ドラマ演出日誌（2002年1-3月期）

"ドラマ演出"日誌（2002年1-3月期）

02/01/06　年末年始の単発ドラマ

▼▼12/23「見つけた！食の心旅」（テレ東・カノックス）
▼▼12/24「賢者の贈り物」（テレ朝・BEAMS）
▼▼12/25「温かなお皿」（関西テレビ・ホリプロ）
▼▼12/26「君の手がささやいている・最終章」（テレ朝・MMJ）
▼▼12/27「ナンバーワン」（TBS・AVEC）
▼▼12/28「忠臣蔵 1/47」（フジ・映像京都）
▼▼12/29「Teacups・湘南初恋物語」（テレ東・？）
▼▼12/29「バカ３兄弟」（フジ・イースト）
▼▼12/30「夫婦漫才」（TBS・ホリプロ）
▼▼12/29「バカ３兄弟」（フジ・イースト）
▼▼01/01「キテレツ」（NHK教育）
▼▼01/01「鉄道員（ぽっぽや）青春篇」（テレ朝・東映）
▼▼01/01「救命病棟24時・新春SP」（フジ）
▼▼01/02「韓国のおばあちゃんはえらい」（NHK・NHKエンタープライズ21）
▼▼01/02「モーニング娘。新春！LOVEストーリーズ」（TBS・共テレ）
▼▼01/03～04「愛と青春の宝塚～恋よりも生命よりも」（フジ・共テレ）
▼▼01/06「神戸発、尾道まで～橋に恋した父の新幹線通勤物語」（テレ朝・電通）

02/01/05　エスパー魔美(1)

原作：藤子・Ｆ・不二雄
脚本：寺田敏雄
演出：田中健二(1)(2)(3)(4)
制作統括：
撮影：石川一彦(1)(3)、澤田智岐(2)(4)
制作：NHK名古屋
関東放送枠：NHK教育・土曜6時「ドラマ愛の歌」

（データのみ）

02/01/06　サラリーマン金太郎３(1)

脚本：中園健二
演出：森田光則(1)、富田勝典(2)(5)、倉貫健二郎(3)、高野英治(4)、加藤章一(6)
音楽：松本晃彦
プロデュース：森田光則、倉貫健二郎
演出補：田沢幸治
制作：木下プロダクション、TBS
関東放送枠：TBS・日曜9時

（データのみ）

02/01/07　人にやさしく(1)

脚本：鈴木おさむ、いずみ吉紘
演出：澤田鎌作(1)(2)、田島大輔(3)(4)、久保田哲史(5)
音楽：武部聡志
プロデュース：澤田鎌作、栗原美和子
スケジュール：森保伸二
演出補：久保田哲史
プロデュース補：村井令子
関東放送枠：フジ・月曜9時

（データのみ）

02/01/07　ギンザの恋(1)

脚本：九條仁里、秦建日子、福田雄一
演出：羽住英一郎(1)(2)(4)、高橋章良(3)(5)
主題歌：ベイ・シティ・ローラーズ「ふたりだけのデート」
プロデューサー：堀口良則、中村元信、伊藤正昭
チーフプロデューサー：南中佑介
ラインプロデューサー：古郡真也
スケジュール：刑部俊哉
演出補：近藤一彦
プロデュース補：佐藤めぐみ、清水久栄
制作協力：ホリプロ
制作：よみうりテレビ
関東放送枠：日テレ・月曜10時

（データのみ）

02/01/08　初／体／験(1)

脚本：神山由美子
演出：木下高男(1)(2)(5)、土方政人(3)(4)
プロデュース：稲田秀樹、土屋健
音楽：中西俊博
スケジュール：田澤直樹
演出補：八木一介
プロデュース補：森安彩
制作：フジテレビ、共同テレビ
関東放送枠：フジ・火曜9時

（データのみ）

02/01/08　恋するトップレディ(1)

脚本：小椋久雄、田辺満、江頭美智留、大野敏哉、（原案：高山直也）
演出：西谷弘(1)(2)(5)、河野圭太(3)(4)
音楽：林哲司
プロデュース：笠置高弘、小椋久雄
企画：��栄�
スケジュール：森永恭朗
演出補：石川淳一
プロデュース補：渡辺真沙子（関テレ）、柳川由起子
制作：関西テレビ、共同テレビ
関東放送枠：フジ・火曜10時

（データのみ）

02/01/09　ロング・ラブレター～漂流教室(1)

原作：楳図かずお『漂流教室』
脚本：大森美香
演出：水田成英(1)(2)(5)、武内英樹(3)、木村達昭(4)
プロデュース：山口雅俊
渉外プロデュース：林知幸
スケジュール：初山恭洋
助監督：川村泰祐
演出補：阿部雅和、遠藤光貴、関野宗紀
プロデュース助手：大木綾子
プロデュース補：榊原妙子
関東放送枠：フジ・水曜9時

　意外と鋭い「ロング・ラブレター」というタイトル

なるべくネタバレにならないように気をつけながら原作のことを書いてみます。とはいえ、ネタバレを気にしていたら演出の話なんてできないので、ネタバレに神経質な人は読まないでください。（笑）

楳図かずおの『漂流教室』は有名な作品なので、ボクも大まかなストーリーは知っていましたが、ちゃんと読んだことはなかったので、ネット上の研究サイトなどで勉強してみました。それで分かったことは、「ロング・ラブレター」というドラマタイトルは、意外と原作の本質を突いているということです。原作では、離れ離れになった母と子の絆を描いているのですが、この両者の“伝えたいけど届かない思い”こそがロング・ラブレターというわけなんでしょう。原作でも、一番泣けるシーンで手紙が出てきます。

公式サイトのBBSでは、「原作とまったく違う」とか「こんなドラマに“漂流教室”などというタイトルを使ってほしくない」などと怒っている意見をいくつも見かけましたが、ボクの印象はそれとは正反対です。まあ、原作を読んでいないボクがこんなことを言うのは、かなり不遜なんですが、原作をきちんと読めていないのは怒っている人の方なんじゃないかという気がします。(^_-)　別のBBSでは、「ホラー漫画家の楳図かずおで泣ける…というのが分からない」という意見もありました。

『漂流教室』という作品には、たくさんのテーマが盛り込まれているので、読んだ人によって解釈が違っててもおかしくはないのですが、自分の解釈を絶対視してしまうと、今回のドラマの面白さが分からなくなってしまってもったいないです。ちなみに、『漂流教室』を“母と子の絆”という観点からコンパクトに紹介・分析しているサイトがあるので、原作の結末が分かっても良いという人にオススメしておきます。
http://www.win.ne.jp/~mobius/umezu/hyouryu.html

あと、楳図かずおや『漂流教室』を体系的かつアカデミックに分析しているサイトも見つけたので、そちらも紹介しておきます。
●半魚文庫　http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/index.html

　ロング・ラブレターは山口作品の共通テーマ？

ところで、ロング・ラブレターを“届かない思い”と解釈してみると、山Ｐ（山口雅俊Ｐの略！）が過去に手がけたドラマの大半が、ほぼ同じテーマであることに気がつきます。「きらきらひかる」にしても「太陽は沈まない」にしても、届かなかった死者の思いを探っていくという内容でしたが、それはまさにロング・ラブレターだといえます。

「太陽…」の第1話で、滝沢秀明は悪態を吐いて母親と別れてしまいますが、このシーンは今考えると、『漂流教室』の主人公が母親とケンカして家を飛び出すシーンとソックリです。原作の主人公は、山田孝之が演じている高松翔ですが、ドラマでは水川あさみと中途半端な別れ方をしていました。この点に関して気になるのは、母と子の絆と高校生の恋愛とでは、同じ離れ離れでも視聴者が受ける印象がかなり違ってくるということでしょうか。(^^)

ところで、この日の夕方に放送された番宣には、楳図かずおが登場していました。そこで彼が言っていたのはラストシーンのことで、最後のページに出てくる母親のカットが一番印象に残っているとのことです。上に紹介した『半魚文庫』によれば、楳図さんは単行本化の際に最後のページを書き直しているそうだから、この番宣での発言も宣伝用のトークではないと思います。だとするなら、山Ｐがこだわり続けていたテーマは、楳図さんのこだわりと一致しているといえるでしょう。と同時に、ドラマの結末が原作と同じになる可能性も高いです。ヘビーな結末ですが、そうしなければ、楳図発言の意味がなくなってしまうし……。(^_^;)

　お芝居やカット割りに緊張感が足りない？

で、ここからがやっと演出の話です。(>_<)　原作が原作なだけに、見る前はどんな作風になっているのか見当がつかなかったのですが、フタを開けてみたら『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』みたいな演出になっていました。オープニングに出てくる鉛筆が落下するカットなども『SOS』っぽいし、セットとかロケーションの雰囲気も似ています。中産階級が多い横浜郊外の住宅地というのは、野島ドラマのロケーションによくあるパターンです。回想形式のナレーションが入るところも野島的ですが、原作も回想形式のナレーションで始まっているので、これは偶然の一致です。

水田成英さんが連ドラをチーフで演出するのは、今回が初めてですが、『太陽…』の中江功さんや『SOS』の土井裕泰さんと比べると、お芝居やカット割りに緊張感が足りないように感じました。緊張感のない事件前の日常を描くというのが、演出上のコンセプトだったのかもしれませんが、それを考慮しても物足りない印象が残ります。手持ち風のカットがほとんどなくて、望遠系のアップが多いところなんかは、中江功さんっぽいのですが……。

具体的にいうと、窪塚洋介が山田孝之にキスするシーンなどは、カット割りが荒っぽくて、映像の流れがぎこちなかったです。また、窪塚洋介と常盤貴子が正月の花屋で会話するシーンでは、学校を辞めたことを「後悔している」というセリフが、ずいぶんアッサリと流されていましたが、あれで良かったのかどうか疑問が残ります。事件の朝には、妻夫木聡と電話で話すシーンがありましたが、これもアッサリした印象。この後、常盤貴子が家を出る際に父親（大杉漣）の方を振り返るカットがあって、そこのところだけスローモーションになっていました。このあたりが伏線といえば伏線といえるという感じでしょうか。

　その他、もろもろ……

ところで、冒頭に登場した、出会った日に携帯をなくして連絡が取れなくなる――というエピソードや、その教訓として語られる“今を生きろ”という言葉は、『漂流教室』のエッセンスをコンパクトに要約しているように思えます。大森美香さんは『カバチタレ！』の時も、冒頭にテーマ提示するパターンが多かったような気がしますが、今回もこのパターンを踏襲しているみたいです。山Ｐや大森さんの哲学趣味と、このパターンの相性がいいのかもしれません。

ただ、窪塚洋介が黒板に書いていた座標図は、何回見ても意味が良く分かりません。（笑）　まあ、カット割りなども黒板の内容に力を入れているようには見えなかったので、分からなくてもＯＫということなんでしょう。ちなみに、彼の担当教科が数学だという点にも興味がそそられます。ドラマの世界では、数学教師は悪役にされることが多いのですが、それは数学に対する偏見だと、前々から思っていました。(^_^;)

余談ですが、山Ｐ（山下智久の略！）が演じる大友は、原作では人を何人も殺しちゃう悪いヤツですが、ドラマではどういう風に描かれるのか楽しみです。――キャラ演出に関しては、また別の機会に書こうと思います。余談といえば、第3話からは一條俊が登場するみたいです。「R-17」「小津先生」「ロンラブ」と、1年間で3回も水川あさみと共演してます。(^_^;)

02/01/09　プリティガール(1)

脚本：青柳祐美子
演出：吉田秋生(1)(4)、日名子雅彦(2)(5)、岡島明(3)
プロデュース：鈴木聡
スケジュール：白根敬造
助監督：大塚徹
AP：神野保子
制作：ケイファクトリー、TBS
関東放送枠：TBS・水曜10時

（データのみ）

02/01/09　続・平成夫婦茶碗(1)

脚本：森下佳子
演出：三枝孝臣(1)(2)(5)、長沼誠(3)(4)
音楽：笹路正徳、藤井理央
企画プロデュース：遊川和彦
統括：井上健
プロデューサー：大平太、村瀬健、仲野尚之
助監督：田部井稔
スケジュール：高木治男(1)のみ
AP：森下典子
関東放送枠：日テレ・水曜10時

（データのみ）

02/01/10　婚外恋愛(1)

脚本：浅野妙子
演出：久野昌宏(1)(2)(5)、六車俊治(3)(4)
音楽：千住明
チーフプロデューサー：黒田徹也
プロデューサー：内山聖子、大久保なみ
スケジュール：梅沢利之
演出補：常廣丈太
プロデューサー補：上田直彦
関東放送枠：テレ朝・木曜9時

（データのみ）

02/01/10　恋ノチカラ(1)

脚本：相沢友子
演出：若松節朗(1)(2)(5)、村上正典(3)(4)
音楽：住友紀人
企画：石原隆、鈴木吉弘
プロデュース：船津浩一
スケジュール：保坂克己
演出補：村谷嘉則
AP：山崎淳子
制作：フジテレビ、共同テレビ
関東放送枠：フジ・木曜10時

（データのみ）

02/01/11　トリック２(1)

脚本：蒔田光治
演出：堤幸彦(1)～(5)、木村ひさし(6)(7)、鬼頭理三(8)(9)
音楽：辻陽
主題歌：鬼束ちひろ「流星群」
プロデューサー：桑田潔（テレ朝）、蒔田光治、山内章弘（東宝）
ラインプロデューサー：渡邊範雄
撮影：斑目重友、志村泰央
美術：稲垣尚夫
VE：中村寿昌
助監督：木村ひさし
制作協力：オフィスクレッシェンド
制作：テレビ朝日、東宝
関東放送枠：テレ朝・金曜11:15

（データのみ）

02/01/14　海図のない旅(2)

脚本：龍居由佳里
演出：岡田健(1)(4)(5)、田中健二(2)(3)
音楽：城之内ミサ
制作統括：大加章雅
制作：NHK名古屋
関東放送枠：NHK・月曜9:15

　社会派＋映像派のドラマ

脚本の龍居由佳里さんは、「バージンロード」や「愛、ときどき嘘」で“嘘の上に成立している家族”を描いていましたが、このドラマにも同じような傾向を感じます。このドラマの家族も“ときどき嘘”という感じでしょう？　(^^ゞ　個人的には比較的好きな脚本家です。――まあ、内容が内容なので、社会派ドラマとして語られることが多いみたいですが、ボクとしては、映像作品としてのクオリティにも注目したいです。

能登のロケーションも本格的なんですが、屋内セットのクオリティも高いと思います。特に良いのが能登の実家のシーンで、照明と画面のコントラストの加減に、何ともいえないセンスの良さを感じます。また、重たい会話の後に挿入される逆光系の表情アップにも深みがあります。表面的な派手さには欠けるかもしれないですが、一つひとつのカットにこだわりが感じられるドラマなので、2回見ても飽きないです。(^^ゞ　岡田健さんは、2000年に「なごや千客万来」でチーフ演出を務めていた人ですが、あのドラマもロケーションやセットのクオリティが高かったですね。

　小谷幸弘重視のカット割りに注目！

出演者で注目したいのは小谷幸弘です。彼は「キッズ・ウォー」で井上真央の義兄を演じていた人で、他にも「びんぼう同心御用帳」とか、TBS・MMJのオムニバスドラマ（題名不明）で見かけたことがあります。このドラマでも「キッズ…」同様イジメられるキャラクターですが、岡田健さんの期待はかなり高いようで、気合いの入ったカットがバンバン出てきます。岡田さんは「なごや…」の時も、子役の大高力也の表情をていねいに撮っていたのを思い出します。

田中健二さんが演出した第2話は、全体的にアイドルドラマっぽい派手目の映像でしたが、ここでも小谷幸弘重視のカット割りが徹底されているように感じました。ベッドで不貞寝している顔を暗い画面で超アップにするなど、第1話以上に気合いが入っていました。姉役の後藤理沙と比較してみれば、カット割りにおける比重の違いが明瞭です。ストーリー的には小谷幸弘よりも後藤理沙の方が深刻なんですが、後藤理沙の場合は、笑顔が雑誌のグラビアみたいな営業スマイルに見えちゃうところが痛いです。(^^ゞ　まあ、そうはいっても、そこそこ可愛いんですけど……。（笑）

　名古屋コネクション？

ところで、小谷幸弘の出世作ともいえる「キッズ・ウォー」は、制作が中部日本放送（CBC）だったので、NHK名古屋とは名古屋つながりになります。「キッズ・ウォー」出演者では、井上真央の幼なじみで不良にカツアゲされていた濱嶌瑞樹が「エスパー魔美」に出演しています。で、その不良グループの一員だった川本貴則はちょっと前に「中学生日記」で見かけました。――NHK名古屋と「キッズ・ウォー」の関係の深さがよくわかります。(^^ゞ　

ちなみに、「海図…」第2話で小谷幸弘を不良に売った（？）クラスメイト役の少年は、「幻のペンフレンド2001」（NHK名古屋）にも出ていたような気がしますが、名前をチェックしてないのでわかりません。このように、名古屋を中心にした子役のコネクションが垣間見れる昨今です。(^^ゞ

02/01/16　ロング・ラブレター～漂流教室(2)

演出：水田成英(1)(2)、武内英樹、木村達昭

恋愛ドラマ風だった第1話とはガラッと雰囲気が変わってしまいました。(^_-)　全体的にSF～サスペンス的なギミックが増えていて、それはそれでＯＫなんですが、いくつか気になる部分もありました。(^_-)

　(1) 展開が異常に遅い。第1話の後に第3話を見てもつながるかも。（笑）
　(2) 特撮系の映像にスケール感が感じられない。

(1)も(2)も“もったいぶってる”という点では共通しているんですが……。(^_-)　(2)について説明しておきます。

第1話もそうだったんですが、第2話で特に顕著だったのは、空間全体を俯瞰するショットが極端に少なかったことです。望遠（狭角）系のショットが多いの対して、校舎全体～校庭全体を映したショットはほとんどありませんでした。一言で言うなら“空間”を見せないカット割りです。そのせいか、ストーリー展開の派手さに反して、映像からはチマチマとした印象を受けてしまいました。学校の校庭でロケした映像と砂地でロケした映像を交互に編集してお茶を濁しているところなどは、70年代の「少年ドラマシリーズ」（NHK）みたいです。

よく考えてみたら、フジテレビには日テレの土９みたいな枠がないから、この手の特撮物は苦手なのかもしれないです。たとえば、去年の「金田一少年」（演出：下山天、佐藤東弥etc）を手がけたオフィスクレッシェンド系のスタッフが制作したら、どうなっていたでしょうか。空撮・早回し・手持ち撮影・ＣＧなどを駆使して、「金田一少年」や「ぼくらの勇気・未満都市」みたいなスケール感のある空間を構築していたような気がします。もちろん、「ロンラブ」を土９みたいにすることが良いことなのかどうかという問題は残りますが……。(^_^;)

この第2話で、もっとも映像に緊張感があったのは体育館のシーンでしたが、これも皮肉な話ですね。中丸新将が「こんな時だけ生徒面するな」と捨て台詞を吐いて山下智久の冷ややかな表情などが続くシーンです。――ところで、生徒役の顔と名前をチェックしようと思って公式サイトを探してみたのですが、それらしきデータは見つかりませんでした。(^_^;)　ボクがわかる範囲で書いておくと、山田孝之と鳥居紀彦は「六番目の小夜子」で共演済みで、鳥居紀彦・大村彩子・常盤貴子・武内英樹Ｄは「みにくいアヒルの子」の仲間です。(^^)

02/01/18　木更津キャッツアイ(1)

脚本：宮藤官九郎
演出：金子文紀(1)、片山修、宮藤官九郎
音楽プロデューサー：志田博英
音楽：仲西匡
主題歌：嵐「a Day in Our Life」(J・storm)
プロデューサー：磯山晶
プロデューサー補：木村政和
演出補：坪井敏雄、高成麻畝子、白石達也、田中大二朗、利光佐和子
関東放送枠：TBS・金曜10時

　演出とは思えない“わかりづらさ”

異常にわかりづらいドラマです。(^^ゞ　ボクは2回見ましたが、それでもまだ全部把握できてないと思います。かといって、もう1回見る気にもなりませんが……。このドラマを見た約1340万人（視聴率13.4％）の大半は、「ロンドンでは日本車も外車」、「松沼兄」、「岡田准一が癌」の３つくらいしか覚えてないような気がします。(^^ゞ

とはいえ、このドラマの場合、わかりづらさも個性のひとつなんだとは思います。マドンナの旦那としても知られる、新鋭映画監督のガイ・リッチーの影響を指摘する声も、いくつか見かけましたが、彼の映画も「展開が速い」などと評されることが多いです。ただし、ボクは彼の映画を見ていないので具体的なコメントはできません。m(__)m

しかし、そうしたことを考慮しても、意図したわかりづらさと、意図に反するわかりづらさの両方があったように思います。たとえば、お芝居のニュアンスが単調だったり、聞き取れないセリフが多かったりする点は、意図に反する部分なんじゃないでしょうか。特にセリフ回しは、ドラマ全体を通して、こなれていないように感じました。スピード感に力を入れた副作用なのか、お芝居の仕上がりはかなり荒っぽい感じです。

率直に言って、このドラマの完成度はあまり高くないと思います。「トリック２」のキャラ演出と比較すると、このドラマの場合、ひとり一人の演出コンセプトが不明瞭です。逆にいえば、改善の余地がいっぱいあるとも言えるワケで、お芝居やキャラのニュアンスは、今後改善されていくんじゃないかと予想してます。(^_^;)

　バーチャルレトロな世界観

ただ、そうした問題を別にすれば、かなり刺激的な作品だったのは間違いないです。見る前に予想していたのは、「池袋ウエストゲートパーク」＋「早乙女タイフーン」みたいな世界観だったのですが、フタを開けてみたら、それだけでは説明できない要素がたくさんあって、ボクはそこに魅力を感じました。一言で言うと、映画『アメリカン・グラフィティ』と『瀬戸内少年野球団』を強引にミックスして、ヒップホップ以降の感覚で再構成したような感じです。

日本的なレトロ感覚とアメリカ的なレトロ感覚がゴッチャになることによって、日本でもアメリカでもなければ、過去にも未来にも現在にも存在しない虚構空間を作り出すことに成功しています。強いて形容するなら“レトロフューチャー”と言えばいいのでしょうか？　それとも“バーチャルレトロ”かな？　「池袋…」に顕著だった“今っぽさ”とか“ドキュメンタリー志向”みたいなものをまったく感じさせないところが、予想外と言うか斬新でした。(^^)　こういうところに、安易な二番煎じに終わらない、強い制作意欲を感じます。

バーチャルレトロと言えば、嵐の主題歌もそんな感じですね。ラップの上に仰々しいメロディーが被さってくるところなんか、今っぽいのか古臭いのか、よく分からないセンスでしょう？　ところで、SMAPに「A Day in the life」という曲があるのですが、タイトルだけじゃなくて、曲調やアレンジも似ているんですけど……。(^^ゞ　音楽の話題でいえば、岡田准一と桜井翔のシーンで2回登場したドゥーワップの曲が、妙に印象に残っています。あれは何という曲なんでしょうか。オリジナルだったりして……？　(^_^;)

　「六本木野獣会」との共通性？

最近のテレビドラマで、この「木更津…」に一番近いテイストを持っていたのは、日テレの深夜ドラマ枠「shin-D」で昨年7月に放映された「六本木野獣会」だと思います（01/07/09参照）。映像の質感とかBGMのセンスなども近いです。つまり「六本木野獣会」に「池袋…」的なギャグとスピード感を加味すると「木更津…」になるという図式です。これが一番しっくりきます。だいたい「六本木野獣会」と「木更津キャッツアイ」って、タイトルからして似てるでしょう？　地名＋動物＝モラトリアム集団……みたいなところ。（笑）

ちなみに、「六本木野獣会」の後の8月に「shin-D」枠で放映されていた「チェリー」には、塚本高史が出演していました。ボクは「チェリー」を見て、塚本高史のことをちょっと見直してしまったのですが、「木更津…」でも「チェリー」とほぼ同じような芸風です。だから。磯山晶さんが「チェリー」を見て、彼を起用した可能性は高いです。――だとすると、「木更津…」が「六本木野獣会」の影響を受けているという説にも真実味があるでしょう。(^^ゞ

最後に余談。――木更津がロケ地に選ばれた理由には、政治的な事情も絡んでいるのでしょうか？　東京湾アクアラインの利用者が伸びないことに危機感を抱いている木更津市と道路公団が、テレビ局に積極的にアプローチしているような気がします。（笑）　撮影隊はアクアラインの利用料（片道3000円）を免除――とか。(^_-)

余談その２。――２～３ヶ月前から、テレビでFlameとかいうグループのCMをよく見かけるのですが、その中に見覚えのある顔の人がいて、ずっと謎でした。で、こないだ調べてみたら「六本木野獣会」の人（伊崎右典）でした。双子の兄弟もグループにいるみたいなんですが、区別がつきません。最近は、双子のタレントって多くないですか？　昔だって、それなりにいたんですけど……。(^^ゞ

02/01/19　ナースマン(1)

脚本：寺田敏雄
演出：岩本仁志(1)(3)(4)、池田健司(2)
音楽：椎名KAI太
統括：井上健
チーフプロデューサー：増田一穂
プロデューサー：河野英裕、加藤正俊、小泉守
スケジュール：桐ヶ谷嘉久
演出補：柿沼竹生
プロデューサー補：大野真里、中村有美
制作協力：C.A.L
関東放送枠：日テレ・土曜9時

（データのみ）

02/01/23　ロング・ラブレター～漂流教室(3)

演出：水田成英(1)(2)、武内英樹(3)、木村達昭

第3話は、冒頭から“砂漠にたたずむ校舎”の俯瞰ショットが登場するなど、日テレ土９的な特撮～ＳＦテイストが強い仕上がりでした。そのせいで、第2話にあったチマチマとした印象は薄くなりました。ただ、こうなってくると、月９～恋愛ドラマみたいだった第1話は何だったのか……という感慨もわいてきます。(^^ゞ　

山口雅俊Ｐは、番宣で「本質はラブストーリーだ」と強調していましたが、あの第1話は、楳図ワールドに拒否反応を示しそうなF-1層を丸め込むための作戦だったのでしょうか。なんか、輸入牛肉を国産牛肉の箱に詰め替えるのと大差ないような気もしますが……。（笑）　視聴率は、17.2％→17.2％→17.1％と、めずらしいくらいに変化がないのですが、それがかえって不気味です。恋愛ドラマだと思って第1話を見ていた人たちは絶句しながら、第3話まで見てしまったのでしょうか。

それはともかく、第3話のトピックといえば香里奈の登場でしょう。彼女は「カバチタレ！」で山下智久の彼女役をやっていましたが、このドラマでも恋愛関係に発展しそうな雰囲気です。彼女を見た山下智久の第一声は「どこかで見たことある」でしたが、これはドラマの伏線でしょうか。それとも「カバチタレ！」視聴者向けのサービス？

大杉漣の一連の行動はイマイチ理解不可能なんですけど、原作を読んだ人が見ると泣けるシーンなんだそうです。そういわれても困っちゃうんですが……。ちなみに「漂流教室」関連のＢＢＳでは、以下のサイトがオススメです。なんせ、公式サイトは重たいばっかりで、ほとんど役に立ちません。(-_-;)
●UMEZU HP　http://cgi.din.or.jp/~shingo/umezuhp.htm

02/01/29　初／体／験(4)

脚本：神山由美子
演出：木下高男(1)(2)(5)、土方政人(3)(4)

　一番の見どころはオダギリジョー

脚本と演出は「ファイティング・ガール」の神山由美子さんと木下高男さんのコンビで、水野美紀と土方政人さんは「女子アナ。」のコンビだから、見る前は期待していたのですが、どうもイマイチです。(^o^)　キャラとかカメラワークなどの完成度は悪くないのですが、全体の印象が「ＦＧ」を縮小再生産したような感じです。このドラマの世界観には「FG」にあったスケール感がないのが痛いです。――とは言っても、決して嫌いなドラマではないのですが……。(^_^;)

オダギリジョーは「嫉妬の香り」での怪演が凄かったので、このドラマでも期待していたのですが、彼に関していえば期待を上回る演技だと思います。オダギリジョーと水野美紀のギャグシーンはかなり気に入ってます。「嫉妬…」で一番得をしたのはこの人かもしれないですね。

TV業界的には、小泉孝太郎では視聴率が取れないということが明白になってしまったようです。放送開始日の「笑っていいとも」とか、第1話のオープニングシーンに登場させるなど、小泉効果をねらったと思われる部分は多々あるのですが、それで初回視聴率14.9％だからきびしいですね～。今年は親子そろって受難の年になりそうです。(^_^;)　まあ、同じく小泉孝太郎が出演している「ナースマン」は20％だったというから、「初体験」という下品なタイトルにも原因があるのかもしれません。下品といえば、篠原涼子のキャラもちょっとツライかも……。(^^ゞ

02/01/29　恋するトップレディ(4)

演出：西谷弘(1)(2)(5)、河野圭太(3)(4)
プロデュース：笠置高弘、小椋久雄

　ストーリーよりもキャラクター

西谷弘さんは、当初は映像派という印象が強かったのですが、「女子アナ。」でコメディ演出の方法論を完成させたみたいです。このドラマもストーリー的には不満がいっぱいあるんですが、キャラクターが面白いからそこそこ見れてしまいます。この第4話は河野圭太さんの演出ですが、山口紗弥加のバカっぽい感じが良かったです。(^^ゞ

また、吉沢悠が「女子アナ。」の時と同じような役で登場しているところにも注目です。「女子アナ。」の時の印象が良かったということなんでしょう。現時点では役不足な感じでとっても残念なんですが、この先改善する余地は充分にあると思います。ちなみに“役不足”というのは、演技力に見合うような役を与えられていない――という意味だそうです。念のため。(^^ゞ

――「初体験」「恋するトップレディ」「恋ノチカラ」と共テレ制作の並べてみると、共テレスタッフのキャラ演出の上手さがよく分かります。３本とも、ストーリーよりもキャラクターで見せるドラマです。(^^ゞ

　「放課後」出演者が多いのは小椋Ｐの趣味？

その他の出演者で気になるのは、スナックのマスターをやっている松崎しげるです。小椋久雄Ｐが演出していた「放課後」でのキャラを思い出します。(^^ゞ　このドラマでも歌うシーンを用意してほしいですね。(^^ゞ　ちなみに、第2話のゲストの河相我聞と第4話のゲストの葛山信吾は「放課後」の出演者です。今後、観月ありさやいしだ壱成が出てくる可能性はないと思いますが、阿久津健太郎って、まだ芸能活動してるんでしょうか？　（笑）

なお、映像演出では、第2話に出てきたパッションピンクの選挙コスチュームに西谷さんらしさを感じました。普通の演出家だったら、ああいうドギツイ色にはしないような気がします。(^^ゞ　あと、実家の日本家屋のシーンもわりかし好きです。あの家屋は内部もすべてロケ撮影なんでしょうか？

02/02/30　続・平成夫婦茶碗(4)

演出：三枝孝臣(1)(2)(5)、長沼誠(3)(4)

　三枝さんのオフィスクレッシェンド趣味？

パート１の時も、学校のロケシーンにオフィスクレッシェンド的な映像趣味を感じたのですが、今回もよりその傾向が強くなっているようです。とはいっても、これは三枝孝臣さんが演出した1～2話の特徴であって、長沼誠さんが演出した3～4話にはあてはまらない傾向です。

貧乏臭いアパートのシーンなどは、「早乙女タイフーン」の終盤に出てきた安アパートの映像に近いテイストがあります。圧巻だったのは第2話に出てきた優香の回想シーン。「怖い日曜日」とか「六本木野獣会」を思わせるような映像に仕上がっていました。(^o^)　また、街頭にたたずむ浅野温子のショットにも、三枝さんの映像志向みたいなものが強く感じられました。――などと言っても、同意してもらえないことが多いのですが、決して間違ったことは言っていないと思います。録画ビデオがある人は見直して見てください。(^_^;)

オフィスクレッシェンド的といえば、ラストに登場するタイトルバックなどにもそうした傾向をちょっぴり感じます。下町＋ファンキーというのは、堤幸彦さんのドラマに出てくる意味不明のエキストラに共通するような気がします。――なのに、第4話ではタイトルバックがなくなっちゃいました。(;O;)

出演者で気になるのは、長男の濱田岳のガールフレンド（？）をやってる芳賀優里亜。長沼さんが演出した3～4話には登場しませんでしたが、第5話で復活するんでしょうか。ネットで調べてみたら、「アギト」でおなじみの秋山莉奈と一緒にスパイキッズというグループに在籍しているとのことです。目付きに妙なインパクトがあって、「勝利の女神」の生徒役で、島袋寛子の元カレだった高橋直気に似ていような気もします。(^^ゞ

02/01/31　婚外恋愛(4)

脚本：浅野妙子
演出：久野昌宏(1)(2)(5)、六車俊治(3)(4)

　異常キャラばかりなのに作風はシリアス

ストーリー設定などはボクの理解能力を超えてます。ワケわかんないです。(^_^;)　「“明日がある”じゃない。明日がないからがんばれる」など、浅野妙子さんらしいセリフもあることはあるのですが、それ以外の部分がメチャクチャ！　堺雅人なんて、「嫉妬の香り」以上にバカ＆無能なキャラなのに、ドラマ全体のテイストはシリアス風だというのが信じがたいです。

だいたい、客にエッチビデオを勧める店なんてどこにあるの？　失礼だよ。――そのエッチビデオをしまい忘れる堺雅人も緊張感（？）がなさすぎ！　大金が入ったバッグを電車の中に置き忘れるというのと同じくらい変！　また、奥さんに見つかった時のいいわけが「店の人に勧められた」っていうのも……。（笑）　しかも、このドラマの場合、異常なのは堺雅人だけじゃないみたいて、根津甚八の「妻と付き合ってください」とか、永作博美の「付き合ってみたら」とか、正視にたえないシーンのオンパレード！　――これだけ異常なのに、見ていてまったく笑えないところも異常といえば異常。(>_<)　見ていて腹が立ってくる自分が情けないです。(^^ゞ　マジメに見るなよ！＞自分

　六車さんのカット割りは天才的

でも、六車俊治さんのカット割りはスゴイです。発想が天才的です。カット割りを見るだけの目的で「婚外恋愛」を見る価値があります。(^^ゞ――そんなことをする人が世の中にいっぱいいるとは思いませんが……。映像演出全体の傾向としては、久野昌宏さんがソフトなのに対して、六車さんはシャープな感じがします。

出演者の中には忍成修吾や宮迫博之の名前もありますが、ほとんど出番がないです。忍成修吾は「危険な扉」、宮迫博之は「ただいま満室」で六車さんと接点があるのですが、この先、大きなエピソードが用意されているのでしょうか。個人的には、忍成修吾が「嫉妬の香り」のオダギリジョーみたいに爆発してくれると嬉しいのですが、第3話では素直に改心してしまうし……、面白くないです。ああいう時は逆恨みしてくれよ～！

02/01/31　恋ノチカラ(4)

脚本：相沢友子
演出：若松節朗(1)(2)(5)、村上正典(3)(4)

　村上演出は薄口醤油？

村上正典さんが演出した3～4話が予想以上にいい出来でした。地味だけど味のあるシーンが多かったです。徹夜明けのシーン（第3話）では3人が店の前でジャンプしていましたが、ああいうことは台本には書いてないと思います。

この早朝シーンは、この後、回想で再登場してましたが、村上さんにとってもお気に入りのシーンだったのでしょう。ちなみに、回想シーンは静止画になっていましたが、第4話でも静止画の回想シーンが登場してました。村上さんとしては、セリフだけでは分かりづらい登場人物の心の動きを、視聴者にわかりやすく見せる――という演出意図があったのかもしれません。脚本と演出のバランス、あるいは相性がとてもよかったと思います。

最近の村上正典さんの演出は、鈴木雅之さんのスタイルを薄味にしたような趣があります。パターン化させたお芝居（や音楽）を反復させてみたり、キャラクターをコミカルに見せたりする手法は、鈴木さんと同じだといっていいでしょう。でも、鈴木さんほどしつこくなくてアッサリと仕上げているところに、村上さんの技を強く感じます。濃い口醤油を水で薄めても薄口醤油にならないのと同じで、村上演出のアッサリ感も鈴木さんの単なるコピーじゃないと思います。

　食器や氷の音を効果音に

お店のシーンでは、笑うところで食器の音を入れるなど、効果音の使い方もかなり凝っていました。音効とお芝居のテンポ感とのバランスも絶妙で、「無駄な経費はお前だ！」のところでは氷の音が「コロロ～ン！」と入っていました。（第4話）

ストーリー的には、安っぽい嫉妬劇になりそうでならないところがいいですね。矢田亜希子も、思っていることを隠さないで素直に話しちゃうキャラだから、青春ドラマっぽい初々しさがあります。

また、会社を興す起業ドラマという部分も、ある意味青春ドラマ的です。非現実的な部分も多いのですが、辛口のエピソードやセリフを適度に配することによって、上手くバランスを取っています。堤真一が仕事先で、営業マンの姿に目をやるシーンなんて、「今ごろ気がつくなよ！」なんて突っ込みたくもなりますが、かろうじてセーフでしょう。(^^ゞ

02/02/01　山田太一ドラマSP・この冬の恋

脚本：山田太一
演出：宮本理江子（石坂理江子）
音楽：沢田完
企画：長部聡介（フジ）、近藤晋
プロデューサー：金井卓也（フジ）、鶴岡智之
助監督：森保伸二、清水俊悟、府川亮介
プロダクション・アシスタント：久保裕
制作：フジテレビ、東北新社クリエイツ
関東放送枠：フジ・金曜9:00～10:52

　「アギト」の氷川くんを主婦の目線でリメイク？

最終的にはかなり甘ったるい結末で、主婦向けのメロドラマと大差ないじゃん……なんて思っちゃいましたが、“主婦向け”という点では別の発見もありました。「仮面ライダー・アギト」でおなじみの要潤が出ていたことです。(^^ゞ

「アギト」が主婦に受けている、という話を耳にするようになったのは昨年の夏頃からですが、ボク自身はいまひとつピンと来ないものを感じていました。ところが、このドラマを見たら、その辺の感覚がちゃんと理解できるようになりました。（笑）　要潤が演じるキャラクター自体は「アギト」の時の氷川誠と大差ないのですが、演出する側の意識が違うんです。一言で言うと、「アギト」の氷川誠を主婦の視点で撮り直したら、こうなった――という感じです。

要潤の不器用そうなところが母性本能をくすぐるワケですね。(^^ゞ　ガッテン！ガッテン！です。(^o^)　今ごろになって、気づいているのはボクだけですか？　「アギト」でも藤田瞳子が要潤のことを可愛がっていたりしたのですが、今思えば、彼女の視線を十分に映像化していたとは言えません（あたりまえ！）。それにボクの場合、賀集利樹の家庭内ギャグの方が好きだったので、「この冬の恋」の要潤を見て目から鱗が落ちました。(^^ゞ

演出の宮本理江子さんは、山田太一さんの娘さんで知られる石坂理江子さんの結婚後の名前です。この作品が、産休後の初作品になるそうです。だとすると、産休中の宮本理江子さんが「アギト」にハマっている主婦の一員だった可能性も高いです。(^^ゞ

要潤以外では小林稔侍のキャラがよかったです。「朝定食450円」など、貧乏臭い部分もしっかり描いている脚本のイメージをより広げていたように思います。また、彼が要潤の部屋に押しかけるシーンの会話も渋かったです。逆にいうと、この２人以外のエピソードはイマイチでした。なお、田中美佐子と渡辺えり子は「ＯＵＴ」でおなじみのコンビで、１年くらい前にもテレ朝の２時間ドラマで共演していました。井ノ原快彦が出ていたやつです。

02/02/01　トリック２(4)

脚本：蒔田光治
演出：堤幸彦(1)～(5)、木村ひさし(6)(7)、鬼頭理三(8)(9)

　「トリック」は“朝ドラ”向き？

オフィスクレッシェンドのサイトにある堤幸彦さんの日誌によれば、平日午後に再放送された「トリック」第8話の視聴率が9.5％もあったそうです。本放送の時より数パーセント良いとのことで、堤さんは「主婦向けか？」などと書いていますが、ボクは驚きません。（笑）　昨年末の「ハンドク！！！」の日誌に、堤作品の中では「トリック」が一番「ちゅらさん」に近いと書いたばかりですから。(^^ゞ

仲間由紀恵はオバサン受けしそうなタレントだし、同じ沖縄出身だからか、ボケた時のニュアンスも国仲涼子に近いものがあります。「ちゃらさん」と違って下ネタが多かったりしますが、「木更津」第3話みたいに過激なベッドシーンが出てくるわけじゃないから、主婦が見ても大丈夫なはずです。しかも、堤ドラマのキャラって、けっこう小市民的な傾向が強いから、その気になれば“朝ドラ”だって夢じゃないと思います。エピソード２の冒頭（第3話後半）に出てきた商店街の福引きのシーンなんて、思いっきり主婦感覚。10年後には“朝ドラ”の定番スタイルになっていると思います。

「金田一少年」の頃に「堤幸彦が面白い」と言っても誰からも相手にされませんでしたが、そのボクが「10年後の“朝ドラ”は堤幸彦だ」と言っているのだから、少しは信用してもらいたいもんです。(^_^;)　堤さんは以前どこかのエッセイで、「子どもの頃は女の子と遊ぶことが多かった」と書いていましたが、そんな堤さんが“主婦的な感性”を備え持っていたとしても不思議でも何でもないでしょう？

　テーマ性よりパロディ性

で、今回の「トリック２」。前作とあまり違いがないせいか不満の声もあるようです。しかし、ボクの場合“朝ドラ”を念頭において見ているので、結構楽しめています。前作では、後味の悪いラストシーンなど、テーマ性みたいなものが残っていたのですが、今回はもっと娯楽性に徹しているような気がします。ギャグの洗練度が増してきているのに対し、サブカルチャー的な臭みが減ってきています。このドラマで、もっとも“朝ドラ”に向かないのは、人がバンバン殺される部分ですが、今のところそんなにグロテスクな殺人シーンは登場していないと思います。(^_^;)

エピソード１の解決編などは、推理物や捕り物の定番スタイルをパロディ化していました。犯人が勘違いして真相をしゃべっちゃったり、真相がしゃべった後も逮捕されなかったり……。「トリック２」では、テーマ性よりもパロディ性に力を入れているのかもしれません。パロディといえば、容疑者の顔アップが順番に登場するシーンで犬のアップが登場してました。これなんかは「金田一」スタイルの自己パロディですね。

　演出もギャグも時代劇？

ギャグに関する部分で特に目につくのは、チャンバラ～時代劇ネタを多用しているところです。言葉遣いとか、チャリ～ンとかいう効果音もそうですが、阿部寛が忍者みたいに姿を消したり、仲間由紀恵がトランプを手裏剣みたいに投げたりと、チャンバラネタのオンパレードになっています。半年ほど前の「マツジュン版・金田一少年」の日誌に、「堂本版・金田一少年」は時代劇的だと書いたばかりなんですが、今回の「トリック２」では、演出だけでなくギャグのネタまで時代劇化しています。――なお、しつこいかもしれませんが、チャンバラも主婦向けのジャンルといえなくはありません。(^^ゞ

視聴率も、10.8 → 10.3 → 10.3 → 8.5％と、比較的順調に推移しているみたいなので、パート３とか単発SPの可能性もありそうです。ボクとしては、元旦の2時間SPとかで見てみたい気がします。山田＆上田コンビのお正月とか。(^^ゞ

――というワケで、当サイトでは堤幸彦・オフィスクレッシェンドの“朝ドラ”進出を提言してみたいと思います。（笑）　映像だけだったら、すでに「私の青空」みたいな作品が“朝ドラ”でオンエアされているわけだから、そんなに非現実的な話じゃないはずです。問題があるすれば、NHK内部の組織上の問題の方かもしれません。――堤幸彦演出の“朝ドラ”が実現した暁には、このサイトも「どんとこい、堤幸彦」に改名して、それに応えたいと思います。(^_-)

02/02/04　海図のない旅(5)[終]

演出：岡田健(1)(4)(5)、田中健二(2)(3)
美術：岡島太郎
技術：宝珠山隆博(1)(3)(5)、酒向公樹(2)(4)
撮影：増田勉(1)(3)(5)、澤田智岐(2)(4)
照明：坂野和敏(1)(3)(5)、打越裕次(2)(4)

　無言の表情アップが余韻を生む

音楽や演技を含めた意味で、映像作品としてのトータルな完成度は今期のドラマの中でもズバ抜けていると思います。ストーリー的にはいくらでも突っ込めるのですが、一つひとつのカットに力があるから、ストーリーはどうでもいい、という気分になりました。(^^ゞ　魚のアップ、海鳥のアップ、海方向からのアングル、空撮など……、お金と労力を惜しまないで作られたドラマだと思います。

会話の合間や直後に無言の表情アップが挿入される場面が多いのですが、そのどれもが渋い出来ばえで余韻が残ります。海を見つめる笑福亭松之助の横顔とか、家族を見送りに行った竹中直人と小谷幸弘が戻ってこない、と宙を見つめる柏原収史とか……。(^^)　屋内シーンに限っていえば、表情演技がスゴイのか照明がスゴイのかよく分からないくらい、絵的な完成度が高いのですが、屋外シーンでも重要なところで逆光系の暗い表情アップが決まっていました。

第4話に出てきた鷲尾真知子の「逃げて～！」のシーンも、ネタ的にはけっこう陳腐なんですが、そのシーンだけカメラワークがアクティブになっているから、インパクトが強くなります。手持ち撮影＆接写系アップが全開になっていました。(^o^)　――こうした細かい部分が緻密に作られているからなのか、不思議な吸引力を感じることが多かったです。

≪追記≫
このドラマに吸引力を感じたのはボクだけじゃないみたいで、視聴率の方も、4.2 → 5.9 → 5.3 → 5.7 → 6.1％と、尻上がりに上昇していたみたいです。かなりめずらしいケースです。

　岡田演出の進化

ストーリー展開上の問題を別にすれば、龍居由佳里さんの脚本も悪くなかったと思います。小さな漁村内における人間関係とか、親子３世代に渡る愛憎の描写などに厚みがあったし、言葉のやりとりなどにも迫力がありました。逆にいえば、厚みがあった分、各エピソードが消化不良なまま終わっちゃったという印象もあるのですが……。柄本明と大沢樹生の親子関係など。

演出の岡田健さんのこと調べてみたら、「なごや千客万来」（00/06/30参照）の他に、「オグリの子」（1998年）や「素敵にライバル」（1999年）もチーフ演出していたことが分かりました。当時ボクが書いた「素敵…」の日誌（99/97/07）は数行の短いものですが、そこにも「ロケシーンやセットのデザインに趣がある」などと書いてありました。(^_^;)

ちなみに、「素敵…」→「なごや…」→「海図…」と並べて見ると、岡田健さんの演出が進化していく過程が明瞭になります。３作品とも日本家屋のセットに趣があるという共通点も見えてきます。(^o^)　なお、「素敵…」の日誌にはスタッフデータが欠落していたので、今回追加しておきました。

02/02/19　君を見上げて(1)

原作：山田太一
脚本：大森寿美男
演出：磯智明(1)(2)(3)、久保田充(4)
制作統括：内藤愼介、土屋秀夫
撮影：堀内一路(1)(2)(3)、清水博巳(4)
共同制作：NHKエンタープライズ21
関東放送枠：NHK・火曜11時

　森田剛はマンガ～劇画テイスト

「森田剛って、こんなカッコよかったけ？」というのが、冒頭5分を見ての第一印象。「月下の棋士」の時の少年マンガっぽいキャラクターに、劇画～ハードボイルド的な要素を加味したような印象を受けました。金庫のカギを開けてるシーンなんて、バンコクが舞台だったせいもあって、完全にギャング映画みたいな雰囲気で、このあと恋愛ドラマに発展するなんて思えない仕上がりでした。以前の日誌で、森田剛はマンガっぽいキャラが合うと書いた記憶がありますが、本当に良く似合います。(^^)　と同時に、彼の資質を的確に活用した企画～キャスティングのセンスが光ります。

カメラワークは、“手持ち＋超広角＋接写”の嵐だったので、撮影は「トトの世界」「コウノトリなぜ紅い」の藤田浩久さんに違いないと思ったら、別の人でした。堀内一路さんの名前には見覚えがあるのですが思い出せません。「ハート」じゃないかと思って、手元に残っていた数話分の録画ビデオを確認してみたのですが、別の人でした。(^_^;)　順序が逆になりましたが、磯智明さんは「トト…」のセカンドＤを務めていた人で、その時の脚本も大森寿美男さんでした。久保田充さんは「グッド・コンビネーション」の他、「金曜時代劇」などでも名前を見かけたことがあります。記憶違いでなければ「山田風太郎・からくり事件帖」とか……。

全体的にドキュメンタリーっぽい雰囲気がありましたが、これも超広角～手持ち撮影の効果でしょう。広角レンズの特徴は臨場感ですが、今回は海外シーンからスタートする脚本だったので、非日常的な臨場感（空間感覚）がほしかったということなのかもしれません。ただし、手持ち系の変則アングルは、長く続くと目が疲れるし、全体の印象が散漫になるという欠点もあります。「コウノトリ…」なんかは欠点の方が目についた作品ですが、このドラマの場合、森田剛のキャラ演出が良かったからか、あまり気になりませんでした。

　森田剛の接写アップがアクセントに

森田剛のアップは、全体を通してやたらと多かったのですが、一つひとつの表情のクオリティが高くて、撮影スタッフの意気込みが感じられました。雰囲気重視の映像派ドラマっていうのは、メリハリがなくなってしまうことが多いのですが、このドラマの場合、森田剛の劇画チックなアップが良いアクセントになっていたと思います。ボクの場合は夜中に眠い目をこすりながら見ていたのですが、森田剛のアップで目が覚める……という貴重な（？）体験をさせていただきました。（笑）

ちなみに、同じ接写系のアップでも森田剛と未希とでは、カメラの接近度（？）に違いがあったみたいで、森田剛を映すときの方がカメラが大胆に寄っていました。こういうところに、カメラマンと俳優のコミュニケーションの差が反映されているのでしょうか。ただし、広角系のアップというのは、画面が歪んでマンガっぽい顔になっちゃうから、演出上の判断で使い分けていたという可能性もありです。

　映像処理や音声処理もメリハリ重視

また、メリハリという意味では、映像処理や音声処理の効果も見逃せません。映像にしても音声にしても、サスペンスドラマみたいな派手な処理をしているシーンが数回ありましたが、こういうところにも、見ている人が眠くならないようにメリハリをつけたい……という意図があったように思います。「眠いのはオマエの個人的な問題だ！」って、突っ込まれそうですが……。(^^ゞ

ところで、このドラマを見ていて、１年くらい前に同じ枠で放送された「もう一度キス」を連想したのはボクだけでしょうか？　窪塚洋介とユン・ソンハ（ユン・ソナ）が出ていた日韓恋愛モノで、たしか加藤雅也も出ていました。ボクにとっては、あのドラマも超甘口の眠たいドラマだったんですが、今回は全4話と短い上に、森田剛や演出に劇画っぽい要素があるので、最後まで緊張感を持って見ることができそうです。

――おことわり。この日誌を書いている時点では、すでに第4話（最終回）まで終了しているのですが、第2話以降はまだビデオの中なので、第1話のみで日誌を書かせていただきました。これを読んでいる方の99％は、最終回まで見ているか、まったく見ていないかのどちらかだ思いますが、最後まで見ても大きく印象が変わる可能性は低いと思うので、どうかご了解くださるようお願いいたします。すみません。m(__)m

02/02/21　 3年B組金八先生(18)

　直と政則Ⅰ

演出：福澤克雄(1)(3)(6)(8)(11)(12)(15)(18)(19)(21)(23)、生野慈朗(2)、
　　　三城真一(4)(7)(10)(13)(16)(22)、加藤新(5)(9)(14)(17)(20)

　後半はネタ切れっぽい？

昨年の年末SP以降ストップしていた「金八」の日誌を再開します。m(__)m　新春第1話にまでさかのぼって書くのはムリっぽいので、終盤の山場である第18話から順番に書いていくことにします。なお、この日誌を書いている時点では、すでに第21話までオンエアされていて、ボクもすでに見ています。(^^ゞ

1～2月は「直と政則以外」の生徒を一話完結風に消化している感じだったのですが、非メイン系の生徒と受験ネタを並行して描くというのは、後半の「金八」の定番スタイルです。また、都立入試の終了を待つようにして大事件が勃発するというのも、お約束の展開ですね。――定番というなら、絵に描いたような悪人を登場させて終盤を盛り上げるというのも連ドラの定番。政則のお姉さんを死なせた少年とか、編集デスクの渡辺哲は、「水戸黄門」でいう悪代官みたいなものなので、いまさらあれこれ言うつもりはありません。「小津先生」の終盤に登場した渡辺いっけいと同じです。(^^ゞ

それでは、今回のパート６の特徴は何なのかという話になるのですが、一言で言うと、演出的にはネタ切れっぽい、ということでしょうか。(^^ゞ　相変わらず迫力はあるんですが、10～12月に登場した手法の焼き直し、またはデラックス版という感じで、あまり新味は感じませんでした。今回のシリーズは、脚本も演出も第1話から飛ばしていたのですが、後半に入ってからは、それが裏目に出ているようです。前回のパート５だと「ガラスの少年Ⅰ」で「アメージング・グレース」が初登場するなど、後半部に新要素がたくさんあったのですが、今回はそれとは正反対です。

　政則の演出はやっぱり福澤Ｄ

この第18話を具体的に検証してみます。冒頭、政則が教室を飛び出すシーンで、廊下の政則と繭子（佐藤めぐみ）がスローモーションになっていましたが、これなんかはパート５以降何回も登場した手法なんで、「またか～」と思ってしまいました。また、問題の週刊誌を読む金八のナレーションと政則の姿をオーバーラップさせているシーンなどは、それなりに悪くはなかったのですが、その後、保健室の戸を開ける音を極端に強調してナレーションをストップさせる演出は、見事なくらいに福澤印で、笑ってしまいました。こんな調子で書いていくと切りがないのですが、後半登場した政則と犯人の少年の絡みのシーンなども、第1話の時のようなインパクトや新鮮味はありませんでした。土手に、タンポポだか野菊だかが咲いているカットなどは、第1話とのリンクという意味ではそれなりにおいしいんですけど……。

とはいっても、新鮮味がまったくなかったわけではないです。第18話で、もっともインパクトがあったのは、成迫政則＝東新良和だったのは間違いないです。政則にスポットがあてられた回は以前にも何回かあったのですが、今回はそれらを凌ぐ出来栄えでした。鶴本直の場合、三城真一Ｄや加藤新Ｄの回でもそれなりに見どころがあるのですが、政則の場合は、福澤Ｄの回と他のＤの回との差が激しいです。政則のキャラ設定である“不器用だけど目線はまっすぐ”みたいなニュアンスをきっちり映像化していたのは福澤Ｄだけだと思います。三城Ｄだと、かわいいニュアンスが強すぎるんですよね。(^^ゞ

編集部で待ち伏せしているシーンでは、目元のアップが何回も登場していましたが、福澤Ｄが描く政則には、台詞回しやお芝居に不器用そうなニュアンスがたっぷり含まれているから、彼のまっすぐな目線が活きるわけです。(^^ゞ　ボクは以前から、福澤Ｄは男子生徒の演出が上手いと書いていますが、今回のシリーズでは政則の演出にそれが顕著です。鶴本直の性同一性障害という設定も、「女子生徒は苦手だ」「だったら男にしちゃえ！」などという会話から発想されたのかも……なんてフキンシンな邪推をしてるのは誰ですか！（笑）　なお、福澤Ｄの政則演出に関しては、昨年の第6話の日誌（01/11/15）にも同じようなことを書いています。ネタ切れなのは、この日誌も一緒です。また、福澤Ｄとは若干ニュアンスが違いますが、生野Ｄが演出した第2話の政則も悪くなかったです。

政則以外のシーンでは、教室で、生徒たちが金八を問い詰めるシーンが印象的。直の「それ以上問い詰めると先生は嘘を付く」というセリフがカッコよかったです。でかい声と、きまずい沈黙が交互に登場する芝居演出は、年末SPに出てきた直と３Ｂ（＆金八）の激論シーンの演出と同じですが、直の言葉に金八がうろたえるという展開も同じです。また、金八が校長と口論して校長室を出てきたシーンで登場する、乾先生（森田順平）と北先生（金田明夫）のショットは、時代劇みたいな構図でした。(^^ゞ

　乱闘シーンはしつこい？

……しかし、第18話といえば、なんといってもラストの乱闘シーンです。このシーンも基本的なアイデアに新味はありません。音声や芝居のオンとオフを強調する手法など、10～12月に登場した乱闘シーンのデラックス版といった趣きです。激しい動き（衝撃音・声）と静止（沈黙）が交互に何回も繰り返されていました。今回の乱闘シーンはかなり長いシ－ンだったのですが、メリハリを強調することで、緊張感を維持したかったのでしょう。カット割りでいえば、ミッチー（川嶋義一）の目元のアップが一番のアクセントになっていました。

そうはいっても、やっぱりこのシーンは長かったです。少なくてもボクは、最初に見たときに「ちょっと長すぎる」と感じました。“しつこい”と言い換えてもいいです。これと同じことは、新春第1話の火事のシーンにも感じたのですが、このところ、福澤Ｄの演出がしつこく感じられることが多くなりました。火事のシーンは、発火→乱闘→炎上……という構成になっていましたが、普通だったら、乱闘→発火→炎上……の方が一般的だと思います。福澤Ｄとしては乱闘部分を強調したかったんだと思いますが、結果的には冗漫な印象を受けました。あの火事シーンを見ていて、途中で緊張感が途切れてしまった視聴者は少なくないと思うのですが……。(^^ゞ　今回の乱闘シーンも、火事のシーンほどではないにしても、ちょっと気になりました。

カメラワークやカット割りも、第3話あたりの乱闘シーンに比べると面白味に欠けます。直が転倒するところをローポジションでとらえたカットが一つありましたが、それ以外はハイアングルからの望遠系アップを中心にした、オーソドックスな構成になっていました。ただ、今回の乱闘シーンは、収録現場のテンションが異常に高かったみたいだから、手の込んだカメラワークにできなかったという事情もあるのでしょう。一般的に言って、カメラワークとお芝居は対立する関係にあります。カメラワークを優先するとお芝居が分断化されて、テンションが下がってしまうし、お芝居を優先するとカメラワークが制約されてしまいます。このシーンもそうですが、終盤の「金八」は、カメラワークよりもお芝居を優先する傾向にあります。

　乱闘シーンにおけるオフサイド問題

ところで、この乱闘シーンには、もうひとつ重要な見どころがあります。福澤Ｄがラグビー部出身だという話は以前にも書きましたが、このシーンにはラグビーのモールみたいな動きが何回か登場します。……というか３Ｂの生徒の動き全体がラグビーみたいな、オフサイドを意識した動きになっています。（笑）　２人のケンカを止めたいなら、直とミッチーの間に割って入れば簡単に止められるはずなんですが、それはラグビー的にはオフサイドです。オフサイドを取られないためには、直やミッチーの後ろから手を回さないといけないわけです。３Ｂの生徒たちが本気でケンカを止めてるように見えない部分が多々あるのですが、その原因はこのシーンにラグビーのルールが適用されている点にあります。ただし、ハセケンは“見てるだけ”だったので、オフサイド以前の問題です。オマエは口だけかよー！（笑）

ラグビーのモールだとかオフサイドがよくわからない方は、以下のサイトで勉強してから、問題のシーンを見直してみてください。最終回を見る際にも役立つかもしれません。(^_-)
http://www2.tky.3web.ne.jp/~miyabian/rugby/rugby7.htm
http://www.hanging.jp/rugby.html

――それにしても、乱闘シーンの途中で次週予告になっちゃうというのも、スゴイんだか雑なんだかよくわからない脚本でした。この回はエンドロールなしで、次の回はオープニングの主題歌がなかったから、２時間ドラマを再放送の際にムリヤリ２つに分割したようなスタイルになっちゃってます。でも、２時間SPにしちゃったら、乱闘シーンが更に長くなっちゃうから、今回のスタイルで正解なんでしょう。直が身体を起こす瞬間で次週予告に切り替わる、そのタイミングが絶妙でした。(^o^)／

02/02/22　トリック２(7)

脚本：蒔田光治(1)～(5)、太田愛(6)(7)、福田卓郎(8)(9)
演出：堤幸彦(1)～(5)、木村ひさし(6)(7)、鬼頭理三(8)(9)

　木村演出は入念なカット割り

日誌に書けるほど、ちゃんと見ていたワケじゃないんですけど、木村ひさしさんのエピソード３や、鬼頭理三さんのエピソード４には、堤さんの回とは微妙に違うテイストを感じたので、メモ代わりに書いておくことにします。鬼頭さんは、ここの掲示板でもおなじみの名前なんだし～。(^^)

木村さんの回は、なんといっても佐野史郎が凄かったです。甲高い声で「ゾ～～ン！」とか言う、あのバカバカしさは今シリーズの中でも際立っていたと思います。単純なんだけど、なかなか思いつかないアイデアだし、思いついたとしても実行するのに勇気がいっただろうと想像します。ただし、個々のギャグの中身に関しては、堤さんが台本チェックをしているそうなんで、あまり違いがないともいえるのですが……。

いちいちカット数を比較しながら見ているワケじゃないので正確なことはわかりませんが、全体的にカットの割り方が細かいような印象を受けました。堤さんのカット割りが現場のアドリブっぽい感じがするのに対して、木村さんのカット割りは計画性が高いというか、撮影前に入念に練り上げられた……という感じがしました。

（03/08の日誌へ続く。）

02/02/28　 3年B組金八先生(19)

　直と政則Ⅱ

演出：福澤克雄(1)(3)(6)(8)(11)(12)(15)(18)(19)(21)(23)、生野慈朗(2)、
　　　三城真一(4)(7)(10)(13)(16)(22)、加藤新(5)(9)(14)(17)(20)

　告白前の間が長すぎる？

前回に引き続いて乱闘シーンからスタートしました。前回の日誌に乱闘シーンが“長い”とか“しつこい”と書きましたが、このシーンを２週に分割したのは、この意味でも賢明な選択だったのかもしれません。二度三度と制止しても、また爆発してしまうというのが、今回の暴力描写のコンセプトだったようで、それがこのシーンの“長さ”につながっているのですが、秀逸だったのは、最後に直が椅子を窓に投げつけるシーンです。これがあるおかげで、この辺のニュアンスが明解になりました。（第21話の日誌のブギーポップの記述も参照のこと）

ラグビーのモールみたいな動きとか、カメラワークがおとなしめなのは、前回の日誌に書いたとおりです。演技のテンションを最優先にしていたみたいで、カメラは演技の邪魔にならないように望遠系のアップだけで表情を追っていました。まあ、このシーンは演技者の迫力だけでなく、福澤Ｄの気迫みたいなものも伝わってきました。テレビの前でおしゃべりしている視聴者を黙らせてやる……みたいな。(^^)

気になったのは、直が告白する前の間（沈黙）が長すぎること。時代劇じゃないんだから、もっとスピーディに処理した方が良かったんじゃないかと思います。特に金八は、直が言おうとしていることを知っているのだから、制止しないで“待っている”のが不自然に見えます。これも前回の日誌に書いたことですが、どうも、最近の福澤演出は、しつこかったり大げさだったりすることは多いです。演出過剰といってもいいです。最近は出てこなくなりましたが、兼末健次郎（風間俊介）のシーンで「アメージング・グレース」というのも、しつこい＆大げさな演出の典型例です。

　福澤演出はターニングポイントに来ている

こうした過剰な演出を見ていると、一つの方法論が成熟→陳腐化していくプロセスを見ているような思いがします。福澤Ｄの場合、「金八５」以降、ハードボイルド～アクション映画的な作風を強めてきたのですが、この辺がターニングポイントなのかもしれません。演出に限った話ではありませんが、インパクトの強い手法というのは、ある時点を過ぎると陳腐化して、ギャグになってしまうのが常です。福澤Ｄの演出も、これ以上押し進めるとギャグになってしまう、という地点にきていると思います。

同じような状況は、「ケイゾク」の頃の堤幸彦さんにもあったと思います。堤さんの場合は、「ケイゾク」の次の「プリズンホテル」で、ギャグ～パロディという新機軸を打ち出して現在に至っています。今クールの「トリック２」では、「金田一少年」の演出法をパロディにしていますが、これなどは、「金田一」時代の方法論が“成熟→陳腐化”してしまったという事実を逆手に取ったといえるワケです。

なお、誤解を避けるために書いておくと、ここでボクが問題にしている“過剰な演出”というのは、福澤演出に対して批判的な人が言う“過激な演出”とは意味が正反対です。「金八６」を見て“過激”だと感じる人が多いのなら、それは演出的には成功を意味します。それに対して、“しつこい”とか“長い”とか“冗漫”だとかいうのは、迫力がない＝過激になってない――ということを意味します。過剰なのは演出の中身であって、演出の結果（視聴者の印象）ではありません。

　記憶に残る鼻血と鼻水（笑）

しかし、告白後のシーンは「金八６」を代表するといえるような仕上がりで、ビデオを戻しながら、連続10回くらい見てしまいました。(^^)　城之内ミサさんによるエンヤみたいなボーカル曲と直のアップが長く続きましたが、決して陳腐な印象は受けませんでした。特に、家に帰ってから言う「あの学校にも行けなくなりました」というセリフにグッときました。(^^ゞ　上戸彩は公式サイトで「鼻血も出して、正直スゴク恥ずかしかっただーよ！　みなさん、笑わないで!!　ウフフフフフフフ～」なんて書いてますが、役者的にはメチャクチャおいしいじゃない？　上戸彩が、今後どういう役者人生を歩んでいくのかは分かりませんが、後々にまで語り継がれるだろう、記憶に残る鼻血＆鼻水です。(^^)

演出的にはいろいろと仕掛けたくなるシーンだったと思います。ストップモーション～スローモーション～スローシャッターとか、モノクロなどのカラー処理とか……。しかし、ここでは直の表情と音楽があれば、他の要素は必要ないという判断だったみたいです。土手を歩くシーンでも、拍子抜けしてしまうくらいシンプルな映像になっていました。シンプルといえば、３Ｂ生徒のリアクションの表情もかなり素人っぽくて、演技にしては芸がなさすぎるんですが、そこが「金八」らしさですから……ねっ！　――そういえば、このシーンではハセケンのアップが２回、続けざまに挿入されていましたが、唯一、カット割りが自己主張していた部分です。(^^)

ところで、このシーンでかかっていたエンヤ風のボーカル曲はサントラ盤に入っているのでしょうか。入っているなら買ってもいいかななんて思ってしまいました。今回のパート６は前回のパート５よりも音楽の出来がいいと思います。第1話の日誌に、今回の「金八」は主題歌を含めてアイリッシュ～ケルト風が目立つと書いたのですが、この曲なんかもその典型例です。(^^ゞ　まあ、鶴本直というキャラ自体が東欧～北欧系といえるのかもしれませんが……。ちなみに、公式サイトには乱闘シーンのBGMはサントラ盤未収録と書いてありましたが、この曲は乱闘後のシーンだから入っていると思うのですが……。

　政則関連のエピソードでは

この後は政則のエピソードが中心になるのですが、注目しておきたいのは、池内先生（吉行和子）が政則の部屋で、「約束があるんだけど」と彼をフリースクールに誘うシーンです。短いシーンなんですが、政則の表情アップが実に渋いんです。逆光～シルエット風のローアングルなんですが、目のニュアンスがきっちり捕らえられていて、福澤Ｄが演出する政則の特徴を象徴するカットになっています。(^^ゞ

夜の商店街で政則が儀（斉藤祥太）たちと会うシーンは、ストーリー展開上はなくてもいいようなシーンなんですが、政則とクラス全体の対話を描く前にプライベートな人間関係を描いているという意味では、ユニークなシーンです。セリフ自体はけっこう陳腐だったりするのですが、「金八５」の兼末健次郎に欠けていたのは、この種の描写でした。今回の「金八６」では、クラス内のプライベートな人間関係がていねいに描かれているのが特徴です。ちなみに、このシーンでは、一ヶ所だけオカルトみたいな演出がありました。(^^ゞ　長澤一寿（増田貴久）の後ろから繭子（佐藤めぐみ）の姿がニュ～と現れるカットです。１度見るだけならそうでもないのですが、２度見れば確実に笑えます。(^^ゞ

　どこまでが演技で、どこからが素？

で、この後が政則の告白（？）シーンなんですが、これがまた実に「金八」らしいシーンで、どこまでが演技で、どこからが素なのかよくわかりません。(^^ゞ　政則の長セリフは相変わらず不器用＆気迫系なんですが、不器用なのが政則なのか東新良和なのか……？？です。同じことは３Ｂ生徒のリアクションにも言えて、涙顔とか泣き声にメリハリがなさすぎ！　でも、そのことが異様なテンションを生んでいるのも事実で、他のドラマでは味わえない醍醐味だったりします。

意外だったのがハセケンの涙声です。表情を含めて結構インパクトがありましたが、これも、泣いてるのがハセケンなのか加藤成亮なのか、ハッキリしません。彼の場合、直の告白を聞いた後でも冷静な“前向きヤロー”だったので、キャラとしての整合性が取れているのか微妙なところなんですが、個人的には、前向きヤローのハセケンはあんまり好きじゃないから、これはこれでOKです。(^^ゞ　というか、ハセケンの涙なんて、これが最初で最後かもしれないから、そういう意味では貴重なシーンかもしれないです。普段泣かない人が泣くっていうのは、オイシイですから……。それにしたって、このシーンは涙声が多すぎ！　そのせいか、普通に演技している金八の方が浮いてるように見えます。（笑）

そして、直のマンションのシーン。コボ（佐藤貴広）と美保（本仮谷ユイカ）のコンビが活躍しますが、ここでも感情が高ぶりすぎてお芝居が空回りしている印象。この後、直がバルコニーから下を見下ろすと３Ｂが勢ぞろいというのは定番の展開ですが、最後に直とハセケンのアイコンタクトが久々に登場します。昨年末くらいからこの２人のエピソードがフェイドアウトしてしまった上、ハセケンにミステリアスなニュアンスがなくなってしまったのがちょっとツライなぁ～、なんて思っていたらエンドロールでした。(^^ゞ

02/03/07　 3年B組金八先生(20)

　直と政則Ⅲ

演出：福澤克雄(1)(3)(6)(8)(11)(12)(15)(18)(19)(21)(23)、生野慈朗(2)、
　　　三城真一(4)(7)(10)(13)(16)(22)、加藤新(5)(9)(14)(17)(20)

　金八の説教を一番真に受けてるのは直

テンションが一気に下がってしまった第20話ですが、それなりにいいシーンもありました。冒頭、ハセケンが直のことを父親に相談するシーンでは、ハセケンの表情に直の表情がオーバーラップしてシーンが切り替わっていましたが、この時の２人の表情は良かったです。ただし、ここでオーバーラップを使うなら、他の場面転換もオーバーラップで統一しても良かったんじゃないかという気もします。というのも、この第20話の冒頭は、三城真一Ｄが演出した第4話の冒頭と同じで、手の込んだ場面転換が連続するのですが、コンセプトが不明瞭なせいかインパクトが弱いです。

福澤Ｄ以外の回だと政則の印象が弱くなることは、第18話の日誌に書いたとおりですが、直に関してはこの第20話も、いいシーンがいくつかありました。金八が本を届けるシーンで、封筒に印刷された桜中学の文字をアップで映すカットなどは人情ドラマぽかったし、美紀（森田このみ）と直美（鈴田林沙）が鶴本家を訪れると、直の朗読が聞こえてくる……という展開も渋いです。こういうところに、鶴本直というキャラクターの特徴がよく表れています。(^^ゞ

金八や美紀たちに会わないくせに、金八が持ってきた本はちゃんと真剣に読んでいる――。こういうところが直というキャラクターの核です。今回の生徒の中で、金八の説教を一番真に受けてるのは直だったりします。父親に向かって「十五歳は志学の時」と言ってみたり、口論の際に「人の数だけ愛がある」なんて言ってみたり……、直は人の言葉に対してものすごく従順です。ドラマ演出のホームページをやってる誰かさんのように、すぐに物事を斜めに見るような嫌らしさがありません。(^^ゞ

この他、直の関連では、金八が直にひかり定時制高校を勧めるシーンなども、カット割りや直の表情に緊張感がありました。ラストのひかり定時制高校のシーンも、意味深なニュアンスを残したまま終わっちゃったりして、おしゃれでした。だから、直のシーンに関していえば、加藤新Ｄの演出は悪くなかったと思います。でも……、でも……、でも……、教室のシーンがぁ～。(^^ゞ

　福澤Ｄと他のＤの違いは教室シーン

最近はネット上で、福澤Ｄに対する賛辞や、他のＤの回に対する批判を目にすることが多くなりましたが、読んでいて違和感を感じることが多いです。福澤Ｄと他のＤとでは脚本からして違うのだから、そこのところはちゃんと考慮してあげないと不公平です。実際問題、ドラマチックな事件は必ず福澤Ｄの回で起こっていて、他のＤの回は残務処理みたいなエピソードが多いのですが、エピソードの良し悪しと演出の評価は別問題です。そもそも、エピソードの良し悪しというのは脚本の問題なんですが、掲示板などを読んでいると、脚本の評価と演出の評価がごっちゃになっているケースも多かったりします。

ちなみに、福澤Ｄと他のＤを比較検討したいなら、第15話を素材にするのが適当だと思います。なぜかというと、第15話は福澤Ｄの回にしてはめずらしく大事件が起こらない回だからです。この回は美由紀の妊娠事件があるのですが、これは大事件じゃないですよね。ただし、今から第15話を見直して、日誌を書く余裕はないのでパスさせていただきます。(^^ゞ　また、加藤Ｄの第17話にはカーチェイスのシーンが登場するので、新春第1話（第12話）の火事のシーンと比較してみてもいいかもしれません。

とはいえ、一点だけ気づいたことがあるので書いておきます。教室シーンの演出についてです。教室シーンも大きく分けると、シリアスシーンとギャグシーンに分けられるのですが、そのどちらをとっても福澤Ｄの回の方がよくできています。まあ、ギャグの場合は教室シーンに限った話じゃないんですが、三城Ｄや加藤Ｄの回では笑えないギャグが多いように思います。ギャグというのは、現場で役者と作り上げていく要素が大きいから、演出家の力量が反映されやすいと言えるのかもしれません。生徒役が演技する教室のシーンは特にそうで、素人漫才みたいに見えるシーンが多いです。この第20話でいえば朗読の授業がそうで、生徒役のギャグは面白くも何ともないです。

シリアスなシーンでも、カット割りの緊張感とか、お芝居のメリハリといった点で、福澤Ｄの上手さが目立ちます。クラス全員が演技する教室シーンなんて「金八」以外のドラマでは滅多に登場しないから、経験の差がモノをいうのかもしれません。で、第20話といえば、メディアと人権に関する討論会のシーンなんですが、あまりに単調な芝居だったんで、見ていてアクビが出ました。(^^ゞ　メリハリだとか、緩急だとか、気まずい空気感だとかいったものがまったく感じられなくて、各自が順番に自分のセリフを消化している――という感じでした。カメラワークなども学芸会の生中継みたいです。(-_-;)

公式サイトを見たら、このシーンは一発撮りで収録したと書いてあったので、それなりに納得はできたのですが、なんで一発撮りにしたのかは分かりません。一発撮りは「金八」の恒例行事だから、どこかで一回はやらなきゃいけなかった――という事情でもあったのでしょうか。それとも、討論の内容自体に面白味がなくてドラマチックな要素に欠けるから、あえて学芸会風にしちゃったとか。(^_-)

　“30／30＝1”に、志学の精神があるか？

ところで、討論会の最後に、金八が「30人のクラスに30通りの考えがあるということは、クラスが一つになるということ」と言って、“30／30＝1”と黒板に書いていました。こういう話にダジャレ以上の意味があるとは思えませんが、世の中にはこの手の詭弁に感動しちゃう人が少なくないようなので、ちょっとだけ反論してみます。こんなことにいちいち反応するのも大人げないのですが、この際ボクも“志学の時”ということで……。（笑）

たとえば、30個のミカンを30人で割ったら答えは1個です。このように、分子と分母の単位が違う割り算の場合、答えの単位は分子と同じになるのが普通です。「距離÷時間＝時速」の場合も、時速の単位は距離と同じです。同様にして、30通りの考えを30人で割るなら、答えは1通りとなります。これを文章に訳すと、「30種類の考えを30人で割ると、生徒1人あたりの考えの数が1種類（1個）になる」となります。つまり、答えの“1”に“一つのクラス”とか“一つになる”なんていう意味はないんです。

「30人のクラスの上に30通りの考えが乗っている」という数式とはまったく関係のない概念と、「それを数式と見なすと答えが1になる」という事実を強引にくっつけているだけです。何度も言うように、この手の話というのは、詭弁～ダジャレにすぎないのであって、“志学”の精神とは程遠いものです。今回のパート６において、“志学”というのは重要なテーマなのだから、授業内容にはもっと気を遣ってほしいと思います。まあ、同じことは、金八先生が得意な漢字の話にも言えることなんで、言い出したら切りがないんですが……。(^_-)

不幸中の幸いは、金八の言葉を真に受けやすい直が、今回の有害授業を聞いていなかったことです。直が“志学”という言葉に反応している姿は（多少バカっぽい雰囲気はあるものの）清々しいし、直がかかえる過酷な境遇下では、志学という言葉がある種の救い（希望）にもなっています。直が生きていく上で、心の支えになるのは友情と志学でしょう。だから、直フェチ（？）のボクとしては、金八にはもっとしっかりしてほしいわけです。直が卒業式で「30／30＝1」なんて言ってるところは見たくないですから。（笑）

脱線ついでに、もう一つだけ――。金八の詭弁はスガッチの疑問に対する回答なんですが、スガッチの疑問自体には“志学”の精神があると思います。(^^)　「30人のクラスに30通りの考えがあるというのは、バラバラということなんじゃないか」というのは、ホッブス、ベンサム、カール・シュミットなど、政治学における深刻な争点の一つでしょう。金八は、政治学の根幹を突くようなスガッチの質問に恐れおののいて、とっさにダジャレでごまかした――というのが、このシーンの正しい解釈かもしれません。(^_-)

02/03/08　トリック２(9)

脚本：蒔田光治(1)～(5)、太田愛(6)(7)、福田卓郎(8)(9)
演出：堤幸彦(1)～(5)、木村ひさし(6)(7)、鬼頭理三(8)(9)

　鬼頭演出はサイケデリックなカッコ良さ

（02/22の日誌からの続き）

……で、エピソード４は鬼頭理三さん。佐野史郎のエピソード３と比べるとキャラ的にはちょっと弱かったのですが、演出面では新鮮味がありました。一言で言うとカッコイイ演出なんです。今回のパート２はギャグ重視の演出にシフトしていたのですが、鬼頭さんはかつての「サイコメトラーEIJI」や「ケイゾク」に通じるような、スタイリッシュでカッコイイ演出に、作風を戻しているような印象を受けました。

象徴的なのは、映像処理や音声処理にサイケデリックなテイストが濃厚だったことです。たとえば、第9話は子どもの笑い声で終わっていましたが、音声処理がえらく不気味な感じだったので、そのままタイトルバックに切り替わった時に思わず「カッコイイ」と思ってしまいました。(^^)　鬼頭さんといえば、何年か前に「Tears」という一話完結の深夜ドラマを担当していたことがあったのですが（99/02/11参照）、その時も、ラストシーンでヤカンが沸騰する音が効果的に使われていたのを思い出しました。(^^)

02/03/14　 3年B組金八先生(21)

　鶴本直

演出：福澤克雄(1)(3)(6)(8)(11)(12)(15)(18)(19)(21)(23)、生野慈朗(2)、
　　　三城真一(4)(7)(10)(13)(16)(22)、加藤新(5)(9)(14)(17)(20)

　直の一人称が“僕”に

予告の時は「鶴本直Ⅰ」だったのですが、オンエア時の新聞では「鶴本直」に変わっていました。第22話を「鶴本直Ⅱ」とするのには無理があるので妥当な変更なんですが、でも、そんなことは最初っからわかっているはずなのに……。(^^ゞ

で、この第21話なんですが、直以外ではあまりピンと来るところが少ない回でした。冒頭、土手で金八と直が大森巡査とすれ違うシーンなどは、絵的にもカッコイイ仕上がりなんですが、この手の映像は過去に何回も出てきたので、既知感を強く感じてしまいます。カウンセリングルームが異常に暗いのも、いつものパターンで、「僕を見世物にするの」というセリフが印象に残ったくらいです。ちなみに、この回から直の一人称が「僕」になっています。

家に戻ってから、直は母親にぐちゅぐちゅと愚痴をこぼし始めますが、第21話ではこのシーンが一番好きです。「僕は弱虫なんだ」とか、直の声質にしびれてしまいます。(^^ゞ　で、その後、hasekenにメールを送るわけですが、hasekenの返事にあった「賭けに失敗しても来いよ」というのは、最近のハセケンにしては、めずらしくいいこと言ってると思いました。ただ、haseken関連のエピソードは、物語が進むにつれてジリ貧になってしまったので、この第21話も残務処理っぽく見えます。(^^;;

　特別授業の演出には違和感

辛かったのは、この後に続く特別授業のシーンです。直が教室に入ると、クラス全員が一斉に振り返るという演出も、福澤Ｄの回には毎回といっていいほど登場しているから、「またか～」というのが率直な感想です。しかし、このシーンで問題にしたいのは、この後の展開の方です。特別授業が始まったら、３Ｂの生徒たちが急に和やかになっちゃうのって変じゃないですか？　事件後、初めて直が登校して、特別授業のテーマが「性」なんだから、普通だったら重たいムードで授業が進むはずでしょう。もちろんこれは、物語内における辻褄の問題ですが、脚本・演出という観点から見ても疑問が残ります。

長いシーンだから後半のシリアスな芝居とのメリハリを明確にしたい――という演出意図があったのかもしれませんが、あのシーンを見て、それまでの緊張感が途切れてしまったと感じた人は少なくないと思います。お芝居の流れで言えば、直が「僕は男だ」と答えたところで教室全体に緊張感が走るのですが、それは２週間前に済んでる芝居なんであって、同じことをまたここで反復する意味（意図）が分かりません。信太の「ワイは立派なもんぶら下げてんで～」なんて、２週間前のことを完全に忘れてるとしか思えないセリフだし、ド忘れ禁止法を適用したいですよ、ホントに……。(^^ゞ

やはり、このシーンは頭から気まずいトーンで通した方が良かったんじゃないかという気がします。ところが、後半に入ると、手のひらを反したように、湿っぽい芝居のオンパレードになっちゃいます。どこまでが芝居なのかよくわからないのは政則の告白シーンの時と同じです。信太なんて泣くのが早すぎ！　

もう一つ気になったのが、養護の本田先生（高畑淳子）が言葉に詰まるシーン。演出もお芝居もしつこくて、最近の福澤演出を象徴していますが、これについては第19話の日誌に書いたのでくりかえしません。このシーンについていえば、言葉に詰まること自体が良くないとは思いませんが、そのネタだけで十数秒も引っ張って、あげくにチョークまで折っちゃうんだから、ほとんどコントの世界です。

授業の内容については特に言いたいこともないので省略しますが、このシーンで感動的なのは直の表情と声だけだったように思います。そして、この後、荒川土手でハセケンとの対面シーンになるのですが、ボクにはピンと来なかったんで、これも省略します。――ラストカットは、走ってる直のスローモーションですが、シャッター効果で画面が白くなったところで予告になりました。カメラと直の間に障害物が入って、一瞬直が見えなくなるのですが、その瞬間に予告に切り替わりました。音楽ビデオ的な演出ですね。(^o^)

　鶴本直＝高倉健＝ブギーポップ＝霧間凪

ところで、ボクが1～2月の「金八」を見ながら考えていたのは、直の実直さは高倉健のキャラに通じるものがあるかもしれない……ということです。(^^ゞ　もちろん顔は似ていませんが、単純な正義感から他人のケンカに首を突っ込んで、乱闘に発展しちゃうところなどは、高倉健の映画みたいでしょう？　先週の第22話の朗読シーンなどは、高倉健でいえば獄中のシーンですね。（笑）　前回の日誌にも書いた通り、直というのは金八の言葉を一番まともに受け取ってしまう生徒だったりしますが、そのバカ正直なところが魅力の源泉になっています。去年の話になりますが、こっそり直美にFAXしちゃうのも、金八の話を真に受けちゃったからだし、高倉健に通じる男気みたいなものが感じられるエピソードです。(^^ゞ

ところが、世の中にはもっと面白いことを考えている人がいました。3月1日のテレビドラマデータベース新作掲示板１に田所慶彦さんという人が≪上杉彩ちゃんにはブギーポップの役をやらせてみたいです。≫と書き込んでいました。上戸が上杉になっている点を別にすれば、とってもスルドイ指摘です。(^^ゞ　（ブギーポップというのは、上遠野浩平さんのヤングアダルト小説『ブギーポップは笑わない』の主人公のことで、映画やアニメにもなっています。）

直は、中学生にしては生硬で、ぎこちないしゃべり方をするキャラですが、これは以下に引用するブギーポップの特徴によく似ています。≪どうもこいつの言葉遣いは変に大時代的だ。僕のことを“君”とか、まるで明治時代の書生みたいな呼び方をする≫　――書生っぽいというのは、直の実直さに通じるテイストだし、直のキャラ設定には、イマドキの中学生っぽくないというキーワードがあるようにも思えます。唯一の例外が携帯電話なんですが、ハセケンのメールアドレスを確認するシーンなど、登場回数は少ないです。そもそも、友達がいない直が携帯で誰と話すんだっていう問題もありますが……。(^^ゞ

しかし、あれこれ考えていたら、もっと大事なことに気がつきました。『ブギーポップ』に登場するもう一人の個性派キャラ“霧間凪”と直の共通点です。(^^ゞ　凪は男言葉で話す女の子で、悪人と闘うために黒のコスチュームで武装したりしますが、黒ジャージでサンドバッグを叩いている直の姿は、凪のイメージとピッタリと重なります。映画版では黒須麻耶が凪を演じていましたが、髪型にしても体型にしても「金八」の直に極めて近いです。さらに、原作に出てくる≪彼女の教師だろうが上級生だろうがおかまいなしの、あのまっすぐな瞳は、ちょっとかっこいい≫なんていう描写は、そのまんま鶴本直です。

こんな風に考えていくと、想像はどんどん膨らみます。(^^)　凪と末真和子の関係は、直と直美（鈴田林沙）の関係にソックリだし、ブギーポップと竹田啓司の関係も、直と信太（辻本祐樹）の関係に似ている……など。ブギーポップは≪残念だけどね、ぼくに義務があるように、君や宮下藤花にもやるべき仕事があるんだ。君らは自分で自分たちの世界をつくっていかなくちゃならないんだよ。つまらない卑下をしていてはいけないんだ≫などと、説教臭いことバンバン言うキャラですが、直が信太に言うセリフだって、これと似たり寄ったりです。

こうしてみると、『ブギーポップ』と鶴本直の間には、単なる偶然とは思えない共通性があると考えた方が良さそうです。映画版では、凪が椅子を窓ガラスに投げつけるシーンがありましたが、これとまったく同じシーンが第19話に登場したことは、皆さんもご存知の通りです。(^^)　まあ、“上戸彩・男言葉”といったキーワードから連想ゲームを始めて、霧間凪に辿り着いたとしても、そんなに不思議ではないし、ありえない話ではないですね。これとは逆に、霧間凪→黒須麻耶→上戸彩という発想もありですが。(^^ゞ

　性同一性障害の直と、カッコいい直は無関係

ところで、最新の公式サイトを見てみたら、福澤Ｄが直のキャラクターについて興味深いことを言っていました。≪テレビとか映画で見たことのない役だし、いつも“性”がまとわりついてくる。下手すれば汚くなるイメージがあるから、「かっこいい」とか「憧れる」という存在にしないと、このキャラは失敗してしまうと思った≫と。これをボクなりに意訳すると次のようになります。看板は“性同一性障害”だが隠し味は別にある――と。

性同一性障害の直を描くことと、カッコいい直を描くことの間に、直接的な関連は多分ないです。そして、直の実直な性格は後者のプロセスに属するのであって、前者のプロセスとは無関係です。「金八」を語る人の多くは、肯定的な人も否定的な人も前者のプロセスに目をとらわれがちですが、ボクが注目したいのはやはり後者の方です。(^^ゞ　後者のプロセスのことを、隠し味とか演出などと読み替えてもいいかもしれません。ちなみに、前者のプロセスは、どちらかというと脚本家の仕事なのかな……とも思います。

主題歌のタイトルが「まっすぐの歌」なのも、直の名前やキャラ設定を意識しているのでしょう。年末SPで、ハセケンが「親から直という名前をもらっているのに素直じゃない」なんて言っていましたが、これなんかは直のキャラクターを逆説的な形で視聴者に伝えているセリフだといえます。おかげで、ハセケンがますますバカに見えちゃうんですが……。いずれにしても、鶴本直というキャラクターが完成するまでには、ものすごいエネルギーが投入されているのだと思います。ボクがここで考えたことは、多分その入り口程度なんでしょう。(^^ゞ

02/03/21　 3年B組金八先生(22)

　卒業直前SP

演出：福澤克雄(1)(3)(6)(8)(11)(12)(15)(18)(19)(21)(23)、生野慈朗(2)、
　　　三城真一(4)(7)(10)(13)(16)(22)、加藤新(5)(9)(14)(17)(20)

　三城Ｄは青春ドラマテイスト

三城真一さんが演出するのは１ヶ月半ぶりでこれが最後です。冒頭の直の受験シーンでは、直が机に突っ伏しているときの表情が新鮮で、三城Ｄの青春ドラマ～アイドルドラマ的なセンスが再確認できます。また、直が桜中学に戻ってくるシーンでは、儀（斉藤祥太）と手で挨拶していましたが、こういうところも青春ドラマっぽいドキドキ感があって良いですね～。(^^ゞ　ボクは三城Ｄが演出した第10話が好きだったし、第13話では、ハセケンの部屋の窓からジョギングしている直が見えるという、手の込んだ演出をしていたのも印象に残っています。

その他の直関連シーンで、印象的だったのは、職員室で受験の報告をしているシーン。直の表情や仕種に、今までにない溌剌としたニュアンスがあって、新鮮な感動を覚えました。テーブルに身を乗り出して話すところを真横から撮ったり、金八がお尻を叩いたり……と、何回も見たくなる映像がたくさんありました。――そんなことを思っていたら、国井教頭（茅島成美）が、ボクの感想と同じようなことを言っていたのでビックリしました。(@_@)　直の男姿といえば、１～２月にもサングラス姿の男装シーンがたくさんありましたが、なんか悪趣味な感じがして好きになれませんでした。ひょっとしたら、この時のためにわざと悪趣味にしておいたのでしょうか。だったらスゴイです。(^^ゞ

　ミッチーの抱擁シーンと健次郎の抱擁シーン

ただ、この第22話は全体的に残務処理みたいなエピソードが多くて、２時間SPの割には密度が薄いように感じました。幸作と正子ちゃん（伊藤麻里也）のエピソードもこれでお終いでしょうか。ものすごく中途半端なんですが、最終回間際に残務処理～在庫一掃みたいな展開になっちゃうのは、ある程度しかたないですね。

大きなエピソードとしては、異動問題とミッチー問題がありましたが、ミッチー（川嶋義一）に関しては意味深なアップが多かったので、ミッチー的にはおいしい回になっていたと思います。ミッチーの表情を、こんなにたくさん見たのはこの回が初めてだし、見終わった後には、いつの間にかミッチーが良い人に見えたりするから不思議なもんです。(^^)　ストーリー的にはいきなり親の話が出てきたりして、かなり御都合主義っぽいんですが、保健室のシーンは悪くなかったと思います。金八＝父親的なエロスという図式も、これまでになく明瞭に描かれていました。ただ、あの抱擁シーンは男子生徒だから許されるシーンですね。

ちなみに、この抱擁シーンはパート５の「ガラスの少年Ⅲ」に出てきた健次郎の抱擁シーンを連想させます。福澤Ｄはあのシーンを演出するにあたって、宗教画的な構図と宗教音楽的なBGM（アメージング・グレース）を盛り込んでいましたが、今回のシーンでは、そうしたイマジネイティブな要素が感じられなかったのが残念といえば残念です。シーンの出来自体はそんなに悪くはないのですが……。(^^ゞ

　画面の後ろにも注目！

一方、校長との激論シーンでは、ボクはタバコの煙が気になっちゃって、お芝居に集中できませんでした。煙を吐くところで画面が切り替わったりしてたのですが、絵的にはちゃんとつながっていたので、マルチで一発撮りしていたのでしょう。こんなことを気にしながら、ドラマを見ている人はあんまりいないと思いますが、よい子の皆さんはマネしないでください。(^^;;　ところで、このシーンでは、台詞回しが舞台調を通り越して、演説みたいになってましたが、こういうのも「金八」らしいと言うのでしょうか？　(^_-)

また、今シリーズでは初めて遠藤先生（山崎銀之丞）の授業シーンがありましたが、ギャグの部分はほとんど笑えませんでした。第20話の日誌にも書きましたが、ギャグのシーンとか教室のシーンはやはり福澤Ｄの回の方が面白いですね。なお、遠藤先生のシーンでは、奈美（中村友美）と美紀（森田このみ）の密告が同時並行で描かれているのですが、ビデオで見直すといろいろ発見があって面白いです。たとえば、校庭でトラクターが動き出すシーンでは、画面の後ろに保健室に向かう美紀の姿が映ってるし、その後の教室のシーンでは、保健室から戻ってきた美紀が奈美に報告している姿が、さりげなく映っています。（笑）

　ラストは“寂しい”系の情感が秀逸

直の家でのパーティシーンは、生徒全員が私服姿だったせいか、新鮮な感じで楽しめました。直の部屋でハセケンが「ここがyesterdayの部屋か」などと話すシーンは、ちょっぴりエロチックなシーンなんですが、ハセケンの内面がちゃんと描かれていないから、いまひとつ食い足りないという思いが残ります。その上、「僕たちは友達だ」みたいな展開になっちゃうからますます興醒めです。まあ、直にしてもハセケンにしても、変なヤツという意味ではバランスが取れてると言えなくもないのですが……。

ラストの５分くらいは、三城Ｄらしい（？）情感系の演出になっていて、ボクが好きだった第10話に通じるテイストがありました。「逃げちゃダメ」のところで無音になるシーンは、「エヴァかよ！」などと突っ込んでしまいましたが、その後のシーンはBGMを含めて“寂しい”系のトーンで統一されていたのが渋かったです。美紀とミッチーの会話がしみじみとしたテイストを残して、教室に佇む金八のシーンに切り替わり、さらに直の部屋に切り替わると、そこでも直美が弾くビアノが“寂しい”系になっている――という流れ。見ていてゾクゾクしてしまいました。こういうところに三城Ｄの個性があるんじゃないかという気がします。また、このシーンではミッチーの上着の緑にも不思議なインパクトを感じました。

さて、次回はいよいよ最終回。予告を見た感じでは、またラグビーもどきのシーンがありそうなので、ラグビーのルールを勉強してからドラマに臨みましょう。福澤Ｄは公式サイトで、≪みどころは、ただの卒業式では終わらないということ≫と言っていますが、パート５の時も、前宣伝の割にはフツーっぽかい最終回だったので、直のようにその言葉を素直に受け取ったりはできません……。(^_-)

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