企画書について

企画書は1枚で

ビジネス環境では、1990年頃
1.消費者の嗜好の細分化と高度化により、市場がかなり複雑化していること
2.対応するビジネス手法が細密になっている
3.そのための新事業や新商品のコンセプトは、スタッフから良いものが出ている
4.だが、複雑・細密になった分だけ表現が難しく、表現が思わしくない
5.その結果、意思決定者や関係社員にそのコンセプトがうまく伝わらない
6.そのために、追加説明が多くなり、個別に分厚い企画書ができる
7.ますます全体が伝えられず、関係者に価値がわからなくなる
8.ますます事業の全体像に欠ける
9.窮余の一策として、必然的にワンシート企画書が登場する
といった現象がありました。
言ってみれば、情報量があまりに増えたために質が変わる---よく言われる量から質への転換と非常に良く似た概念です。

多忙な経営者ほど「たった1枚」で

 多忙で有能な経営者ほど、時間は短く、歯切れ良く、決断は早く、責任も明快にとります。そして、濃密で明快な構造を好みます。ワンシートの企画書が大好きです。
 それは、ワンシート企画書の後ろに、企画書を書いた人間の経験や未来が見え、十分な深さを一瞬のうちに感じ取れるだけの能力があるからです。ワンシート企画書から、事業構造を感じたり市場を感じたりできる、つまり構造として感じることができるのが有能な経営者です。

企画書作りの際の1本の幹と3本の根

 企画というものをつきつめて考えれば、企業や組織が自社の戦略にのっとって、意図的に社会や市場に商品や情報を働きかけていくことが企画そのもので、その作業や考え方を示しているものが企画書です。
 まともにやれば、物凄い情報量で、まとめるだけでも結構な作業です。
 ワンシート企画書は、企画書がワンシートだというだけでなく、この結構な作業量の知的作業を多少なりとも合理化して、そのプロセスもそれぞれワンシートでまとめ、それを組み立てるようにして構造化することです。要は、頭の中の整理方法を決めてファイリングして取り出しやすくする作業です。
 頭の中身がきちんと整理できている人は、コンピュータのHDDでファイルやフォルダの整理ができていて、他の人が見ても一目瞭然なんですよね。
 で、企画書に利用される企画情報というのを整理してみると、1本の幹と3本の根がある。
 1本の幹とは、自社の戦略企画を立案してゆく、戦略企画情報の加工プロセス。大きな企画の流れであり、ここにはさまざまな階層に応じた企画書があります。
 3本の大きな根とは、
1. 自社実績情報・・・自社の実績情報を企画書にしていくもの
2. 業界動向情報・・・競合情報を企画書にしていくもの
3. 環境情報・・・・・社会、市場環境、国際情報を企画書にしていくもの
 この3本の根は、情報という養分を吸い上げて、最終的には企画書という成果に収検していくものですが、その途中でさまざまな切り口があり、さまざまな種類の書類になります。単なる情報に意見を加えた程度のものでも、報告書、研究報告書、調査意見書、意見書、提案書、企画書といった名前になったりして、このことがよく混乱を招きます。

企画のプロセス

 お客をもてなし、バランスの良い企画を提供して「これはいい!」と納得してもらうためには
1.企画の目標設定・・・・・企画立案の目標設定
2.過去の企画チェック・・・手持ちの情報量だけで企画立案できるかどうかのチェック
3.情報収集活動
4.情報整理・・・・・・・・企画にあった情報を取り出す作業
5.企画書の前準備・・・・・ワープロで文章を作成したり、図版処理したりといった前加工過程
6.企画書の表現処理・・・・企画書作成時の例亜yとやデザインの工夫。プレゼンテーションしやすいように工夫をこらす。
7.プレゼンテーション・・・演出
というそれぞれの段階で、目標を設定して具体的行動をしなければなりません。

企画書の組み立て工程

 メーカーの工業化の歴史は、まさに分業化・システム化の歴史でした。企画書を書く際にも、この工程を見習えば、企画自体の原材料から素材・部品さらに製品としての企画書へと組み立てる手順が簡単に理解できます。
1.企画(知識)素材・・・新聞・雑誌・データベース情報・一般情報などは企画素材として位置づける。つまり、加工しなければ使いにくい。そこで、何とか部品として使えるようにしておく努力をする。
2.企画(知識)部品・・・PI(Packaged Intelligence)。図形情報・図式情報・構造化した説明文などがこれにあたる。企画書にいつでも挿入できるように、各々1枚の書類として保存しておく。社内共通語になれば、その社内ではキーワードだけで使える部品にもなる。
3.企画(知識)製品・・・各部門ごとの企画書として通用するレベルの書類、プレゼン・ソフト、プレゼン映像。全体像を把握してもらう為の概念図として1枚の紙または1つの塊として仕上げておく。
4.企画(知識)表現・・・プレゼンテーション・セミナー・企画会議そのもの。知的なものであるがゆえに、理解を促すプレゼンはきわめて重要で、顧客相手であれば、広告、広報、展示会などがこれにあたる。


PIというワンシート企画部品

企画部品をPI(Pacaged Intelligence)という部品として考えます。つまりは知識をパッケージ化したもので
1.産業概念
2.マーケティング
3.戦略経営
4.ビジネス現象
5.社会病理
6.文化
7.サブカルチャー
8.先端技術
9.グローバル
という9分野に分けて整理します。
一つのPIには、さまざまな情報がパッケージで説明されるようになっています。
1.キーワード・・・社会現象や市場構造を表現する鍵となる言葉をつける
2.コンテンツ・・・内容を文章化し、文章でコンパクトに説明する
3.サマリー・・・・内容をさらにコンパクトに、サマリーにする
4.構造図・・・・・関連図・階層図・流れ図など、さまざまな分析手法を用いて構造化する
5.データ・・・・・データ化されるものは、データで収録する
6.グラフ・・・・・データは必ず一旦グラフ化して、視覚的に一瞬で認識できるようにしておく
6.イメージ・・・・写真などのイメージ資料を添付して、言外の雰囲気を肌で感じられるようにしておく
7.関連資料・・・・関連資料・参考文献や資料の出所を明快にする
 企画書部品PIをHDD内に在庫しておいて、いつでも取り出せるようにしておくというのが、知恵や企画を迅速で確実なビジネスにする上では必須です。


さまざまな企画書とその構造

経営戦略企画書

企画書の一番大きな幹となる経営戦略・事業と合致させた企画の流れには
1.コンセプトマップ・・・1枚でわかりやすい構造にする
2.事業イメージ図・・・・事業が実施されているイメージを描く(調査段階では、組織図がこれにあたる)
3.事業軸・・・・・・・・事業軸を描いて事業レベルを確認する
4.基本システム・・・・・事業の基本システムの図式を描く
 基本システム(項目説明)・・・システムに関連する各項目を説明する
5.サブシステム・・・・・基本システムをブレイクダウン
 サブシステム(項目説明)・・・サブシステムに関連する各項目を説明する
6.フォーメーション・・・システムの動態を、ツールで詳細に描く
7.ツール・・・・・・・・制作企画の前段階の説明
8.予算、スケジュール・・いわゆる常識的に添付されるもの


事業の各段階と企画書

1.コンセプトマップ・・・事業構想書(基本構想)
2.事業イメージ図・・・・事業構想図(透視図)
3.事業軸・・・・・・・・事業構想書(基本方針)
4.基本システム・・・・・事業企画書(基本設計図)
5.サブシステム・・・・・業務企画書(部位別設計図、詳細設計図)
6.フォーメーション・・・行動企画書(工程図)
7.ツール・・・・・・・・制作企画書(施工図)
8.予算、スケジュール・・業務企画書