悲劇と喜劇とが題材ではなく,映画的時間=空間のあんばいに基づくものであると立証し続けた」(蓮實重彦)なんて書いてありました。ストーリーよりも演出を重視するとか言ってる、どこかのホームページに似てると思いませんか? (笑)
気になったのは録音/音響
以上が長い前置きで、ここからがドラマの感想。(^^ゞ このドラマで、ボクがずっと気になっていたのは、ローアングル/ローポジションとかじゃなくて、録音/音響でした。ドラマが始まって10分くらいの時点から、録音が気になって仕方がなかったです。
食器がぶつかる音、箸を置く音、服がこすれる音、床や廊下がきしむ音……など、生活上のノイズ音に妙に味がありました。同じことは役者の声の響き方にも言えます。広い部屋でしゃべるのと、狭い部屋でしゃべるのとでは、声の響き方に違いがありますが、このドラマでも、声の響き方に日本家屋的な臨場感みたいなものが感じられて、それが強く印象に残りました。音響を使った空間演出とでもいうのでしょうか。
虫の鳴き声とか、街の雑踏音とかにも、派手にフィーチャーされていましたが、こうした音響演出の基本アイデアも、小津安二郎の考案なのかもしれないですね。あと、八千草薫が、ソファーに座らないで、カーペットの上で正座しているシーンがありましたが、こういうところも小津演出の現代的な解釈といえるのかもしれません。ちなみに、ソファーがあるのにカーペットの上に座るという演出は、「ラブストーリー」(中山美穂・豊川悦司)に頻出してました。(01/06/03参照)
特に印象に残ったのは、ドラマ開始45分くらいに出てきた、室井滋と白井晃が電話で話すシーンです。居間またはダイニングルームで話す白井晃のカットのバックに食器を洗う音が流れていました。もちろん映像には、洗い場は映っていないのですが、音だけで仕事をしている奥さんの存在を印象付けているわけです。……というワケで(?)、ボクにとっては、「東京物語」は録音です。(^^ゞ ビデオで再度見直す余裕がないので、それ以上のことは良くわかりません。
ところで、母親の手紙が出てくる終盤のシーンは、小津版「東京物語」にはない今回のオリジナルシーンだったそうですが、小津ファンの評判はよくないようです。小津安二郎は“反メロドラマ”の人だったらしいので、この部分は反小津的だといえるのでしょう。ボクは門外漢なんで、そんなに気になりませんでしたが……。それよりも、ストーリー設定の方に時代錯誤的な違和感を感じました。いまどきの60代で、東京が初めてっていうのは無理があるような気がしました。子供たちが東京に上京しているとか……。ちなみに、テレビドラマデータベースで「東京物語」で検索すると、82年にNHK、89年にTBSでドラマ化されているみたいです。
02/07/19
愛なんていらねえよ、夏(2) |
脚本:龍居由佳里
演出:堤幸彦、松原浩、今井夏木
プロデュース:植田博樹
ラインプロデューサー:市山竜次
音楽:見岳章、武内享
主題歌:池田綾子「LIFE」
撮影:唐沢悟、斑目重友
プロデュース補:小林誠一郎、小林美穂、相場恵理子
演出補:平川雄一朗、石丸彰彦、納戸正明、塩崎遵、上村倫一
02/07/20
探偵家族(2) |
脚本:石原武龍(1)、大野敏哉(2)、福田裕子(2)、福田千鶴子
演出:長沼誠(1)(2)、大谷太郎
プロデュース:池田健司、村瀬健、鈴木聡
音楽:村山達哉、安藤直弘
主題歌:「Endless」小柳ゆき
ブレイン:ドラマデザイン社
製作協力:ケイファクトリー
関東放送枠:日テレ・土曜9時
02/07/20
キッズ・ウォー夏休みSP |
脚本:畑嶺明
演出:小森耕太郎
音楽:大場吉信
プロデューサー:山本恵三、堀場正仁
演出補:黒川和憲、青山貴洋
企画協力:たむらプロ/千野榮彦
出演:井上真央、小谷幸弘、宮崎真汐、金澤匠、斉藤祥太、浅利陽介、前田愛、谷口響子etc
制作:中部日本放送(CBC)
関東放送枠:TBS・土曜14:00〜15:54
「キッズ」は不治の病?
見ているうちに、だんだん悲しくなっちゃいましたね。不治の病に侵された少年少女の末路を見せられているみたいで……。もちろん、“不治の病”とは「キッズ・ウォー」のことで、“少年少女”とは井上真央や斉藤祥太らのことですけど……。(^_^;)
「キッズ・ウォー」が高視聴率を取ったことは喜ばしいことなんですが、「キッズ・ウォー」というのは、十代の貴重な時間を費やすに値するソフトなんだろうか? ……なんてことを思いながら見る2時間は長かったです。他のドラマで良い仕事をしている斉藤祥太・浅利陽介・小谷幸弘などはまだ救いがありますが、井上真央なんて……。(;_;) 3月に再放送されていた「藏」(当時8歳くらいか?)の方がよっぽど良い味出していました。
なお、転落死した女の子を演じていた谷口響子は、斉藤祥太と同じ「3年B組」の第6期生です。「金八6」では、援助交際に手を出して男に拉致されてました。今回はイジメられているシーンと、死体のシーンくらいしか、出番がありませんでした。
致命的なのは企画じゃなくて制作力
1年前に放送された「キッズ・ウォー3」が、「2」の縮小コピーみたいな内容だったのに対して、今回のSPは一応新しいことに挑戦していたのですが、にもかかわらず、「3」以上につまらないというのが辛いところです。「キッズ…」の基本構造は人情コメディなので、殺人事件みたいなエピソードはあまり似合わないと思いますが、それでも、今回の企画〜発想自体はそんなに悪くないと思います。番外編という位置付けで遊んでみたいという気持ちも理解できます。でも……。
致命的なのは、企画じゃなくて制作力の方です。ロケーション主体で「金田一少年」みたいな演出にトライしたら、制作力の弱さが露呈してしまいました。今回のSPは、従来の「キッズ…」の面白さもなければ、新しい面白さもないという、救いようのない仕上がりになってしまいました。ギャグは笑えないし、シリアスも緊張感ないし、最後に唐突に登場した純愛シーンも意味不明……? なにより、井上真央をはじめとする出演者がちっとも魅力的に見えないです。そもそも、今回のストーリーに斉藤祥太や浅利陽介を登場させる必要性があったのかどうかも疑問。というか、レギュラー出演者の大半が不必要だったような気がします。2時間サスペンスの探偵役だったら、生稲・井上・小谷の3人もいれば十分でしょう。(^_^;)
全体的にBGMがないシーンが多かったのですが、その演出意図も不明です。現在関東で再放送されている「2」なんかは、ほぼ全編に軽快なBGMが流れているのですが、それをやっちゃうとサスペンスにならないという判断でもあったのでしょうか。それとも、発注した音楽の出来が悪すぎたため、BGMなしのシーンが増えちゃったんでしょうか。いずれにしても、それじゃ単なる引き算にしかなってないし、緊張感もテンポ感もないシーンがダラダラと続くのを見るのはつらかったです。そもそもギャグの内容からして“一応やっときました”みたいな感じで、気合を入れて作っているようには見えないのですが……。
自社製作の限界か?
中部日本放送(CBC)の昼ドラマは、ここ数年はほぼ自社製作です。小森耕太郎、堀場正仁、西村信といった演出家も、みな局社員だと思われるのですが、そうした体制自体が限界にきているのかな、なんて思ってしまいます。フジ系の東海テレビが外部プロダクションを起用して、「真珠夫人」「新・愛の嵐」といった力作をモノにしているのと対照的です。「幼稚園ゲーム2」と「新・愛の嵐」を交互に見てみれば、映像や美術の違いは明白でしょう? (^_^;)
ちなみに、9月末からは「キッズ・ウォー4」がスタートするみたいです。夏休みの期間をフルに活用して撮影収録ができるという点では、昨年の「3」よりも期待ができるのですが、このSPを見た後では、なかなか明るい気分にはなれないです。(-_-;) 斉藤祥太の双子の弟の斉藤慶太とか、「失業白書」「北条時宗」「ある日、嵐のように」「さくら」に出ていた崎本大海など、新キャスティングにもそれなりに魅力を感じるんですけど……ねぇ?(^^ゞ
なお、崎本大海が、自前のホームページを運営しているの見つけたので紹介しておきます。
http://www.hiromi-s.com/
02/07/24
マイリトルシェフ(3) |
脚本:源孝志(1)(2)、後藤法子(3)
演出:源孝志(1)(2)(4)、樹木まさひこ(3)、山本和夫
プロデュース:鈴木基之、川島永次、梶野祐司
音楽:窪田ミナ
主題歌:「Voyage」浜崎あゆみ
プロデューサー補:槙哲也
スケジュール:白根敬造
助監督:宮崎暁夫
制作担当:市川幸嗣
製作:ホリプロ、TBS
キーワードは“ミニマム感”
このドラマの特徴/魅力を一言でいうなら“ミニマム感”です。コメディ場面やカメラワークなどに共テレ的な演出の影響が感じられますが、共テレ的な“ゴージャス感”がきれいに排除されているところに、このドラマの(源孝志演出の)オリジナリティがあります。
このことが良く現れているのが厨房のシーンです。家庭のキッチンに通じるようなこじんまりとした雰囲気に仕上がっています。厳密にいうと、厨房のセット自体は撮影上の利便性を考慮したのか、そんなに狭くもないようなんですが、あくまでも狭さを強調するような撮り方をしています。調理台の上を明るくして、背景の壁を暗くするような照明の当て方などが、その典型です。フロアのシーンなども、「王様のレストラン」よりは「アンティーク」に近い雰囲気です。
カメラワークでは、広角・接写系のカメラが、テーブルの上を這うように動いている映像が胃カメラみたいで印象的です。料理を覗き込むシェフや客の表情を、料理の位置から撮っているカットも多く、もし料理に目が付いていたらこんな風に人間が見えるだろう……といった趣きの映像です。そうした至近距離から撮った接写映像も、このドラマのミニマム感の構成する要素の一つです。第3話のオープニングのシーンは、ワンカットの長廻し(もどき?)になっていましたが、ここでも狭い空間の中を派手に動くというコンセプトになっていたと思います。空間の広さを強調するようなカットはほとんど出てきません。
ミニマム感といえば、窪田ミナさんの音楽も例外ではありません。共テレに良く出てくるゴージャスなオーケストラではなくて室内楽的な楽曲が中心。リズミカルな曲も多いのですが、それも現代音楽〜ミニマル・ミュージック風のテイストに仕上がっています。エリック・サティの「グノシェンヌ」みたいな曲もありました。サティといえば、座りごこちのよい椅子のように人にくつろぎと安らぎを与える〈家具の音楽〉というアイデアが有名です。このドラマの雰囲気と共通点があるような気もするのですが、まったく関係ないような気もします。(笑) なお、窪田ミナさんがどういう人なのかは、まったく知りません。(^_^;)
源孝志さんの謎?
よく知らないといえば、源孝志という人も経歴等が良くわからない演出家・プロデューサーです。テレビドラマデータベースで検索すると全部で5本の作品がヒットするのですが、ボクは5本とも全部見てます。参考までに列挙しておくと、「(秘)恋愛ドラマ Suite Rooms〜第1話・深夜の告白」(98年・日テレ)「同窓会へようこそ」(99年・TBS)「奇跡の大逆転!〜第3話・史上最悪の客」(00年・TBS)「17年目のパパへ」(01年・TBS)「温かなお皿」(01年・関テレ)です。
この5本のうち「同窓会…」(99/08/16)と「17年目…」(01/01/04)は、この日誌でも取り上げています。その日誌によれば、この「マイ…」同様ホリプロ製作とあるので、源孝志さんはホリプロ所属の演出家なんじゃないかと思われます。昨年末の放送された「温かな…」もホリプロだったような記憶があるのですが、日誌で取り上げようと思ったままウヤムヤになっています。(^_^;) それとほぼ同時期に放映された「夫婦漫才」(脚本・演出:豊川悦司)ではプロデューサーとしてクレジットされていましたが、このドラマもホリプロ制作で、ボクの日誌もウヤムヤです。(^_-)
で、これらの作品名から見えてくる源孝志さんの得意ジャンルは美少女とトヨエツとグルメです。(笑) 美少女演出の上手さに関しては、過去作の加藤あい、深田恭子もそうですが、今回の矢田亜希子、上戸彩を見ていただければ理解していただけると思うので、細かいことは省略させていただきます。ついでにトヨエツも省略いたします。(^^ゞ 第3話は樹木まさひこさんの演出ですが、上戸彩の「レバーぐらいでガタガタ騒ぐな、バ〜カ!」のところだけ、3〜4回繰り返して見ちゃいました。(^^;;
反グルメドラマ = 食卓ドラマ
注目しておきたいのはグルメの方です。源孝志さんのグルメ描写には、厳密にいうと反グルメ/反美食と思われる節があるからです。「史上最悪の客」は、高級レストランでソムリエ(西村雅彦)にバカにされた岸谷五朗が数年後に仕返しをする話でした。「温かな…」にも、不倫相手の妻(今井美樹)と食事をする水野美紀が、事前にマナーの勉強をするというシーンが出てきます。「温かな…」ではさらに、三浦友和と末永遥が母親(今井美樹)の目を盗んで、コンビニ弁当とジャンクフードを満喫するという名シーンがありました。――こういうドラマを作る人が「美味しんぼ」とか「ほんまもん」のような、正統派の美食ドラマを作る可能性は低いです。
というか、ボクはもともと、その手の美食ドラマが大嫌いなんです。(^^ゞ 280円の牛丼で十分に満足してしまうボクみたいな人間にとって、美食ドラマというのは、自分を否定されているみたいで気分が悪いんですよね。そこそこの料理で満足するのが大人ってもんだろう……などと、つい文句を言いたくなってしまいます。特に、日本料理系の美食家というのは、禅の影響なのか、言葉の上では「質素」とか言いながら、実質的には贅沢の限りを尽くしているようなところがあって、知れば知るほど嫌になります。(恕;) 閑話休題。
源孝志さんの「温かな…」は、そうしたグルメ志向とは一線を画すドラマでした。「金八先生5〜6」を見ていた人なら、カレーライス3題とか、朝食5題といったエピソードを覚えていると思いますが、「温かな…」も食卓の風景を比較しながら描いていました。この意味で言うなら、源孝志さんのドラマはグルメドラマではなく“食卓ドラマ”と言うべきなのかもしれません。上に方に書いた“ミニマム感”というのも、この食卓感覚と結びついているわけです。ただ、単に食卓感覚なんて言っちゃうと主婦感覚とまぎらわしいし、かといって“食卓的エロス”などと言っちゃうと、昼下がりの情事みたいになっちゃうから、更にまぎらわしいです。(^^)
このドラマで一番のネックになるのは、オーダーメイドの料理という設定で、見ていて違和感を覚える部分だったりします。「食べる人の顔が見えないと作れない」というヒロインのキャラ設定は、家庭料理的な人間関係(食卓的エロス)を具現化したものなんですが、それをそのままレストランに持ち込まれると、リアリティ(説得力)が薄れちゃいます。第3話には、嫌いな素材も工夫して食べさせるというエピソードがあって、これも家庭料理的な発想なんですが、ストーリー的にはやや無理があったように思います。少なくてもボクは、高い金を払ってこんなレストランに行きたいとは思いませんね。(^_-)
最後にスタッフ・チェック!
ところで、セカンドDの樹木まさひこさんは、「平成夫婦茶碗」や昼ドラ「ママまっしぐら1〜2」などの演出を手がけていた人ですが、裏番組の「東京庭付き一戸建て」が「平成…」と同じスタッフだから、“昔の味方は今日の敵”状態になってます。なお、「ママまっしぐら」もホリプロ製作なので樹木さんもホリプロ所属かもしれません。
この他では、白根敬造さん、宮崎暁夫さん、市川幸嗣さんらは、かつてのテレ朝月8やMMJのドラマでおなじみの顔ぶれです。市川さんは「嫁はミツボシ。」に、宮崎さんは「ママまっしぐら」に参加していました。白根さんと宮崎さんは、去年の昼ドラ「たのしい幼稚園」(製作:ケイファクトリー)で演出もしているようです。
このドラマは視聴率的にも、プティ・エトワール同様、苦戦しているみたいですが、反グルメ志向だけは、最後まで堅持してほしいと思います。ちなみに、「一戸建て」や「探偵家族」よりも、「マイリトルシェフ」の方にホームドラマ的なテイストを感じるのはボクだけでしょうか?
02/07/25
恋愛偏差値(4) |
原作:唯川恵
プロデュース:栗原美和子、井口喜一
主題歌:MISIA「眠れぬ夜は君のせい」
エンドテーマ:KRUD「メイアイ」
音楽:鷺巣詩郎/DJ GOMI
第一章・燃えつきるまで
脚本:都築浩
演出:佐藤祐市(1)(2)(4)、久保田哲史(3)