"ドラマ演出"日誌(2000年7-9月期)


00/06/30  なごや千客万来(2)

脚本:布勢博一(1)(2)、金谷祐子(2)
演出:岡田健(1)(2)、今井洋一
制作統括:大加章雅
制作:NHK名古屋
関東放送枠:NHK・金曜夜9:15

あんまりちゃんと見てないのですが、子役の大高力也の表情アップが多かったのが気になりました。で、ラストのタイトルバックをよく見てたら、その大高力也しか映ってないのに気がつきました。この子役が影の主役ってことなんでしょうか?


00/07/02  怖い日曜日(1)

演出:大根仁
タイトルバック:二階健
撮影:池田英孝
ナレーション:篠井英介
制作協力:オフィスクレッシェンド

生田斗真の不健康そうな表情を見て、これは大根仁さんだな…と思いました。大根さんは、恐怖に慄く表情を不健康っぽく撮るのが上手いみたいです。特にラストの生田斗真の表情アップの映像処理は、大根さんがよく使う手法です。去年やった渋谷すばるのエピソードとか。

若干、新味に欠ける印象もあるので、さほどインパクトは感じませんでしたが、エンディングにかかってた音楽が、カッコ良かったです。昔聞いたことがあるサイキックTVというグループ(?)を連想しました。(^o^)

なお、大根仁さんは、テレ朝・金曜11時の「トリック」の方の演出も予定されてるみたいです。


00/07/03  リミット もしも、わが子が…(1)

原作・脚本:野沢尚
演出:鶴橋康夫(1)
プロデュース:堀口良則、小橋智子、他
制作協力:テレパック
制作:よみうりテレビ
関東放送枠:日テレ系・月曜10時

ボクは過去の鶴橋康夫野沢尚コンビの単発ドラマを見たことがないので、比較はできませんが、「永遠の仔」と比べると、鶴橋カラーは抑え目になっていたように思います。――とはいっても、鶴橋印の演出はそれなりにありました。格子状にスリットが入った照明とか、やたらと白っぽい光の処理とか、ストップモーション〜スローモーションを使ったギミックなど……。あと、貧乏臭い感じとか、空気がジメジメしているような感じとか。(^^ゞ

ドラマの世界観〜雰囲気を提示するという意味では、まずまずの出来だったんじゃないでしょうか。暗くて、ジメジメしたテイストも、ドラマの雰囲気を高めてくれます。ただ、後半の誘拐シーンは、ハラハラさせてくれて良かったのですが、前半部がちょっと冗漫だった気がします。まあ、裏番組の「スマスマ」が終わる時間帯にクライマックスを持ってきたかった……という台所事情もあるのかもしれませんが。

野沢さんの脚本に関して――。“人間の命をお金に換える”というテーマは、昨年フジの「氷の世界」と同じなんですが、こちらの方がリアリティがあります。「氷の世界」のように、生命保険で“命を金に換える”といわれても、イマイチ的外れな印象だったですが、今回は臓器売買なので、生々しい手応えがあります。

あまりに生々しかったせいか、嫌悪感を感じた人も出ているようですが、ボクは気になりませんでした。臓器売買というのは、売春に近い要素があるのかもしれませんね。どっちも身体を売る商売だし……。このドラマに嫌悪感を覚える人は、児童売春のドラマを見たら、やはり同じような嫌悪感を持つのではないでしょうか。

子どものトイレに付き添わない……という、誰もが日常的に経験する“手抜き”が、子どもの命を左右する……という描写も、なかなか辛口でよろしいです。(^_^;) この手の“手抜き”を生活から排除することは不可能だし、そうであるからこそ、やりきれない思いが残るエピソードです。野沢尚さんというと、一般に“文学派”というイメージがあるようですが、こういう部分を指して、文学的というのであれば、若干同意できるかもしれません。“努力すれば良いことがある”みたいな話を、ボクは文学だとは思っていませんから。(^^ゞ


00/07/05  愛をください(1)

脚本:辻仁成
演出:藤田明二(1)、松田秀知
プロデュース:中山和記、梨本みゆき
制作:共同テレビ、フジテレビ
関東放送枠:フジ系・水曜9時

ボクは藤田明二さんという演出家の全体像をちゃんと把握できていないので、藤田さんというと「美味しんぼ」の演出家というイメージになってしまいます。藤田さんは、前回演出した「砂の上の恋人たち」で、ヨーロッパ映画風のお洒落な映像〜カット割りを試みていましたが、今回のドラマも、それとほぼ同じ方向性を目指しているようです。エンドロールを見損ねたので、誰なのかわかりませんが、音楽のテイストも「砂の上…」に近い雰囲気でした。

特に印象に残ったのが、駅前のロケシーン。どこでロケをしているのかわかりませんが、この手のシーンとしては、出色の雰囲気の良さを感じました。電車がホームに入ってくるカットなどにも、独特の趣がありました。それ以外のシーンでも、全体的に映像のクオリティは高かったと思います。

菅野美穂と藤田さんは、去年、フジテレビの24時間放送内ドラマで放送された橋田寿賀子のドラマ「めぐりあい」(99/07/17の日誌を参照)で一緒に仕事をしていました。このドラマでの菅野美穂のキャラ設定やファッションも、その時の印象に近いような気がします。

伊藤英明は、「夜叉」の時とは違うキャラクターで、新鮮な感じがしました。――脱線しますが、「夜叉」についてちょっと……。「夜叉」における伊藤英明の演技に関しては、あまり良い評判を聞きませんが、ボクは結構がんばっていたと思います。一人二役で、声色なども使い分けていたみたいだし、その辺のところは、ちゃんと評価してあげても良いと思います。全体の印象は地味だったんですが、細かい部分で工夫の痕は感じられたということです。閑話休題。

物語は「WITH LOVE」みたいな感じもしますが、江口洋介と菅野のシーンにおける、若干硬質な言葉のやりとりが、ドラマを引き締めているように感じました。江口洋介は、この先も亡霊のように、毎回登場するのでしょうか。――俗っぽい話で恐縮ですが、エンドロールにおける俳優名の登場順序には、なかなか味わい深いものがありました。(笑)


00/07/05  億万長者と結婚する方法(1)

脚本:青柳祐美子
演出:大谷太郎(1)、三枝孝臣、大平太
プロデュース:若松央樹、小泉守
制作協力:イースト
制作:日本テレビ
関東放送枠:日テレ系・水曜10時

いきなり個人的な話で恐縮しますが、ボクとしては今期は、火・水をドラマ定休日にしたいなぁと思っていたのですが、なかなかそうもいかないようです。演出が大谷太郎さんだと知ってから、嫌な予感はしてたのですが……。(^_^;) 大谷さんの、いじわる〜〜!(T_T)

このドラマの演出を一言でまとめるなら、「ハッピーマニア」+「池袋ウエストゲートパーク」という感じになるでしょうか。ベースになっているのは、「ショムニ」「ハッピーマニア」「お水の花道」(特に平野眞さん)あたりの演出だと思います。ただ、「ショムニ」系のドラマでは見たことがないようなアイデアも盛り込まれていて、ボクはそこに堤幸彦さんの影響を感じます。カット割りのセンスとか、下世話なギャグなどが、そうです。

ベッドシーンのカメラワークなどは、以前に堤さんのドラマ(「少年サスペンス・謎の男子高校生」など)で見たことがある演出です。それ以外でも、下世話っぽいアイデアが多かったんですが、そういうところも堤さん的な感じがします。

ただし、宝生舞がパンツを見せたり、藤原紀香・宝生舞・とよた真帆の3人が水着姿で“コマネチ”をやったりするところは、堤さんでも自粛するんじゃないかと思ってしまいました。もし、あなたが演出家だったとして、女優さんに向かって、「パンツを見せろ」とか、「コマネチをやれ」とか言えますか? ボクは言えません。(^^ゞ 大谷さんという人は、大胆な性格の持ち主なのかもしれないです。でも、子どもには見せられないドラマかも……。

特に上手いと思ったのは、モト冬樹・松村邦洋・石井正則の3人の撮り方/見せ方です。ネタ的には、そんなに新味がないのですが、カメラワークとカット割りの上手さで、新鮮な印象(笑い)を受けました。大谷さんは(シリアスな)表情を撮るのが上手い演出家ですが、こういうコメディでも、俳優を乗せるのが上手いのか、同じ俳優の過去のドラマと比較してみても、良いニュアンスが出ていたと思います。

手持ち撮影風のアングルでコミカルの表情を撮っているシーンが多かったですが、春の改変期に放送された「バカヤロー!」とかいうオムニバスドラマでも、大谷さんが演出したヤツは、ほぼ同じような演出になっていたのを思い出しました。河相我聞とビビアン・スーと犬が出てきたエピソードです。手持ち撮影風のローアングルから、河相我聞や犬の表情をコミカルに撮っていました。

堤さん風の派手なカット割りと音楽の組み合わせ方にも、ていねいな配慮が感じられて、緩急の付け方がスムースに感じられました。これは、堤さんのドラマがゴチャゴチャした印象を与えるのとは好対照です。ただし、この点に関しては、そんなに注意して見てたわけではないので、誉めすぎかもしれません。(^_^;)

大谷さんといえば、前回チーフで演出した「隣人は密かに笑う」でも、豪邸が舞台になっていました。豪邸好きなんでしょうか? 立体的な空間感覚とかスケール感を出したい場合、豪邸というのは便利なんだと思いますが。

このドラマのライバルになりそうなのが、テレ朝・土曜11時の「OLヴィジュアル系」だと思われますが、どうなるでしょうか。楽しみです。


00/07/05  ドラマ30 キッズ・ウォー2

脚本:畑嶺明
演出:小森耕太郎
プロデュース:山本惠三、冨永晃一
制作:中部日本放送
関東放送枠:TBS系・月〜金PM1:30「ドラマ30」

5月末から放送されている昼ドラマで、しかも、去年の夏にパート1が放送されているようなのですが、ボクは最近まで未チェックでした。でも、面白いです。(^_^;) ストーリーは、「セカンドチャンス」みたいな、子連れ再婚のホームドラマなんですが、子役がなかなか見せてくれます。(^^ゞ

特にインパクトがあるのが、ボーイッシュな女の子を演じている井上真央で、雰囲気でいうと「ひとりぼっちの君へ」での前田亜季を、もっとハードにしたような感じのキャラ&スタイル。なかなかシビレます。で、その井上真央をイジメるクラスメートの少年(斉藤祥太)との関係が、恋心に転じていくというという定番の展開になっていますが、なかなかアイドルドラマっぽい演出になっています。

演出の小森耕太郎さんは、1年前に同じ枠の「直子センセの診察日記」というドラマを演出していましたが、そのドラマでは三輪明日美が良い味を出していました。このドラマでも、井上真央を撮ったカットに気合いが入ったアングルが多くて、その入れ込み様がよくわかります。実はアイドル派の演出家なのかもしれません。(^^ゞ

井上真央以外では、性に目覚めた長男(小谷幸弘)のネタが、結構笑えます。ドラマはすでに中盤を過ぎていますが、「セカンドチャンス」みたいなドラマが好きな人は、チェックしてみる価値はあると思います。

以下は、バカバカしい話なので、読まないでください。(笑)

これは単なる偶然なんだと思いますが、登場人物の役名を見てると、「怪奇倶楽部」を連想してしまいます。(^^ゞ 主人公の家が今井家で、井上真央が今井茜、前述の少年が紺野翼という役名になってます。「怪奇倶楽部」には、今井翼が出ていて、野村佑香の役名が紺野だったというだけなんですけど……。(^^ゞ


00/07/08  FNS27時間テレビ・ドラマSP 父さん

脚本:橋田壽賀子
演出:木下高男
プロデュース:中山和記、河合徹
制作:共同テレビ、フジテレビ
関東放送枠:フジ系・夜9:20くらいから

ワイドショーで、桜井翔が慶応大学経済学部だと知ってから、急に好意的になってる自分に気がついたりして……。我ながら、学歴に弱い自分が情けない。(^^ゞ 「自分には、このドラマの母親を批判する資格ないじゃん…」なんて思いながら見てました。この日誌では、俳優名はすべて呼び捨てにするのを原則にしているのですが、つい“桜井くん”とか書きそうになったりします。(^_^;) ――ただし、そういう部分は差し引いたとしても、ボクみたいに深読みしながらドラマを見る人にとっては、それなりに面白いドラマでした。

桜井翔のセリフは極端に少ないのに、カット割りは桜井翔を中心に組み立ててあって、まずそれにビックリしました。カット割りだけ見たら、このドラマの主役は桜井翔でしょう。初のドラマ出演でこの扱いというのは異例なんじゃないでしょうか。しかも、橋田さんといったら、長台詞で有名な脚本家だから、なおさらビックリ。

――で、桜井翔の演技とか存在感に、突出したものがあるのかといえば、全然そんなことないので、ますます不可思議です。桜井翔を盛り立てるために、全スタッフが力を合わせた……という感じのドラマでした。このドラマのスタッフも学歴に弱いのでしょうか?(笑)

逆にいえば、桜井翔はがんばってたと思います。リアクション系の表情演技が中心で、特に上手かったワケじゃないんですが、初ドラマでここまでやるのは楽じゃなかったと思います。前半は、「慶応ボーイにしてはパッとしない顔だなぁ」なんて思って見ていたんですが、後半に入ってからは、それなりに良い表情をするようになって……それも演出だとわかりました。おみそれしました。

木下高男さんは、「怪奇倶楽部」を演出してた人だから、新人ジャニーズの使い方は慣れているのでしょう。そういう意味では、よく出来ていたと思います。ボクがこのドラマで一番気にいったのはBGM(選曲)です。エンドロールにクレジットはありませんでしたが、最初の2〜3分を見た段階で、BGMが良いと感じました。古臭い曲調なんですが、微妙にダサくないところがボク好み。

ちなみに、オープニングの学校のシーンの雨は、本物の雨みたいに見えました。もし、ヤラセの雨だったとしたらスゴイです。プレハブ内のシーンにしても、どこまでがセットで、どこからがロケ(屋外セット)なのか、よくわかりませんでした。

ただし、このドラマの演出には不満もあります。桜井翔に対する愛情は伝わってきたんですが、橋田壽賀子に対する愛情はなかったように思います。橋田さんらしいセリフとかエピソードの部分が、やけにアッサリと処理されていました。

たとえば、「夕食はどうしたか」と聞く根岸季枝に、萩原健一が「駅前で食べてきた」と答えるシーンがありました。その後の桜井翔との会話を聞いていると、遠慮して嘘をついていたことがわかります。この辺の人間描写は実に橋田さん的なのですが、演出上でフォローされてないので、気がつかなかった視聴者も多いような気がします。同じことは“ネギ”とか“ひじき”のエピソードにもいえます。――ストーリー自体に関しては、不満を持たれている方が多いと思いますが、特に言っておきたいこともないので省略します。

他の出演者に話を移して……。冒頭に出てきた元3年B組の森雄介にも、ちょっとビックリしましたが、それ以上にビックリしたのが、妹役の井上真央です。ボクも「キッズ・ウォー2」の日誌に書いたばかりですが、この子に注目している人がたくさんいるということなんでしょう。ただ、「キッズ…」に比べると、ややインパクト不足ではありました。特にファッションがイマイチで、似合ってないような気がしました。(^_^;)

母親役の高橋惠子は、インパクトは強かったのですが、演技的にもキャラ的にも新味は感じませんでした。萩原健一のモーニング娘も凄かったですが、このシーンの演出も桜井翔がメインだったので、ちょっと物足りなかったです。(^_^;)

個人的には、根岸季枝と桜井翔が絡んでいるシーンが好きでした。といっても、根岸季枝が一方的にしゃべってて、桜井翔は聞いているだけなんですけど。ただ、アップは桜井翔の方が多いので、ちゃんと(演技の)キャッチボールをしているような手応えがあって、微笑ましく感じられました。――萩原健一と桜井翔のシーンも、ほぼ同じような演出でした。


00/07/09  新ドラマ “ひとくちレビュー”

詳しく書いてる時間がないので、とりあえずこんな形で感想を書いておくことにします。m(__)m

「フードファイト」
深田恭子のキャラは、過去のドラマとあまり違わないのですが、リアクションの演技が今までにないくらい手が込んでいて、妙に印象に残りました。草なぎ剛の方は、役作りが消化不良っぽい感じですが、そのうちこなれてくると思います。

「バスストップ」
時代の流れでカット数が多くなっていることを別にすれば、10年前のトレンディドラマと同じような演出ですね。ロケーションのセンスとか、オフィスの雰囲気とか。

「花村大介」
キライじゃないんだけど、ユースケのキャラ設定に、もう少し意外性がほしかったです。こういう脚本なら、もっとシリアスなテイストにした方が良いような気がしました。

「京都潜入捜査官」
チラッと見ただけですが、渡辺えり子が良い味出してました。その他の出演者にしても、全体的に良いニュアンスが出ていたように思います。

「つぐみへ…」
“のぞき見”風アングルの嵐!(笑) 金子賢がどういう登場の仕方をするのか、注目していたのですが、腕から登場しました。鶴田真由が受付けをしているところを、受付の内側から撮ったカット(のぞき見風)で後ろ姿の腕だけが、画面に入っていました。脚本は伝統的な転落型サスペンスの型を踏襲しているようです。「それぞれの断崖」の第1話もこんな感じでした。

「20歳の結婚」
まだビデオを見ていません。チラッと見た感じですは、「毎度ゴメンなさぁい」とか「ドン・ウォリー」みたいなテイストのようです。

「合い言葉は勇気」
ロケーションの雰囲気は「それが答えだ!」とソックリなのですが、あのドラマのような抒情志向は強くないようです。共テレっぽい要素を多用しつつも、重要なシーンでは、河毛俊作さんらしいオーソドックスな演出になっていました。でも、正直いって前振りだけで1時間半というのは、かったるかったです。(-_-;)

「summer snow」
堂本剛にしても広末涼子にしても、演技やキャラに魅力が感じられませんでした。特に堂本剛は、バラエティの堂本剛がそのまましゃべってるような気がして、ドラマの中の登場人物に見えなかったです。池脇千鶴もそうなんですが、中途半端に小器用なところばかりが目につきました。今井翼がキンキの歌を歌っているのも、場違いな内輪ネタという感じ。全体的に、演出の方向性が定まっていないような気がします。障害を持った弟が初デートに出かけたというのに、全然心配していないという脚本にも、許し難い白々しさを感じました。――かろうじて小栗旬(唐沢寿明にソックリ)で救われてるドラマ。(^_^;)

「フレンズ」
脚本・演出・主演と、「ひとりぼっちの君へ」とほぼ同じ顔ぶれなんですが、演出的には同じ清弘誠さんの「協奏曲」の方に近い感じがしました。宮本浩次の顔とか声質に、なかなか風情があって、彼を起用を思い付いた人はスルドイと思いました。全体の印象が地味なのも「協奏曲」的。

「トリック」
前の日が徹夜だったんで、途中で3〜4回眠っちゃいました。(^_^;) まだ、ビデオで見直していません。というワケで、以下は“まだら視聴”の段階での感想です。この数年の堤ドラマに頻出していた、ブルースギター系のBGMが影をひそめていたせいか、「金田一少年」のころの作風に戻ったような印象です。表面的な派手さを抑えつつも、「ケイゾク」以降のユーモアを、きっちり織り込んでいるところが見どころでしょうか。ちょっぴり“円熟”っぽい方向性で、今後が気になります。

「OLヴィジュアル系」
結構、笑わせてもらいました。キャラクターおよび演技のコンセプトがよく練られていると思いました。上原さくらファンには見逃せないドラマです。(^_^;) オープニングタイトルの「奥様は魔女」のパロディもヒットです。(^O^) 原田龍二のセリフに「チャンネル2」という言葉がありましたが、これは高丸雅隆さんがセカンドDを務めた「ニュースの女」とのリンクですね。ただ、「ショムニ」っぽい音楽の入れ方が、ちょっと目ざわりな感じがしました。そんなことをしなくても充分に面白いと思うのですが……。「ニュースの女」みたいなスマートな笑いにシフトしてほしいです。共テレのドラマと比べて画面がチープな感じがするのは、美術スタッフの差でしょうか?

「催眠」
まだ放送されていないのですが、田子明弘さんの脚本にも注目してみようと思っています。


00/07/09  怖い日曜日(2)

「ほたる」
出演:田口淳之介
演出:二階健

この日は4つもエピソードがあって、どれも中途半端な内容でイマイチ……なんて思ってたら、最後にスゴイのが来ました。これもストーリーは面白くないのですが、二階健さんの映像に圧倒されました。病室の少年が箱を開けると、周囲が“ホタルの墓”みたいな夜景色になる……と、言葉で書いてもイマイチなんですけど……。

合成なのか、実際にベッドを屋外に持ち出して撮影したのか、わかりませんが、とにかくインパクトは凄かったです。昨年、二階さんが制作した「怖い日曜日」のタイトルバックも、これに近いテイストでしたが、今回は第2話にして二階ワールド全開という感じでした。

特撮ドラマには、監督とは別に“特撮監督”がいますが、一般のドラマでも二階さんを特撮監督に迎えてドラマを作ってほしいな……なんて思ってしまいました。特に「バスストップ」とか。(笑) ――そういえば、「メトラー2」で大根仁さんが特撮監督みたいなことやってましたね。ビジュアルディレクターとかいう肩書き。


00/07/10  らぶちゃっと(10)

「ワンナイト・ラブ」
脚本:高橋美幸
演出:大木綾子
出演:西山繭子、内田滋啓、板倉香

このところ、「shin-D」にしても「らぶちゃ」にしても、地味というか小粒な作品が続いてました。この「ワンナイト・ラブ」も、物語や演出のスケール感は小粒なんですが、他の回に比べて、非常にわかりやすい演出になっていたのが気になりました。

具体的にいうと、セリフの強弱や間の取り方/カット割り/音楽などで、ドラマの流れにきちんとメリハリがついている……という感じです。視聴者に優しい演出といえるかもしれません。わかりやすい文章を書くのが難しいように、わかりやすい演出をするのも難しいと思います。だから、このドラマのわかりやすさは才能だと思います。

個人的には、BGMに久石譲の「See you....」が流れていたところで、ちょっと感激でした。映画『ソナチネ』のサントラ盤に収録されていた曲ですが、名曲中の名曲です。落合正幸さんが演出した「時をかける少女」でも、この曲が効果的に使われていました。ハッキリいって、このドラマのテイストに合っていたとは言い難いのですが、この曲をセレクトした大木綾子さんという演出家の名前は、ちゃんと覚えておきたいと思います。

……と、ここまで書き終わってから気がつきました。大木さんって、栗山千明の回も演出してました。やっぱ、この人、要注目だわっ! (^^)


00/07/11  FLY(9)

脚本:尾西兼一、奥寺佐渡子
制作統括:三井智一、一井久司
プロデュース:和田豊彦
演出:赤羽博(1)(2)(5)(6)(8)(10)、中島悟(3)(4)(7)(9)

これを書いている時点では最終回も見てますが、終盤の山はこの第9話でしょう。以前、中島さんの演出した回はいまひとつなんて書きましたが、7話や9話では中島さんらしい持ち味が出ていたと思います。

中島悟さんはコント風の演出を好む演出家で、「ドン・ウォリー!」や「GTO」でも、ショート・コント風に仕上がっていたシーンがいくつかありました。「FLY」でいえば、佐藤B作の“鍋奉行”ネタ(第7話)などは、おそらく中島さんの意向でしょう。で、そんな中島さんのコント志向が全面開花していたのが、この第9話でした。台本上はシリアスと思われるシーンでも、小ネタが満載でした。特に、大友康平までがボケるようになったりして、感激しました。それだけ、撮影現場の雰囲気が充実していたということなんでしょうか。特に、忍成修吾と鳥羽潤はボケとシリアスの両方で、がんばっていたと思います。

特に笑ったのが、ドラマの終盤、鳥羽潤が片瀬那奈の親の家に押しかけるシーン。

 父「娘はまだ18だというのに」
 母「19です」

……というくだり。普通に考えたらシリアスなシーンのはずなんですが、父親役の西田健を含めて、大映ドラマっぽい仰々しさがあって爆笑モノでした。さらに、西田健を殴った後の鳥羽潤のリアクションもバカっぽくて、中島演出の真髄が垣間見れる名場面だったと思います。

鳥羽潤といえば、NHKの公式サイトにある直筆メッセージも、ちょっと面白いです。主要キャスト全員が書いているのですが、鳥羽潤の字だけがバカっぽくて笑えます。(^^ゞ

ボクはこのドラマをNHK総合で毎週1話ずつ見たのですが、それで正解だったと思います。回が進むにしたがって、演技のニュアンスが膨らんでいくを、同時進行のように実感できたからです。このドラマの撮影には、2〜3ヵ月はかかっていると思いますが、その間における現場の変化を感じ取るには、週1のペースがベストだったんじゃないでしょうか。BSで一気に見てしまったら、徐々に変化していく感覚を共有できなかったかもしれません。

ボクの場合、このドラマを、航空学校のドラマではなく、俳優学校のドキュメンタリーとして見ていた部分も大きいので、脚本〜ストーリーに関してはあまりこだわりがありません。むしろ、演技の課題テキストとしては、起伏が激しくて良かったんじゃないかと思って見てました。航大合格者が極端に少ないところや、死者が出たり、家庭の事情がバンバン出てくるところには、「スクールウォーズ」に通じるテイストも感じました。

……というワケで、“FLY演劇学校”卒業者のその後が、妙に気になってたりしてます。金八マニアが、生徒役のその後が気になるのと同じですね。――忍成修吾と山口あゆみが、テレ朝系金曜深夜の「伊藤潤二・恐怖コレクション」に出るみたいです。)^o^(

なお、第1話のときの日誌で、制作統括のクレジットが間違っていたので、訂正します。西村さんじゃなくて、一井さんです。


00/07/14  J家の反乱

STORY62「静寂の部屋」
脚本:桑原尚志
出演:石野真子、安田章大

特に演出が凄いわけではないのですが、たくあんを食べる音をクライマックスに持ってくるというのが結構渋かったです。母親がいない少年と、子どもを失った母親が、擬似家族的に夕食を食べるというのは、ちょっとエロチックな感じもします。ストーリー的には、昨年夏にやった「線香花火」(斉藤慶子・今井翼)に近いテイストもあるんですが、あそこまで“つげ義春”的ではありません。


00/07/15  OLヴィジュアル系(2)

脚本:輿水泰弘(1)、吉田玲子(1)、高橋ナツコ(2)
演出:高丸雅隆(1)(2)、伊藤寿浩、今関あきよし、秋山純
プロデュース:五十嵐文郎、秋山純、横地郁英、高橋勝
音楽:大島ミチル
制作:テレビ朝日、CUC
関東放送枠:テレ朝系・土曜夜11時

「億万長者…」は悪評(?)が多いみたいですが、こちらは評判が良いみたいです。まあ、ボクも単純な好き嫌いのレベルでいえば、「OL…」の方が好きですね。ただし、演出技術のクオリティという意味では「億万長者…」の方もきちんと評価しなければいけない、と思います。特に表情を捕らえるセンスの良さに関しては、大谷太郎さんの才能はズバ抜けていると思います。

もちろん、高丸雅隆さんも、表情を撮るのは上手い人だと思うんですけど……。たとえば「ニュースの女」第3話で滝沢秀明が針に糸を通すシーン。糸を持った滝沢秀明を広角レンズのアップで撮ったカットがあって、かなり笑った記憶があります。再放送ではカットされてましたが……。(T_T) この「OL…」は高丸さん初のチーフ演出ドラマですが、滝沢秀明の時と同じ広角レンズ系のアップが多用されています。このあたりに高丸さんのこだわりがあるのかもしれません。

2人の脚本家を起用して小ネタ満載だった第1話と比べると、第2話はちょっと小ネタが弱かったような気がします。こういうドラマの場合、多くの脚本家や演出家を集めて、みんなでネタを競い合うのがベストだと思いますが、第3話以降の予定を見た感じでは、そういう方向性になっているみたいなので、その辺は楽しみです。個人的には、「ショムニ」みたいに外敵から会社を守る、という方向には行ってほしくないですけど。

あと、7月9日の“ひとくちレビュー”にも書きましたが、大島ミチルさんの音楽が「ショムニ」の二番煎じみたいで、いまひとつ物足りないものを感じます。「ショムニ」の音楽も大島さんなので、仕方ないといえば仕方ないのですが……。

ところで、このドラマと「億万長者…」を比較して見ていた人はたくさんいると思います。ぼくも両者を見ながら、ユーモアの質の違いについて考えてしまいました。演出の話からそれますが、ちょっとそのことを書いてみたいと思います。

 ユーモアの質について

ユーモアというのは、質的に2つに分けられるような気がします。一つはセンスの良さを誇示するタイプ。もう一つは、センスの良し悪しに関係なく多くの人に笑われることを目指すタイプです。適切な名称が思い浮かばないのですが、とりあえず前者を“エリート型”、後者を“解放型”と呼んでおくことにします。

エリート型というのは、センスの良し悪しを基準とする笑いのことで、ウィット/機知/エスプリなどと呼ばれる笑いは、これに属します。必然的にセンスの悪い人を笑いの輪から排除する傾向があるので、度を過ぎると観客に不快感を与える可能性もあります。ボクが片岡Kさんの笑いを、あまり好きになれない理由もそこにあります。多分、「池袋…」などもこちらの部類に入るんじゃないでしょうか。

解放型というのは、センスの良し悪しを問わない笑いのことです。よく「昔の笑いは弱い人に優しかった」などと言って、ビートたけしらの笑いを批判する人達がいますが、ある意味、昔の漫才などはこちらのタイプが多かったのかもしれません。ちなみに本広克行さんは、田舎のお婆ちゃんにもわかるようなドラマを作りたい、と発言していたことがあります。老人というのは情報弱者だから、老人にもわかる笑いは当然解放型ということになります。こちらの笑いは、人の心を解放する傾向があるので、解放型と呼んでみました。“なごみ型”でも良いんですけどね。

で、勘の良い方ならおわかりだと思いますが、ボクは「億万長者…」がエリート型なのに対して、「OL…」は解放型なんじゃないかと考えてみたワケです。こう書くと、「億万長者…」のどこがウィットなんだ、単に下品なだけじゃないか……と思われる人も多いかもしれません。でも、下品というのも一種のセンスだと思うわけです。少なくても「億万長者…」には、世間一般の良識を嘲笑うような毒があると、ボクは思います。成功しているかどうかは別にして……。

「億万長者と結婚するのが幸せ」という価値観には、ドラマにありがちな奇麗事的な幸福感に対するアイロニーがあるハズです。なにより、そういう思いがなければ、あそこまで手の込んだドラマは作れないでしょう。結果的には、失敗しているかもしれませんが……。インターネット上では、作り手の人間性を否定するような発言も目にしますが、ボクはそうした意見を指示する気持ちにはなれません。――どこかのテレビ担当記者が「どちらのドラマが好きかで人間性がわかる」などと失礼な発言をしていましたが、「他人の人間性を問題とする前に、自分の批評力を問題にしたら?」などとイヤミを言いたくなってしまいました。(^^ゞ

それに対して、「OL…」というのは、センスの良し悪しとは無関係な世界です。鈴木紗理奈がお尻をフリフリしながら歩くのを見て、「センスが良い」と思う人は、あまりいないと思います。「あまりにもバカバカしくて笑っちゃう」というのが、大方の人の実感なのではないでしょうか。さらにいうと、鈴木紗理奈や上原さくらに対して、どこかに憎めない思いもあるのではないでしょうか。多分、「億万長者…」との最大の違いはそこなんだと思います。「億万長者…」の藤原紀香らには、あまり親しみを感じないですからね…。この部分において、「OL…」は視聴者の心を解放するベクトルを持っているといえます。

――こうしたユーモアの質の違いということも含めて演出を考えるなら、「OL…」の演出は、よくできているといえると思います。ちょっと気取った言い方をするなら、これは弱者に優しいドラマでしょう? (^_^;) たとえば、「彼女たちの時代」の椎名桔平が、家に帰ってきて、鈴木紗理奈のお尻フリフリウォークを見たとしたら、ほんの一瞬でも気持ちがなごむのではないでしょうか。(^^)

――なお、“笑い”に関しては、ちゃんと研究した文献とかがありそうですが、ボクはその辺には詳しくありません。だから、その辺に詳しい人が読んだら、結構粗雑な議論かもしれないです。(^^ゞ


00/07/16  仮面ライダー クウガ

EPISODE 24 強化
演出:長石多可男(5)(6)(11)(12)(18)(23)(24)

ここ何ヵ月か「クウガ」を見てきましたが、長石多可男さんの演出が一番良いというのが、ボクの結論です。(^^ゞ カメラアングルや映像処理のセンス、お芝居シーンにおける表情を捕らえるセンスなど、長石さんの回が圧倒的に良いです。怪人のシーンや、戦闘シーンにも絵心を感じます。

この回も、ラストシーンでは風の音だけが流れていて、余韻が残る終わり方でした。特に一番最後の村田和美の表情アップなどは、微妙なニュアンスの表情になっていて、渋かったです。普通だと、もっとわざとらしい表情になるんですけどね。ほっとする表情とか、ニッコリ笑ったりとか……。

なお、先週の「テレパル」に「大人のための仮面ライダークウガ研究室」という記事が載っていました。「クウガ」の魅力をまとめてあったので、引用してみます。

(1)実在の場所・具体的時間軸を示しつつ物語が展開する。
(2)出現する怪人(未確認生命体)に対し警察が組織的に対応する。
(3)怪人たちが独自の言語体系を持つ
……などなど、徹底したリアリティーへのこだわりで、特撮史を塗り変えた超人気番組!

――だそうです。(^_^;) なんか、特撮マニアの内部のみで通用する議論という感じですね。特に(3)なんて、どうでも良いようなことにしか思えないです。昔アニメ好きの人が「モビルスーツは画期的なアイデアだ」と語るのを聞いたことがあります。その時「実際に開発したのなら凄いけど、フィクションの世界の話で画期的もクソもないだろ」と思ったのを思い出します。^^; 高視聴率なのは事実なので、ファンがたくさんいることは否定しませんけど……、ボクにはよくわからない世界ですね。ただ、オダギリジョーは良いと思います。


00/07/16  怖い日曜日(3)

「かおりちゃん」
出演:村上信五、松田一沙、大津綾香
演出:大根仁

銚子市でロケした作品だったようですが、ボクは大林宣彦さんの尾道シリーズを連想しました。脚本にしても、ロケーションにしても、大林的な詩情が漂っていました。キャスティング的にも松田一沙を起用するあたりは、ボク好みというか、嬉しかったです。村上信五は「J家」でおなじみの顔だし……。ちなみに、子役の大津綾香は、「フードファイト」第2話(7/8)で嘘つき少女をやっていた子です。

それにしても、海に連なる墓地のシーンとか、よく見つけてきたよな〜と感心してしまいました。銚子電気鉄道の車両も良い味が出ていて、有名な(?)小湊鉄道に通じる雰囲気でした。(^_^;) BGMに聞き覚えのある曲がありましたが、「白線流し」かな? 大根さんが演出する「トリック」も早く見たいです。


00/07/17  らぶちゃっと(11)

「夏の夜の進化論」
脚本:伊川尚孝
演出:小林和宏
出演:伊東美咲、深水元基、加賀野泉、高城洋一

久々に力作でした。気合いの入った映像・カメラワークと、意味不明(?)の脚本で、見せてくれました。誰かと思ったら小林和宏さん。このシリーズは、美味しいところは全部小林さんですね。(^^ゞ―― この日は、ボクも結構忙しかったので、このドラマも最初の5〜10分くらいは見ていないのですが、気を抜かないでちゃんと録画予約しておけば良かったと後悔してます。(;_;)

この手の文学ドラマ(?)って、セリフにメリハリがなくて、かったるくなりがちなんですが、このドラマでは男子高校生役の子(高城洋一?)が、バカっぽいキャラで良いスパイスになっていました。あんまり具体的に書けなくてスミマセン。ちゃんと見てないもんで。(^^ゞ


00/07/20  エイジ

原作:重松清
脚本:冨川元文
演出:兼歳正英
制作統括:菅野高至
出演:田中聖、中村雅俊、浅田美代子、橋本真美etc
制作:NHK
関東放送枠:NHK総合・夜7時30分

 原作者・出演者・演出家について

まず、データ的なことからまとめておきます。原作の重松清さんは、昨年の芸術祭に出品された関テレ作品「キャッチボール日和」(出演:宇崎竜童・栗山千明・竹内勇人)の原作を書いていた人です。また、今年の2〜3月頃の朝日新聞「批評の広場」で、「金八先生」のことを「男はつらいよ」と同じだと評していた人でもあります。この日誌でも、この記事に関してコメントした記憶があります。

で、その「金八」で兼末健次郎をやっていた風間俊介は、現在フジの「BIG」というミュージカルに出ているみたいですが、その「BIG」に風間と一緒に出ているのが、このドラマの主演の田中聖(たなか・こうき)です。そういう意味では、NHK&重松さんが作った“アンチ金八ドラマ”という見方もできそうです。

田中聖は「天使が消えた街」でも、意味不明な役で出演していましたが、ボクは、昨年暮れの「怖い日曜日」の日誌で、声質が良いと書いたことがあります。その声質が要因なのかどうかわかりませんが、彼はこのドラマの他に、映画の主演も決まっているみたいなので、風間俊介と並ぶジャニーズ俳優の出世頭という感じです。

演出の兼歳正英さんは、昨年「ズッコケ3人組2」の演出をしていた人で、その時のことは日誌に書いてあります(99/11/20)。他の回に比べて、風情のある映像を撮っていたような印象があります。

 予告に比べると、演出はいまひとつ

で、今回の「エイジ」なんですが、前々日に見た予告がやけにカッコ良かったので、期待して見ました。しかし、その予告のインパクトと比べると、ちょっと拍子抜けする印象もあったりしました。予告では、クラシック風のピアノ曲が派手に流れていて、「もう一人の自分」という文字が伸びたり縮んだりして、ちょっと「エヴァ」っぽかったりしました。まあ、「エヴァ」風というのも、ちょっとアウト・オブ・デイトなセンスかもしれませんが……。

このドラマの演出の印象を一言で言うと、煮え切らない感じでしょうか。全体的には「中学生日記」みたいな地味な感じでした。BGMも地味だし、お芝居のテンポも地味。そのこと自体は悪いことではないのですが、どういうワケか、部分的に「サイコメトラーEIJI」みたいな演出が出てきたりして(「ワァー」と叫ぶシーンとか^^;)、なんかチグハグな印象が残りました。

細かい部分ではそれなりに面白い部分もあったし、ていねいに作ってあったとも思うのですが、そうした工夫がドラマ全体の印象として結実していないという感じなんですね。もっと全体的にハードタッチな演出でも良かったし、逆にもっとソフトでコミカルな要素があっても良かったかな、とも思います。

個人的には音楽のセンスがイマイチ合わなかったです。主題歌はあれで良いとしても、現代音楽〜アンビエント風のBGMをガンガン流してくれたら、きっと印象も違っていたことでしょう。“秘められた暴力”という意味では、それこそ『ソナチネ』のサントラみたいな音楽が合いそうです。――このドラマのテーマは、主人公の少年の内面だと思うのですが、そんな彼の心象風景を、芝居やセリフだけじゃなく、音楽や映像で見せてほしかった……というのが一番の不満点でしょうか。

これは掲示板に書いたことですが、画面から受ける印象がNHK的というか、「中学生日記」っぽく見えてしまうという指摘は、確かにそうだと思います。ただ、その理由となると、答えを出すのが難しいです。名古屋で制作されている「中学生日記」と、大きな接点があるとも思えないからです。「中学生日記」の教室シーンはセットですが、このドラマの教室シーンはロケだったんじゃないでしょうか。

ちなみに、ファーストフードのシーンなどに顕著ですが、具体的な商品名や企業名を徹底的に排除している点が、美術面で、民放ドラマとの印象の違いを生んでいるのかもしれません。ハンバーガーの包み紙が青いチェックみたいな柄でしたが、なんか不自然でした。(^^ゞ

と、キツイことを書いてますが、「予告」で過大な期待を持たないで見てたら、感想も違っていたと思います。ストーリーも悪くなかったです。いろんなエピソードを重層的に絡ませて、主人公が抱えているフラストレーションみたいなものを、視聴者に同時体験させるような作りとか。――まあ、悪く言っちゃうと、理想的な父親と、父親の前では素直な息子のファンタジーという感じもします。これは原作でもそうなのでしょうか。それとも、脚本とか、中村雅俊の影響なんでしょうか。

ちなみに「キャッチボール日和」も父と息子の物語でしたが、「キャッチ…」の宇崎竜童が、あまりにも受け身的な父親だったのに比べれば、中村パパの方が違和感はなかったです。いずれにしても、父と息子の関係に救いを求めるというのが、重松さんの結論なんでしょうか。そういえば、こないだの橋田壽賀子ドラマ「父さん」も、同じような感じでしたね。「金八」では、金八先生が、実の親を飛び越えて、父親代わりみたいな役割を果たしていました。父性というのは、流行のテーマなのかもしれないです。「サマ・ス」の堂本剛もヤング父性だもんね。(^^)

 田中聖、ほか

主演の田中聖は面白かったです。やはり声質に味があって、彼のナレーションだけで、ドラマの印象が数段よくなっていたと思います。ナレーションが多い脚本でしたが、彼がこのドラマに起用された理由の一つに、ナレーションに堪えられる声、という要因があったんでしょう。特に彼が発する「タカやん」という言葉の響きに、妙にリアルな手触りを感じました。

また、表情も豊かで、シーンによって別人のように見えるところは、「クウガ」のオダギリジョーに通じるものがありました。主役がバンバン決まるだけのことはあります。特に、渋谷でコンパス持って襲い掛かるシーン(妄想)の表情は、なかなか怖い顔してて迫力ありました。ただ、風間俊介のコワイ目みたいな決め技はないみたいでした。上手いというよりは、素材が良いという感じです。ちなみに、上級生にいじめられるシーンでの、けわしい表情のアップは、ちょっとわざとらしい感じもしました。このへんの演出のチグハグさが、どうしても気になってしまいます。

エイジが片想いしてた女の子が想いを寄せていたバスケ部の少年は、「双子探偵」に出ていた子ですね。藤間宇宙だっけ。クラスメイトの「ツカちゃん」役だった長田融季は、中学生漫才コンビ「リアルキッズ」のメンバーだそうです。エイジの姉役の橋本真美は「shin-D・夏のつぼみ」に出ていましたが、今回はいまひとつ印象に残りませんでした。浅田美代子は「ベストフレンド」の時に続いて、シリアスな母親役を好演していたと思います。特に、娘の橋本真美に愚痴をこぼすシーンは秀逸でした。

ところで、浅田ママは息子の夢精に気がついていたんでしょうか。その辺の演出のニュアンスもわかりづらかったです。「あの程度の夢で夢精するか?」という疑問もありますが、青少年向けのドラマでは、あれ以上は無理ですね。あと、ドラマ冒頭の“小室=徹夜”ネタは、いかにも教師が言いそうなダジャレで、笑わせてもらいました。――なんか、このパラグラフは無駄話ですね。(^_^;)


00/07/20  二十歳の結婚(3)

脚本:尾西兼一、中園ミホ
演出:中島悟(1)(2)(5)、飯島真一(3)(6)、江口正和(4)
プロデュース:和田豊彦、井下倫子
制作:TBS、AVEC
関東放送枠:TBS系・木曜夜9時

出演者の顔ぶれを見ると、過去のAVECドラマで見覚えのある人がいます。中尾彬は「GTO」、安西ひろこは「救急ハート治療室」、鮫島巧は「FLY」に出ていました。同じことはMMJ(たとえば「花村大介」)にも言えるのですが、制作会社系の人たちは俳優とのつながりを大切にしているみたいです。反町隆史も最初のドラマ出演はAVECですが、そのときの縁が「GTO」につながるワケです。押尾学も反町と同じ研音らしいのですが(未確認)、「GTO」の恩返し&青田買いといったところなんでしょうか?

中島悟さんがチーフで連ドラを演出するのは、「恋の奇跡」(主演:葉月里緒菜、菅野美穂)についで2回目だと思います。「FLY」の日誌にも書いたように、中島さんはコント風の演出を得意とする人なので、このドラマも中島さんらしいテイストのドラマだといえると思います。しかも、今回は、出演者の大半が新人なので、演出家の役割は大きいといえます。つまり、演出に注目して見るのであれば、最適なドラマだといえます。

そういう意味では、第1話の序盤に出てきた朝食のシーンは、なかなか味わい深かったです。主要登場人物の紹介の意味を持っていたシーンなのですが、ひとり一人の性格設定〜演技コンセプトが、カッチリと決められていたみたいでした。

ドラマ全体の印象だと、怒鳴ってばっかりという感じなんですが、注意してみていると、怒鳴る人と怒鳴らない人の区分けはしっかりしていました。大まかに分けると、米倉涼子、優香、鮫島巧、安西ひろこが怒鳴り系で、中尾彬、松尾雄一、押尾学、宮崎あおい(三女)が非怒鳴り系。坂口憲二はよくわかりません。非怒鳴り系でも、松尾がボケ系なのに対して、宮崎あおいはツッコミ系という感じでした。

ただ、こうした区分けも、話が進むに連れてブレが出てくるようになりました。特に、演出家が替わった第3話あたりから、それが顕著です。また、演出家によって、俳優との相性とか、演技の引き出し方が違っていたりするので、その辺に注目して見ていると面白いです。飯島真一さんが演出していた第3話では、米倉涼子のコミカルな表情をしつこく撮っていましたが、これは飯島さんの意向(功績)でしょう。

基本的には、他愛のないドタバタコメディだし、視聴率も良くないみたいですが(昼ドラの「キッズ・ウォー2」に負けてる)、個人的には結構なごんでいます。(^_^;) 優香が怒鳴りすぎるのを別にすれば、ひとり一人の持ち味が(未完成ではあっても)良く出ていると思います。優香、米倉涼子、坂口憲二らは、着実に芸域を広げているし、安西ひろこと鮫島巧はワンパターンだけど(まだ飽きていない?)、前作よりは進歩しているのが感じられるし……。

難を言うとすると、押尾学かな。以前見た「七曲り署」では、大味でも、それなりにインパクトがあったのですが、今回は、ちょっと太ったからなのか、大味な印象が強くなってしまいました。ただ、優香との2ショットは、それなりに似合ってる感じもするので、がんばってほしいもんです。

なお、この第3話で、優香と押尾学が営業に出かけるシーンがありましたが、BGMに20年くらい前のAORみたいな曲が流れていて、ちょっと新鮮でした(陽射しも眩しかったし……)。もし、この曲のタイトルをご存知の方がいらしたら、教えていただけないでしょうか。多分、飯島さんの選曲なんだと思いますが……。


00/07/28  Summer Snow(4)

脚本:小松江里子
演出:松原浩(1)(2)(5)、遠藤環(3)(4)、平野俊一
プロデュース:伊藤一尋
制作:TBSエンタテインメント
関東放送枠:TBS系・金曜9時

第1話を見たときには、この先どうなることかと、心配だったのですが、回が進むにつれて良くなっているようです。特に、遠藤環さんが演出した3〜4話は、見どころが多かったです。カメラワークなど、手の込んだアイデアも多かったのですが、それだけでなく、出演者の持ち味も、しっかり引き出していたように感じられました。

このドラマを演出するにあたって、一番難しいのは今井翼の扱いでしょう。遠藤さんは今井翼のイマイチな部分をカメラワークなどでフォローしていたようです。――カメラワークで今井翼の演技にメリハリをつけてやることによって、演技でメリハリを出せる堂本剛や池脇千鶴とのバランスを取る――みたいな感じです。(^_^;) また、第3話で、おにぎりを落とす場面がありました。彼の頼りなさを強調するためのアイデアだと思うのですが、脚本に書いてあったとは思えないので、多分、遠藤さんのアイデアなんでしょう。

堂本剛も、第1話のときは、台詞回しがしつこくて不自然な感じがしたのですが、少し抑えた演技にシフトしてきたみたいです。クールにボケる場面が増えているようです。広末涼子も、表情のニュアンスが豊かになりました。また、自宅のシーンなどで、ローアングルから入るカメラが、なかなか良い雰囲気でした。

それにしても、役とはいえ、今井翼はどうしょうもないキャラですね。「こんな男と一緒になっちゃダメだよ! この男の改心なんて信用できない」などと、思いながら見てました。堂本剛じゃなくても、ブン殴りたくなります。(^_-) まあ、池脇千鶴に中絶するように頼むシーンで、「お願いします!」とか言って頭を下げているところは、笑っちゃいましたが……。これはこれで、おいしいキャラなのかもしれません。


00/07/29  フードファイト(5)

    企画:野島伸司
    脚本:山崎淳也
    演出:佐藤東弥(1)(3)(5)(8)、細野英延(2)(4)(7)、長沼誠(6)(9)(10)
プロデュース:西憲彦
    制作:日本テレビ
 関東放送枠:日テレ系・土曜9時

佐藤東弥さんは、土9以外では見かけることが滅多にない演出家ですが、今回の「フードファイト」は、土9テイストがほとんど感じられないドラマです。その上、脚本の方も野島テイストがあまり感じられなかったので、第1話を見たときには、何をやりたいんだかいまひとつピンときませんでした。しかし、第4話(桜井幸子)第5話(田辺誠一・横山裕)あたりから、野島テイストらしきものが見えてくるようになりました。

演出面では、ギャグのパターンが固まってきたようです。深田恭子に下ネタをやらせてよろこぶ――というオジサン趣味が全開していますが……。で、このドラマの深田恭子は、お笑い担当という感じで、表情のリアクションを重視した演技/演出になっています。あまり話題になっていないようですが、彼女にとってはターニングポイントになる作品なのではないでしょうか。

今週のゲストは田辺誠一と横山裕の2人でした。田辺は第6話の対戦者なので、今週は出なくてもいいように思うのですが、横山裕だけで1時間持たせるのは苦しいと判断したのでしょうか。その横山裕ですが、『犬神家の一族』のスケキヨ(助清?)みたいなマスクがお似合いで、おいしかったです。ただ、ラストのオチはなくてもいいような気がしました。意図不明のオチです。ジャニーズ事務所から素顔のシーンを作れと、要求があったのでしょうか?

しかし、このドラマで、ボクが抵抗を感じるのが「フードファイティング」という設定なんですよね。こんなことが現実に行われているのかどうかはわかりませんが、これって、見ていて面白いですか? このドラマの設定が、「タイガーマスク」と同じなのはご存知の通りですが、プロレスという対戦競技をフードファイティングに変えてしまったのが、失敗だったんだないかという印象が、どうしても消えません。

覆面レスラーという設定だった「タイガーマスク」の場合は、孤児院のために身体を張って闘う――という部分が、緊迫感を生んでいたと思います。ところが、これがフードファイティングだと、“勝負”というよりは“ゲーム”に見えちゃって、緊迫感に欠けます。まして、フードファイティングで迫力のある映像を作るのは、素人考えでも難しそうで、毎週、「苦労してるな……」なんて思いながら見ています。(^^ゞ 今週で言えば、担架で運ばれる横山裕――という映像は、格闘技の安っぽいパロディでしかないでしょう?

というワケで、基本的な設定やストーリーには不満があるのですが、キャラクターには魅力を感じます。草なぎ剛、深田恭子、田辺誠一、秋場まなと(子役)、筧利夫、九官鳥――など、見ていて結構なごんでいます。(^^)


00/07/29  OLヴィジュアル系(3)

脚本:輿水泰弘(1)、吉田玲子(1)(3)、高橋ナツコ(2)
演出:高丸雅隆(1)(2)、伊藤寿浩(3)

脚本家の違いなのか、演出家の違いなのか、ハッキリわかりませんが、第2話よりネタが充実していたと思います。演出面でも、音楽の使い方が上品になっていたようです。アクセントをつけたい部分で、音楽を「ジャ〜ン!」と入れるのではなく、アクセントをつけたい部分で音楽を止める……というパターンが目につきました。

伊藤寿浩さんについては、あまり知りません。「奇跡の人」(98年・よみうりテレビ/ザ・ワークス、主演:山崎まさよし)で、セカンドDをやっていたのが記憶に残っています。また、「ミラクル仮面高校生」(95年・ABC/ホリプロ、主演:森田剛)や「義務と演技」(96年・TBS/ホリプロ)なども、演出していたようです。ちなみに伊藤さん。来週はこのドラマの前に放送の「土曜ワイド劇場」の演出をしているみたいです。(関東の場合)


00/07/30  催眠(4)

脚本:田子明弘
演出:西谷弘(1)(2)、村上正典(3)(4)
プロデュース:稲田秀樹
制作:共同テレビ、TBS
関東放送枠:TBS系・日曜夜9時

西谷弘さんがチーフで連ドラを演出するのは、98年秋の「走れ公務員」以来で2度目になります。率直に言って「走れ…」はイマイチだったのですが、翌99年の西谷さんは、セカンドDとして「リング」「ナオミ」「らせん」「TEAM」と、休みなしの大活躍でした。で、そうした経験をふまえた上で、再度チーフDに挑戦したのがこの「催眠」というワケです。

1〜2話を見た限りでは、ちょっとわかりづらい感じがしました。ゴールデンの連ドラとしては、かなり派手な映像処理をしていて、西谷さんらしいセンスの良さも感じられたのですが、1時間を通してみると、しつこいという印象の方が強いです。一般的に言って、映像処理が派手になると、お芝居や表情のニュアンスが伝わりづらくなる傾向がありますが、「催眠」にも、それを感じました。

ところが、村上正典さんが演出した第3〜4話では、表情をていねいに撮っていたので、お芝居のニュアンスがわかりやすくなっていました。表情アップのアングルとか、タイミングなどを含めて、お芝居のニュアンスに重点を置いた演出だったと思います。実のことを言うと、この回は、他のことをしながらチラチラと見ていただけなので、あまり大したことは言えないのですが、表情のニュアンスがクリアなのことだけは、しっかり印象に残りました。額から血を流している石川伸一郎の映像も、なかなか風情(?)があって良かったです。

村上さんは、西谷さんよりもドラマ演出歴は長い人です。特に星護さんのドラマ(「勝利の女神」「いいひと。」「ソムリエ」「恋愛詐欺師」)でセカンドDを務めることが多いのですが、他に「怪奇倶楽部」や「タイムキーパーズ」などで、渋い演出をしていました。チーフDを務めたのは「甘い結婚」(主演:木梨憲武)のみですが、ヨーロッパテイストの演出を得意とする人です。

ところで、このドラマで一番良い味を出しているのは、稲垣吾郎でも、瀬戸朝香でも、羽田美智子でも、藤竜也でも、塩見三省でもなくて、子役の少年(秋山拓也)なんじゃないでしょうか。彼が苦しんでいる姿を見ると、妙に胸が痛くなります。(^^) 第4話でも、彼の表情を撮ったカットに、気合いが入っていたように感じました。ちなみに、ストーカーもどきの石川伸一郎を見ていると、「パイロットの夢に敗れて、精神を病んでしまった青年」に見えてしまいます。(^_^;)

 催眠療法について

最後に、ドラマと関係ない話をひとつ。――このドラマの中に「催眠療法に対しては、いまだに偏見が強い」とかいうセリフがありましたが、ちょっと疑問を感じました。原作の松岡圭祐さんは、臨床心理士の資格を持つ催眠療法のカウンセラーなので、催眠療法に肯定的なのは当然だといえるのですが、現状はもっと微妙です。

アメリカで、“催眠療法”とか“多重人格症”に注目が集まったのは、90年代の前半だと思います。ところが、アメリカやイギリスでは、90年代後半に入ってから、催眠療法や精神分析療法に対して、否定的な研究報告や報道が続出しているそうです。要するに、“催眠療法”とか“多重人格症”なんてものは、精神医学界における一過的な流行で終わってしまう可能性があるワケです。だから、このドラマを見るときは、催眠療法を含めてフィクションだと思ったほうが良いと思います。(^_^;)


00/07/31  バスストップ(5)

脚本:いずみ吉紘
演出:光野道夫(1)(2)、武内英樹(3)(4)、西浦正記(5)
プロデュース:栗原美和子、羽鳥健一
制作:フジテレビ
関東放送枠:フジ系・月曜9時

このドラマはすでに脱落していて、ほとんど見ていないのですが、演出に西浦匡規さんの名前があったので、この回だけ見ました。というワケなので、他の回との比較はできません。西浦さんは、「神様、もう少しだけ」や「二千年の恋」で、1話だけ演出したことがあります。そのときは、金城武の表情が他の回とは微妙に違っていて、印象に残っています。ちなみに、タイトルロールでは名前が西浦正記となっていましたが、改名されたんでしょうか。いくらなんでも、監督の名前を誤植するとは、考えにくいのですが……。

このドラマに関しては、ボクの場合、主役の2人にあまり興味が持てないので、TBS系の3人(内山理名、星野真里、吉沢悠)に注目して見ました。内山理名と星野真里の2人に関しては、バッチリでした。特に内山理名にはかなり力を入れていたみたいで、表情のニュアンスとかカメラワークに、特別のこだわりを感じました。吉沢悠はイマイチだったのですが、終盤になってから1ヵ所だけ良いカットがありました。「おもて、雷だよ」と言われて、内山理名が外に飛び出していった後に、挿入された横からのアップなんですが、妙に意味深なニュアンスがあって、印象に残りました。

この回のハイライトは、飯島直子と星野真里のシーンでしょう。トラックが2人の横を通りすぎていく……というアイデアが、誰の発案なのかはわかりませんが、その部分を差し引いても、緊張感のあるシーンに仕上がっていました。たとえば、星野真里の長いセリフをどう処理するのかは、微妙なところだと思うのですが、変にニュアンスなどをつけないで、マシンガンみたいな、まくしたてるような演技〜編集になっていました。なかなか思い切りがいい演出ですね。

このシーンでは、飯島直子の言葉にムッとしてから、星野真里がキレるまでの間も、けっこう長かったのですが、一端、緊張感をゆるめてから、ドーンと来るところが渋かったです。星野真里の表情もいつになくケワしい感じで新鮮でした。ただし、星野真里の足の指先のアップには笑いました。(^^)

ちなみに、このシーンでは、ハイヒールの話が出てきましたが、この回は、他のシーンでも飯島直子の足元のアップが多かったです。重たい書類を運ぶシーンとか、雨の中を花火会場まで走るシーンとか……。つまり、ハイヒールのアップで、飯島直子の心情を象徴させていたワケです。――西浦さんには、これからも注目していきたいです。(^^)


00/08/03  20歳の結婚(5)

脚本:尾西兼一
演出:中島悟(1)(2)(5)、飯島真一(3)、江口正和(4)

中島悟さんは、鮫島巧と松尾雄一に力を入れて演出していたようです。表情のニュアンスなどに細かい指示を出していたんじゃないでしょうか。特に松尾雄一は、3〜4話では、ほとんど良い印象がなかったのですが、今週は、姉のキスを目撃するシーンとか、ラーメン屋で、そのキスの相手に気がつくシーンなどで、面白いニュアンスを見せていました。教育的な配慮みたいなものを感じました。(^_^;)

また、宮崎あおい(三女)なども、中島さんが演出した回で、一番いい味が出ているような気がします。逆にいうと、3〜4話でいい味を出していた米倉涼子や坂口憲二などはイマイチでした。平山綾も、もう少し出番/見せ場を、作ってあげてほしいです。

で、誰が演出してもイマイチなのが押尾学という感じなんですが、しいていえば、飯島真一さんが演出した第3話が、比較的いい感じだったような気がします。来週は、優香と押尾学の関係に進展があるみたいです。第3話も、2人の関係に重点をおいたストーリー/演出でした。単なる偶然かもしれませんが、来週の演出も飯島さんのようです。


00/08/04  ふしぎな話1・カントリーロード(5)

    脚本:国井桂
    演出:松田耕二金沢健司
    制作:青井邦臣
プロデュース:薮内広之、松田耕二、河村靖
    音楽:coba
    制作:北海道放送、毎日放送
 関東放送枠:TBS系・月〜金PM1:30「ドラマ30」

TBSの昼ドラ「ドラマ30」枠ですが、この夏は1週間=5話完結のドラマを4本放送する――という企画モノになっていました。4本とも子ども(小学生)が主人公で、うち3本は地方を舞台にしたドラマです。

で、この第1作目は、北海道放送が制作に加わったロードムービー風のドラマでしたが、なんかイマイチでしたね。カメラワークにしても、お芝居のニュアンスの付け方にしても、アカ抜けない感じがしました。主役の少年2人も、あんまり印象に残っていません。音楽が「君といた未来のために」や「六番目の小夜子」でお馴染みのcobaだったのですが、音楽が印象に残るシーンは一つもありませんでした。(-_-;)

さらにキツイことを言っちゃうと、北海道を舞台にしてロードムービー風……という発想は、過去に何回も登場している手垢にまみれたアイデアだと思います。(;_;)


00/08/04  Summer Snow(5)

演出:松原浩(1)(2)(5)、遠藤環(3)(4)、平野俊一

松原浩さんのオーソドックスな演出が、気持ちよく感じられました。特に、広末涼子と角野卓造がやりあうシーンとか、ラストで堂本剛と角野卓造がやりあうシーンなど、角野さんの存在感が大きく感じられました。また、角野さんに「別れてくれ」と言われて、うろたえる堂本剛も印象に残りました。ひさびさに堂本剛らしい演技を見た気がしました。

このように、1対1のお芝居の緊張感を、自然な流れで見せるのが、松原さんの持ち味なのかもしれません。必ずしも、緊張感を強調するタイプではなさそうです。「ママチャリ刑事」のときも、松原さんが演出した回は、そうした傾向がありました。


00/08/04  オーリー・風になる朝

   脚本:塚本隆文
   演出:城谷厚志
   出演:風間杜夫、沢木哲、伊藤淳史、小島聖、秋吉久美子、善家尚史
 共同制作:NHKエンタープライズ21
巻頭放送枠:NHK・金曜9:15

第24回創作テレビドラマ脚本懸賞公募の入選作だそうです。あまり新味の感じられないストーリー展開なんですが、細かい部分で惹かれるところが多い作品でした。特に、終始ポジティブに行動する風間杜夫のキャラクターに嫌味がなくて、そこが独特の味になっていたように思います。風間杜夫が沢木哲に「スケボーを教えろ!」と強引に迫るくだりは、「スゲエなぁ」と思ってしまいました。(^^ゞ

沢木哲は1年前に「アフリカの夜」に出ていた人ですが、久しぶりに見たら、やっぱり森田剛に似てました。この人で「月下の棋士」を作ったらどうなるだろう――なんて思いながら見てました。ただ、この人の場合、森田剛とちがって、声質が太いというか重たい感じなので、俳優としてはおいしいかもしれません。そういえば、彼は映画「ブギーポップは笑わない」にも出ているみたいです。

演出的には、映像重視の部類に属するのでしょうか。派手さはないけど、ていねいなカメラワークになっていました。ただ、最近は手の込んだ映像のドラマが多いので、この程度だとあまり印象に残りません。一方、お芝居の演出でも印象的なシーンはありました。風間の「それも追加料金か」という言葉に、沢木が軽く笑みを浮かべるアップが入るところなどは、音楽が入るタイミングを含めて、なかなか渋かったです。ただ、ボクとしては沢木哲のコミカルな部分をもう少し出してほしかったです。

ところで、沢木哲のスケボーのシーンは、全部本人がやっているのでしょうか。ハードルみたいにジャンプ(オーリー?)するカットは、後ろ姿しか映っていませんでしたが、本人がやっているのだとしたら、かなりスゴイです。

それから、沢木哲の仲間の役で善家尚史(ぜんけ・なおふみ)が出ていました。彼は、「木曜の怪談'97・魔法じかけのフウ」「先生知らないの?」「ひとりぼっちの君に」などに出ていた子役で、特に「先生…」では2回も主役を務めていました。しばらく見なかったのですが、最近は「SMAP×SMAP」などにも出ているようです。娘役の小島聖も、ドラマで見るのは久しぶりのような気がします。息子役の伊藤淳史は「みにくいアヒルの子」などに出ていた子です。


00/08/04  J家の反乱

STORY 63「拳」
脚本:枡野幸宏
演出:北川文彦、谷村政樹
出演:尾藤イサオ、丸山隆平

ラストで、不良と再会するシーンが、ヘビーでインパクトがありました。そこまでは「よくあるタイプの物語」という印象だったのですが、最後のオチで、印象深い作品になりました。丸山隆平の悲痛な表情のスローモーションが強力でしたが、その後に、追い打ちをかけるように、彼の泣き声でエンディングにするところも、秀逸でした。

この番組が始まってから、すでに1年半近くになりますが、丸山隆平が主役を務めるのは、今回が初めてだと思います(関東で放送されていない回で主役をやってるかも?)。これまでも、トーク編ではおなじみだったのですが、ドラマでは、出番らしい出番はなかったと思います。ほとんど印象に残っていません。

ところが、今回のドラマを見ると、思いのほか表情に説得力があったので、ちょっと感心してしまいました。演出の方も、そうした彼の持ち味を、しっかり、くみ取っていたみたいでした。一般的に考えると、演出家と新人俳優の関係というのは、お互いが手探り状態だから、方向性を決めるのがむずかしいと思われます。このドラマにしても、初対面の状態では、こういう演出はできなかったと思います。やはり、1年半の歳月は無駄ではなかったということでしょうか。

……上のパラグラフを書きながら、ボクが念頭においていたのは「20歳の結婚」です。(^_^;)


00/08/10  20歳の結婚(6)

演出:中島悟(1)(2)(5)(7)(8)、飯島真一(3)(6)(10)、江口正和(4)(9)

この回は、手の込んだカット割りが多くて、今までとは趣が異なる演出になっていました。特にカメラアングルの切り替えが大胆で、意外性にとんだカット割りが多かったです。以前書いた「不連続系のカット割り」でいえば、空間的な不連続にあたります。

台所〜食卓〜居間のセットが一続きになっているのは、ご存知の通りですが、居間の人物のアップの後に、食卓の人物のアップに切り替わったりして、見ていて、ちょっとめまいがしました。(^^ゞ 普通、セットのシーンは、マルチで撮影(複数のカメラで同時撮影)されることが多いのですが、この回では、1カメで個々のカットを1つずつ撮っていたようです。

マルチシステムというのは、お芝居のライブ感を活かしたいときに便利なのですが、他のカメラが画面に入らないようにしないといけないので、カメラワークが制限されます。最近のドラマは、セットでもカメラワーク重視で、部分的に1カメ撮影されることが多いのですが、この回は特に1カメ風の映像が多かったです。

飯島真一さんとしては、お芝居でメリハリをつけるよりも、カット割りでメリハリをつけた方がいい――と判断したのかもしれません。もちろん、セットだけでなく、ロケのシーンでも、アングルに対するこだわりが強かったように思います。また、ラストのキスシーン(未遂!)などは、フジ月9風のテイストを感じました。そういう意味では、この第6話は、演出家の色が強く出ていた回だといえると思います。

あと、押尾学がボケたり、リアクションをしている部分も、他の回より多かったような気がします。多分、押尾学に細かく指示を出していたのでしょう。


00/08/11  ふしぎな話2・三つのお願い(5)

    脚本:清本由紀
    演出:皆元洋之助
    制作:青井邦臣
プロデュース:薮内広之(毎日放送)、上川栄
    出演:小島可奈子、つるの剛士、三浦理恵子、ミッキー・カーティスetc
    制作:東通企画、毎日放送
 関東放送枠:TBS系・月〜金PM1:30「ドラマ30」

1週間完結の昼ドラシリーズの第2弾です。このシリーズの中では唯一、地方色がないドラマでしたが、予想外の拾いモノでした。小学生の女の子が大人に変身してしまうという、手塚治虫「メルモ」風、ないしは「僕たちのドラマシリーズ」風のアイドルドラマに仕上がっていました。

カメラワークとか、ドラマのテンポ感とかには、あまり魅力を感じませんでしたが、主役の小島可奈子の魅力は、充分に引き出していたと思います。特に、身体は大人だけど中身は小学生というニュアンスが、きちんと表情にあらわれていたところがすばらしいかったです。別のドラマで、また見たいです。

タレント名鑑で小島可奈子を引くと、「砂の上の恋人たち」に出演していたと書いてありますが、ボクは思い出せません。同じ週の8月7日に放送された「らぶ・ちゃっと」(主演:平田裕香、演出:林徹)で、主人公の友人役で出ていたのを見ましたが、「三つのお願い」のときのような精彩は感じられませんでした。

兄貴役の少年(俳優名不明)のバカぶりには、「私の青空」の山崎裕太を連想しましたが、山崎裕太ほどのインパクトは感じませんでした。もっとバカに徹してほしかったです。(^^)


00/08/18  ふしぎな話3・ゴーストティーチャー(5)

    脚本:友澤晃一
    演出:竹園元
    制作:青井邦臣
プロデュース:薮内広之、亀井弘明
    出演:岡田義徳、松田純、福原和希etc
  制作協力:MBS企画
    制作:毎日放送
 関東放送枠:TBS系・月〜金PM1:30「ドラマ30」

今回の1週間完結シリーズの中で、最も評判がよかったのは、これだったようです。ボクとしては「三つのお願い」も捨てがたいんですけど……。(^^ゞ

竹園元さんというのは、初めて見る名前ですが、なかなか大胆な演出になっていました。ボクの経験では、歌モノのBGMをガンガンかけて、違和感なく見れたドラマはほとんどありません。安室奈美恵がガンガンかかっていた「バージンロード」(和久井映見、反町隆史、演出:光野道夫)くらいでしょうか。たいていは、演出側の自己満足に見えてしまうことが多いです。このドラマでは、Sugar Soulの「Respect Yourself」が、ほぼ全編でかかっていましたが、全然違和感がなかったです。(^o^)

映像のテイストなどは、最近はよく見かけるタイプなので、それほど斬新な感じはしませんが、カメラワークやカット割りはていねいでした。特に、手持ち撮影風のアクティブなカメラワークが目につきました。また、「Respect Yourself」以外のBGMもセンスがよくて、エンヤみたいな曲もかかっていました。ナレーション主体の脚本構成と、BGMの相性がよかったのでしょうか。

よかったといえば、主役(ナレーション)の福原和希もインパクトがありました。第1話の冒頭で、子どもたちの顔が映ったのを一目見ただけで、「この子が主役だ」とわかってしまいました。他の子役にはないオーラを感じました。「やはり、俳優は演技力よりも存在感だ」と思いました。福原和希の場合、まだドラマ出演歴はあまりないようですが、これから、あちこちでお目にかかりそうな予感がします。

ただし、脚本に関しては、疑問に思う点が多かったです。岡田義徳は、戦死した日本兵(特攻隊?)の幽霊という設定だったのですが、軍国主義教育を受けた当時の若者が、戦後民主主義的なメッセージを発するのは不自然です。いくら幽霊だとはいえ、御都合主義的に見えてしまいます。

そもそも、死者の気持ちとか想いなんてものは、誰にもわからないことです。それを、生きてる人間(脚本家)が勝手に解釈して代弁するというは、フィクションだとはいえ、どこか傲慢な感じが残ります。これは作品の問題というよりは、過去の歴史に対する表現者の姿勢の問題です。――それ以前の問題として、岡田義徳の発するメッセージが安直すぎるという問題があるんですが……。子どもの描き方も、ステレオタイプな“もやしっ子”の範疇を出ていないと思います。

……というワケで、企画・脚本に関しては、全否定したい気分ですが(笑)、演出は本当によかったです。ラストで、子どもたちのその後を紹介するくだりも、「アメリカン・グラフィティ」みたいで、余韻が残りました。こういうところも、センスがいいですね。このドラマが回想形式で語られていることの意味がよくわかっています。

ところで、脚本の友澤晃一さんは、「アリよさらば」とか「将太の寿司」の脚本を書いていた友澤晃さんと、同一人物なのでしょうか?

【追記】
この「不思議な話」シリーズは、この後に第4作目として、沖縄を舞台にした「不思議の島の伝説」とうのがありましたが、あまり面白くなかったので、ちゃんと見ませんでした。


00/08/18  Summer Snow(7)

脚本:小松江里子
演出:松原浩(1)(2)(5)、遠藤環(3)(4)(6)(7)、平野俊一(8)

基本的なことは以前に指摘した通りです。松原浩さんは、オーソドックスな演出スタイルで、奇をてらわない自然な流れを重視しています。それに対して、遠藤環さんの演出は、手の込んだカメラワークと、小ネタを配したギャグ志向を特徴としています。遠藤さんの場合、「to heart」のときも、こんな感じでした。

レストランのシーンで、間の悪い沈黙に耐えられない原日出子が「キムチおいしい」と言うところも、遠藤さんらしいギャグになっていました。たぶん、松原さんだったら、もっとシリアスに仕上げていたかもしれません。

小ネタ志向のホームドラマという意味では、「20歳の結婚」と近いものを感じたりもします。特に、回が進むにつれて小ネタの切れ味や乗りがよくなっているところに共通する手触りを感じます。このドラマの場合、堂本剛のしゃべりよりも、周囲の3人(池脇・小栗・今井)のリアクションで笑いをとる方向にシフトしてきているようです。――“鬼のガクラン”のように、堂本剛なしで笑いをとる場面も印象に残りました(第6話)。(^^ゞ

この回でもっとも力が入っていたのは、堂本剛に殴られた後の今井翼のカットでしょう。台所の流しの前で崩れるように座り込む姿をローアングルで捕らえたカットです。このカットは、前週の予告の最後にも出てきていました。きっと、予告を作った人(遠藤さん?)も、このカットにインパクトを感じたのでしょう。また、ダメ男の今井を心配そうに見つめる池脇千鶴の視線にも、重点をおいた演出になっていました。この2人の演技は、運命共同体のような関係になっています。どちらかがダメだと、もう片方もダメになっちゃいます。

それにしても、遠藤さんは今井翼に優しいですね。一生懸命、今井翼に見せ場を作ってあげている……という感じがします。カメラワークひとつとっても、今井翼のシーンに手の込んだものが多いです。今井翼の親とかファンの子たちには、遠藤さんにお中元・お歳暮を贈ることをオススメします。(^^ゞ

ところで、このドラマの堂本剛は、個々の事件に対して実に大人の対応をしていますね。「若葉」とか「青」のときのように、キレたり自暴自棄になったりしません。今井翼に対する態度などは、ヤング父性という感じです。ただし、この2人のエピソード自体は「ひとつ屋根の下」の江口洋介&いしだ壱成の焼き直しなんですが……。小栗旬はもろ山本耕史だし……。こうして2つのドラマを対応させていくと、中村俊介=福山雅治になっちゃうのですが、実は中村と堂本は兄弟だった――なんてオチはないですよね。(^^ゞ

小松さんの脚本も、今回はあまり安っぽい展開にならないので安心です。常識的な登場人物だけでストーリーを回しているように思います。小栗旬の逮捕は単なる勘違いなのだから、そんなにモメ事になる可能性はないハズですが、予告を見るとちょっと心配になります。(^^ゞ

どうでも良いことですが、このドラマが“青春3部作”の完結編だという話は、いまひとつピンときません。誰が見たって「to heart」の方が「若葉」「青」のカラーに近いと思うのですが……(そもそも、「青」のときは“少年3部作”といっていたハズ)。このドラマを起点にして“善良3部作”とかを始めた方が、良いのではないでしょうか。(^^ゞ


00/08/18  TRICK(6)

脚本:蒔田光治、林誠人(6)(7)(8)
演出:堤幸彦(1)(2)(3)(9)(10)、保母浩章(4)(5)、大根仁(6)(7)、木村ひさし(8)

血しぶきを浴びる佐伯日菜子のシーンは凄かったですね。大根仁さんらしいグリーン系の色彩感と、「怖い日曜日」でお馴染みの不健康そうな表情アップが秀逸でした。

この日誌を書いている時点では、木村ひさしさん演出の第8話まで見ていますが、演出のカラーは統一されているみたいです。演出家による差はあまり感じられませんでした。堤さんが演出していない回でも、ギャグの部分は堤さんがアイデアを出していると、公式サイトに書いてあるそうです(「テレビドラマデータベース新作1掲示板」におけるメカみさんの書き込みによる)。このことも、演出カラーに統一感を与えているのかもしれません。

強いて言えば、BGMの選曲のセンスが違うくらいでしょうか。保母さんや大根さんが演出した回の方が、音楽の趣味が若いような気がしました。(^^ゞ 第8話の木村さんは、三味線とかガムラン音楽を使ったりしていて、若いというよりは、マニアックという感じでした。


00/08/24  20歳の結婚(8)

脚本:尾西兼一、吉本昌弘(7)(8)
演出:中島悟(1)(2)(5)(7)(8)、飯島真一(3)(6)(10)、江口正和(4)(9)

7話、8話とチーフの中島悟さんの演出が続きました。さらに脚本も「毎度ゴメンなさぁい」などを手がけた吉本昌弘さんになっていました。この2話で番組を立て直すという意図があったのかもしれません。

実際、この7〜8話は面白くなっていたと思います。小ネタのヒット率が高くなっていた上に、出演者の演技〜ギャグのニュアンスも良くなっていました。――先日、ビデオテープの整理をしていたら、第1話の録画ができたので、ちょっと見てみましたが、この7〜8話の方が数段面白かったです。個人的には、松尾雄一(弟役)の自作曲ネタが面白かったです。最終回あたりで、またやってほしいですね。

優香と押尾学のラブストーリーの方にも、ちょっとだけ心が動いてしまいました。(^^ゞ 第7話ラストの物干しでの告白シーンなども、貧乏臭い青春ドラマみたいで妙に初々しかったです。――この第8話では、2人で買い物にいくシーンがありましたが、(第3話に続いて)またまたBGMに70年代AOR風の曲がかかっていて、懐かしい感じがしました。

それにしても、このドラマに出ている若い出演者は、みんな幸せだと思います。視聴率はイマイチかもしれませんが、得るものが多いドラマだったんじゃないでしょうか。後半に入ってから、小ネタや演技の質が向上していることから見ても、現場の充実ぶりがうかがえます。(^^ゞ

ところで、第7話にゲスト出演していた徳山秀典は、同じAVEC制作の「GTO」に出ていた人ですが、春にやった「教師びんびん物語SP」にも出ていました。ただし、この第7話は、イマイチ迫力不足だったです。斜め上を見上げるような仕草は、反町隆史直伝という感じで笑えました。(^^ゞ

彼は、AVECだけでなく、堤幸彦さんの作品にも良く登場する俳優です。さらに、日テレの古賀倫明さんのドラマにもよく出てきます。同じスタッフから何度も声がかかるというのは、それだけ現場での評判が良いということなんでしょう。きっと。


00/08/25  本当にあった怖い話2

(まだ、ビデオの中です。^^;)


00/08/26  ひかりのまち

       脚本:遠藤彩見
       演出:多田健(HTB)
企画・プロデュース:四宮康雄(HTB)
     企画協力:佐藤凉一、井土隆(テレ朝)
       音楽:増本直樹
       出演:尾野真千子、風吹ジュン、すまけい、遠藤憲一
       制作:北海道テレビ放送(HTB)
    関東放送枠:テレ朝系・土曜PM3:00

不定期に放送される、地方局制作の単発ドラマです。土日・祝祭日の昼間に放送されることが多いので、チェックするのが大変だったりします。(^^ゞ 物語は、少女(尾野真千子)と老人(すまけい)の交流を描いたものでした。最初は無愛想だった老人がだんだん心を開いてくる。そのうちに息子(遠藤憲一)との確執が明らかになる。最後に老人は死んでしまうが、それを乗り越えて少女が成長する――という定番的な展開だといえます。

にもかかわらず、心地良い印象が残るのは、ドラマ全体にアイドルドラマ的な初々しさがあったからでしょうか。尾野真千子という人は初めて見る人ですが、ドラマ内の随所で味のある表情や仕草を見せてくれました。そのせいで、暗くなりそうなドラマの雰囲気が明るいものになりました。特に、彼女が看護婦のマネをする場面などは、脚本に書いてあったとは思えないので、演出上のアイデアだったんでしょう。(^^)

演出の多田健さんは、北海道テレビ(HTB)所属の演出家のようですが、最近のドラマ演出の動向をちゃんと意識した上で、このドラマの演出に臨んでいたようです。特に、手持ち撮影風のカメラワークが多かったですが、それが被写体(尾野真千子)との距離感を近づけていたように感じました。

老人(すまけい)が、深夜の路面電車の中で死んじゃうシーンには、どこかノスタルジックな印象を受けました。「寅さん」の柴又みたいな感じです。全体的に、北海道〜函館的な映像は少なかったのですが、あまり地方色を強調すると、観光地ドラマみたいになっちゃうので、これはこれで良かったのかもしれません。

決して、“名作”などいって騒ぐような作品ではありません。天才的なひらめきとか、斬新なアイデアはないけれど、ていねいに作られた小品といった趣きの作品です。全体的な印象は地味だし、映像の質感を含めて「中学生日記」みたいなテイストが残りました。――それから、ラストに流れた藤井フミヤの主題歌も、後期ビートルズ風のサイケデリックなキーボードがフィーチャーされていて、印象に残りました。(^^)


00/08/27  怖い日曜日(8)

 祠の秘密
脚本:山田珠美
演出:古賀倫明
出演:中丸雄一、上田竜也、水谷妃里

中丸雄一と古賀倫明さんの組み合わせというと、昨年12月5日の「怖日」で放送された佳作「夢」を思い出します。今回の「祠(ほこら)の秘密」も、それに近いテイストでした。転落型ホラーと見せかけておいて、最後のオチで友情物語になる――というところがソックリです。ちょっと前に、弟が憎いというエピソードがありましたが、今回は幼なじみの友達が憎いという設定でした。

率直にいって、ホラーの部分は可もなく不可もなくという感じだったのですが、ラストの友情物語の部分で、ホロッとしてしまいました。(^_^;) この辺のテイストは古賀さんの得意技なのかもしれません。「夢」もそうでしたが、BGMも余韻が残る感じでいいですね。トータルな印象でいうと、「夢」の方がインパクトがあります。今回は、ホラーの部分があんまり怖くないから、ラストのオチも弱くなってしまいました。ただ、「夢」の二番煎じとしては悪い出来ではなかったかな。(^^)

この日誌を書くために、ビデオを見直していて気がついたのですが、ラストのセリフがなかなか秀逸です。

上田「俺、祠に呪いをかけた。オマエらが別れるように……」
中丸「……」
上田「……」
中丸「無理だな。オマエ、俺のこと憎んでないじゃん……」

よくよく考えてみると凄いセリフです。ドラマの世界でも、現実の世界でも、なかなかお目にかかれない、力強い響きがあります。多分、このセリフの余韻が、このドラマの印象を強くしているんだと思います。「夢」の脚本は真柴あずきさんでしたが、今回の山田珠美さんは、昨年12月23日の「X'masドラマスペシャル」で「花摘みじいさん」の脚本を書いていた人です。そういう意味では、この「祠の秘密」は、気合いが入っている作品なのかも知れません。(^^ゞ

ところで、そうしたこととは別に、出演者にも注目しました。水谷妃里をドラマで見るのは「ランデヴー」(高橋克典&柏原崇兄弟の妹役)以来ですが、出番が少なかったせいか、いまひとつ印象に残りませんでした。「若い子が歳をとるのは難しいな〜」なんて思ったりして……。m(__)m

その代わりといってはなんですが、やたらとインパクトのある顔をしてたのが上田竜也というジャニーズJr.の人です。「ウルトラマンガイア」とか映画「ブギーポップは笑わない」に出ていた高野八誠に通じる、ニヒルな感じが印象に残りました。アニメのキャラクターみたいな顔なんですが、悪役とかが似合いそうな感じがします。初めて見る人ですが、一応名前だけチェックしておきます。


00/08/28  バスストップ(9)

演出:光野通起(道夫)(1)(2)(6)(7)、武内英樹(3)(4)(8)、西浦正記(匡規)(5)(9)

どうもこのドラマのスタッフの間では、改名するのが、はやっているみたいです。ボクみたいに演出家の名前をチェックしている視聴者には、迷惑だったりするんですが、まあ、それはおいておきます。(^^ゞ

裏番組の「百年の物語」を見るのが大変なので、こちらはパスしようと思っていたのですが、西浦さんの名前が気になって、チャンネルを回してみました。そうしたら、いきなり、内山理名が大の字になって寝ているのが目に入ってきて、メロメロになってしまいました。(^^ゞ 西浦さんのソフトなエロ心(?)が全開してました。(~o~)

で、手の込んだカット割りになっていたのは、やはり内山理名がらみのシーンでした。特に、内山理名が吉沢悠に“ハッピーバード”とかいうお守りを渡すシーンは、ものすごく斬新なカット割りだと感じました。

内山理名が差し出したお守りをアップで映した画面の横から、吉沢悠の手が出てきて、お守りを受け取る。その次に、吉沢悠の方向をおそるおそる見る内山理名のカットが入って、その後に、吉沢悠がそのお守りを見ている表情を、内山理名の視線から撮ったカットが入る。――なんてことのない、カット割りだと思う人もいるかもしれませんが、ボクはドキドキしました。(^^ゞ 誰かのマネとは違うオリジナリティを感じます。他にも、このシーンでは、極端なアップと極端な引きの組み合わせに、こだわっていたようです。

この後の、リハビリセンターのシーンでも、面白いカット割りがありました。内山理名と星野真里の2人が、吉沢悠のことを話していると、吉沢悠のアップがド〜ンと入ってくるところ。ちょっと共テレっぽかったです。――これらに比べると、内村・飯島・柳葉のシーンは、オーソドックスなカット割りに終始していたようです。それはそれで、正解なんだと思いますが……。


00/08/29  喪服のランデヴー(3)

    原作:コーネル・ウールリッチ
    脚本:野沢尚
    演出:渡邊孝好
    音楽:東儀秀樹
  制作統括:三井智久、一井久司
プロデュース:池端俊二
  共同制作:NHKエンタープライズ21、ケイファクトリー
    制作:NHK
 関東放送枠:NHK・火曜夜11時

野沢さんが脚色と聞いて、ちょっと心配していたのですが、杞憂だったようです。「青い鳥」〜「氷の世界」あたりの作品に、いまひとつ馴染めなかったボクとしては、「リミット」とか、この「喪服」は、わりかし素直に受け入れられます。(^^ゞ ――ただ、ドラマ運びがかったるいのは、良くも悪くもNHK的(映画的?)なのかもしれません。民放のドラマだったら、もっとテンポ感がある作りになっていたように思います。

それにしても、主役(藤木直人)がほとんど出てこない変なドラマですね。ジェイソンみたいに、殺人のシーンだけ出てきて、セリフらしいセリフもなく去っていきます。この第3話は、犯行後に去っていく後ろ姿の映像がカッコよかったです。ただ、全体的な印象でいうと、古臭い感じは否めません。クオリティは高いのですが、映画世代の美的センス――という感じがするんですよね。発想がフィルム的であるように感じられて、ビデオ的ではないような気がします(雑な表現でスミマセン)。もちろん、これは好みの問題ですけど……。(^^ゞ

演出の渡邊孝好さんは、ときどき見かける名前ですが、ボクはよく知りません。検索エンジンで探せば、いろいろわかると思うのですが、そこまでやってる余裕がありません。「テレパル」には、映画「居酒屋ゆうれい」など、映画監督として名を上げた人――と書いてありました。

音楽の東儀秀樹は雅楽の人らしいです。番組中に流れている草笛みたいな楽器は、篳篥(ひちりき)というそうですが、今、IMEで漢字変換してみたら一発で出てきた。感動! ――もちろん、音楽の方も感動的です。(笑) 最近、音楽が印象に残るドラマが少ないような気がします。「ゴーストティーチャー」と「小夜子」くらいでしょう?


00/08/31  20歳の結婚(9)

脚本:尾西兼一(9)、吉本昌弘(7)(8)
演出:中島悟(1)(2)(5)(7)(8)、飯島真一(3)(6)(10)、江口正和(4)(9)

今回は、米倉涼子のシリアスな(?)エピソードが見れたのが良かったです。シリアスとはいっても、コメディですから、かなり予定調和なシリアスなんですが、そのことはあまり気になりません。ただし、演出的にはいまひとつ決め手に欠けるような印象でした。

ギャグのシーンも、7〜8話と比べると、ハズシているケースが多かったです。特に坂口憲二が吠えているシーンがイマイチでした。一方、シリアスなシーンでも、特に印象に残ったシーンはありませんでした。ラストシーンで、主題歌がストップするところも、そのまま終わってくれればOKなんですが、タイトルバックと同時に主題歌が再スタートしちゃうと、違和感があります。

そういえば、今週は今まで以上に70年代AOR系の曲がいっぱいかかっていました。(^^ゞ


00/08/31  合い言葉は勇気(9)

    脚本:三谷幸喜
    演出:河毛俊作(1)(2)(5)(9)、田島大輔(3)(6)(8)(10)、中山高廣(4)(7)
    企画:石原隆
プロデュース:波多野健、下山潤
    音楽:服部隆之
    制作:フジテレビ、イースト
 関東放送枠:フジ系・木曜夜10時

このドラマの場合、演出家の傾向の違いが比較的ハッキリしていました。河毛俊作さんが月9風のシリアス路線なのに対して、イーストの中山高廣さんは、共テレ風のギャグ強調路線。そして、田島大輔さんはその中間という感じでした。

ところが、この第9話では、河毛さんの演出も共テレ風のギャグ強調路線にシフトしていました。視聴率的な問題が絡んでいるのかもしれません。――ボクがこのドラマを見ていて感じる、最大のフラストレーションは、シリアス部分のギャグ部分のバランスの悪さなので、この路線変更には興味がわきます。

ちょっと前の「テレパル」に載っていた三谷幸喜さんのインタビューによれば、三谷さん本人はテレビの世界から離れたいと思っていたが、イーストの波多野さんの説得に折れて、今回のドラマを手がけることになった――とのことです。その意味では、三谷さんの今後を左右する重要な作品なんだと思いますが、視聴率は伸び悩んでいるようです。ボク自身も、これはこれで妥当な視聴率かもしれないと思うところがあります。

上手く言えないのですが、三谷さんのドラマは、どうもテレビのリズム感と合わないようです。テレビを見るような気持ちで気軽に見れない……と言えば良いのでしょうか? ギャグ一つとっても、真剣に見ていないと笑えないような感じがします。一番問題なのは、テレビ的な予定調和を壊そうとする意図が強すぎることで、これが“気軽に見れない”ことの最大の要因になっています。

今回のドラマで、一番引っかかるのは、シリアスとギャグのバランスです。シリアスと見せかけておいて、最後にオチをつけるパターンが多いのですが、そのせいで本当にシリアスなシーンが不自然に思えてきちゃうんですよね。「これってオチがないの?」みたいな感じです。特に村長さん(田中邦衛)が死んじゃうシーンを見て、「アレレ…、本当に死んじゃったよ。ここってギャグじゃなかったんだー!」と思ったのは、ボクだけでしょうか?

放送開始前のTV雑誌などを見ると、このドラマの目標はギャグじゃなくて「感動」だと書いてあります。だとするなら、当初の河毛演出は、その目標に忠実だったといえるでしょう。しかし、ボクの周囲の反応を見るかぎりにおいては、このドラマを見て感動している人はあまりいません。笑ってる人はたくさんいますが……。(^^ゞ

このドラマを最後に、三谷さんはテレビの世界から離れてしまうかもしれません。しかし、それはそれで、仕方がないことなのかもしれません。「これ以上、無理に引き止めても、同じことのくりかえしかもしれない」……というのが、今のボクの偽らざる気持ちです。(^_^;)


00/09/01  TRICK(8)

    脚本:蒔田光治、林誠人(6)(7)(8)
    演出:堤幸彦(1)(2)(3)(9)(10)、保母浩章(4)(5)、
       大根仁(6)(7)、木村ひさし(8)
プロデュース:桑田潔、蒔田光治、山内章弘
    音楽:辻陽
    制作:テレビ朝日、東宝株式会社
 関東放送枠:テレ朝系・金曜夜11時


「トリック」に関しては、ちゃんとコメントしていなかったので、ここでは、第8話についてではなく、「トリック」というドラマ全般について、書くことにします。

堤さんのドラマというと、良くも悪くもゴチャゴチャした印象が強いのですが、「トリック」はスッキリとした印象があります。ストーリーがシンプルなのが要因の一つかもしれません。物語の構造が最初っから視聴者にわかっているので、途中にギャグがバンバン入っても、安心して見ていられます。シリアスな人間描写などはないので、ギャグとシリアスのバランスで苦労することも少ないようです。この辺の感覚は「古畑任三郎」に近いかもしれません。

――若い女の子に下ネタをやらせて喜んでいるところは「フードファイト」と同じですが、こちらの方が徹底しています。「ケイゾク」における中谷美紀の“チンコ”ネタの発展型といえなくもないのですが、このドラマ自体が「ケイゾク」から、アク(植田博樹P?)を抜いたような作りになっているような気がします。

印象が地味だという意見もあるようですが、ボクはこういうスッキリした堤ドラマも悪くないと思います。第一、地味だとはいっても、カメラワークやカット割りの完成度は高いです。「ケイゾク公式事件ファイル」(角川書店)で、堤さんは「いかに効率よくロケの中でカット数を増やしていくかっていうのを延々2年も3年もやってきた」と言っていますが、「トリック」でも他の演出チームにはマネできないテイストが確実にあります。

最近のドラマは、多かれ少なかれ、堤ドラマの影響を受けていることが多いのですが、それでも、やはりマネのできない領域があるようです。むしろ、「トリック」は地味であるからこそ、堤ドラマの個性=コアな部分がよくあらわれていると、いえるのではないでしょうか。――その「個性」とは何なのか? と問われると、答えづらいです。“ある種のライブ感覚”としか、答えられません。(^_^;)

ただしボク自身、堤ドラマ特有のカット割りに対して、“慣れ”が出てきているので、「金田一少年」や「サイコメトラーEIJI」の時ほどの、衝撃を感じることはなくなりました。たとえば、「20歳の結婚」第6話のカット割りなんて、「トリック」に比べれば、かなり単純なんですが、「トリック」を見ている時よりも、インパクトを感じたりします。それは、堤さんのドラマを見ていると、いつのまにか見ている方の感覚が麻痺してしまう……ということなのかもしれません。(^^ゞ

 余談

堤さんは、「トリック」から離れている間に、「ブラックジャック2」の収録を行っていたようです。春に放送された「1」とは違う新要素もあるみたいなので、こちらの仕上がりも楽しみです。

個人的には、堤さんには、ホームドラマにトライしてほしいですね。(^_^;) 伝説のドラマ「お荷物小荷物」(70年・TBS系)あたりをベースにしてみたらどうでしょうか。ちなみに、「お荷物…」の脚本は佐々木守で、主な出演者は志村喬、河原崎長一郎、浜田光夫、林隆三、渡辺篤史、佐々木剛、中山千夏などです。……といっても、ボクは「お荷物…」を見たことがありません。切通理作「怪獣使いと少年」(宝島文庫)に、取り上げられているので、参考までに引用しておきます。

運輸業を営む男ばかりの滝沢家に女のお手伝いさん・田の中菊(中山千夏)が入り込む。彼女は素性を隠しているが実は沖縄人であり、かつてこの家の長男に孕ませられ、捨てられ自殺した姉の復讐を誓って乗り込んで来たのである。〔中略〕

ゴダールの『彼女について私が知っている二、三の事柄』(66年)の影響を受けていた『お荷物〜』は、出演者が演技の途中で突然、自分の役柄を批評したりする〈脱ドラマ〉でもあった。たとえば、菊の姉を死に追いやった長男・仁を演じる河原崎長一郎が突然演技を中断して「ひどい役をもらったもんです」と画面に話しかけるといった具合である。


……最後に、話が脱線してしまいました。(^_^;) そういえば、4月以降の「J家の反乱」も、設定だけなら「お荷物小荷物」にソックリですね。


00/09/02  フードファイト(9)

演出:佐藤東弥(1)(3)(5)(8)、細野英延(2)(4)(7)、長沼誠(6)(9)

先週の羽賀研二といい、今週の筧利夫といい、フードファイティングのシーンの演出が過激になってきました。もちろん、良くなっているという意味です。試行錯誤の積み重ねが、実を結んできているんだと思います。特に、今週の筧利夫は、ロボットみたいな手の動きと、音楽・カメラワークのリズム感が見事にマッチしていて、不思議な緊張感を生んでいました。ネット上では筧さんの演技を絶賛する声が多いようですが、ボクとしては演出とセットにして評価したいです。

最近、このドラマで気になっているのは音楽です。シリアスシーンで流れる旋律に、オルゴールっぽい抒情性があって、「私の運命」(94〜95年・TBS系)の挿入曲を連想したりしました。その音楽につられるようにして、ジ〜ンとしてしまいます。(^^ゞ


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