"ドラマ演出"日誌(2001年4-6月期)

01/04/01  少年は鳥になった

脚本:相内美生
演出:国本雅広
演出補:宮崎暁夫
プロデュース:志村彰、次屋尚
音楽:REMEDIOS
出演:浅野ゆう子、山下智久、西村理沙、高岡早紀、古尾谷雅人、風間俊介
制作:TBS、MMJ
関東放送枠:TBS・日曜夜9:00〜10:54

このドラマを見た人は少ないかもしれませんが、ボクの場合、演出が国本雅広さんだと知ってから、けっこう期待していました。(^o^) 高岡早紀、REMEDIOS、国本雅広といえば「パッピー」(テレ東)の時と同じメンツだから、それだけである程度、作風が予想できたわけです。また、山下智久は、顔と名前を覚えた頃から、病人役が似合いそうだと思っていたので、今回のキャスティングは良くも悪くもイメージ通りなんですが、「パッピー」的な演出とは相性が良さそうな予感がしました。(^o^)

ドラマの冒頭近くで、山下智久が西村理沙にCDをプレゼントしているシーンがありましたが、このシーンのカット割りの完成度が高かったです。インパクトのある表情が的確なタイミングで挿入・編集されていました。山下智久の意味不明っぽいリアクションを含めて、2人のキャラクターが強く印象づけられました。これ以降、山下智久が息を引き取るシーンまで、カット割りのクオリティはずっと高かったです。いちいち書かいてると切りがないので省略しちゃいますが。(^^ゞ

特に、山下智久の死を確認した津川雅彦が「もう注射はしないよ」と語りかけた後に挿入された古尾谷雅人の表情アップが秀逸で、カットの組み立て方が感動を左右するということがよくわかるシーンでした。また、このシーンでは、死んだ後の様子を長めに描いていたのが印象的でした。普通のドラマだと、死んだ後は号泣して次のシーン――というパターンが多いですから。

山下智久の演技や演出も、「カバチタレ!」の時と大きく違っているとは思えないのですが、役がハマっているから印象がまったく違います。「まだ死にたくない」とか言うシーンも可哀相だったし、最期の発作のシーンも「きっと怖い思いをしてるんだろうな」という気分になりました。これは脚本によるところも大だと思います。発作を繰り返して死に至るというのは、本人にしてみれば、死ぬまでロシアンルーレットを繰り返すようなものだから、精神的にキツイでしょう。(..)

この手のドラマというのは、ドラマファンにはバカにされがちなジャンルですが、やってることは「ちゅらさん」の第1週と大差ありません。(^^ゞ ボクが思うに、この手のドラマをバカにする人には、ドラマを笑い飛ばすことによって自分の死も笑い飛ばしたい――という欲望が働いているような気もします。個人的には、「発作で死ぬのは怖い」ということを分からせてくれただけでも、良いドラマでした。――とはいっても、死後に手紙が出てくるという展開には引いちゃいましたが……。(^^ゞ 基本的には安直なドラマです。

――と、ここまでだと、国本さんの演出は芝居重視だったという印象を与えると思います。しかし、国本さんについては映像や音楽にも注目したいです。「女医」(読売テレビ)や「R-17」(テレ朝)も国本さんですから。(^^ゞ このドラマの場合、生活臭い叙情派映像と言ったら良いのでしょうか。雨の転倒シーンなんか、なかなか迫力のある映像になっていたし、学校の廊下のシーンなども陰影に富んだ映像でした。REMEDIOSの音楽を使うのも国本さんの特徴で、サッパリとした清々しい情感が特徴でしょうか。

しかし、このドラマの場合、なんといっても自宅のセットでしょう。フローリング中心の洋風一戸建てというのは画面がスッキリしすぎてしまって、生活感に欠けるように感じられることが多いのですが、このドラマの場合、生活臭いホコリっぽさが映像から感じられて良かったです。美術スタッフ、照明スタッフの功績が大きいと思います。

このドラマの舞台は大田区の設定だったようです。演奏会のステージ上に大田区と書いてありました。「ハッピー」のときも大田区近辺という印象だったので、こういう雰囲気が国本さんの趣味なんでしょう。MMJ&相内美生といえば、昨年の「千晶、もう一度笑って」(00/01/07)も同傾向のドラマでした。アイドルドラマ的なのは同じでも、演出・脚本は今回の方が良かったです。

他の不満としては、お姉さん役の浅井江里名と仲根かすみに、ほとんど出番がなかったのがもったいないです。風間俊介は便利に使われているという感じで、あまり印象に残っていません。エンドロールを見ていたら、山下・風間の他にもジャニーズらしき名前(田口淳之介・加藤成亮)を見つけてしまいましたが、どこに出ていたのかサッパリわかりません。たぶんクラスメイトだと思いますが、よく考えてみたら、田口淳之介ってどんな顔してるのかよく知らないです。(^^ゞ

国本さんといえば、4月から始まる「R-17」にも期待が高まります。(^^ゞ


01/04/01  フードファイトSP

企画:野島伸司
脚本:山崎淳也
演出:佐藤東弥
プロデュース:西憲彦、松本和久、北島和久
ゲスト出演:桜井幸子、さだまさし、河村隆一、安達祐実、小川直也、筒井康隆
関東放送枠:日テレ・日曜9:50〜11:44

前半の香港ロケのシーンも悪くはなかったですが、ボクは後半のフードファイトのシーンに惹かれました。(^^ゞ 特に第3ラウンドの草なぎ剛が凄かったです。食べながら泣いているシーンと、そこから一転してハイテンションになるシーンの落差が豪快でした。(^^)

連ドラの第1話を見たときは、フードファイトのシーンに面白味が感じられなくて、早い段階でネタ切れになってしまうんじゃ……と危惧したのですが、結果は逆でした。(^^ゞ “食べる芝居”とか“食べる演出”いうのは、基本的にはそんなにバリエーションがあるとは思えなかったのですが、連ドラ後半では、フードファイトの最中にメランコリックなモノローグが挿入されたりして、感心させられることが多かったです。

そもそも、フードファイトのシーンに、メランコリックなモノローグが入る必然性なんてまったくないし、このSPでも、少年のエピソードとフードファイトを同時進行で描く必然性はないわけですが、そこがこのドラマの面白さなんでしょう。たとえば、子供などに、「どうして、食べながら泣いてるの」などと質問されても、ボクには答えられません。(^^ゞ

いずれにしても、草なぎ剛が食べるシーンの芝居と演出は、連ドラの収録期間を通じて積み重ねられた試行錯誤の集大成という感じでした。ひとつの表現様式の完成過程を同時進行的に見れるというのは、連ドラの醍醐味のひとつといえるかもしれません。完成品を鑑賞するだけが、連ドラの楽しみ方じゃないです。たとえば、他の出演者&スタッフで同じことをやろうとしても、一朝一夕ではマネできないと思います。そういうところに、ボクは一番の魅力を感じます。(^_^;)

ゲストの中では、やはり河村隆一でしょうか。「成田離婚」のときも思ったのですが、河村隆一っていう人は、この手の胡散臭い役がハマる人ですね。野島ワールド特有のモノローグとの親和性も高くて、このキャスティングを思いついた人に“座布団一枚!”という感じです。また、他の野島ドラマで見てみたいです。――視聴率が20%だったらしいから、パート2ないし再SPもありかな?


01/04/05  3年B組金八先生SP

脚本:小山内美江子
演出:福澤克雄
プロデュース:柳井満
関東放送枠:TBS・木曜夜9:00〜10:54

オープニングのタイトルバックに表示された出演者らのテロップの文字サイズが、以前よりも小さくなっていました。21世紀の「金八」は、ワイド画面〜大画面表示を意識した映像派ドラマを志向していると、タイトルバックで宣言している――と、ボクは解釈しました。(^^ゞ

実際、その後のドラマ本編も、連ドラ時以上に手の込んだカメラワーク〜映像処理がなされていました。お寺で行われた一周忌のシーンなんて、映画っぽい重厚な雰囲気に仕上がっていました。クレーンを使った境内の映像も映画っぽかったです。金八の自宅のシーンも、以前より陰影が強くなっているように感じられました。また、土手のシーンに対する福澤Dのこだわりの強さは、以前にも指摘したと思いますが、今回もそれを再認識しました。土手にトラウマでもあるんでしょうか? (^_-) 川縁に生徒が集まっている映像にもスケール感がありました。

このドラマの演出で一番気になったのは、法事の後、寺の残った教師たちが桜中学の統廃合について語り合うシーンのカット割りです。窓からさす夕陽など、なかなか味わい深いシーンなんですが、最後に亀梨和也(明彦)のアップが出てきて、ビックリしてしまったのはボクだけでしょうか。ビデオで見返してみたら、すし屋の明彦が後片付けをしている姿が映っていましたが、暗い映像だったし、最後のアップがなければ、あの場に明彦が居合わせたことなんて誰にも分からないでしょう。

このシーンを見てから、「これは何かの伏線かもしれない」と亀梨和也に注目していたのですが、何にも起こりませんでした。(^_^;) このカット割りには、最後の明彦のアップで視聴者を驚かせてやろうという意図があったと思いますし、そもそも脚本に明彦のことが書いてあったのかどうかも疑問です。このシーンの亀梨和也はむちゃくちゃオイシイし、あのシーンの出演者と福澤Dが亀梨和也に花を持たせてやったという印象です。(^^ゞ

脚本的は過去の同窓会SPの焼き直しという感じが強くて、いまひとつ感心しませんでした。話が進むにつれて、映像的な面白味も少なくなったし、ラストの説教シーンも唐突な感じでピンときません。一番いただけないのは、佐々木恵理(サオリ)のイジメエピソードで、これだけで自殺の話題に持っていくのはいくらなんでも強引すぎます。しかも、イジメや退学を同窓生に相談しなかったからといって、それをあそこまで強く叱責するのは、どう考えても“過剰反応”に見えてしまいます。(^^ゞ 彼らが自殺未遂事件でも起こしたのなら、理解可能なんですけど。

「死ぬことに意味を込めるな」というのは、沖田浩之に言っているのなら理解できることなんですが……。そういえば、パート2のエピソードに言及しているシーンもありました。ただ、彼が自殺したのは、パート5放送開始前の99年春だから、わざわざこのSPで取り上げる必然性は、あまりないです。

この説教シーンは、言葉を連呼するなど、妙に体育会系っぽい乗りでしたが、体育会出身の福澤Dの趣味なんでしょうか。古臭いんだか、ダサ新鮮なんだか、ボクにはよく分かりません。(^_-) 体育会系といえば、西原幸男(入船力也)のガラス窓のダイビングも凄かったです。映像的な深みよりも、撮影現場の気合いを最重視したような演出でした。(^^ゞ さすが福澤D、ラグビー部出身者はやることが違います! 福澤Dからタックル指導があったんでしょうか?(笑)

出演者について。1年ぶりに見た3Bのメンバーですが、すっかり忘れてる生徒もいたりして、自分の薄情さがよく分かりました。m(__)m 最初に森雄介を見たとき、「諭吉」のときには感じられなかった親しみが感じられたのですが、こういうのを「金八」マジックと呼ぶのでしょうか。しかし、笑顔の風間俊介にはなじめません。(^^ゞ 時折見せていた険しい表情の方に、「金八」らしさ〜兼末らしさを感じました。とはいえ、他のドラマと比べると、「金八」スタッフは風間俊介の使い方を熟知しているようです。微妙な表情ワーク(?)の活かし方が細かいです。

今回のSPに限っていえば、3Bの生徒で印象に残った人はいません。あくまで、同窓会の域を出ていなかったように思います。強いて挙げるなら、前述の風間俊介、ちょっと色っぽくなった岡あゆみ(ちはる)、亀梨和也(明彦)の素直そうな声質……くらいでしょうか。ギャグやコントも量は多かったですが、出来はイマイチだったです。ラストの教室のシーンも、お芝居がぎこちないような気がしたのですが気のせいでしょうか。風間俊介・岡あゆみ・佐野泰臣の三角関係も、ボクは3人とも好きだからそれなりに楽しめましたが、それに別にすれば安っぽい青春ドラマみたいで、いただけないです。

3B系のエピソードよりも星野真里の受験話の方がまだ面白かったです。合格発表のシーンなんかも臭いといえば臭いんですが、上條恒彦を脇に配置することによって、味わい深くなっていました。(^_-) 「新・星の金貨」も楽しみです。

ところで、最後に「ありがとうございました小山内先生」というテロップが出てきましたが、これを最後に小山内美江子さんが勇退されるという意味なんでしょうか? ちょっと気になりました。(^^ゞ

≪追記≫
掲示板に、ROM夫くんさん、檸檬さんから情報提供があったので、こちらにも紹介しておきます。

●ROM夫くんさん(04月10日(火)10時03分46秒)
「月刊ドラマ」という雑誌では、小山内先生は金八6を2002年にしたいとおっしゃってました。

●檸檬さん(04月11日(水)13時13分02秒)
「月刊ドラマ」4月号、買いました。それによると・・・。
1、明彦が後片付けをしているシーン・・・あります。(59ページ) 「寺・本堂  その明彦が来て片付けの最中。」だけですけど。
2、説教シーン・・・シナリオを読む限り、連呼・体育会系雰囲気は微塵も ありません。福澤さんの演出なんでしょうね。(80−84ページ)


情報提供ありがとうございました。m(__)m


01/04/10  新・お水の花道(1)

脚本:梅田みか
演出:平野眞(1)(2)(4)(6)(8)(10)、土方政人(3)(5)(7)(9)(11)
音楽:大島ミチル
プロデュース:加藤正俊
演出補:山下学美
編成:金井卓也
プロデュース補:森憲一(フジ)、柳川由起子
制作:共同テレビ、フジテレビ
関東放送枠:フジ・火曜9時

予想していたよりも新味に欠ける第1話でした。前シリーズのスタイルを手堅く継承したというところでしょうか。新キャラの真中瞳や長嶋一茂のキャラ作りも、ちょっとインパクトが弱かったです。ただ、そうした新要素を期待しなければ、それなりに面白かったと思います。個人的には、大島ミチルさんの音楽に聞き惚れていました。前シリーズと同一だと思いますが、久しぶりに聞くと良いですね〜。(^_^;)

前シリーズでは、第2話の演出が一番ハードタッチになっていて、その後はだんだんとソフトタッチにシフトチェンジしていたのですが、新シリーズもソフト路線でいくみたいです。


01/04/10  ルーキー!(1)

脚本:尾崎将也、他
演出:塚本連平(1)(2)(5)(10)、今井和久(3)(6)(8)、小松隆志(4)(7)(9)(11)
音楽:金子隆博
音楽プロデューサー:仲西匡
プロデュース:笠置高弘(関テレ)、東城祐司・伊藤達哉(MMJ)
編成:星濱彦
助監督:坂梨公紀
スケジュール:二宮浩行
プロデューサー補:浅井千瑞
制作:関西テレビ、MMJ
関東放送枠:フジ・火曜10時

オープニングが「踊る大捜査線」みたいなアクション映画風の演出になっていて、ちょっと笑ってしまいました。まあ、「踊る」の冒頭も同じようなオチだったと記憶していますが……。(^^) 出勤初日のシーンでは、堂本光一が赤コートで内山理名が青コートだったんで、「SOS」を連想してしまいましたが、これも軽いユーモアだったのでしょうか?

主要スタッフや放送枠が「花村大介」と同じなんで、その後の展開は予想通りでした。事件の内容は社会派だけど、物語の展開・解決はコメディというスタイルです。堂本光一の身振り〜リアクションがおおげさすぎるのと、筧利夫のキャラ作りが不明瞭なところが気になりましたが、こうした問題は回が進むにつれて改善されていくと思います。

手の込んだカメラワークもそれなりに多かったのですが、最近のドラマはどれも手が込んでいるので、どうしてもインパクトが弱くなってしまいます。犬を抱えて商店街を走るシーンなんかも、なかなか味のある映像だったと思うのですが……。

個人的に気になったのは、本宮純子が暴漢に襲われるシーンのカット割りです。壁に映る2人のシルエット、凶器のスパナのアップ、道路に落下するメガネ――など、直接的な映像を一切使わないオシャレなカット割りでした。前日の「夢伝説・ヒッチコック」(NHK・夜11時)で、三谷幸喜さんが「サイコ」のカット割りについて話していましたが、それを思い出してしてしまいました。ただ、解決編を見たら、犯人は別人だったというオチだったので、直接映すわけにはいかない事情があったわけです。(^^ゞ

ところで、居酒屋の女将の娘(?)をやっていたのは楊原京子だと思いますが、彼女は以前、毎日放送制作の昼ドラ(ドラマ30)に出ていた人です。覚醒剤中毒になる女子高生をやっていました。98年の秋頃のドラマです。(^_^;)

≪追記≫
第2話をよ〜く見てみたところ、楊原京子は同僚の婦警の役みたいです。失礼しました。女将の娘役はもっと若い子ですが、名前は分かりません。m(__)m


01/04/11  私を旅館に連れてって(1)

脚本:相沢友子
演出:小椋久雄(1)、村上正典
音楽:本間勇輔
演出補:八木一介
企画:石原隆
プロデュース:稲田秀樹
制作:共同テレビ、フジテレビ
関東放送枠:フジ・水曜9時

気がついている人は少ないようですが、このドラマのベースのあるのは「ニュースの女」です。結婚相手が急死して、連れ子とのコミュニケーションが始まるという人物配置も、それまでの人生を見つめ直すというテーマ設定も同じだし、小椋久雄さんの演出スタイルも、本間勇輔さんの音楽の傾向も、すべて同じです。(^^ゞ ドラマ内のニュース番組で流れていた音楽も「ニュースの女」および「スーパーナイト」(日曜10時)でおなじみだった曲です。

特に注目したいのは、オープニングのタイトルバックで、これも「ニュースの女」を思わせるようなモノクロ写真になっていました。ボクは「ニュースの女」のオープニングが大好きだったので、このドラマをオープニングを見て、脈拍数が急上昇してしまいました。(^^ゞ ただし、「ニュースの女」のオープニングはスナップ撮影風の写真で、過去の日々を思い起こしているような効果を持っていましたが、今回の「旅館」の写真は現実味のない構図になっているので、それがちょっと残念です。まあ、ボクの個人的なこだわりに過ぎないんですけど……。(^_^;)

小椋久雄さんが過去にチーフで手がけてきたドラマには、「コーチ」「小さな恋の物語」「ニュースの女」「殴る女」などがありますが、今回の「旅館」との共通点が、たくさん見つけられそうです。このドラマの旅館の設定に一番近いのは「コーチ」の缶詰工場でしょうか。だとすると、玉置浩二にあたるのが風間杜夫だということになります。

ただし、旅館のロケーションやセットの仕上がりなどは「鬼の棲家」(出演:深田恭子、演出:本間欧彦)に似ているように思います。「鬼の棲家」も伊豆長岡温泉(?)でロケをしていたような記憶がありますが未確認です。

小椋さんの演出スタイルについては「殴る女」の日誌にも書いたと思いますが、一言で言うなら、“非ドタバタ系のハートフルコメディ”となります。今回もまったく同じ路線だといえるでしょう。カメラワークなどには共テレ的な遊び心がありますが、全体の仕上がりはしっとりとした感じになっています。ドタバタ的な派手なギミックを使わないで、お芝居やキャラクターのニュアンスで笑いを取るセンスがオシャレです。もし、演出に“シブヤ系”があるとするなら、小椋さんみたいな演出を指すのだと思います。(^^ゞ

「旅館」第1話において重要なポイントは、観月ありさのキャラ設定です。「ナースのお仕事」みたいに明るくて快活なキャラクターにしないで、内省的なキャラとして描かれていました(表面的には要領が良さそうですが……)。こうしたキャラクターの違いを明瞭に表していたのが、モノローグ〜ナレーションの多用です。視聴者に対して、「ナース」のキャラとは違うことをハッキリ分からせる――という意味で、これは効果的な選択だったと思います。

その他の出演者で印象に残ったのは金田明夫&岸田健作の親子でしょうか。岸田健作は「新宿暴走救急隊」のときに、ちょっと良い味を出していましたが、この調子で俳優としてもブレイクしそうです。連れ子役の黒川芽以は初めて見る子ですが、現時点ではなんともいえない感じです。(^^)

ところで、ボクが考える小椋さんの隠れた代表作に「放課後」(92年)の3〜4話があります。これは「ボクたちのドラマシリーズ」の第1作で、主演は観月ありさでチーフDが星護さんでした。現在の共テレドラマはここから始まったといえる記念碑的な作品です。星さんが(当時としては)トリッキーな映像世界を追求していたのに対して、小椋さんが担当した3〜4話は内省的なアプローチになっていて、「放課後」という作品に深みを与えていました。ボク自身、リアルタイムで「放課後」を見た時には、そうした内省的な部分に魅力を感じたものです。ですから、今回の「旅館」を見ながら、そうした9年前のことを懐かしく思い出してしまいました。

ちなみに、セカンドDの村上正典さんも、小椋さんに近い叙情派的なアプローチを得意とする人ですから、こちらも楽しみだったりします。(^^)


01/04/11  嫁はミツボシ。(1)

脚本:清水有生
演出:松原浩(1)、斎藤郁宏、加藤新
プロデュース:志村彰、清水真由美
音楽:鷺巣詩郎
助監督:長郷三郎
制作担当:市川幸嗣
プロデューサー補:上田菜生
制作:MMJ、TBS
関東放送枠:TBS・水曜10時

このドラマはコメディなんだと思いますが、ボクはまったく笑えませんでした。木村佳乃に仕事を押し付ける周囲の登場人物の様子が、悪質なイジメにしか見えなくて、「渡る世間」を見るような気分では見れないです。「渡る世間」の赤木春恵などは、それなりに現実味があるキャラクターだし、そこが面白かったりするワケですが、このドラマの人たちの行動は常識の範疇を超えています。入院している父親を1週間もほったらかしにしたり、兄の嫁にいきなり「夕食を作れ!」などと命令したり……。「渡る世間」の鬼たちだって、ここまで非人道的なことはしません。こんな連中の相手をしている木村佳乃までがバカに見えてきます。

このドラマは、新設枠だからなのか、企画にしても演出にしても急場しのぎで押し込んだ――という印象を受けます。スタッフ構成は、良い意味でも悪い意味でもユニークで、MMJ系の制作チームにTBS所属の松原浩Dを送り込んだというかたちです。局外制作ドラマに社員Dが参加するというのは、TBSではめずらしいケースだと思います。今後こういう制作形態が増えるのでしょうか。

もちろん、問題なのは制作形態じゃなくてスタッフ構成の方です。脚本の清水有生さんにしても松原Dにしても、過去の作品の印象では、コメディが得意そうには見えない人たちです。このドラマが笑えない原因もこの辺にありそうです。物語全体の構成にしても、登場人物のキャラ設定にしても、見ていてピンと来るものがありません。木村佳乃のキャラも、単にうるさいだけで、いまひとつ面白味に欠けるように思います。

ちなみに、森田剛は「月下の棋士」でMMJつながりなんですが、「月下」系の主要スタッフは「ルーキー!」の方に行っちゃってるから、ちょっと不自然なキャスティングです。流れ的には「ルーキー!」の主演でも良かったような気もするのですが、事務所の都合で「ミツボシ」に回されちゃったんでしょうか。(^^ゞ ただ、森田剛がウナギを焼いているシーンは「月下の棋士」っぽくて、似合ってました。(^^) ――記憶が曖昧なんですが、制作担当の市川幸嗣さんって、テレ朝の月8でおなじみの名前だったような気がします。


01/04/12  R-17(1)

脚本:寺田敏雄
演出:国本雅広(1)(2)、久野昌宏(3)
音楽:近藤由紀夫、小西香葉
プロデュース:内山聖子、遠田孝一、山本和夫
助監督:白川士
構成リサーチ:町山広美
文芸協力:ドラマデザイン社
プロデューサー補:上田直彦、八巻薫
制作:テレビ朝日、MMJ
関東放送枠:テレ朝・木曜9時

個人的には今期の注目度ナンバー1のドラマですが、まず最初に、スタッフ構成の話から入ります。内山聖子Pと寺田敏雄さんの組み合わせは「つぐみへ」と同じなんですが、その他のスタッフは「女医」です。演出の国本さんはもちろんのこと、助監督の白川士さんや音楽の2人なども「女医」と同じで、これらはすべて読売テレビ制作の月曜10時枠でおなじみの名前です。ドラマデザイン社というのは、読売テレビのプロデューサーだった山本和夫さんが立ちあげた会社らしいので、月10〜読売系の人脈がテレ朝に進出しているという感じです。(^^)

国本さんは「ぽっかぽか」のようなホームドラマの演出もしている人ですが、最近のドラマでは“クールな叙情性”を追求した作風が多いです。「凍りつく夏」「ハッピー」「女医」「少年は風になった」といった作品に共通しているのは、叙情的ではあっても熱かったり湿っぽかったりしないという点です。「R-17」でも、そうしたクールな叙情性が感じられる演出になっています。具体的にいうなら、過剰な色彩感を抑えた色彩処理や光の使い方、透明感〜清涼感が強い音楽などに、そうした傾向が感じられます。

このドラマでは、学校のシーンにおける、ひんやりとした空気感に国本さんらしさを感じます。まあ、中谷美紀、黒澤優、栗山千明など、“ひんやり系”の女優が多いドラマではあるんですが……。(笑)

あと、国本さんは屋上が好きみたいで、過去のドラマでも屋上のシーンに印象的な映像が多いです。「凍りつく夏」では、藤原竜也と竹内結子がビルの屋上の出っ張りに腰掛けているという、見ている方がドキドキするような危険な(?)カットがありました。(笑) このドラマの冒頭の中谷美紀が窓から顔を出すシーンは、厳密にいうと屋上ではありませんが、カメラは屋上から回しているワケだから、屋上シーンの変形だと考えていいでしょう。(^^ゞ ラストシーンも屋上でしたね。(^^ゞ

中谷美紀と栗山千明の2人による、夜のテニスコートのシーンは、演出的には感動的なシーンなんですが、ここでも湿っぽくならない国本演出が堪能できます。ただ、ストーリー的には、イマイチ感情移入しづらいところもありました。物語の展開が中途半端に速いような気がします。(^^ゞ 第2話以降に期待することにします。


01/04/12  ムコ殿(1)

脚本:いずみ吉紘
演出:木村達昭(1)(2)、西浦匡規
音楽:沢田完、bice
プロデュース:栗原美和子
タイトルバック:光野道夫
演出補:久保田哲史
プロデュース補:村井令子
制作:フジテレビ
関東放送枠:フジ・木曜10時

長瀬智也が良い味を出していますね〜。こういうのをハマリ役というのでしょう。彼のキャラクターや演技が面白いから、それだけでも一見の価値があります。「砂の上の恋人たち」「池袋ウエストゲートパーク」「三億円事件」と、このところクオリティの高い演技を見せていた長瀬智也ですが、「ふぞろいの林檎たち」のころに顕著だった貧乏学生風のキャラに戻ることによって、その持ち味が全面開花した感じです。

全体的にはセットのシーンが多いドラマですが、長瀬智也と宇津井健のやりとりなど、お芝居の完成度が高いです。第1話の時点では他の脇キャラの存在感が弱いのですが、長瀬智也・宇津井健・竹内結子の3人だけで十分に楽しめました。(^^ゞ ここの家族の面々も、癖の強そうな人が多いのですが、「ミツボシ」みたいに常識から外れるようなことはしていないところがポイントです。

終盤の、すき焼きのシーンはありがちな展開なんですが、長瀬・竹内・宇津井の3人がハマっているから違和感なく見れました。ただし、手づかみで食べる部分は、このドラマのテイストには合わない演出だと思いました。トレンディドラマ以降、非現実的な派手な演出があたりまえになってしまって、制作現場でもサジ加減の判断が難しくなってきているのだと思います。できることなら、このシーンは椅子に座って演技してほしかったです。(^^)

セットのシーンがお芝居重視なのに対して、歌手活動のシーンは手の込んだ映像が多かったようです。ドラマ内で流れたCM映像などもそうですが、武道館のライブのシーンも凄かったです。エキストラとかどうしたんだろうなどど思っていたら、エンドロールで「TOKIOのファンの皆さん」とか「TOKIOのコンサートスタッフの皆さん」というクレジットが出てきました。放送の前日くらいにフジのワイドショーか何かで、TOKIOの武道館公演の様子が伝えられていましたが、多分そのときに撮影・収録されたのでしょう。

ドラマの後にオマケ的に出てきた、つんく♂と栗原Pの楽屋落ち風のコントも面白かったです。「ロシナンテ」とか「幻のペンフレンド2001」あたりを参考にしているんだと思いますが、「ズッコケ三人組3」のエンディングも、同じような趣向になっているみたいだから、パクるなら今が旬なんだと思います。次クールでやったら、もうアウトかもしれません。――ただし、つんく♂がプロデュースした桜庭裕一郎の曲はイマイチです。「天近」のエンディングで流れているTOKIOの新曲「メッセージ」が、彼らの代表曲になりそうなくらいの出来だから、なおさら見劣りしちゃいます。(^_^;)


01/04/13  天国に一番近い男(1)

脚本:越智真人
演出:吉田秋生(1)、片山修、金子文紀
音楽:仲西匡、池頼広
プロデュース:磯山晶
演出補:坪井敏雄
プロデュース補:森一弘
関東放送枠:TBS・金曜9時

加藤あいと桜井翔の共演ドラマだったら、無条件で録画保存したい気分もあるんですが、これはちょっと評価が難しいです。(^^) 松岡昌宏のキャラ設定は「マニュアル〜リセット人間」らしいのですが、こういうところからして、ピントはずれな感じがします。「人生はゲームみたいにリセットできない」なんていうセリフも出てきましたが、マジメに言ってるのだとしたら、「バカなんじゃないか?」と思ってしまいます。これでは「最近の若者は現実と虚構の区別がついていない」とか言ってるオジサンと大差ないです。

ちょっと前の「世にも奇妙な物語SP」の「太平洋は燃えているか?」(脚本:中村樹基、演出:星護)にも、「湾岸戦争をゲームのように楽しんだ僕たち」とかいうセリフが出てきましたが、そのときの違和感を思い出しました。ボクの周囲に湾岸戦争をゲームとして楽しんだ人はいなかったし、もし一部にそういう人がいたとしても、そんな連中と一緒にされては困ります。(^^) 上のような批判は湾岸戦争当時からあったし、むしろその種の批判をする人の方が圧倒的な多数派だったはずです。そもそも、湾岸戦争なんてゲームとしては面白くもなんともないです。(^_-)

この種の批判をする人たちは、現実には(滅多に)存在しないような幻影を批判しているように思えます。このドラマでいえば、主人公のキャラがそれ(幻影)です。こういうのは、学園ドラマで「先生、授業を続けてください!」などと発言する優等生と同じで、現実にはほとんど存在しないキャラクターです。こういうキャラクターは、便宜的に配置する脇キャラならOKですが、主役キャラとしてはキツイものがあります。

以上は余談でした。m(__)m

演出的には、かつての土9的な要素が強くなっていました。天童世死見こと陣内孝則が登場するシーンは、背景が黒バックまたは白バックになっていましたが、これは「怖い日曜日」の二階健さんや、「六番目の小夜子」の遠藤理史さんが試みていた手法で、アニメ的な手法と言えるかもしれません。また、廃虚ビルのシーンなどは「サイコメトラーEIJI」っぽい感じです。ラストのタイトルバックも同じテイストですね。

ドラマ本体のシーンでも、サスペンス風の演出が増えていたようです。職員室のセットがグレーで統一されていたのも、サスペンス風演出の一環なんでしょうか? こうした変化については現時点でなんともいえない感じです。桜井くんもアヤシイし。(^^) 梅宮アンナに聴診器を当てていた謎の男も、声は桜井くんっぽいような気もします。

ただ、加藤あいの落下のシーンの特撮はない方が良かったです。東映の戦隊モノを見ているみたいで、安っぽい印象になってしまいました。これだったら、もっとオーソドックスにモンタージュしてくれた方が、緊張感が出たような気がします。

実のところ、このドラマで一番ワクワクしたのはラストの主題歌だったりします。ヒットするかどうかはわかりませんが、個人的にはTOKIOの代表曲に決まりです。(^o^) スタッフの名前を確認するために何回もリプレイしたので、サビのフレーズが頭にこびりついています。な〜んかエアロスミスみたいな曲調ですが、カバーだったりして?

このドラマには、もう一つネタがありました。松岡昌宏の担任クラスは3年B組ですが、実は生徒の中に3B出身者が2人(?)います。「金八5」でサオリ役だった佐々木恵理と、中込祥夫役だった平野良です。プロデュース補は「金八」でおなじみの森一弘さんだから、多分このつながりで起用されたのではないかと思われます。この先、彼らに出番があるのかどうか不明ですが、期待したいと思います。(*^_^*)


01/04/13  昔の男(1)

脚本:内館牧子
演出:佐々木章光(1)(2)(5)(6)(11)、藤尾隆(3)(4)(7)(8)(10)、池澤辰也(9)
音楽:村山?
演出補:桜庭信一
プロデュース:矢口久雄
制作:テレパック、TBS
関東放送枠:TBS・金曜10時

演出補に桜庭信一さんの名前があったのが、個人的には一番の見どころだったりするんですが……。(笑) 桜庭さんは「きらきらひかる」や「太陽は沈まない」で何回か演出していた人です。

基本的なスタイルは「週末婚」と同じなんですが、カメラワークや構図の取り方などに、最近の演出トレンドの影響が感じられます。暗い映像・色付き照明など、全体的にサスペンス的な演出傾向が強くなっているような気がしました。ただ、このドラマの場合、もっとノーマルな映像でも良いような気がします。このドラマに限ったことじゃないですが、最近は、ドラマの内容に比べて映像(照明とか色彩感)が濃すぎると感じることが多いです。(^_^;)

藤原紀香の実家のシーンは、内館牧子さんらしいシーンで、10年前に見た「あしたがあるから」の今井美樹の実家(花屋)を連想しました。――あまり、書くことが思いつかないので、これで終わりにします。すみません。m(__)m

誤解のないように書いておきますが、ボクは内館さんのファンです。「私の青空」も、ちょこちょこ見ていたし、「愛しすぎなくてよかった」(テレ朝・内山聖子P)や「必要のない人」(NHK・浅野加寿子P)などは、かなり好きでした。(^J^)


01/04/13  OLヴィジュアル系(1)

脚本:高橋ナツコ、関えり香、吉田玲子、田嶋久子
演出:高丸雅隆(1)(3)(6)(11)、秋山純(2)(4)(10)、田村直己(5)(8)
音楽:大島ミチル
プロデュース:横地郁英、高橋勝、他
制作:テレビ朝日、CUC
関東放送枠:テレ朝・金曜11:09

前回の連ドラの第1話はけっこう好きだったんですが、その後はネタ切れっぽい印象が強くて、正月のSPも途中で眠ってしまいました。m(__)m というワケなので、なんでパート2があるのかよく分からないのですが、今回の第1話は思ったより面白かったです。(^^)

鈴木紗理奈をデブにするという設定が功を奏したみたいです。“デブ”ネタというのは演出手法的には過去に出尽くしているという感がありますが、逆にいえば、ネタ自体はたくさんあるともいえるワケです。そもそもメーク美人とか整形美人とかいうのは、変身の前後が面白いだけで、その他のシーンは普通の美人と変わらないワケです。これは演出的にはけっこうキツイと思います。それに比べると、デブというのは、どのシーンでもデブだし、この手の笑いは過去にたくさん事例があるから、ネタ作りがしやすいのでしょう。

というワケで、斬新さはないものの、コメディとしてはパート1よりも安定感が増したように感じました。“デブ”ネタ以外では、何人か新キャラも登場していましたが、こちらはまだ顔見せ程度なのでなんとも言えません。ただ、当分の間は“デブ”ネタで引っ張っていった方が良いような気がします。(^^) とはいえ、毎週見るのはちょっとキツイかな……。(^^ゞ


01/04/14  ズッコケ三人組3(2)

原作:那須正幹
脚本:戸田山雅司、藤本匡介
演出:田中賢二(1)(2)
撮影:小野彰久
音楽:谷川賢作
主題歌:「us 〜明日何してる?〜」美勇士(詞・曲・歌)
制作統括:一井久司
撮影協力:横須賀市
出演:小林宏至、安藤奏、中山雄二、大田ななみ、岡田慶太
関東放送枠:NHK教育・土曜夜6時

 井上由美子的な原作・脚本

「バック・トゥー・フューチャー(前編/後編)」と題された1〜2話は脚本・演出を含めて、ちょっとした名作だったと思います。那須正幹さんの原作、および戸田山雅司さんの脚本は、少年ドラマとは思えないような重厚な出来映えで、まるで井上由美子さんの心理サスペンスを少年物に翻案したかような仕上がりでした。これを見なかった井上ファンの人は後悔してください。(笑) ――放送終了後にまとめて再放送されると思いますが。

見ていない人のために、簡単にストーリーを紹介しておきます。主人公の三人組が自分たちのニックネームの由来を調べるという話なんですが、調べていくうちにハチベエ(小林宏至)の意識下に封印されていた事件が明らかになる――という展開。どうです、井上由美子的でしょう!(^_-) 事件(記憶)の全貌は少しずつ明らかになるのですが、心の闇に直面したハチベエの葛藤や不安がなかなかヘビーで、第1話ラストの海辺のシーンなんて、「砂の器」のジュブナイル版みたいでした。(笑)

なお、原作の那須正幹さんは『ズッコケ三人組のバック・トゥー・フューチャー』(1999年)で、野田児童文芸賞を受賞したそうです。個人的には、このドラマにも賞をあげたいくらいです。(^^ゞ

 表情ニュアンス重視のカット割り

もうひとつの見どころは田中賢二さんの演出です。田中さんといえば「六番目の小夜子」の演出もしていました。全12話中3話の演出でしたが、1〜2話を演出したのは田中さんですから、「六サヨ」演出の方向性を決定づけたのは田中さんだといっていいと思います。というワケで、「六サヨ」の成功を受けて制作された今回の「ズッコケ3」は、旧シリーズを大きく上回る演出がなされています。

まず第一印象の段階で映像の質感が違っています。「六サヨ」に通じる深みのある色彩感が特徴です。屋外シーンではオレンジ系のフィルター処理がなされていましたが、過去の「ズッコケ」ではオレンジ系の映像はあんまりなかったように記憶しています。「六サヨ」とはドラマの内容が違うので、あそこまでファンタジックな色彩感はありませんが、旧シリーズと比較したら段違いの差があります。また、ロケーションにも力を入れているみたいで、旧シリーズよりもロケのシーンが多くなっているみたいです。

もうひとつ注目しておきたいのは、表情アップのクオリティの高さです。心理ドラマ的な要素が強い脚本だからか、カット割りも表情のニュアンスを中心に組み立てられていたのですが、子役中心のドラマとは思えないくらい表情の微妙なニュアンスを重視した作品になっていました。複数の子役にここまで演技させるところに、演出家の執念を感じます。(^_^;)

特に良かったのが、ハチベエの幼少時代を演じた岡田慶太が、追い出されたアパートを見上げる表情です。岡田慶太もスゴイですが、こういう映像をしっかりモノにしている田中賢二さんの手腕が光っています。と同時に、岡田慶太は第二の神木隆之介になれるかもしれないと思いました。ボクの予想は当てになりませんが……。(^^ゞ ――もちろん他の出演者の場合でも、味のある表情アップが的確なタイミングで挿入されていました。これはもう、個々人の演技力というよりも演出家の力量に追うところが大きいと考えるべきでしょう。「六サヨ」にしたって、表情のクオリティは、田中さんの担当回が一番かもしれません。

ちなみに、テレビドラマデータベースで調べると、田中賢二さんの最も古い作品は79年の「日本巌窟王」となっています。その後の主な作品としては、「峠の群像」(82年)、「春の波涛」(85年)、「花へんろ・第二章」(86年)、「太平記」(91年)、「腕におぼえあり3」(93年)、「かりん」(93年)、「素敵に女ざかり2」(98年)、「必要のない人」(98年)、「ズッコケ三人組」(99年)、「六番目の小夜子」(00年)、「マッチポイント」(00年)など。ベテランの演出家なんですが、若々しい作風がうれしいですね。(^^ゞ

 手持ち撮影の新しい可能性

しかし、今シリーズの演出の最大の成果はカメラワークだと思います。この点に関しては、「六サヨ」を超えていると断言してしまいましょう!(●^o^●)

ステディカムと思われる手持ち撮影風のショットが非常に多いドラマでしたが、その使い方に新しさを感じます。普通、手持ち撮影というと切れ目のない長回し系のショットを想像する人が多いと思いますが、「ズッコケ3」の場合、そうした長回し系のショットはありません。このドラマのカメラワークにおける最大の特徴は“被写体に肉薄する感覚”です。カメラ位置・アングル・動きが絶妙で、登場人物の息遣いが伝わってくるくらいの至近距離でカメラを回しているという感じでした。撮影時にはワンショットで収録された映像を、編集段階で細かくカット〜再編集しているのかもしれません。

ロケのシーンではほぼ例外なく、こうした肉薄感覚がキープされていました。小学生以下の登場人物が多いドラマの場合、通常のドラマよりもローアングル/ローポジションが多くなる傾向があるのですが、ここではそれを徹底させるために手持ち〜ステディカム系の撮影方法が採用されたのかもしれません。小学生の目線よりも、さらに低いローアングルがたくさんありました。子どもに対して、至近距離&ローアングルをここまで徹底したドラマは、そうざらにはないはずです。

ローアングルから表情を映したショットというのは、人物の内面〜心理を描写するときによく使われますが、恋愛ドラマやサスペンスドラマでよく使われるのは、望遠系のレンズを使ったアップです。望遠レンズというのは被写界深度(ピントが合う範囲)が狭いので、これを使うと被写体(この場合は顔)の前後の映像がぼやけて、顔だけが浮き上がっているような映像になります。これを見た視聴者は、登場人物の内面に引き込まれたような感覚を覚えるわけです。――ついでに言ってしまえば、多くの視聴者が感じている“演技力”なんてものの内実は、撮影上のテクニックだったりするのだと思います。(^_-)

「ズッコケ3」では、上記のような望遠系のアップはほとんどありませんでした。このドラマで顕著だったのは、≪広角系のレンズ+手持ち撮影≫で、人物の至近距離に接近していくカメラワークです。カメラが顔に接近していって、顔が画面からはみ出すくらいの超アップになっているケースが多かったです。アップというよりは接写に近いような印象がありますが、鈴木雅之さんのドラマでよく見かける手法です。ただし、鈴木さんの場合、真っ正面からのアップをギミック的に使用するケースが多いのに対して、「ズッコケ3」では、カメラが常時、被写体の近くで回っている――という感覚が持続していました。

 撮影の小野彰久さん

調べてみたところ、撮影の小野彰久さんは「双子探偵」の撮影も担当していたようです。「双子探偵」も手持ち撮影〜ステディカム系のカメラワークが特徴だったので、手持ち撮影を得意とするカメラマンなんだと思われます。とはいえ、「双子探偵」のカメラワークには、変則的なものが多くて、見ていてトゥーマッチに感じられることがありました。それに対して、「ズッコケ3」では、変則アングルとか長回し系のショットはほとんどなくて、被写体に肉薄することだけを心掛けていたように感じられます。「ズッコケ1」と「2」の録画ビデオが若干残っていたので、念のために見直してみましたが、映像の肉薄感が「3」とはまったく違います。

「ズッコケ3」のカメラワークは、表面的な派手さには欠けるかもしれませんが、手持ち撮影の新しい可能性を開拓したという意味で高く評価したいです。一見地味なところにこそ、演出の本質があるんだと思います。ちなみに、第1話末尾の「ズッコケクラブ」で、カメラマンの姿が画面の隅に小さく映っていました。ステディカムではなくて、小型のカメラを肩にかついで撮影しているように見えました。あれが、小野さんなんでしょうか。それとも助手orダミーのカメラマン?(~_~;)

なお、ステディカム系の映像といえば、「幻のペンフレンド2001」の第11話が印象深いですが、この11話のみ撮影が石川一彦さんという人でした。(第12話の撮影は第10話と同じ人です) ステディカム系のカメラマンはそんなに多くないと思うので、この2人の名前はチェックしておくことにします。なお、調べてもわからなかったのが、「私の青空」のカメラマンです。小野さんか石川さんの可能性が高いと思うのですが、どなたか分かる方はいらっしゃいませんか? 月曜日の放送分を録画保存している方がいらしたなら、クレジットの部分を確認していただけると助かります。よろしくお願いいたします。m(__)m

 マークス、安藤奏など

若干余談になりますが、劇中に出てきたマークスというグループも良かったです。演じているのが旧「三人組」のメンバーでそれもおいしかったんですが、歌っていた曲もGS歌謡風のノスタルジックな曲で、えらく気に入ってしまいました。(^^) キーボードの音色なども、70年代前半風なんですが、ひょっとして誰かのカバーなんでしょうか? CDが出てるなら入手したいです。サビの部分で“恋のレース……”などと歌っていたので、それをキーワードにして検索してみたのですが、上手くいきませんでした。もし、この曲に関して情報をお持ちの方がいたら教えてくださるようお願いいたします。m(__)m

ちなみに、ハチベエがマークスのCDを買ってきて、暗い自室でそれを聞いているうちに記憶が蘇える――というシーンも、映像と音楽のマッチングが絶妙で、味わい深いシーンのひとつです。また、ハチベエの語源がマークスだったというオチも、なかなか手の込んだオチで面白かったです。マークスの石坂晴樹(旧シリーズのハチベエ役)のニックネームがハチベエで、そこからとった――という、同義反復のようなオチでした。(^^ゞ

「ズッコケ三人組」で検索していて分かったことなんですが、ハカセ役の安藤奏(あんどう・かなで)という子は、子どもマニア(?)の世界では有名な子みたいで、彼のファンサイトがいくつか見つかりました。そういえば、第1話の「ズッコケクラブ」でも、彼の接写系アップがフィーチャーされていました。ファンサイトの情報によると、彼の弟もタレントみたいで、安藤響(あんどう・ひびき)だそうです。(^^ゞ 2人とも、日テレのオムニバスドラマ「X'masドラマスペシャル〜花摘みじいさん」(脚本:山田珠美、演出:高橋直治)に出ていたそうです。ここの日誌(99/12/23)でも取り上げました。

最後にもうひとつ蛇足を……。(^^ゞ 公式サイトの掲示板を見ていたら、「六サヨ」「浪花」「まぼペン」に比べると「ズッコケ」は映像や演出がフツーすぎて面白くない――という書き込みがありました。ボクの感想はこれとは正反対なんですけど、人間の感性というのは難しいもんですね〜。(T_T)

 参考文献

――文中に出てきた、「被写界深度」という用語やビデオ撮影技術については、以下のサイトを参考にしました。被写界深度は、レンズだけでなくアイリス(絞り)も関係してくるのですが、そうした技術的なことに興味のある方は、そちらを参照してください。また、技術系のサイトでオススメのサイトがあったら、教えてくださるようにお願いいたします。m(__)m

◆◆ビデオ基礎講座◆◆
http://www.acc96.com/basic_course.htm

Motoki's WebPage AMMONITE(主に掲示板その2)
http://home.catv.ne.jp/ff/motoki/?


01/04/14  SPEED STAR

脚本:大石哲也
演出:大谷太郎
演出補:小笠原直樹
プロデュース:大平太、仲野尚之(日活)
AP:鈴木香織
出演:滝沢秀明、柴田恭平、吉川ひなの、大野智、菅野美穂、岸谷五朗etc
制作著作:日本テレビ
関東放送枠:日テレ・土曜9時

放送前日まで、こんなドラマがあることを知らなかったんですが、急場しのぎで制作されたドラマなんでしょうか? それにしては、映像やカット割りのクオリティは高かったように思います。短期間で、これだけのものを作ってしまう日テレ〜日活系のスタッフはスゴイなと思ってしまいました。

ただ、脚本・キャラ設定・ドラマの流れなどを含めて良かったと聞かれると、ツライものがあります。(^^ゞ 特にBGMがイマイチでした。ハードロック〜グランジ系のBGMというのは、ドラマのテンポ感を平板にしてしまいますね。あと、笑わせたいのか、泣かせたいのかがハッキリしない場面が多かったです。滝沢秀明の鼻血の表情はコミカルで面白かったのですが、ドラマ全体で見るとそのシーンだけ浮いてます。(^^ゞ チグハグな部分が多いという意味では、「マツジュン版金田一少年」に近いのかもしれません。――総論じみたことを言うなら、特撮〜アクション系の演出というのは過去のノウハウが活かせるけれど、キャラクターの演出は一から考えないとダメだから時間がかかる、ということでしょうか。

カーチェイスのシーンなどは、以前大谷太郎さんが演出した「蘇える金狼」みたいでしたが、その他のドラマでも「大谷さんって、カーチェイス系の演出が好きなのかも?」と感じた記憶があります。走行中のタイヤのアップとか……。(^^ゞ で、カーチェイスのシーンはそれなりに手の込んだカット割りになっていたと思います。「大谷さんらしいな」と思ったのは、カーチェイス映像の合間に挿入される滝沢秀明のアップです。そこだけ恋愛ドラマみたいな甘いニュアンスになっていて、妙に可笑しかったです。

同じことは、ラストの倉庫(?)のシーンにも言えることで、菅野美穂と滝沢秀明のアップは恋愛ドラマ風で、岸谷五朗は「沙粧妙子」みたいなサイコ系、その他の映像はアクション系と、いろんなテイストがごっちゃになった幕の内弁当みたいなシーンだと思いました。でも、幕の内弁当だと思って見れば、悪い出来じゃなかったと思います。個人的には楽しめました。ただ、多くの視聴者が幕の内弁当を期待していたかどうかは難しいところです……。

倉庫を脱出した車の中で柴田恭平が死ぬ(?)シーンは、だんだん光が強くなって露出オーバーで顔が白くなるという演出が印象的です。手法自体はめずらしくないのですが、死ぬシーンで、なおかつ滝沢秀明にも同じことをやるというのが、アイドルドラマ的な発想でスゴイなと思いました。(^^)

気になったのは、柴田恭平&古尾谷雅人による警察署の屋上シーンです。あの屋上がセットなのかロケなのか、よくわかりませんでした。あのシーンのためだけにセットを組むとは思えないのですが……。(^_^;)


01/04/14  危険な扉〜愛を手錠で繋ぐ時

脚本:山崎淳也
演出:吉田使憲(1)、六車俊治、本橋圭太
演出補:石川剛、常廣丈太(テレ朝)
プロデュース:梅沢道彦・樽井勝弘(テレ朝)、小川良尚(OGA)、神山明子(アズバーズ)
プロデューサー補:田中清孝
制作協力:アズバーズ
企画協力:高島健一(esプロジェクト)
制作:テレビ朝日、OGA
関東放送枠:テレ朝・土曜11時

吉田使憲さんがどういう人なのか、まったく知りませんが、第1話を見た印象では、メリハリがハッキリしている分かりやすい演出をする人だなと思いました。「金田一少年」みたいな効果音がバンッ!……と入ってくるところもそうですが、表情アップのニュアンスにも劇画的で単純明解な分かりやすさがあったと思います。細かいニュアンスよりも、強いインパクトを重視した表情が多くて、特に、鳥羽潤のふてぶてしい表情が強力です。伊藤裕子の表情も、いかにも“私アヤシイですよ”という感じなので笑えます。(^^ゞ

明るめの映像に青いフィルター処理をしているシーンが多かったですが、慣れればそんなに気にならなくなるのかもしれません。このドラマはセカンドDが六車俊治さんだから、その意味でも目が離せないです。山崎淳也さんの脚本しだいでは、大映チックな派手なミステリーに仕上がるかもしれません。(^_^;)


01/04/15  ラブストーリー(1)

脚本:北川悦吏子
演出:生野慈朗(1)(2)、土井裕泰、今井夏木
プロデュース:植田博樹
演出補:?
プロデュース補:森雅之
関東放送枠:TBS・日曜9時

見る前は、トヨエツのキャラ設定がステレオタイプすぎて嫌だったんですが、実際に見てみたら、そんなに違和感なく見れました。ストイックなユーモアのセンスがこのドラマの決め手だったようです。演出上のポイントもこの“ストイックなユーモア”にあったと思います。(^^ゞ

これみよがしに笑いを取りにいく場面はほとんどなかったのですが、軽い笑いを誘う場面はたくさんありました。登場人物はマジメに行動(芝居)しているのですが、それを第三者である視聴者が見ると微妙に可笑しい――というタイプの笑いです。さらにいうと、視聴者は、笑った瞬間にその登場人物に親しみを覚える、という仕掛けになっているわけです。(^^ゞ

生野慈朗さんの演出も、この微妙な可笑しさに力点を置いていたように感じました。会話の間の取り方とか、カット割りの組み立てなどに、そうした演出意図を感じました。BGMが少な目なのも、そうしたストイックな演出の一環なんでしょう。会話の微妙なニュアンスを活かすためには、音楽が少ない方がいいというワケです。トヨエツの自宅内シーンにおけるローアングル広角レンズ系の引きのカットなどにも、気まずい空気感を印象づけたいという意図があったのかもしれません。

ラストに出てきた、お見合いでバッタリというオチはミエミエの展開なんですが、このシーンでも、演出は抑えた感じになっていて、微妙なニュアンスが可笑しいという、ストイックなユーモアを追求していました。(^^ゞ こうした“やり過ぎない”演出がこのドラマの特徴だと思います。また、テラスみたいなところで一同が会して執筆を催促するシーンも興味深かったです。登場人物の座り位置がむちゃくちゃ不自然なんですが、引きのカットで気まずい空気感を出したかったという意図があったのかもしれません。このシーンは席をコロコロ替えるなど、比較的笑いに対して積極的な演技〜演出になっていましたが。

トヨエツの実家は下町のせんべい屋でしたが、このシーンは「BL」における常盤貴子の実家に雰囲気が酷似していました。ラストのタイトルバックなども「BL」を思わせるような雰囲気でした。また、「BL」的ではありませんが、トヨエツ&香取慎吾が住むマンションのセットも、演出上の見どころのひとつでしょう。特に廊下・階段・ロビーなど、このドラマの主要舞台が、このマンション内であることがよくわかる出来映えでした。(^^)

ところで、「自分の書いたものを、読者がちゃんと読んでくれているかどうかよくわからない」とかいうセリフがありましたが、これは北川さんのホンネなんでしょうか。ボクですら、この日誌を書きながら「ちゃんと読んでくれてるのかな?」なんて思ったりしますが、一緒にしてはいけませんね。(笑)

――それにしても、有名脚本家のドラマには有名俳優がそろうということがよくわかるキャスティングですね。(^^ゞ


01/04/18  私を旅館に連れてって(2)

脚本:相沢友子
演出:小椋久雄(1)(2)、村上正典(3)

脚本的だけなら、かなり御都合主義的な展開なんですが、演出が落ち着いたトーンなので、それに引きずられて違和感なく見れてます。後片付けの調理場で、観月ありさが残った桜鯛を食べながらと風間杜夫と話すシーンなどは、小椋ワールドが全開という感じでした。あえて言語化するなら“エロティックなしみじみ”でしょうか。このシーンの冒頭で、金子賢や馬渕英里何を先に帰しちゃうところがミソです。こういうシーンが好きな人は、小椋ドラマから逃げられません。(^_^)

観月ありさが宙を見つめながら、自分の気持ちや考えをしゃべるのを見ていると、「放課後」の3〜4話でも、同じような演技をしていたのを思い出します。(^^) 向かい合う観月ありさと浅野ゆう子にクレーンカメラが接近していく映像でラストになるところも、「放課後」っぽいですね。(^o^)


01/04/18  嫁はミツボシ。(2)

脚本:清水有生
演出:松原浩(1)(2)、斎藤郁宏、加藤新

電話が掛かってきてしまったため、後半の30分しか見てません。第1話よりは改善されているような気もしますが、ウソ泣きの上戸彩とか、相変わらず後味が悪い展開です。

唯一気に入ったのは、萬田久子がお店に押しかけてきて、森田剛に橋爪オヤジのことを誉めるシーン。この話を聞いて森田剛の気持ちが変わるワケですが、最初のうちは立って話を聞いていた森田剛が萬田久子と同じテーブルに座ることで、気持ちの変化を表していました。こういう演出は好きですね。この瞬間だけ、森田剛がものすごく良いヤツに見えました。(笑) まあ、他の登場人物がひどすぎるっていうのもあるんですが……。(^^ゞ

「あなたを日テレにクギ付けにして」……彼女の手はそうささやいた。(笑)


01/04/19  R-17(2)

脚本:寺田敏雄
演出:国本雅広(1)(2)、久野昌宏(3)

前半のハイライトは、やはり松重豊の「少しでも変化してるか!」でしょう。一歩間違えるとギャグになっちゃうんですが、そこは国本雅広さん、緊迫感の中にもクールなテイストを残した仕上がりになっていました。とはいえ、思い出すと笑っちゃいます。来週から、この2人が見れないのかと思うと寂しいです。(^^ゞ

後半のハイライトはテニスコートのシーンです。テニス部員が引き上げてしまった後に、残された主要人物の表情を、時間を割いてしつこく撮っていたのが印象的でした。「少年は鳥になった」で、山下智久が死んだ直後の様子をていねいに撮っていたのを思い出しました。言葉にならない時間を省略しないで描いているわけです。

ただストーリーは、かなり中途半端な感じがします。この1〜2話は17歳の心を描いたというよりは、変態教師のセクハラ事件を描いた2時間サスペンスみたいな印象もあります。ただ、連ドラの頭に2時間サスペンス的なエピソードを持ってくるのは、視聴率的には意味があるかもしれません。


01/04/19  ムコ殿(2)

脚本:いずみ吉紘
演出:木村達昭(1)(2)、西浦匡規(3)

このドラマはセットや小物に力が入っていますね。本格的なホームドラマを作るという意気込みが伝わってきます。

生活していると部屋に物が増えてゴチャゴチャするものですが、そうした生活臭さが良く出ているセットだと思います。キッチンのセットもそうだし、ソファーのあるリビングと、テーブル・椅子のあるダイニングが、狭苦しそうに隣接しているところも良いです。さらに、神木隆之介が(ソファーではなく)カーペットの上に座ってテレビゲームをしているところもgoodです。(^^ゞ 相葉雅紀だけラーメンを食べてる(間食?)シーンもありましたが、こういうところも芸が細かいです。

長瀬智也&竹内結子の部屋や相葉雅紀の部屋もゴミゴミした感じが良いです。また、相葉雅紀の狭そうな部屋でも、カメラがローポジションだったりするところも渋いです。上から撮っちゃうと、親近感が薄れちゃうんですよね。(^^ゞ ちなみに、相葉のゴミ箱を見て長瀬が「ティッシュが……」などと呟いていましたが、アドリブなんでしょうか。(笑)

前半はコント〜ギャグが中心でした。台本〜ネタ的にはイマイチ新味に欠ける内容でしたが、カット割りや芝居のリズムなどは、かなり緻密に計算されていたようです。ウクレレでコントにメリハリをつけているのも、古典的な手法ですが上手いです。と同時に、効果音付きのBGMも印象に残りました。長瀬には慎吾ママみたいな芸風が入っていたようですが、撮影現場で練られたネタが多いような気がします。

――なお、コントではないですが、パラパラ漫画のエピソードから神木隆之介のイルカの話に展開する部分も、よく出来てると思いました。後半の家庭内結婚式は無理がありすぎると思いましたが、作品トータルでみれば許容範囲内でしょうか? (^_^;) もう一つ文句を言っておくと、竹内結子がキレるシーンは、ちょっとおおげさすぎると思います。


01/04/21  ちゅらさん(第3週)

脚本:岡田惠和
演出:榎戸崇泰(第1週)(2)、遠藤理史(3)、大友啓史
制作統括:菅康弘
制作:NHK
関東放送枠:NHK・連続テレビ小説

な〜んか遠藤雄弥の死と同時に、ボクの好きだった「ちゅらさん」も終わっちゃったような気がしなくもないです。(笑) ヒロインの国仲涼子が登場する第2週以降は、コメディ主体なんですが、カメラワークにしてもカット割りにしても野暮ったい印象が強くて、イマイチ気持ちよく笑えないです。とはいっても、脚本とキャスティングは悪くないし、そこそこに楽しいドラマではあるんですが、あくまでも“そこそこ”という感じです。期待が大きかっただけに演出の物足りなさが目についてしまいます。今期は「ズッコケ3」が良いだけに、なおさらそう思ってしまいます。

コメディ部分は全般的に乗りが悪いし、国仲涼子や山田孝之にしても十分に魅力を引き出せていないという感じです。ベッキーなんてフジの深夜にやっていた「秘密倶楽部」の方が数段面白かったです。個々の演技は型にハマリすぎている印象が強くて、そこからはみ出すようなニュアンスが少ないんですよね。同時に、音楽もコントの乗りが悪い一因だと思います。古臭いというか上品すぎるというか……。「もし共テレとかMMJの制作だったら……」なんて、ついつい思っちゃいます。(^_^;)

第3週に入って遠藤理史さんが演出するようになってから、若干改善に兆しも見られます。第13話に出てきたゴーヤーマンのデモンストレーションは、アニメ〜アクション系のカット割りだったし、ゴーヤーマンを持ってタクシーの中を覗き込む余貴美子のアップ(第16話)も、月8〜アイドルドラマっぽいセンスです。他にも余貴美子関連のシーンの出来が良くて、国仲涼子が余貴美子のところに押しかけるシーン(第18話)は国仲のニュアンスが良かったです。この調子で少しずつ改善されていくことを期待しましょう。

今のところ全話録画保存しているのですが、シリアスだった第1週以外は消しちゃっても良いような気もしてます。第1週は小浜島のロケーションと、遠藤雄弥の特異な存在感だけでグイグイ引き込まれてしまいました。遠藤雄弥の不健康そうな顔を見ていると、この子は死ぬために生まれてきたんじゃないかと思ってしまいます。(^_^;) 特に「オバァは死ぬのが怖い?」という会話が出てきた第4話が印象に残っています。

公式サイトに載っている菅Pや榎戸Dのコメントを読むと、“明るさ”だとか“元気”ばかりが強調されていて、それも興ざめしてしまう一因なんですが、脚本展開を見るかぎりでは、岡田さんが描きたいのは、裏側に暗さ(死)を秘めた明るさなんだと思います。そうでなければ、ドラマの冒頭で遠藤雄弥を死なせた意味がないです。一見ダメパパに見える堺正章と、血がつながっていないことを知った息子(ゴリ)とのエピソードなんかも、ヘビーな要素を孕んでいます。このドラマは登場人物のヘビーな部分を謎解き風に小出しに見せていくという傾向があります。

それにしても、遠藤雄弥のセリフには惹かれるものがありました。最終回を先取りしているというか、死者の眼(神の視点?)で世界を見ているという感じです。ドラマの結論といえそうな言葉は、すでに遠藤雄弥が全部言っちゃってるようなものなんですが、彼の言葉を意味を身を持って確認することが、国仲涼子(このドラマ)に課せられた命題なんでしょう。遠藤雄弥の元には空から小浜島のチラシが落ちてきましたが、国仲涼子にとっては遠藤雄弥が、天使から与えられた命題みたいなものなんでしょう。(笑)

……が、しかし、岡田さんの持ち味というのは、最終的には死者の眼(最終回)を拒絶してしまうところにあるんだと思います。遠藤雄弥にしたって、決して死者の目を持った少年ではなかったです。死者の目を持ちたいを願っていた普通の少年だと考えるべきでしょう。第4話はそういうエピソードです。――さて、このドラマが最終回を迎えた時に、ボクはどんな日誌を書くんでしょうか? これも結論の出ない問題です。(^^ゞ


01/05/03  R-17(4)

脚本:寺田敏雄、瀧川晃代(5)(6)(10)
演出:国本雅広(1)(2)(5)(6)(9)、久野昌宏(3)(4)(7)(8)(11)、白川士(10)

水川あさみと一條俊が大活躍した、この3〜4話が、今のところ一番好きです。水川あさみが親に向かって「るっせーんだよっ!」と怒鳴るシーンで、その声質にしびれてしまい、ビデオを何回もリピートしてしまいました。(笑) 桃井かおりなどもそうですが、声に強烈な存在感があります。水川あさみは「美少女H」(脚本・演出:大森美香)の頃から好きだったので、声を聞いただけで誰だか分かります。……ホント、いい声してるよな〜。(^^ゞ

タレント名鑑を見てみると、水川あさみは「美少女H」以後、「タブロイド」「P.A.」「金田一少年の事件簿(映画)」「白線流しSP」「あぶない放課後」「小市民ケーン」「疾風(ハヤテ)のように」「花村大介」「カバチタレ!」といった作品にゲスト的に出演しています。ボクはそれらを全部見ていますが、今回の「R-17」3〜4話は、彼女の代表的な仕事といってもいい出来だったと思います。(^^ゞ

とはいえ、今回のドラマでもっとも重要だったのは一條俊(いちじょう・さとし)だったんじゃないかと思います。中山史奈と水川あさみが一條俊に魅せられて転落していく――というのが基本ストーリーですが、こういう場合、一條俊のキャラクターが安っぽいとドラマ全体の印象が安っぽくなってしまいます。その点、今回の一條俊には悪魔的な魅力が感じられたので、ドラマ全体の印象に深みが出ました。ラストでは一條俊も改心するのかな――と思った人が多いと思いますが、そう思ってしまうは、一條俊の描き方が平板な悪人風にならないで、人間的な厚みを持っていたからでしょう。これは、演出の功績も大きいと思います。

「つまらない大人の目をしてる」という一條俊のセリフが印象的でしたが、彼の言葉にはロックミュージシャン的な美意識も感じられました。たとえば、ラルク・アン・シエルの歌詞には「一緒に地獄に落ちよう!」みたいな内容が多いですが、天国よりも地獄の方にエロスを感じる感性というのが存在しますが、「R-17」には、この種のエロスが充満しています。寺田敏雄さんの趣味なのか、内山聖子Pの趣味なのか、分かりませんが、渋いと思います。

このドラマで言えば、「親を殺して一千万円」という場合の「親」というのが「日常」の象徴だし、「南の島」というのも「地獄」と読み替えた方が、水川あさみや中山史奈の心情が理解しやすいと思います。これとは逆に、「南の島」を「天国」の意味で解釈してしまうと、社会常識のないバカ女の物語になっちゃいますね。(^^ゞ

――「地獄」といえば「昔の男」第8話(01/06/01)に「地獄」という言葉がありました。大沢たかおの父親は「地獄とは背負ってるものを放り出さないことだ」と言っていましたが、水川あさみや一條俊にも同じことを言っても、……通じないか? (^^ゞ 一般的に言うと「自分は地獄に落ちる」とか言ってる人というのは、それが快楽(エロス)だという自覚が足りないんですよね。本人は被害者意識が強いから、他人に迷惑をかけても何とも思わなかったりします――。中谷美紀は「10分先のことをでも良いから想像しろ」と言ってましたが、その行為にエロスはないからなぁ〜。(^_-)

演出の話が後回しになってしまいましたが、久野昌宏さんの演出も良かったと思います。特に突出した要素があるワケじゃないんですが、ひとつひとつのカットやカット割りの完成度が高くて、1カットたりとも手を抜かないで撮っている――という印象を受けました。

国本雅広さんとの対比でいうと、全体的にオレンジっぽい色合いが強いかもしれません。手持ち撮影っぽいカメラワークも多かったような気がします。また、1〜2話の松重豊や、5〜6話の上原あゆみと比べると、エキセントリックな描写が抑えてあって、現実味のあるキャラクター描写を重視していたように感じます。一條俊の撮り方がいい例で、ワルっぽい表情だけじゃなくて、人間的な陰影を感じさせるような部分も多かったです。更衣室で中谷美紀に「南の島でのんびり暮らすというのは本気なのか」と問われたときの表情とか。

久野昌宏さんといえば、99/12/10に「クロイツェルソナタ」(平山綾、小沢真珠)という深夜ドラマの演出をしていましたが、今回の演出に通じるテイストがありました。きっと、この手の美少女物が得意なのかもしれません。

――どうでもいいことですが、一條俊って山田まりやの同級生だそうです。以前、NHKの番組で対談してるのを見かけたことがあります。(^^ゞ あと、「カレーラーメン」のCMに出ていたのも彼だと思います。ただし、「カレーラーメン」は旨くないです。(^^ゞ 今、手元のタレント名鑑で引いてみたら一條じゃなくて一条になっていました。番組にテロップは一條でしたがどっちが正しいんだ?


01/05/17  R-17(6)

脚本:寺田敏雄、瀧川晃代(5)(6)(10)
演出:国本雅広(1)(2)(5)(6)(9)、久野昌宏(3)(4)(7)(8)(11)、白川士(10)

5〜6話は、上原歩と宮崎あおいによるレズ物語。水橋研二が悪役で薬味的に出演してるのもおいしかったです。ただ、物語の収め方には御都合主義的な安易さを感じたし、上原歩が宮崎あおいを監禁するシーンも、大映ドラマ〜野島ドラマみたいで、やや興醒めしました。

ただ、上原歩(みたいなタイプ)が宮崎あおい(みたいなタイプ)を好きになるという設定に妙にリアリティが感じられて、キャスティングがセンスが良いのかな、なんて思いました。上原歩の「好き」には「守りたい」というニュアンスがあるワケですが、宮崎あおいの風貌は、その辺の感覚を上手く具現化していたと思います。

教室に立てこもるシーンでの、セリフの間とか、空気感を強調した演出に、国本雅広さんらしさが出ていたように思います。

それから、第5話のラストで、中谷美紀の大きさは変わらないで背景だけが動いていく映像がありましたが、これは「ケイゾク」でおなじみの手法だったので笑っちゃいました。(^^) 《ズームアウト+ドリーイン》なのか、《ズームイン+ドリーバック》なのか、よくわかりませんが、上原歩と宮崎あおいのシーンでも使われていました。

用語の意味を簡単に説明すると、「レンズをズームアウトしながら、カメラが被写体に接近する」のが《ズームアウト+ドリーイン》。これとは逆に、「レンズをズームインしながら、カメラが被写体から後退する」のが《ズームイン+ドリーバック》です。どちらも、被写体の大きさが変わらないで、背景だけが動いていく映像に仕上がります。ヒッチコックが好んで使った手法だそうです。(^^) 最近のドラマでは、「嫁ミツ」第8話でも使われていました。西村雅彦が浅田美代子に「友達を殺しちゃうのね」と言われてショックを受けるシーンです。


01/05/23  私を旅館に連れてって(7)

脚本:相沢友子、太田愛(8)
演出:小椋久雄(1)(2)(4)(6)(8)(10)、村上正典(3)(5)(7)(9)(11)

このところ、安直なストーリーが多すぎて、不満が強かったのですが、この第7話は脚本・演出とも比較的いい出来だったと思います。村上正典さんの演出した回は、小椋久雄さんの演出した回よりも、カメラワークやカット割りが派手になっていて、「HERO」で多用された、広角レンズ〜パンフォーカス系の映像も多いです。パンフォーカスというのは、「同一画面の中で、近景から遠景まで、すべての被写体に焦点が合っているようにする撮影技法」のことです。

「好きな人のことは、たくさん知りたくなる」というのが、この回のテーマでしたが、岸田健作とのデートのエピソードから、テーマを展開するところがシブイと思いました。岸田健作がちょっとかわいそうに見えちゃうところも悪くないです。あと、金子賢と矢田亜希子のシーンもちょっとエロチックな心情吐露があって面白かったですが、このシーンはカット割りにも力が入っていました。さらに、黒川芽以とクラスメイトの少年のエピソードも意味ありげでしたが、このエピソードはこれでお終いなの?

ところで、翌週の第8話は脚本が太田愛さんだったので注目していましたが、エピソード的にはこの第7話の方が味わい深かったように思います。太田愛さんは「ウルトラマンティガ」「美少女H」「本当にあった怖い話2」などで、ボクが注目している脚本家の一人ですが、最近では「ココだけの話」など、テレビドラマに登場する機会が増えているようです。


01/05/26  ズッコケ三人組(8)

脚本:戸田山雅司(1)(2)(7)(8)(9)、藤本匡介(まさすけ)(3)(4)(5)(6)(10)(11)
演出:田中賢二(1)(2)(11)、藤澤浩一(3)(4)(5)(8)(9)、落合将(6)(7)、三鬼一希(10)
撮影:小野彰久(1)(2)、佐藤護(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)

第3話でカメラマンが代わってしまい、カメラワークもイマイチになってしまったんですが、その後、徐々に改善されてきて、ここ数週間は1〜2話に匹敵するカメラワークが堪能できます。特に、この第8話はカメラワークを見ているだけでも、個人的には十分に満足です。(^_^;) 第8話はUFOと接近遭遇するという物語の前半だったのですが、後半の第9話は、演出意図不明のチープなセットのシーンが中心で、映像的な完成度の高かった第8話との落差が大きくてショックです。(T_T)

ところで、このドラマでハチベエ役をやっている小林宏至は、表情のニュアンス演技が緻密でスゴイです。演出〜カット割りなどを見ても、微妙な表情演技を要求している場面がやたらと多いですが、それだけ撮影現場の評価が高いということなんでしょう。いやいやホントにスゴイです。(^^)


01/05/30  嫁はミツボシ。(8)

演出:松原浩(1)(2)(6)、斎藤郁宏(3)(4)(5)(8)(9)(10)(11)、加藤新(7)

(データ部分は「テレパル」を参照したので、実際とは違っているかもしれません)

中盤のドタバタのシーンが、「寺内貫太郎」「ムー」などの久世光彦ドラマみたいで良かったです。ネタが次々と連鎖していくようなドタバタ物で笑ったのは久しぶりです。脚本に書いてあったネタだけじゃなく、リハーサル中に出てきたネタも多かったような気がします。特に、西村雅彦の「そうだんです」なんて、脚本の段階では面白いんだかつまらないんだか、判断不可能でしょう。(^^)

ラストシーンでは、木村佳乃の昔の恋人役で東幹久が登場しましたが、この辺のセンスも久世ドラマっぽくて良いです。森田剛の恋心というのも久世ドラマ系なんでしょうか? いずれにしても、ここに来て「嫁ミツ」が面白くなってしまいました。みにくいアヒルの子が白鳥になったような第8話でした。^/^


01/06/02  危険な扉(8)

脚本:山崎淳也
演出:吉田使憲(1)(2)(8)、六車俊治(3)(4)(7)、本橋圭太(5)(6)(9)(10)

ストーリーやキャスティングにチープな感じが強いせいか、視聴率も良くないみたいで、あまり話題になっていないドラマです。(^^ゞ しかし、演出に限って言うなら、なかなかの力作だと思います。あまりお金がかかっているようには見えませんが、カット割りなどはかなり手が込んでいるし、撮影や編集にも手間ヒマがかかっていると思います。

吉田使憲さんが演出した1〜2話は、明るめの露出と青いカラートーンで統一されていましたが、六車俊治さんが演出した第3話以降は、シーンによってカラートーンがコロコロ変わるようになりました。特に第3話は、前半は青いトーンだった映像が、後半に入ってから濃いオレンジ系にガラッと変わってしまって、その対比が強烈でした。第4話以降はシーンによって使い分けるようになり、7〜8話あたりからはノーマルなカラーの映像が増えているようです。悪く言えば、一貫性〜統一性に欠ける演出ですが、演出マニア的な視点で見るなら、これはこれで面白い演出です。

カメラワークやカット割りにも、手の込んだ撮影やアイデアがいっぱいあります。第3話のオープニングのクレジット表示は、画面が縮小する→その余白部分にテロップが表示される→画面が元に戻る――というパターンを何回も繰り返していましたが、「女子アナ。」のオープニングを連想させる手法でした。また、細川茂樹が公園のベンチで伊藤裕子に過去の事件をバラすシーン(第4話?)では、公園で遊んでいる子どもたちを映したショットが出てきました。――この他、吉田さんや本橋圭太さんが演出した回でも、この手のアイデアはたくさんあって、見ていて飽きないです。(^^ゞ 演出に関しては、いろいろ実験して遊んでるという面があるのかもしれません。

カット割り以外では、表情アップが印象に残ります。うさん臭いキャラクターが多いせいもありますが、インパクトの強い表情アップが多いのも、このドラマの特徴でしょう。伊藤裕子の不気味な表情とか、ナイフを舐めてる忍成修吾とか……。細川茂樹なんかは、今までと、あまり変わり映えのない悪人キャラですが、それでも、過去の作品よりパワーアップしているような気がします。忍成修吾といえば、第8話冒頭に出てきた、目玉をひんむいている表情も怖かったです。(笑) 忍成修吾と鳥羽潤は「FLY」の時に共演済みですが、あの時とはすっかりキャラが変わってしまって胸が痛みます。(^^ゞ

各回の後半では、原千晶と鳥羽潤が一対一で向き合うシーンがお決まりのように出てきますが、2人とも表情に迫力があって、予想していたよりもがんばっているな、という印象を受けます。特に、六車さんが演出した回では、険しいだけじゃなくて、メロドラマっぽいニュアンスも感じられて、手応えを感じます。一番印象的なのは、第4話ラストに出てきた留置場のシーンで、「リップスティック」を思わせるような情感がありました。こんな言い方をしたら失礼だとは思いますが、原千晶と鳥羽潤で月9並みのシーンを構築してしまう六車さんの手腕はスゴイと思います。鳥羽潤に関してなら、第3話ラストの屋上シーンでの涙も迫力ありました。

ところで、連続殺人事件の犯人は誰なんでしょうか。一般論でいうと一番怪しくない人が犯人なんですが、このドラマで一番怪しくないのは、心臓病の女の子です。あの子が犯人だったら、鳥羽潤が犯人をかばう動機は分かるんですが、あの病状で連続殺人は無理だと思います。まあ、「QUIZ」みたいなケースもありますが……。(^_-)


01/06/02  ロズウェル〜星の恋人たち(4)

製作総指揮:ジェイソン・ケイティムズ
演出:デビッド・ナター(1)(2)、デビッド・セメル(3)(5)、クリス・ロング(4)、アービン・ブラウン(6)
関東放送枠:NHK・土曜11:50

いきなり個人的な話で恐縮しますが、主演のシリ・アップルビー(リズ役)以外に出演者にあんまり親しみを持てなくて、それがネックになっているのか、イマイチ気持ちが入らないドラマです。(^^ゞ 特にマックス役の男とか、なんか、いけ好かない顔してると思いませんか?

で、演出の話ですが、デビッド・セメルが演出した第3話が際立っていたように思います。芝居の間やカット割りなど、緊張感の高い演出が多かったし、カメラワークなども一番凝っていました。また、真っ正面ショットが連続する共テレっぽいカット割りなどもあって、どこの国の演出家も同じようなことをやってるんだなと思いました。(^^ゞ

クリス・ロングが演出した第4話は、シリ・アップルビーの魅力を引き出すことに重点をおいたアイドルドラマ的な演出傾向が強かったです。友人のマリアの横に座って寝転がったり、夜中にマックスに会いにいった際に胡座(あぐら)をしていたり。(^^ゞ 表情のニュアンスなども、いろいろと工夫していたみたいです。

――ちなみに、この日誌では、俳優名を使うのを原則にしていますが、このドラマの場合、シリ・アップルビー以外は俳優名がよくわからない(覚える気にならない)ので、役名で書いています。ご了承ください。(~_~;)

もう一つ、オープニングのタイトルバックの後に、スタッフの名前がズラズラ表示されますが、肩書きだけを見てると、かなり変で笑えます。“EXECUTIVE PRODUCERS”の後に、“EXECUTIVE PRODUCER”という肩書きの人が何人も出て来たりします。“S”が付いてる人と付いていない人では、どっちが偉いんでしょうか?

日本のドラマでも、プロデューサーと制作が別だったり、プロデュースとプロデューサーが別だったり(「お前の諭吉が泣いている」)するケースはありましたが、こんなことをやってるのは日本人だけかと思ったら、そうでもないみたいです。それと比べるとディレクターとか演出は1人のことが多いです。――プロデューサーという肩書きは、うさん臭いですね。そういう肩書きの名刺をもらったら気を付けましょう! (^_-)


01/06/03  ラブストーリー(8)

演出:生野慈朗(1)(2)(5)(6)(10)(11)、土井裕泰(3)(7)(8)、今井夏木(4)(9)

第1話をめぐって賛否が割れたのを意識したのか、第2話以降はBGMとかが派手になりました。(^_-) ただ、最近はまた地味な感じに戻ってきているような気もします。とはいえ、このドラマも、そんなに細かくは見ていないので、気になったことだけいくつか書いておきます。

セリフの中に、恋愛小説(ラブストーリー)批評と受け取れるような言葉がやたらと多いのですが、これって植田博樹Pの趣味なんでしょうか? 特にラブストーリーを消費する人たちに関する考察に、植田Pの気配(?)を感じてしまいます。(^_-) ちゃんと考えるのが面倒なので、大雑把な書き方をしてしまいますが、過去の北川ドラマとは微妙に違うテイストを感じます。(^^ゞ

第7話に出てきた貧乏臭いデートの風景も植田Pっぽい――なんて言ったら失礼? 喫茶店の大窓に秋葉原の看板らしきものがデカデカと映っていましたが、妙にインパクトがあって印象に残ります。本物の看板をそのまま使うといろいろと問題ありそうですが、合成だったかどうかは未確認です。いずれにしても、デート・加藤晴彦・秋葉原というのは、妙に相性が良さそうな(?)組み合わせではありました。(^^ゞ

このドラマは、床の上に直接座る場面がやたらと多いです。土下座もそうですが、普通に話してるシーンでも、ソファーではなく床に座っているケースが多いです。これは、3人の演出家に共通している傾向だと思います。ただし、毎週、そんなことを意識して見てたわけじゃないですけど……。

もう一つ、どうしても気になったのは、テラスのシーンにおける登場人物の座り位置。全員が向き合って座っていることが、ほとんどないみたいです。全体(全員)を画面に映さないで、会話を進行させて、いきなり意外な人物が画面に登場する――なんて演出も、アブノーマルな座り位置と組み合わせることによってインパクトを増します。ただし、この場合のアブノーマルというのは、通常のドラマと比較した場合の話です。現実世界においては、ありがちな座り方かもしれません。(^^ゞ

田舎(栃木?)のシーンの優香も良かったですね。野菜を売ってるところは、ちょっと「20歳の結婚」っぽかったけど、田舎っぽい雰囲気と妙にマッチしてました。(^^ゞ


01/06/04  ラブレボリューション(9)

脚本:藤本有紀
演出:永山耕三(1)(2)(4)(6)(8)、小林和宏(3)(7)(10)、平井秀樹(5)(11)、本間欧彦(9)
プロデュース:本間欧彦、平賀公泰
関東放送枠:フジ・月曜9時

(データ部分は「テレパル」を参照したので、実際とは違っているかもしれません)

あんまりちゃんと見ていないんですが、いろいろ突っ込みながら見ると、結構楽しめるドラマだと思います。藤木直人(ふじき・なおひと)とか押尾学など、キャラクターに謎めいた部分を持たせることによって、ゲーム的な面白さを生み出しているような気もします。

ちゃんと見ていないのでハッキリしたことは言えないのですが、演出的には藤木直人よりも押尾学の方に力を入れているような印象を受けます。ボクの場合、藤木直人があまり好きじゃないから、そう感じてしまうのかもしれませんが、そうしたことも考慮して見てみても、やっぱり藤木直人の演出が弱いように感じます。空港のロビーで留守電のメッセージを聞くシーン(第8話)なども、その後の江角マキコが屋上でメッセージを聞くシーンと比較すると、弱い感じがします。

それに比べると、押尾学の方はカット割りなども手が込んでいるシーンが多いです。まあ、押尾学の場合、物語的にもキャラクター的にも存在感が薄いから、演出でバランスをとってるという事情でもあるのかもしれませんが……。(^_-) 事情といえば、彼は江角マキコと同じ研音の所属ですが、そうしたことも関係あるのでしょうか?

第7話で、押尾学が舞台の上から愛の告白をしていましたが、告白の部分だけ声にエコーがかかっていなくて、発声もボソボソ風になっていました。当然、映像も顔のアップのみになっていました。要するに、告白の部分だけ、舞台的な空間感覚や空気感を排除するという演出コンセプトになっていたワケです。

で、この第9話ではプロデューサーの本間欧彦さんが、久々の演出をしています。この回の演出ポイントは押尾学の豹変ぶりだと思いますが、ボクは「ラブストーリー」に通じるようなユーモアを感じてしまいました。このユーモアは演出意図通りなんでしょうか。それとも、カッコ良く撮るつもりだったのが、結果的に間の悪いユーモアみたいになってしまった――ということなのでしょうか。ボクは前者だと思いますが、だとしたら、第9話の押尾学と、本間さんの演出はかなり良いですね。「新・お水の花道」で見てみたい気がします。押尾学は「20歳の結婚」から4クール連続でドラマ出演していますが、その成果がこの第9話に現れていたのでしょうか。(^^ゞ


01/06/04  ある日、嵐のように(10)[終]

脚本:マキノノゾミ
演出:尾崎充信(1)(2)(3)(9)(10)、海辺潔(4)(5)(6)、野田雄介(7)(8)
制作統括:銭谷雅義
主題歌:リベラ「サルヴァ・メ」
関東放送枠:NHK・月曜9:15

初感想が最終回になってしまいました。スミマセン。m(__)m

脚本はよく出来ていたと思います。しかし、演出面では物足りない感じもあって、前半は静観(?)していて、後半に入ってから、ようやく気合いを入れて見るようになりました。形の上では、セカンドDやサードDが演出するようになってから、面白くなりました。(~_~;)

尾崎充信さんの演出は、どうもボクの肌に合わないみたいです。オープニングが大河ドラマ風なのに、ドラマの本編には大河的なスケール感は感じられないし、エンディングのリベラの主題歌もオシャレ過ぎるような感じがします。ボクとしては、リベラの主題歌のイメージで全体のイメージが統一されていれば、もっと楽しめたと思います。検察庁内のセットもあまりインパクトが感じられないし、逆光系の照明多くて、やたらと暗い画面も、演技のニュアンスがよくわからなくて嫌でした。(~_~;)

海辺潔さんが演出するようになってからは、カメラワークやカット割りにメリハリが出てきて、演技や表情のニュアンスなども分かりやすくなりました。特に、佐藤浩市・斉藤由貴・崎本大海が色っぽくなったように感じます。中井貴一と夏川結衣については、よくわかりません。(笑) 夏川結衣に関しては、第3話で佐藤浩市と別れるマンションの廊下のシーンが一番だったような気がします。

印象に残っているのは、拉致された崎本大海が佐藤浩市に助け出されるシーン(第5話)。崎本大海の口に貼られたガムテープを、はがした時の痛そうな表情が面白かったです。台本に書いてあったとは思えないから、海辺さんのアイデアなんでしょう。崎本大海は、前半は存在感の薄い存在だったのですが、ボクの場合、このシーンを境に身近に感じられるようになりました。出生の秘密を知ってからは、妙にウルウルしている表情アップも多くて、奇妙な存在感を感じました。

7〜8話の野田雄介さんは海辺さん以上に思いきった演出をしていて、見ていてニヤニヤしてしまうことが多かったです。中井貴一らが崎本大海に出生の秘密を話すシーン(第7話)は、その大部分がワンカットの長回しで、表情もクリアに映っていて緊張感がありました。斉藤由貴が佐藤浩市に会いに行こうとして、崎本大海にバッタリ会ってしまうシーン(第8話)も、手の込んだ映像編集になっていました。

それに比べると9〜10話はイマイチなんですよね。物語上のクライマックスは9話で、特に病院の屋上で中井貴一や崎本大海がキレるシーンなどは、それなりに迫力があるのですが、それは脚本が良いからであって、ビデオで見直してみると演出面で物足りない印象が残ります。夏川結衣が死んじゃうシーンは、佐藤浩市が病院に向かう映像が不気味な予感を漂わせていて悪くなかったとは思いますが、あの状況で急死するという脚本に抵抗感があって、ちょっと引いちゃいました。(~_~;)

最終回では、すでに事件関連のエピソードは収束していて、エピローグ的に登場人物の心情吐露がメインでした。ハッキリ言って、蛇足っぽく感じる部分も多かったですね(江守徹を除く!)。特に、佐藤浩市との和解を、回想風のピクニック(?)のシーンで簡単に済ませてしまったのが残念です。本当はそこが一番面白くなりそうな気がするのですが……。それを言い出したら、佐藤浩市を死なせる必要はなかった、っていう話になっちゃうんですが。(;_;)

墓参りのシーンもイマイチ感慨のわかない演出で、桜の木のシーンも、悪くないんだけど物足りないです。第5話のガムテープの映像みたいな人間味が感じられる映像が欲しかったです。一言で言うとアイドルドラマ的なセンスってことになっちゃうのかな?

――で、ラストカットは中井貴一の「どうぞ!」でストップモーション。(@_@) なんか、生理的に合わないです〜。(「天近」の加藤あい風) (^_-)

尾崎充信さんといえば、最近は「葵〜徳川三代」ですが、96年の「暴力教師」(時任三郎・斉藤由貴)なども手がけています。「暴力教師」は6月18日から再放送されるみたいです。海辺潔さんは、「元禄繚乱」で何話か演出した後、「深く潜れ」でセカンドDを務めていました。野田雄介さんは、ボクは初めて見る名前です。


01/06/04  ピュアソウル〜君が僕を忘れても(9)

脚本:江頭美智留、松田裕子(10)
演出:唐木希浩(1)(2)(5)(6)(10)、岡本浩一(3)(4)(7)(9)(11)、森田空海(8)
プロデュース:堀口良則、木村元子、霜田一寿
音楽監督:近藤由紀夫、小西香葉
music:FELNANDO MOURA、MARCOS SUZANO
助監督:河村毅
プロデューサー補:角田正子
制作協力:ザ・ワークス
制作:読売テレビ
関東放送枠:日テレ・月曜10時

(データ部分は「テレパル」を参照したので、実際とは違っているかもしれません)

う〜ん、このドラマもそんなにちゃんとは見ていないんですが、チーフの唐木希浩さんが演出した回が、一番良いような気がします。シリアスシーンにおけるカット割りとか、表情アップのニュアンスに違いを感じます。たしか第5話に、カレーライスを作るとかいって小栗旬に病気のことがバレちゃうシーンがありましたが、しゃべっている人のアップより、聞いている人のリアクション系のアップの方が多いカット割りで、緊張感があって良かったです。第6話では、退院した永作博美を囲んで実家でパーティをしていると、大谷直子が押しかけてくる――というシーンがありましたが、ここでも、引きとアップのタイミングが意表を突いていて、面白かったです。(^^)

あと、永作博美の職場のセットですが、原色系の派手な色が多くて、SF映画の宇宙ステーションみたいな雰囲気になっています。なんでそんな風にしたのか、演出意図がまったくわかりません。(^^ゞ ――どうでも良いことですが、いしだ壱成のエンディングテーマは、タイトルバックを含めて結構好きです。ホノボノ系? (^^)

ところで、このドラマに描かれているアルツハイマー病の症状ですが、記憶障害の部分のみが極端に誇張されているような気がします。ボクは専門家じゃないから、ちゃんとしたことはわかりませんが、ちょっと不自然な印象を受けます。

――ところで、テレビ雑誌を見ていたら、今秋にNHKで若年性アルツハイマー病を扱った単発ドラマが放映される、という記事を見つけました。芸術祭出品作品で出演は松坂慶子・大杉漣・加藤晴彦だそうです。「ある日、嵐のように」もそうだけど、最近のNHKって民放のマネっぽい企画が多くないですか?(^^ゞ


01/06/05  陰陽師(10)[終]

原作:夢枕獏
脚本:小松江里子(1)(2)、田中江里夏(3)(5)(7)(10)、長川千佳子(4)、渡辺美穂子(6)(8)(9)(10)
演出:小田切正明
音楽:H.GARDEN
制作統括:小見山佳典、一井久司
プロデュース:近藤晋
共同制作:NHKエンタープライズ21、東北新社クリエイツ
関東放送枠:NHK・火曜11時

(データ部分は「テレパル」を参照したので、実際とは違っているかもしれません)

豪華なイメージ映像が付いてるラジオドラマみたいな作品だったので、ボクみたいに、セリフをちゃんと聞かない視聴者には辛いドラマでした。(T_T) 「鬼小町」のエピソードは、けっこう面白かったのですが、それ以外は、ひたすら眠かったです。(-.-)

暗くて良く見えない映像が多くて、アップが極端に少ないから、雰囲気以外に映像から伝わってくるものが少ないです。しかも、アップが少ないということは、必然的にカット数も少なくなるから、映像上のテンポ感も皆無に近いです。で、こういうストーリー性の薄い映像に、ボソボソ系のセリフが延々と続くと、眠くなっちゃうか、ストーリーがわかんなくなっちゃうかの、どちらかです。原作を読んでいたりすると印象が違ったのかもしれませんが……。

もう一つ気になったのは、セットとかロケーションなど、物語の舞台がほとんど印象に残っていないことです。たとえば、安倍晴明の住居セットにしても、ほとんど記憶に残っていません。暗い映像が多いせいか、引きのカットが多いわりには、セットが良く見えないという事情もあります。予算の関係で大掛かりなセットが組めなかったのかもしれませんが、ロケを含めて、もう少しインパクトのある映像が欲しかったような気がします。とにかく、真っ暗なところでブツブツ言ってるシーンが多すぎっ! (^_^.)

音楽を担当しているH.GARDENというのがどういう人たちなのか、まったく知りませんが、音楽的には、“トリップホップ”とか“アブストラクト・ヒップホップ”などと呼ばれていた音楽に近い印象を受けます。まあ、トリップホップというのは、眠たい音楽でもあったから、夜11時台に放送されたことを含めて、すべての要素が、ボクを眠くさせる方向に働いていたドラマだったのでしょう。お終い。(-_-)


01/06/07  ムコ殿(9)

演出:木村達昭(1)(2)(5)(6)(10)(12)、西浦正記(3)(4)(7)(8)(11)、久保田哲史(9)

第7話まで演出補を務めていた久保田哲史さんの演出でした。深夜ドラマを別にすれば、連ドラを演出するのは、今回が初めてだと思います。一言で言うと、撮影現場のお芝居の乗り(ライブ感)を重視した演出でしたが、ちょっと単調な印象も否めません。それでも、前半のギャグなどは、それなりに見れてしまうのですが、後半のシリアスシーンなどはちょっと物足りないです。一番面白かったのは入浴のシーンでしょうか。(^_^)

演出補(チーフAD)というのは、撮影現場の進行を取り仕切る仕事だから、そういう人が演出をすると、現場の乗りを重視した演出になりやすい傾向があると思います。

 西浦正記株は買い!

他の演出家に話を移すと、木村達昭さんはカット割りやBGMに重点をおいた、編集主導のコメディ演出に力を発揮しています。これとは逆に、西浦正記さんはシリアスシーンの演出に、際立った才能を発揮しています。特に、神木隆之介・篠原涼子・竹内結子らの表情アップには、深い情感を感じます。シリアス系のエピソードで印象的なのは、西浦さんの担当回が多いハズです。

西浦さんに関しては、「神様、もう少しだけ」のころから注目していて、「バスストップ」のときも、コマメに日誌に取り上げていたのですが、今回は書きそびれてしまいました。しかし、西浦さんの才能は今回の「ムコ殿」で十分に証明されたといっても良いでしょう。テレ朝の六車俊治さんの次に要注目なのは西浦さんだと思います。もし、演出家株なんてものがるのなら、西浦株は買いです。(~_~;)

第7話に出てきた、会議室で長瀬智也が長谷川初範に対してキレる(?)シーンなんて、むちゃくちゃ緊張感の高い演出になっていて、息を呑んでしまいました。また、広角レンズ〜接写系のアップや、オレンジ系のカラー処理も多いところも、今回の西浦さんの特徴です。

ところで、西浦さんといえば、もともとは西浦匡規という名前だったのですが、「バスストップ」からは、西浦正記になってしまいました。「バスストップ」では、光野道夫さんも光野通起なんていう名前になっていましたが、こちらは元に戻っています。個人的には西浦匡規の方が親しみがわいて良いのですが、ボクがとやかくいう問題じゃないですね。(~_~;) ちなみに、両方とも読みは“まさのり”で良いのでしょうか?

ところで、今年の4月に出た『テレビドラマの仕事人たち』(上杉純也・高倉文紀著/KKベストセラーズ)という本には、巻末に「ディレクター&プロデューサー人名辞典」というのがあるんですが、六車さんや西浦さんは載ってないんですよね。気になって調べてみたら、「R-17」の久野昌宏さんも載ってないです。悲しいな〜。(~_~;)


01/06/08  天国に一番近い男(9)

脚本:越智真人(第8話から“おちまさと”名義)、細川徹(7)(連名)、他?
演出:吉田秋生(1)(3)(6)(9)(12)、片山修(2)(5)(8)、金子文紀(4)(7)(10)、戸高正啓(11)

(脚本家のデータは「テレパル」を参照したので、実際とは違っているかもしれません)

 じれったい!

率直に言って、毎週の命題の行方には何の興味もありません。さらに言えば、学園の黒幕や天童世死見(陣内孝則)の黒幕にも興味がありません。ボクが気になるのは、松岡昌宏・加藤あい・桜井翔の3人にまつわる人間ドラマと、三角関係の行方です。第9話までを見たかぎりでは、3人とも家族に問題を抱えている――というのが隠しテーマだったみたいです。しかし、ボクみたいな視聴者にとって、このドラマは最高に“じれったい”です。(*_*) ここまで辿り着くのに9週間もかけないでくれ〜!(;O;)

「謎が謎を呼ぶ」という形容表現がありますが、このドラマの場合はそれとは異質です。毎週、ネタを小出しに見せているだけで、展開らしい展開がないから、謎が謎を呼んだりはしてないワケです。特に、天童世死見の黒幕ネタなんて、毎週「椎名さん……!」とか言ってるだけだから、見ていてイライラしてくるんですよね。――バラエティ番組とかに出てくる「番組はまだまだ続きます。チャンネルはそのままで」とテロップに近いものを感じます。チャンネルを変えないで我慢して見ているとエンドロールが流れてお終い――というヤツです。(^^ゞ

先日、TBSの火曜深夜にやっている「24人の加藤あい」(おちまさと・加藤あい)という番組を見てたら、おちまさとさんが「最初っから手の内を全部見せちゃうのは勇気が要りませんか」などと発言していました。「天近」を見て、イライラしている人だったら、妙に納得してしまうのではないでしょうか。いずれにしても、謎の見せ方がケチ臭いドラマです。(^^ゞ

 片山Dが描く加藤&桜井

で、ボクみたいな観点でから見て、面白かったのは2・5・8話なんですが、なぜだかすべて片山修さんの演出した回になっています。片山さんは、加藤あいと桜井翔の関係(エロチックなニュアンス?)をていねいに撮っているという感じがします。吉田秋生さんや金子文紀さんが演出した回の桜井翔は単にアヤシイだけなんですが、片山さんの演出した回は、アヤシイだけじゃない人間的なニュアンス(屈折した恋心?)を強く感じます。

放課後の教室でダンスの練習をするシーン(第5話)などもそうですが、第8話冒頭の教室もシーンなども、微妙に味がありました。松岡昌宏が家庭訪問の話で桜井翔に振るのですが、彼の家が貧乏だと知っている加藤あいが、わざと話題を自分の家の話に逸らせようとするワケです。で、それに気がついた(?)桜井翔が加藤あいの方を見る――という演出〜カット割りでした。第5話とか8話には、2人の心の交流みたいなものがさりげなく描かれているから、見ていて感情移入できるのですが、他の回ではそういう部分が弱いです。(^^ゞ

“謎の見せ方”の話に戻るなら、桜井翔のバックグラウンドをもっと早い段階でバラしてしまった方が、「金八」の風間俊介みたいな、せつないドラマになったんじゃないかと思います。桜井翔または風間俊介の心の痛みを視聴者だけが知っているという構造です。――とはいっても、これを書いている時点(第9話)では、桜井翔のバックグラウンドはまだ謎なんですけどね。(^^ゞ

 その他、妻夫木聡など

第8話でもう一つ印象に残ったのは、森下愛子が実の母親のハガキを松岡昌宏に見せるシーン。流しの前で2人の会話を聞いている妻夫木聡の姿が、何度か挿入されていますが、地味だけど渋い演出だったと思います。2人の会話に同席しないで、流しで聞き耳を立てているというアイデアが渋いワケですが、こういうことは台本には書いてないと思うので、片山さんの発案なんだと思います。片山さんが、登場人物の心の動きを、ていねいに映像化しているということが、よくわかるシーンでした。

――これとは直接関係ありませんが、第5話冒頭で「ファイナルアンサー」とか言ってる加藤あいも最高でした。(^o^)/

第9話のことを何にも書いてないですけど、桜井翔が単なるアヤシイ奴に戻ってしまっています。来週の第10話は桜井翔のネタがメインっぽいのですが演出は金子さん。う〜ん……。4話と7話って、あんまり好きじゃないです。お芝居のニュアンスが雑な感じがしました。(^^ゞ


01/06/09  「明日があるさ」(8)

脚本:高須光聖(1)(2)(6)、多摩栞(3)、大野敏哉(4)(7)(10)、
   羽原大介(5)(9)、宮原氣(みやはら・いぶき)(8)
演出:三枝孝臣(1)(2)(5)、李闘士男(3)(6)(9)、岩本仁志(4)(7)(8)(10)
プロデュース:河野英裕、岡本昭彦(吉本興業)
オーガナイザー:白岩久弥
協力プロデューサー:壁谷悌之
演出補:村田淳志
プロデューサー補:伊藤禎剛
制作協力:吉本興業
協力:ワイズビジョン、泉放送制作
関東放送枠:日テレ・土曜9時

(脚本のクレジットは連名になっているケースもありますが、上記のデータは「テレパル」を参照したもので、そこまでフォローできていません。)

 ドラマに漂う“不慣れ”な感じ

李闘士男さんは、もともとはバラエティのディレクターですが、最近では「美少女H」「世にも奇妙な物語」や映画「踊る大捜査線」の番宣内ドラマの演出などを手がけています。連ドラを演出するのは、多分今回が初めてだと思います。チーフDの三枝孝臣さんや脚本の高須光聖さんもバラエティ畑の人だから、出演者もスタッフもバラエティ出身者で固めたドラマだといえそうです。

だからなのか、どこか“不慣れな人たちが作ったドラマ”という印象が否めません。ストーリーにしてもキャラクターにしても、ヒネリとか深みといったものがあまり感じられません。職場を舞台にした人情ドラマという意味なら、「駅〜STATION」(95年)以前の土9に戻ったといえなくもないのですが、そうした職場人情ドラマと比較してみても、このドラマの出来はいまひとつです。くだらないと思いつつも、つい最後まで見てしまうような作劇上の上手さがあまり感じられません。

同じことはキャラクターにもいえます。登場人物が多いわりには印象に残るキャラクターが少ないという感じです。吉本系のレギュラー出演者よりも、俳優系のゲスト出演者の方にインパクトを感じるのはボクだけでしょうか。綿引勝彦&小西真奈美のラーメン屋親子(第4話)とか深浦加奈子の女社長(第8話)とか。(~_~;)

 Dの色が出た第6話など

このドラマは、回によって、脚本家・演出家・メイン出演者がコロコロ替わるので、その辺が見どころなのかもしれませんが、ボクはそこまで気合いを入れて見ていません。この観点で面白いと思ったのは第6話です。李闘士男さんの演出ですが、人情ドラマというよりは密室系ドタバタ・サスペンスといった趣きのドラマに仕上がっていて、過去の李さんの作風を意識した脚本〜ストーリーでした。橋龍吾の起用理由がイマイチよくわからない――なんて思ってたら、最後にドンデン返しがありました。(^_^)

後半に入ってから、岩本仁志さんの担当回が急増しているところを見ると、オーソドックスな人情ドラマにシフトチェンジさせたいという局サイドの意図があるのかもしれませんが、それが上手くいってるのかどうかはよくわかりません。吉本系の出演者よりも俳優系の人たちに重点をおいた方が、安心して見ていられるのですが、「面白いか?」と聞かれると「まあまあ」という答えになっちゃいます。(~_~;)

要するに、普通の人情ドラマだったら、吉本のメンバーで作る必要性はない――というのが結論ですね。(~_~;) そもそも、バラエティ系の出演者&スタッフで人情ドラマを作る、というコンセプトからして間違ってるような気がします。多くの視聴者は「ラブコンプレックス」みたいなナンセンス系のドラマを期待していたんじゃないでしょうか。

 人事系の話、他

協力プロデューサーの壁谷悌之さんって、TBSのドラマのAPなどでおなじみの名前だったんですが、3月頃のshin-Dで見かけて、ビックリした覚えがあります。そちらも泉放送制作だったので、そこの所属なんでしょうか?

人事系の話(?)といえば、日テレのチーフプロデューサーが異動になったみたいですね。前CPの佐藤敦さんは、いつの間にか肩書きが“企画”になっています。これは「新・星の金貨」も同じです。以前は、連ドラの途中でも平気でCPの名前が代わっていたんですが、さすがにそれではマズイと思ったのか、今回は“企画”という肩書きで名前だけ残しているみたいです。実は、いま気がついたのですが、このドラマのタイトルって、カギ括弧が付いてるんですね。つまり、正確には「「明日があるさ」」と表記するのが正しいみたいです。(*_*)

――ドラマもイマイチですが、その感想を書いたこの日誌自体も面白くないですね。読み返してみましたが、文章に気持ちが入っていないです。自分で書いておいてこんなこと言うのも何だけど、テレビ記者匿名座談会みたいな感じがしてイヤです。(>_<) そういえば、一番言いたかったことを、まだ書いていませんでした。仲間由紀恵と山田花子の出番が少なすぎっっ!(怒;;


01/06/09  ちゅらさん(第10週)

演出:榎戸崇泰(第1週)(2)(7)(11)、遠藤理史(3)(4)(8)(12)、大友啓史(5)(6)(9)(14)、
   高橋錬(10)(13)、藤井靖(11)

 キーワードは“音無可憐”

キーワードは“笑顔”じゃなくて“音無可憐”なんじゃないでしょうか。東京に上京してからは、コメディ的な要素が強くなって、国仲涼子の演技にも天然ボケっぽいニュアンスが強くなりました。だからなのか、気がついたらBGMも「音無可憐」っぽくなっているような気がします。な〜んか、音楽の打ち合わせで「音無可憐」のサントラとかが掛かっていそうな気がします。(~_~;)

高橋錬さんは、初めて見る名前ですが、「音無可憐」的なコメディの演出にかなり力を入れていたようです。映像とかカット割りに凝っている感じはないのですが、笑いを取ることに関してはかなり積極的だったと思います。

国仲涼子にしても山田孝之にしても、東京に出てきてからギャグの乗りが良くなっているみたいです。脚本・演出・演技における笑いの方程式が固まってきたという印象を受けます。と同時に、表情アップのニュアンスが豊かになったように思います。また、これも東京に出てきてからだと思いますが、画面からはみ出すようなアップの登場頻度が増えているような気がします。全体的に月8〜アイドルドラマ的な要素が強くなっているのは間違いないです。

沖縄時代のエピソードやギャグは、個人的にはあまり面白いとは思わなくて、ゴーヤーマンにもさほど興味はわきませんでした。それが、余貴美子が登場してから、だんだん面白くなってきました。物語的にも余貴美子との出会いは重要なポイントなんですが、演出〜ギャグ的にも余貴美子の登場は大きかったんじゃないかと思っています。

他の演出家に目をむけると、遠藤理史さんは、押しの強いカット割りでユーモアやメリハリをねらう傾向があるようです。大友啓史さんの演出は照明に凝っていて、逆光系の照明を使うケースも多いです。エリー(国仲涼子)のテレビ出演を見る沖縄の実家のシーンなどは、テレビの光が見ている人たちの顔に当たっている感じが渋かったです。チーフの榎戸崇泰さんはニュートラルな印象ですが、ギャグのセンスはイマイチでしょうか。

 小橋賢児、他

ところで、このドラマ。ヒロインの明るい性格に対して一番辛口なのは岡田惠和さんなんじゃないのか――という気がしなくもありません。彼女の楽観的な性格に水をさすようなエピソードやセリフが毎週のように出てきます。(~_~;) 13日放送分では、警備員にスーパーボールを捨てられちゃいますが、常識的に考えたら、もう発見される可能性は少ないです。だとしたら、なかなか辛口な展開。運命的な出会いなどで結婚なんてしちゃいけない――という岡田さんのメッセージなんでしょう。(笑)

今後のポイントは、ずばり小橋賢児でしょう。どのようにしてエリーに惹かれていくか……ではなくて、どのようにして“お笑いキャラ”に変身していくか、が見どころです。はっきりいって、二枚目風の小橋賢児には興味ないです。(^^ゞ 「鬼の棲家」で深田恭子の下着の匂いを嗅いでた頃みたいな芸風を期待してみたいです。隠していたエロ本をエリーに見つけられちゃうとか。(笑)

小橋賢児の彼女(?)役の小西真奈美は大友さんが演出した第9週からの登場ですが、「深く潜れ」で大友Dつながりですね。「可愛いだけじゃダメかしら」の希良梨みたいな雰囲気ですが、そういえば希良梨って最近見ないですね。

ところで、翌第11週の演出は、榎戸崇泰さんと藤井靖さんの連名になっていますが、実際はどういう分担になっているのでしょうか。カットの組み立て方などに意外性が感じられることが多くて、見ていて面白いです。スーパーボールを捜している村田雄浩のショットで、画面の端からいきなり小橋賢児が登場(フレームイン)してきたり……。これって藤井さんのセンスなんでしょうか?


01/06/10  仮面ライダーアギト(20)

脚本:井上敏樹
監督:田崎竜太(1)(2)(7)(8)(13)(14)、長石多可男(3)(4)(9)(10)(15)(16)(17)、
   六車俊治(5)(6)、石田秀範(11)(12)(18)(19)、鈴村展弘(20)(21)

う〜ん……、中だるみというワケでもないと思いますが、4月あたりから煮詰まっているような印象を受けます。未解決の謎とか伏線が多すぎるから、ノートでも取りながら見ていないと、ワケがわかんなくなっちゃいます。演出面でも、2〜3月あたりに確立した手法を反復しているという印象です。

「クウガ」でチーフだった石田秀範さんが監督した18〜19話は、めずらしく2話でストーリーが完結したので、うれしくなっちゃったりしました。(^^ゞ 19話に出てきたラーメン屋での警察3人組のギャグは面白かったし、後半のシリアスシーンも緊張感があったし、少し復調の兆しが見えてきたような気もします。(^^ゞ

で、20話はチーフ助監督だった鈴村展弘さんの演出。東映のHPにある紹介が面白いので無断引用させていただきます。(^^ゞ

「デビュー作」はイイ。エネルギーや想いが凝縮してて、何だか「デビュー」って言うそれだけで「イイよね!」ってとこありますね。そう、20話はデビュー作。1話からチーフ助監督として現場を仕切り、牽引してきた男・鈴村展弘31才、本格的監督デビューです。鈴村監督はこれまで「クウガ」で17話「臨戦」、31話「応戦」の総集編などを手掛けていますが、オール新撮での本編演出はこれが初めて。(中略)監督としての撮影中は、好きなお酒も控えて毎晩演出の予習に頭を悩ましていた様子。曰く、夜通しコンテを考え倒した結果、朝も近い頃「もう寝なきゃ、でも寝る前にもう一度おさらい……」と台本を読み直したとたん「本当にこれでいいのかあ?」と再び悩み倒す、という眠れぬ夜を過ごしていたそうです

「コンテ」というのは、英語のcontinuity(連続性)の略で、「絵コンテ」ともいいます。「カット割り」とか「カメラ割り」とほぼ同じ意味です。撮影前に監督の頭の中にあるイメージを指すときは「コンテ」で、撮影現場での具体的な作業を指すときは「カメラ割り」で、編集作業を経た後は「カット割り」と呼ぶことが多いような気がします。もちろん、ボクは業界の人間ではないので、正確なところはわかりませんが……。あと、「コンテ」という言葉には、画面の構図という意味合いが強いようにも思います。

で、20話ですが、苦労して考えただけあって、手の込んだカット割りが多かったです。藤田瞳子の横顔のアップの先に要潤が映っているショットなどは、広角レンズを使ったアニメっぽい構図でした。その他でも、全体的に広角レンズを使った接写系の映像が多くて、特に圧巻だったのは、パン屋さんでの家庭内ギャグ(?)のシーンでしょう。広角系の正面アップを連続させて、アニメっぽいリズム感を作り出していました。秋山莉奈や田辺季正(たなべ・ときまさ)の表情にも味があって、このシーンはかなり好きです。(^^ゞ

もうひとつ、印象に残ったのは、女の子の表情が、いつも以上に可愛かったり凛々しかったりしたこと。藤田瞳子や秋山莉奈はもちろんのこと、「かつての恋人」などと言ってるニセ家政婦の女も、ちょっと色っぽく見えちゃったりしました。(^^ゞ こういうところにも、監督の趣味・嗜好が出ちゃいますね。(^_-)


01/06/10  ゼニゲッチュー(4)

脚本:高山直也、三上幸四郎、他
演出:猪俣隆一(1)(2)(6)、高橋直治(3)、佐久間紀佳(4)、長谷川康(5)
プロデュース:倉田貴也、角田朋子(日テレ)、東城祐司、二宮浩行(MMJ)
出演:風間俊介、長谷川純、錦戸亮、ルー大柴、川島なお美etc
制作協力:MMJ
関東放送枠:日テレ・日曜11:40

5月中旬に始まったドラマですが、6月いっぱいで終わっちゃうみたいなので、ここで日誌を書いておきます。風間・長谷川・錦戸と、ジャニーズJr.の演技派をあつめて、ドタバタコメディにトライしています。しかも、制作がMMJと、今後のプライム枠(土9)での展開をにらんでいるような企画です。(^^)

それにしても最近のMMJって、すごい仕事量ですね。今期は「嫁はミツボシ。」(TBS)「ルーキー」(フジ・関テレ)「R-17」(テレ朝)と、連ドラ3本も制作していますが、この「ゼニゲッチュー」で民放4局を同時制覇したことになります。(*_*; MMJといえば川島なお美ですが(?)、上記の3本には出てこないので、おかしいと思っていたら、こんなところでしっかり登場しています。あんまり出番は多くないんですが……

内容的にはそんなに面白いとも思わないのですが、演出的には、「アギト」第20話と同様に“広角レンズ+接写系”のアップの多用が目立ちます。注目したいのは、この第4話を演出した佐久間紀佳さんという人。初めて見る名前だと思いますが、後半のシリアスシーンに緊張感があって、ちょっと引き込まれてしまうような吸引力を感じました。猪俣隆一さんが演出した1〜2話が、いろいろ実験して遊んでいるような作風だったのに対し、3〜4話はシリアスなシーンに力を入れた演出になっているようです。こういうところも、プライム枠を意識して作っているような……。(^^ゞ


01/06/11  蜜蜂の休暇(1)

脚本:池端俊策
演出:門脇正美(1)(2)(3)、西谷真一(4)(5)
制作統括:一柳邦久、銭谷雅義
共同制作:NHKエンタープライズ21
関東放送枠:NHK・月曜9:15

ボクの場合、好きな脚本家って、実はあんまりいないのですが、池端俊策さんはけっこう好きです。連ドラだと「僕が彼女に借金をした理由」「協奏曲」(TBS)「翔ぶ男」(NHK)など、単発モノでも「我等の放課後」(NHK)「烏鯉(からすごい)」(TBS)など重厚な作品がたくさんあります。なお、「彼等…」の主演は、このドラマと同じく鹿賀丈史で、「翔ぶ男」の制作統括は一柳邦久(ひとつやなぎ・くにひさ)さんです。

今回のドラマの主人公は、20代以降の記憶を失った男という、かなり特異な設定なんですが、学生時代の自分が、社会人として歩んだその後の自分を発見・検証していくというテーマなんですね。ちょっと設定を変えると、SF小説に通じる面白さがありますが、簡単に言えば、「学生時代の自分が今の自分を見たらどう思うか」という話です。「烏鯉」なんかも、テーマ的にはほぼ同じだから、ここ数年の池端さんの大テーマなのかもしれません。

演出的には、屋上から見える街並みの映像が印象的ですが、それ以外でも、商店街など、登場人物の生活空間をクリアに捕らえている映像が印象に残ります。広角系のレンズを使って背景をしっかりと収めている――という感じです。ロケまたはオープンセットと思われるようなシーンも多く、内田朝陽(うちだ・あさひ)のアパートの窓から道路に立つ鹿賀丈史が見えていたりと、リアルな映像が目立ちます。トビの事務所のシーンも、出入り口の外側に街並みが見えているから、ロケまたはオープンセットなんだと思います。

物語の舞台は蒲田のようですが、ボクはこういう物語の舞台がハッキリ見えるドラマが好きみたいですね。「ある日、嵐のように」とか「陰陽師」とかって、物語の舞台・背景(映像的な意味です)・空間がクリアに見えてこないから、しっくりこなかったのかもしれません。――余談ですが、数日前(6/9)に「BSマンガ夜話・陰陽師」の再放送を見ました。番組内でマンガ版の絵が紹介されていたのですが、正直いってドラマよりも絵的なイマジネーションを感じました。――余談お終い。(^^ゞ

それにしても、内田朝陽って、筒井道隆に酷似してませんか? 顔とか声もそうですが、ドラマ内のキャラクターも、筒井道隆の十八番という感じです。この人の名前は、比較的最近どこかで見かけたような記憶があるのですが、思い出せません。ちなみに、彼のメール相手が、同じアパートの浅井江里名なのはバレバレですよね。(^^ゞ どうでもいいことですが、ドラマに出てくるインターネットって、異様にロマンティックですよね。ボクが普段やり取りしているメールなんて、ロマンティックのかけらもないです。(^^;;

合唱のシーンは、ちょっとノスタルジックなテイストがあって良かったです。いまどき、あんなことやってるトビ事務所があるとは思えませんが、そういうところはちょっと「寅さん」的かもしれないです。(^^ゞ 演出の門脇正美さんは「鶴亀ワルツ」などを手がけていた人です。あれも、どこかの温泉町が舞台だったような記憶があります。


01/06/12  グッド★コンビネーション(1)

脚本:森下直(1)(2)(4)(5)、元生茂樹(3)
演出:広瀬満(1)(5)、梛川善郎(2)(3)、久保田充(4)
制作統括:若林久朗
制作:NHK大阪
関東放送枠:NHK・火曜11時

今年の1月にBSで集中放映されたドラマです。「テレパル」の記事には、「この企画を立ちあげた」チーフプロデューサーの土屋秀夫という人のコメントが載っていますが、エンドロールにそれらしき名前は一切出てきません。番組のクレジットなんて、あんまり信用しちゃいけないってことでしょうか。(^_-)

内容的には、昨年放送された「FLY〜航空学園グラフィティ」のお笑い学校版という感じです。鳥羽潤もしっかり出ていますが、鳥羽潤って、NHKと民放でキャラを使い分けているんでしょうか。NHKのときだけ妙に爽やかな役だったりします。NHK大阪の制作だけあって、お笑い系の演出やキャスティングには、かなりこだわりが強いみたいです。終盤に出てきた、生の漫才のシーンは、観客エキストラの人数が半端じゃなかったです。さすがNHKだけあって、お金がかかってます。(^^ゞ

第3話の脚本を担当している元生茂樹(もといき・しげき)さんは、松竹新喜劇の脚本・演出などを手がけていた人で、このドラマでは漫才指導とネタ作りも担当しています。ということは、第3話は漫才のシーンがメインになるということでしょうか。

このドラマの演出も、「蜜蜂の休暇」と同じで、物語の舞台になる空間をしっかり見せるタイプです。観覧車が映っている映像がやたらと多かったのですが、中には合成っぽいものもありました。「浪花少年探偵団」の第1話にも、これに似たロケーションがありましたが、大阪では有名な遊園地なんでしょうか? 

ただしこの先は、登場人物の人間模様と漫才の演出に重点がおかれてくるような感じです。個人的には、鳥羽潤や木内晶子よりも、アクの強そうな川岡大次郎や安達祐実あたりのキャラクターに興味があります。一見自信過剰そうな川岡大次郎が鳥羽潤と組みたがる理由がハッキリしませんが、彼が鳥羽潤を口説き落とすシーンは恋愛ドラマみたいで笑っちゃいました。(^^ゞ 意志の強そうな目が川岡大次郎の持ち味ですが、鳥羽潤の優柔不断で女々しいキャラとで、夫婦漫才的なコントラストを意図した演出なのかもしれません。一方、安達祐実の方は、未知数の部分が多いですが、子役っぽい雰囲気が抜けてきたみたいなので、その辺にも注目です。(^^ゞ

その他の出演者で気になるのは、中村栄美子や中川家礼二など。中村栄美子は、確か「高校教師」でレズの先輩をやっていた人ですが、ドラマで見るのは久しぶりです。あの頃とは少し雰囲気が変わりました。中川家礼二は「ラブコンプレックス」で、木村佳乃の恋人をやっていた人です。それから、鳥羽潤に想いを寄せるバンド仲間風の女の子は、「仮面ライダークウガ」に出ていた葵若菜です。


01/06/13  新・星の金貨(8)

原案:野島伸司
脚本:武田菜穂
演出:吉野洋(1)(4)(7)(10)、倉田貴也(2)(3)(5)(8)、若松央樹(6)(9)
プロデュース:伊藤響、西憲彦、太田雅晴、安念正一
撮影:川田正幸
演出補:相沢淳
AP:岡口真人
編成:梅原幹
企画協力:野島事務所
制作協力:5年D組
技術・美術協力:NTV映像センター、日本テレビアート、バスク
関東放送枠:日テレ・水曜10時

 虚構性と現実性のバランス

第1話を見たときは、シーンによって虚構性と現実性のバランスが一定でないため、違和感を感じてしまいました。その後は、徐々に改善されてきましたが、「SOS」が、現実世界とは違う架空の空間(街)を構築していたのと比べると、「新・星の金貨」は中途半端に現実的な風景が出てきたりして、それが気になります。セットのシーンには、さほど違和感を感じないから、ロケーションが良くないということになるんでしょうか? 

第1話でいえば、原宿のハンバーガーショップのシーンなどがそうです。うそ臭いストーリーと、原宿という現実的な空間は、相性が良くないような気がしました。というか、等身大系の青春ドラマなら問題ないのですが、野島ドラマのシーンとしては、やはり違和感を感じます。たとえば、沖縄から東京に出てくるという点では、「新・星の金貨」と「ちゅらさん」はまったく同じなんですが、「ちゅらさん」に渋谷のセンター街みたいな映像が出てきたら違和感が生じると思います。それと同じような違和感が、ハンバーガーショップのシーンに感じられたワケです。同じような違和感は、沖縄のクルーザーとか、大学のキャンパスのシーンに対しても感じます。

それに比べると、「SOS」に出てきた喫茶店とかは、ドラマ全体の雰囲気と違和感なくハマっていました。「新・星の金貨」の場合、「ちゃらさん」や「SOS」以上に嘘臭いストーリーなんだから、もっと虚構性の高い空間演出を期待したかったです。ただ、この第9話に出てきた、大雨の中で土下座するシーンなどは、嘘臭い感じがよく出ていて、悪くなかったと思います。峰岸徹の「一度裏切ったヤツは二度裏切る」というセリフも芝居がかった感じで、野島ドラマしてました。

このドラマを見て、ボクが連想するのは80年代の大映ドラマ――「乳姉妹」「アリエスの乙女たち」あたりです。特に、高杉瑞穂を見ていると「乳姉妹」の保阪尚輝(現・保坂尚輝)を思い出してしまいます。ただし、もっと大映っぽい演出になっていたなら、個人的には面白く見れると思いますが、視聴率には難しい感じもします。(^^ゞ

 倉田貴也Dの演出

ここまで見てきた印象では倉田貴也さんが演出した回のクオリティが高かったと思います。極端なアップと極端な引きが多くて、中間のショットが少ないのですが、カット割りやカメラワークが派手なわりには、出演者の持ち味をよく引き出していると思います。

個人的には、真(吉沢悠)を応援しながら見ているのですが、倉田さんは吉沢悠を比較的積極的に撮ってくれているような気もします。(^^ゞ 他の俳優のアップで終わらせてもいいようなシーンでも、吉沢悠のアップで終わらせていたりとか。^^; 第9話では、吉沢悠に比重をおいたシーンが多かったです。病状の急変を告知されるシーンとか……。病室での長い手話のシーンも吉沢悠メインのカット割りで、遠まわしな愛の告白ともとれる内容でしたが、鈍感なまひる(星野真里)には理解不可能でしょう。(笑)

また、倉田さんの場合、星野真里と藤原竜也のシーンでは、2人の身長差を意識したアングルが多いようです。星野真里をハイアングルで撮って、藤原竜也をローアングルで撮るというような撮り方です。また、第5話の図書館のシーンでは、極端な引きのカットが印象的でした。重要なセリフはアップで映すというのが一般的な演出ですが、このシーンだけは、あえて逆のカット割りになっていたワケです。(^^ゞ

 日テレのフットワークの良さ

ところで、このドラマは、もともとは鈴木あみで企画されていたそうです。NHKの「深く潜れ」を見て企画されたキャスティングだと思いますが、それがダメになったら星野真里を起用するというところが良いですね。こういうところに、日テレのフットワークの良さを感じます。そういえば、堤幸彦さんも以前「日テレが一番自由にドラマを作っているように感じる」と、インタビューで発言していたことがあります。

「明日があるさ」に、李闘士男さん(「世にも奇妙な物語」や、映画「踊る大捜査線」の番宣内ドラマなど)を起用したり、フジテレビを辞めた岩本仁志さんを引き抜いたり、マツジュン版「金田一少年の事件簿」に下山天さんを起用したり……と、最近の日テレは、柔軟な感覚でドラマを作っているように思います。(^^ゞ 日曜昼のジャニーズドラマ「ゼニゲッチュー」はMMJの制作だし、社外の注目スタッフを積極的に起用しているようです。

このドラマでも、撮影の川田正幸さんは、「二千年の恋」「愛をください」「涙をふいて」「パーフェクトラブ」「神様、もう少しだけ」「ラブジェネ」「ビーチボーイズ」「ロンバケ」など、フジテレビ制作のドラマでおなじみの名前だったりします。技術協力のバスクというのも、フジ〜共テレでおなじみの会社ですが、最近はいろんな番組で見かけます。


01/06/26  グッド★コンビネーション(3)

脚本:森下直(1)(2)(4)(5)、元生茂樹(3)
演出:広瀬満(1)(5)、梛川善郎(2)(3)、久保田充(4)

第2話の序盤を見ていて、中村栄美子や鳥羽潤が色っぽいな〜なんて思っていたら、主要登場人物全員が第1話より色っぽく撮られていました。(^^ゞ 要所要所で、画面からハミ出すくらいの顔アップがバンっと入ってくるのですが、微妙に、センスが良いんですよね。神社のシーンにおける木内晶子のアップとかも印象的です。梛川善郎さんの名前は初めて見る名前なので、どういう人なのかわかりませんが、アイドルドラマっぽいセンスの良さを感じました。

また、全体的にオレンジ〜セピア系の色調が強かったのですが、逆光系の光の使い方なども含めて、絵心を感じさせるショットが多かったです。また、ロケシーンでも広角系のレンズを使って、空間全体を見せるようなショットが印象的でしたが、構図とか色の配置にセンスの良さを感じました。

ところが、第3話は第2話に比べるとオーソドックスな映像/構図が多くて、ちょっと物足りなく感じました。「第2話の印象はボクの勘違いだったのかな……」などと、不安に思っていたら、ラストの屋上のシーン(鳥羽潤・安達祐実)がカッコ良かったです。特に、2人の後ろ姿を映したラストショットなんて、イマジネーションを刺激される良い絵だったと思います。(^^ゞ そういえば、鳥羽潤と安達祐実って「聖龍伝説」のコンビだ。(^^)

余談ですが……。(^^ゞ ついさっき、公式サイトを見てみたら、掲示板で鳥羽潤のお母さんが書き込みしてました(6月20・22日)。いわく「このドラマは、私には、潤が初めて仕事に対する思い入れを持って、演じたドラマのように思えて大のお気に入りです」とのこと。なんか意味深な発言ですが、この作品の鳥羽潤が特に違っているかというと、ボクにはよくわかりません。ただ「以前メッセージをカキコして、潤に叱られちゃった」なんて話は、ホームドラマのワンシーンみたいで、ちょっと親しみが湧いてしまいました。(^^ゞ


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